NICO Touches the Walls TOUR 2017 ”Fighting NICO” LIVE REPORT ④(5/6 浦安市文化会館)

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いよいよ幕を下ろす日が来た。全国19箇所20公演を回って来た、NICO Touches the Walls TOUR 2017 ”FIghting NICO”(以下Fighting NICO ツアー)の最終目的地は、彼らの地元である千葉県・浦安市文化会館。この浦安公演は、ツアーの追加公演という意味合い以上に凱旋公演であることが、彼らの胸中に大きく締められていたことは、冒頭のMCで突然言い放った光村龍哉(Vo&G)の第一声ですぐわかった。


「浦安の産んだロックスター、光村龍哉率いるNICO Touches the Wallsです!」


「随分大きく出たわね!」なんて私は驚いてしまったが、今ならこうも言いたくなる光村の気持ちが解らないでもない。かつて光村は中学生の頃に合唱コンクールで、同舞台に立ったことがある。目立ちたがりだった彼は指揮者を担当し、クラスを最優秀賞に導いただけでなくて、最優秀指揮者賞まで獲得したそうだ。そんな初々しいエピソードにもあるように、今ツアーで回って来たどの会場でも味わうことのなかった感慨と緊張、何より照れが大いにあったのだろう。きっと、「浦安の産んだロックスター、光村龍哉率いるNICO Touches the Wallsです!」とでも言っておかないと、誰よりも当時の自分に面目が立たなかったのだと思う。

定刻の17時を迎えると、ステージ背後のスクリーンにプロジェクションマッピングを駆使したオープニング映像が流れる。メンバーが登場し、ライヴの1曲目に披露された”新曲”のイントロでは、光村が手回しサイレンを鳴らし、リズム隊・対馬祥太郎(Dr)と坂倉心悟(B)が地響きのような重めのビートを刻む。この曲を聴くと必ず頭に浮かぶキーワードが私にはあった。それは『捻くれ者』。それこそ「孤独と夜」を歌っていたインディーズ時代から既に10年以上が経つが、バンドの根本的な部分は変わらないのかもしれないと、このツアーで気づかされてきた。引き続き、”B.C.G”、 ”そのTAXI,160Km/h” と衝動的で尖ったナンバーが続くと、観客のテンションは既にMAXを迎えたかの様な盛り上がりを見せ、そこに疾走感溢れるギターロックナンバー”バイシクル”の登場で、ヘヴィな空気が一変。会場は明るくなり、”手をたたけ”が投下されるとさらに賑やかな雰囲気になる。そう言えば、このツアー中に聴いた”手をたたけ”で私は何度か涙腺をやられたが、浦安でもやられてしまった。

一旦MCが入ると、一気にFighting NICO ツアーの核心へと突っ込んで行く。夢の世界で生まれた曲”夢1号”と、心の葛藤を歌う”Diver”は、照明演出が素晴らしい。ムーディな空間の中で幻想的な風景や主人公の心情描写を光村は色っぽく歌い上げ、サポートメンバーである浅野尚志(Key,Vn,G)の鍵盤によって、バンドサウンドには厚みと深みが生まれ、成熟を一番強く感じさせられた2曲だった(”夢1号”のコーラスワークも然り)。そして、”GUERNICA” 、”Aurora(Prelude)”、 ”TOKYO Dremer”と連なる金字塔が建てられる。この3曲については、過去ブログでも散々書いてきたので割愛するが、個人的にはロームシアター京都で聴いた”GUERNICA” の方がアンサンブルに躍動感があったと実感していて、浦安公演では全体的にソフトな印象を持った。

ここまでは、前回観た京都公演と同じ内容。でも、次は浦安公演のハイライト、光村が浦安の景色を歌ったという”ランナー”が披露される。アコースティックギターを抱える光村。彼が10代の頃に作った素朴なメロディに乗る歌詞の一人称が<俺>であることに、ふと「あぁ、背伸びしたい年頃だったのだろうなぁ」と、少しこそばゆい気持ちになる。スピッツの”ロビンソン”に感銘を受け、自分でも曲を書こうと思い立った光村は、この浦安という街で、音楽への純粋な憧れだけを胸にいっぱい抱え過ごしていたのだろう。しかし、あれから15年以上経った今は、音楽が憧れだけでは続けていけない現実を知っている。それでも諦めることなく、当時憧れていた東京の街で、今も戦い続けている。

聴かせることに重点を置いていたようなライヴ中盤だった。そして後半は、クライマックスに向けて、”天地ガエシ”からの”MOROHA IROHA”、"妄想隊員A" とバンドは一気にヴォルテージを上げるのだが、かつての<俺>を<冴えない僕ら>と歌い、<この声が嗄れたって/消せない歌届けたいよ>と、あまりに切実過ぎる想いを曝した”渦と渦”で、私の涙腺は崩壊した。Fighting NICO ツアーのコンセプトは強いて言うなら『好き放題』。だからこそ、メンバーは何かに囚われることもなく自由に演奏していたと思う。ただ、この時は確かに(それまでステージでは姿形を見せなかった)彼らの歩んできたバンドストーリーが、一気に弾けだした気がした。ニコの歌ってきた<僕>は、様々な局面で覚悟を決めてきた<僕>なのだ。

”新曲”で始まったFighting NICO ツアー浦安公演は、また別の”新曲”で締め括ることになる。古村大介(G)の鳴らすギラついたギターのリフから始まるこの曲の聴き所は、光村の気まぐれな指カウントの数でメンバーがキメるという、観ている側もハラハラしてしまう挑発的な間奏部分。あれはアレンジで遊ぶのにも程がある(笑)。それこそ『好き放題』というツアーコンセプトを強く表している曲であり、これがNICO Touches the Walls というバンドの本来の姿、いやバンドのアイデンティティなのもしれない。

アンコールの1曲目の”波”は、浅野を呼ばすにオリジナルメンバーの4人で披露された。この曲は「俺が思う浦安っぽい曲」として、光村が選んだ曲で、偶然だがこの曲の一人称も<俺>。哀愁漂う歌と演奏にノスタルジーを感じてしまい、聴いていくうちに、今度は私自身の学生時代の記憶が紐解かれてしまう。そして浅野を呼び寄せ、ホール公演の名物でもあった、古村ギターと浅野ヴァイオリンのソロ対決も行われる”THE BUNGY”へ。最終ステージでは両者見事な熱演を見せ、レフェリーに扮する光村の勝敗は2人に捧げられた。

最後のMCで発表されたのが、毎年11月25日に開催される「1125(イイニコ)の日ライブ」の詳細だった。今年の開催会場は、都内ではなく同県にある幕張メッセ。例年のチケット争奪戦を考慮して「皆が来れるように」と選別した会場だそうだ。しかし、Fighting NICO ツアーファイナルのステージで、ようやく地元千葉県浦安市に帰って来きたニコが、年に一度のお祭りであるイイニコも同県にある会場で行うこととなったその裏側には、『バンド結成13年目、メジャーデビュー10年を迎える2017年に、全ての始まりの場所千葉でライヴを行う』というもう一つの目的の存在も考えられる。つまり、2017年はニコにとって本当の意味での原点回帰になるのだろう。光村は特別言葉にはしなかったが、バンドが大きな節目を迎えていることは間違いない。

結成から13年の間に着々と増え続けている引き出しの中身を引っ張り出すと、そこには自問自答を繰り返す中で生まれた、多種多様なマスターピースが揃っていた。その中から今のバンドのモードに相応しい曲を手加減なく放出したツアーが、Fighting NICO ツアーである。『好き放題』というコンセプトであるが故、ステージを重ねる毎にメンバーのリミッターはどんどん外れてしまい、本当に自由な姿で音楽と向き合えたからこそ、ステージから漲る自信と、会場一帯を包む肯定感、そして終始一貫の祝福に、浦安市文化会館は満ちていた。だからこそ、ライヴを締め括った最後2曲、信じることの大切さを歌った”ストラト”と、<あとはぜんぶ自分次第>と歌詞を変えた”マシ・マシ”は、観客以上に、歌詞の世界を体現し続けているメンバーの心にこそ、深く響いたのではないだろうか。このライヴは誰のためのライヴだったかと聞かれたら、私は間違いなくメンバー自身の為のライヴだと答えるし、それで良いと思うのだ。だって、誰よりもこの日を待ち望んでいたのは、メンバーなのだから。

「浦安の産んだロックスター」には、最初、笑ってしまったけれど、私はそんな光村を間違いなくロックスターとして見ていた。ライヴ中に何度も片手でエレキギターを掲げた光村は、その時、勝者の顔をしていて、誰が何と言おうがロックスターの顔だった。これから先、ニコはどんな楽曲を生み出すのか。バンドの性格を考えると、こちらの予想を大幅に裏切ってきそうだけど、いちいちバンドに振り回されてしまうことこそが、ニコリスナーとしての醍醐味である。そう気づかされたのも、Fighting NICO ツアーがあったからだ。つまり、それが私は楽しみで仕方がない。


☆☆☆

set list
1 新曲
2 B.C.G
3 そのTAXI,160km/h
4 バイシクル
5 手をたたけ
6 夢1号
7 Diver
8 GUERNICA
9 Aurora(Prelude)
10 TOKYO Dreamer
11 ランナー
12 天地ガエシ
13 MOROHA IROHA
14 妄想隊員A
15 渦と渦
16 新曲

encore
1 波
2 THE BUNGY
3 ストラト
4 マシ・マシ

☆☆☆

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# by musicorin-nirock | 2017-08-05 08:41 | LIVE | Comments(0)

NICO Touches the Walls TOUR 2017 ”Fighting NICO” LIVE REPORT ③(4/30 ロームシアター京都)

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平安神宮の大きな赤い鳥居を潜り抜け、てくてくと歩いていると見えてきた、旧京都会館ことロームシアター京都。個人的に京都は何度も遊びに来ている場所だが、ライヴと言う目的では初めての来都となる。

本来ならば、4月2日の東京NHKホール公演で、私自身のNICO Touches the Walls TOUR 2017 “Fighting NICO”のツアーファイナルを迎えるはずだった。しかし、3月11日に長野公演を観終えた時点で京都行きを考え始め、結局、チケットを取ってしまった。

座席を確認すると「3階バルコニー席」とある。このバルコニー席というのは、場合によっては封鎖してしまうこともある場所だ。実際に私の座った席は、視界の左手にメンバーの立つステージ、その反対には2階・3階席が見え、眼下には1階席が広がっている。立ってライヴを観れないこともないが、高所恐怖症の私は着席スタイルで、基本的にステージの方向に体をねじりながらライヴを観ていたのだが、出来心でライヴ中何度か反対側を振り返ってみた。すると「そうか。ステージにいるメンバーは常にこういった景色を眺めているのか…」と、メンバーが日々目にしている光景がダイレクトに理解できたと同時に、普段自分もそこに座る一人であるがゆえ、今までつい癖で腕組みしながらライヴを観ていたことを、猛反省したのは言うまでも無い(笑)。

また、オープニングのプロジェクションマッピングとレーザー演出を始め、かなり凝った演出が楽曲ごとに施されていたFighting NICO ツアー。これは一階席よりも確実に、ホールの上階席から観た方が、立体感ある光と映像の世界を思う存分堪能できるものだと感じた。波打つようにグラデーションする照明が、幻想的な世界へ客席丸ごと導いた”夢1号”や、”TOKYO Dreamer”の曲中で、左右対称に放射される無数のレーザー光線が交差し合うシーンが特に印象的だったが、この日の優勝はやはり、曲の前半と後半でピンクからグリーンの照明に変わる様が、春から初夏へと移り変わりを描いた4月最後の”April”。

MCが一度入っただけのほぼぶっ通し状態の本編から、アンコールまで駆け抜けたニコ。光村龍哉(Vo&G)の歌といい演奏といい、4月の東京・NHKホール公演から見違えるほど良くなってる。噂には聞いていたが、新たに”B.C.G”がセトリに組み込まれていた。フロアを威嚇するかのようなエレキの音色で古村大介(G)がイントロを鳴らせば、対馬祥太郎(Dr)の野性的なドラミングと、絡みつく坂倉心悟(B)のベースラインがフロアに熱風を吹かし、こちらも圧倒されてしまう。ツアーも残すところ今公演と追加の千葉・浦安公演のみ。脂の乗り切った状態で迎えたセミファイナルのステージは、サポートメンバーに加わった浅野尚志(Key.Vn.G)も、前のめりなヴァイオリンを”GUERNICA”では奏でており、対馬が全力振り絞る”MOROHA IROHA”のドラムソロも、過去4箇所観てきた中でもベストアクトにふさわしい出来だ。どの曲の、どこの場面を切り取っても、常にライヴのピークを迎えているようで、少しおとなしめに見えた京都のお客さん達は、勢いのままに突っ走ったニコに着いてくることができたのかと、少し心配にもなった。

京都公演の2週間前(4月16日)に、ニコは佐賀GEILS公演で全国47都道府県ライヴ制覇を達成。バンド結成13年目、メジャーデビュー10年目にしてようやく迎えられたこの日を区切りに、再び走り出した直後の凄まじいライヴを目の前にした私は、本来ならファイナルである場所京都で、一旦、ツアーにピリオドを打とうとしているのだと思った(また、そうでもしないと浦安のステージには立てなかったのだろうということも、後日しみじみ納得するのだが)。そして、アンコールでのMCで、光村が言い放った「好きな音楽をやっているミュージシャンはかっこいい」という言葉は、好き放題やってきた自分達への自負と、これからの決意の表れに聞こえた。光村曰く「好き放題やっている」Fighting NICO ツアーで「自分達はこれでいいんだ」と受け入れ肯定できた瞬間が、メンバーそれぞれにあったはず。そしてまさに京都公演が「そんな瞬間だらけ」だったと強く思った私自身も、その場に立ち会えたことが、ファンとしてこの上ない喜びだった。

***

setlist
1 新曲
2 B.C.G
3 そのTAXI,160Km/h
4 バイシクル
5 手をたたけ
6 夢1号
7 Diver
8 GUERNICA
9 Aurora(Prelude)
10 TOKYO Dreamer
11 エイプリル
12 天地ガエシ
13 MOROHA IROHA
14 妄想隊員A
15 渦と渦
16 新曲

encore
1 THE BUNGY
2 ストラト
3 マシ・マシ
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# by musicorin-nirock | 2017-07-19 22:27 | LIVE | Comments(0)

NICO Touches the Walls TOUR 2017 “Fighting NICO” LIVE REPORT ②(4/1-2 東京NHKホール)

東京都・渋谷にあるNHKホールでNICO Touches the Wallsのライヴを観るのは2013年に開催された全国ツアー『Shout to the Walls!』以来、約4年振りのことだった。

4月1日2日の2日間に渡り開催された、TOUR 2017 ”Fighting NICO”(以下Fighting NICOツアー)NHKホール公演。初日のチケットはソールドアウトが発表され、メンバーは嬉しい事実を胸に、気合い十分漲らせていたのだろう。オープニングからリミッター振り切る勢いで、フロアに畳み掛けてくる。

特に古村大介(G)は、終演後には燃え尽きてしまうんじゃないかと心配になるほどの、躍動感あるギタープレイで魅せていった。フロントマン光村龍哉(Vo&G)とは別の位置からフロアを牽引し、誰よりも高いテンションのまま突き進む。一昨年には右手首を負傷するアクシデントにも見舞われたが、それ以降の古村の変化/成長のスピードは速い。このツアーでもギタリストとしての覚醒が、ステージの回数重ねる度に繰り返されていると気付く場面が多かった。

シングル曲を中心に、初期楽曲から最新曲までを網羅するセットリストには、無意識のうちにニコの軌跡を振り返ってしまう瞬間も訪れ、感慨深い気持ちに駆られるときもあった。しかし、今回もサポートメンバーである浅野尚志(Key,Vn,G)がメンバーの一員となったことで、馴染みの曲にも新しいエッセンスがじゃんじゃん加わり、私達が知っている方向には進まないから面白い。光村の成熟された歌声からも、曲のリリース当時の歌声とはひと味もふた味も違う魅力が味わえた。

愛知では、”GUERNICA”の後に”錆びてきた”→”アビダルマ”が入り、坂倉心悟(B)と対馬祥太郎(Dr)が一旦ステージ袖に掃けると、光村の歌と古村のエレキギター、そして浅野の鍵盤のみで”Aurora(Prelude)”を披露。しかし、この日は”GUERNICA”→”Aurora(Prelude)”→ ”TOKYO Dreamer”という曲順に変更され、坂倉と対馬もステージに残ったままだ。

NHKホール公演の前に観た長野も同じ曲順だったが、途中でライヴ中断があったために、完全に3曲通したライヴは初見。しかも、ここで私は強烈なインパクトを受けてしまった。曲間をうまく繋ぎ合わせたアレンジが施され、音楽性も歌詞の世界観もバラッバラな3曲なのに、不思議な一体感が描かれていたこと。同じメンバーが演奏しているから当然と言えばそれもそうだが、ニコはかなりディープな部分をステージで曝け出し、正に「バンドの神髄」のようなものを私は観た気がしたのだ。

***

そして翌日(4月2日)は後半の2曲だけ入れ替わり、前日とは殆ど変わらないライヴ内容だったのだが、それが功を奏したのか、時間を空けずに同じライヴを観たことで、今回のツアーの魅力が面白いくらい、浮き彫りになってきた。

場内が暗転するとサイレン鳴り響く”新曲”から、フロアに噛みつくよう”チェインリアクション”を投下し、色気で魅せる”そのTAXI,160km/h”へと続く。すると、攻撃的な姿勢から一転、浅野もギタリストで参加した疾走感溢れる”バイシクル”で、わっと会場が明るくなり、次に始まったのは”手をたたけ”だ。自然と沸き起こるハンドクラップに応えるよう光村が歌い出すと、会場に溢れかえる多幸感と祝福感。このとき、予想外にも私はグッときてしまい、しかも、つい最近のニコのライヴでも、同じような光景を観ていたことを思い出した。

そのライヴとは、昨年11月25日に開催された『1125の日ライブ』だ。インディーズ時代に発表した2枚のミニアルバムを再構築するというテーマを設け、孤独と夜の世界を再現させる、近年稀にないヘヴィなライヴをニコは繰り広げたのだ。しかしアンコールでは、バンド結成から10年以上掛けて開拓した新境地”マシ・マシ”と”1125のテーマ”を披露し、ライヴ本編にはない圧倒的なポジティヴなエネルギーで、ライヴハウスを力いっぱい包み込んだ、まさにあの光景と重なってしまったのだ。

前日の余韻もさることながら再び観ることとなった、”GUERNICA”→”Aurora(Prelude)”→”TOKYO Dreamer”の3曲は、極端な話、このパートさえ観れば「NICO Touches the Wallsとはどんなロック・バンドなの?」という疑問も解決出来るほど重要なパートであり、セトリの核と言ってもいいだろう。

浅野のヴァイオリンが加わるだけで、威風堂々とした風格を漂わす”GUERNICA”は、バンドのマニアックな側面の象徴。オーロラカラーのレーザーに包まれ、光村の歌に大きくスポットが当たる”Aurora(Prelude)”は、楽曲が生まれる場所=ニコの原点だ。そして、その後の”TOKYO Dreamer”は、オルタナティヴな”GUERNICA”とは対極にある場所、メインストリームで戦うバンドの今の姿。

別記事にも書いたが、Fighting NICOツアーのセトリは、ニコの明るい側面も暗い側面も、王道もマニアックも、偏ることなく並列された内容だ。ライヴの前半を振り返って見ても、オープニングからの3曲と、後の2曲とはトーンもテンションも明らかに違うのだが、ニコは『対極にあるモノ同士が共存する特異な音楽性こそが、自分達のオリジナリティーであること』をこのツアーでは提示し続けている。かつてはこの性質を「宿命」として、重たく背負い込んでいた印象もあったが、今、目の前のステージに立つ4人と浅野からは、シンプルに「本当に音楽が好きでやっているロックバンド」にしか見えない。そして、なぜそう見えるのかと言うと、ニコはすでに別ステージに上がり、新たに進むべき道を行き始めていたからだと思う。愛知公演のとき、散々聴いてきた”天地ガエシ”で、めちゃくちゃ感動してしまったその理由も一頻り考えてみたのだが、最終的には辿り着いた答えもこれだった。

アンコールでは「今回のツアーが好評で」という前置きのあとに、彼らの地元である千葉・浦安市での追加公演も発表。バンド結成から今日までを深く思うと、ハラハラと涙が零れた。バンド史上一番良い状態で、かつ確実にメンバーは手応えを感じながら、全国各地を回っているFighting NICOツアー。私は行く予定のなかった京都ロームシアター公演へ行く事を心に決め、おこがましいようだが、日本中のロックバンドリスナーがこのツアーを観るべきだと思いつつ、会場を後にした。

***

setlist(4月1日・2日 東京NHKホール)
1 新曲
2 チェインリアクション
3 そのTAXI,160km/h
4 バイシクル
5 手をたたけ
6 夢1号
7 Diver
8 GUERNICA
9 Aurora(Prelude)
10 TOKYO Dreamer
11 April (2日 ブギウギルティ)
12 天地ガエシ
13 MOROHA IROHA
14 妄想隊員A(2日 Broken Youth)
15 渦と渦
16 新曲

encore
1 THE BUNGY
2 ストラト
3 マシ・マシ
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# by musicorin-nirock | 2017-07-14 12:00 | LIVE | Comments(0)

NICO Touches the Walls TOUR 2017 “Fighting NICO” LIVE REPORT ①(3/5愛知県芸術劇場・3/11長野CLUB JUNKBOX)

「これはすごいツアーになるぞ。」

3月5日。愛知県芸術劇場にて開催されたNICO Touches the Walls TOUR 2017 “Fighting NICO”(以下Fighting NICO ツアー)が終演し、急ぎ足で乗り込んだ新幹線の中で思った。彼らのライヴに通い始めて今年で5年目を迎えるが、今まで観てきた数々のライヴの感動を覆すくらいの衝撃と興奮が体中を巡っている。

「彼らのステージでは滅多に披露されない曲が、次々と投下されたセットリストだったからだろうか?いやいや。あのレーザー演出を駆使したオープニングに斬新さを感じたからだ。…う~ん、それより何よりタイトルすら未確定の新曲でライヴの幕を開け締め括るという、自ら爆弾を放り投げるようなことをするなんて」。のっけから新曲を挑発的に畳み掛けてきたその姿は、世間に対して中指を立てた捻くれ者。そう、彼らのインディーズ時代の楽曲に通ずるものを強く感じていた。

だからこそ、ライヴ中に思い出したこともある。昨年リリースしたアルバム『勇気も愛もないなんて』以降「明るい歌を歌いたい。自分が歌っていて楽しい曲を歌いたい」と光村龍哉(Vo&G)が公に話し始めたことだ。

かつての私だったらきっとここで、矛盾を指摘したかもしれない。
けれど、そんなことびくとも思っていない。

愛知のライヴで一番感動した曲がある。それはレア曲でもなく新曲でもない。近年、観てきた彼らのライヴで、聴かない時はほどんどなかったであろう“天地ガエシ”だった。ギターを弾く手を止め、両手を大きく広げ天井を仰ぐように歌う光村の姿が観えたときには、リベンジ掛けて自らにムチを打ち続けた世界とは全く違う世界が広がっていた。のびのびと気持ち良く放たれた歌声は、会場一帯を澄み切った青空に塗り替えたのだ。

例えこの日しかツアーに参加できない状況に居たとしても、後悔はないだろうと思った。急遽ライヴ参加を決め、手に入れたチケットの座席は4階席。念のためサッカー観戦用の双眼鏡を持参したが、ライヴが始まってしまえば、案の定、バッグの中へと押し込む始末。遠く離れたステージに立つ5㎝ほどのメンバー光村、古村大介(G)、坂倉心悟(B)、対馬祥太郎(Dr)、今回特別にサポートメンバーとして加わった浅野尚志(Key,Vn,G)の5人で鳴らす音さえあれば、それ以外のものは必要ないと思えるほどに、ステージから溢れる音の力に圧倒されてしまっていた。

***

set list(3月5日 愛知県芸術劇場)
1 新曲
2 チェインリアクション
3 そのTAXI,160km/h
4 ビッグフット
5 バイシクル
6 Endless roll
7 夢1号
8 GUERNICA
9 錆びてきた
10 アビダルマ
11 Aurora(Prelude)
12 TOKYO Dreamer
13 天地ガエシ
14 MOROHA IROHA
15 渦と渦
16 新曲

encore
1 マシ・マシ
2 THE BUNGY
3 ランナー


***

Fighting NICO ツアーでは後日発表された追加公演を含め、ライヴハウスとホール、合わせて全国20箇所の会場を巡る。ツアー初日(2月21日)はライヴハウス、HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3で迎え、ホール公演の初日となったのが、先の愛知県芸術劇場。今回、私が唯一参加したライヴハウス公演が、3月11日開催の長野CLUB JUNKBOX公演。キャパ400人クラスのライヴハウスでニコを観ること自体が久しぶりで、この日をとても楽しみにしていた。

場内が暗転すると、目の前にある頭と頭の間からひょっこりメンバーの上半身が現れる。ライヴハウスでは浅野を呼ばずに4人でステージに立ち、光村がサイレンを鳴らす”新曲”でライヴはスタート。対馬の力強いドラムと坂倉の爪弾く低音が、地響きのように体に伝わってきた。会場であるJUNKBOXは天井が低い。だから、ステージから沸き上がる熱量と、観客が密集するフロアとの熱量はあっという間に混じり合い、とにかく暑い。

セットリストにも変化が見られた。前半から“バイシクル”→“THE BUNGY”→“Diver”と歴代シングルが続き、しかし、約10分近くもある“GUERNICA”がセトリの重鎮であるかのように異色を放ち登場。気まぐれの選曲ではなかったようだ。

すると「ジリジリジリジリ!」と当然、大音量で鳴り響く警報音。

新曲でサイレンを鳴らしたニコである。始めはライヴハウス用の演出の一つなのかと私は勘違いしたが、異変に気付いたメンバーは演奏をストップ。「どいてください!」と声を上げる1人のスタッフが、観客をかき分けステージ袖へと駆けつけた。原因は、ステージに炊かれたスモークが火災報知器に反応してしまったことだった。電源が元に戻るまで数分時間を要したが、見事にバンドは持ち直し“GUERNICA”の間奏部分からライヴは再開。そして、“Aurora(prelude)”を光村がエレキ一本で弾き語った後に“TOKYO Dreamer”へと続いた。

あの時、ヒヤっとした気持ちが先走り、思わずスマホを覗き込んでしまったのは、この日でちょうど東日本大震災発生から6年目を迎えたからだ。2011年3月11日を境に、明らかに意識が変わってしまった私にとっては、ステージ上のトラブルだったとは言え、あまり笑えない出来事でもあった。

日本中の人が傷付き、今でもなお哀しみを抱え生きている中で、3月11日にライヴをするとなれば、選曲にしても、MCの言葉一つに選ぶにしても、普段のライヴ以上に慎重になるだろう。しかし、復興を謳うライヴではないし、本来のツアーの趣旨を曲げることのない内容であったが、日常を慈しむ歌詞が胸を打つ“April”がツアー初登場の場であったことや、アンコール1曲目には震災を経て生まれた曲“手をたたけ”が披露されことから「特別な想い」が感じられた。そして、アンコール時のMCで光村は「自分が今伝えるべきこと」を話したのだ。

『今日で震災から6年目を迎え、歌詞を噛み締めながら歌っていた。そして、どの歌も自分に向けて歌ってきたんだなって気づいた。こうして人前に立つ仕事をしているし、リア充に見えるかもしれないけれど、ステージに立ちたくない日もあるし、一日寝ていたい日だってある。(自分は)教祖でも何でもない。でも、こういう気持ちを歌にしてきたんだなって。そして、それが聴いている皆の力になるならそれでいい。音楽はそういうものだと思っている。俺たちは好きな音楽をやっていくから、みんなも好きなことをして。きっとうまくいくから』(注:要約してあります。)

アンコール2曲目“ストラト”が未だかつて無くリアリティを帯びつつ胸に届いたのは言うまでも無い。<金はないけど買ったスニーカー>だって、<7日そこらでなくした財布>だって、歌詞の中に全てのパーツが光村自身の姿なのだろうと腑に落ちた。普段ステージでは見せない、NICO Touche the Wallsという舞台から降りた姿をさらけ出したことで、今までにない説得力を感じさせる素っ裸な“ストラト”だった。

ライヴ中断によって確実に時間を喰っていただろうし、“ストラト”前のMCの内容からして、今回のアンコールは2曲で終わるものだと観客のほどんどが思い込んでいたと思う。しかし、そんな残念な気持ちを遮るかのように、突然マイクを握りしめた光村がフロアに身を乗り出し、“マシ・マシ”を歌い始めた。古村の軽やかなエレキを伴走に、楽器を下ろした坂倉と対馬も光村の隣でハンドクラップしながら、<あとはきみしだいです/あとはきみしだい>と観客と一体になり歌っている。

…この距離感の近さは、今までのニコのライヴで感じたことのない類いの近さだった。当然、先日4階席から観たときよりも、狭いライヴハウスの方がメンバーとの実質的な距離は近い。だが、そういうものをニコは観客に見せたいのではないような気がした。”マシ・マシ”を歌とギター一本に絞った理由は「曲の本質部分で観客と繋がりたい」という願いがあったのだろうと思った。

***

set list(3月11日 長野 CLUB JUNK BOX)
1 新曲
2 チェインリアクション
3 そのTAXI,160km/h
4 バイシクル
5 THE BUNGY
6 Diver
7 夢1号
8 GUERNICA
9 Aurora(Prelude)
10 TOKYO Dreamer
11 April
12 天地ガエシ
13 MOROHA IROHA
14 Broken Youth
15 渦と渦
16 新曲

encore
1 手をたたけ
2 ストラト
3 マシ・マシ

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# by musicorin-nirock | 2017-06-11 22:32 | LIVE | Comments(0)

GRAPEVINE NEW SINGLE「Arma」RELEASE !!

6月7日、GRAPEVINEデビュー20周年記念シングル『Arma』が遂にリリース。


(↑対バンツアー『GRUESOME TWOSOME』5/21 新潟LOTS公演にて撮影。“Arma”の歌詞ボード)

特に、2番Aメロの歌詞がお気に入り。
初めてラジオで聴いたときも、
先日の対バンツアーで聴いたときにも、
必ずここで涙ぐんでしまった。
直接的な言葉が連なっているわけではないが、
それでも「GRAPEVINEまはまだまだ続いて行く」ということが、
このたった4行のフレーズでわかる。
これが溜まらなく嬉しいのだ。


GRAPEVINE 『Arma』

2曲目の“Shame”の作詞作曲は久しぶりにVo&G田中和将。
相変わらず鋭い視線で世の中を達観する歌詞。
リズム隊はかなりタイトで、アンサンブル自体もとてもシンプル。
しかし、じわりじわりと伝わる熱量が、聴き手に高揚を与える。
こちらはライヴで聴くのが非常に楽しみ。
王道を行く“Arma”とは対になるような1曲。

Arma [20th Anniversary Limited Edition]

GRAPEVINE/ビクターエンタテインメント

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限定盤にはボーナストラックとして“Big Tree Song”(高野寛さんRemix Ver.)と“SPF”(STUTSさんRemix Ver.)も収録。

Arma

GRAPEVINE/ビクターエンタテインメント

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# by musicorin-nirock | 2017-06-08 22:31 | MUSIC | Comments(0)

8/26 IN A LIFETIME 2016 Presents GRAPEVINE × TRICERATOPS @ 東京・渋谷NHKホール

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2014年にGRAPEVINEはセカンドアルバム『Lifetime』のリリース15周年記念として、アルバムの再現ライヴを行った。そして、2016年にはその第2弾として、1998年にリリースのファーストアルバムの再現ライヴ「IN A LIFETIME」を、バインと同じ1997年にデビューを果たしたトライセラトップスと共に対バンツアー形式で開催。

私は8月26日東京・渋谷NHKホールで迎えたツアー初日と9月10日大阪・オリックス劇場、そして追加公演である9月17日東京・お台場Zepp DiverCityの3公演を観に行ったのだが、今回は初日のNHKホールのライヴについて書いていこうと思う。

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先行はトライセラトップスだ。

バンド名がタイトルとなった彼らのファーストアルバム『TRICERATOPS』。20代男子のリアルな恋愛事情が綴られる全10曲には、当時流行っていた髪型(”彼女のシニヨン”)や、好きな女の子のライターに見知らぬ男とのプリクラが貼られていたり(”オレンジライター”)と、90年代後半のファッションや文化を感じさせる楽曲に目を引かれるが、40代を迎えたトライセラが歌い演奏する『TRICERATOPS』の楽曲群は、不思議なことに、どれもこれもが大人のラヴソングとして聴こえてきた。

一番変化したのは和田唱(Vo&G)の歌声だ。恋愛の甘さも苦みも知っているからこそ、男らしくセクシーに歌い上げ、佇まいもジェントルマン。ギタリストでもある彼は、味のある音色でギターを鳴らし、唯一無二の存在感でオーディエンスを魅了する。そして林幸治(B)の重厚感あるベースと吉田佳史(Dr)によるワイルドなドラミングと共に爆走。疾走感溢れる骨太ギターロックからデビュー曲”Raspberry”に代表されるディスコまで、デビュー当時から一貫して崩さなかった姿勢は、トライセラ流の成熟されたロックン・ロールとなり盛大に響き渡る。

和田は、コール&レスポンスやハンドクラップを積極的にオーディエンスに求め、ライヴの舵を取ってゆく。林も手が空けばハンドクラップをしたり、吉田もスティック握る手を振り上げフロアに合図を送ったりと、客席とのコミュニケーションを何よりも大切にしている。それはMCでも言えることで、和田の軽妙なトークに会場が沸くと、さらにタイミング良く吉田が絡み、再び会場は爆笑の渦。そんな2人を止めようとしない物静な林なのだが、何か話題を降られ話し始めると、笑いを取る確率はほぼ100%(笑)。基本的に3人ともサービス精神旺盛な性格なのだろう。細部にまで拘り抜いた、お客さんを1人残らず楽しませようとする「パフォーマンス力」のレベルはかなり高い。

そんなトライセラにも、数年前には存続危機が訪れていた事もある。バンドを長く続けていく上での苦労やネガティブなものをステージ上では曝け出すことはないが、過去を乗り越えファーストアルバムの再現ライヴを行ったことは、リスナー以上の感慨深さが彼らにはあったと思う。今回の見事なステージは、困難な時代を経たことで磨かれた賜物であり、だからこそ今のトライセラをより輝かせ、私達の目には魅力的に映るのだろう。

そして後攻GRAPEVINE。

ファーストアルバム『退屈の花』の1曲目”鳥”からライヴはスタートした。18年前(2016年当時)よりも柔らかくなった田中和将(Vo&G)の歌声と、落ち着いた物腰で鳴らされるあたたかなサウンドが響き渡ると、会場一体が多幸感でゆったりと包み込まれていく。まるで古いダイアリーを1ページ1ページ読み返すような丁寧な演奏が続き、MCもほどほどに黙々と演奏するメンバー。しかし次第に最近のライヴにはない独特な空気が広がり始める。

田中もMCで話していたが『退屈の花』は、当時の自分達を大人っぽく見せようとして作られたアルバムである。ブラックミュージックやルーツロックを主軸とする渋い趣味嗜好の楽曲が連なっているが、若者らしい視点で田中が綴るまだまだ青い歌詞からは、彼らが生きた1998年が色濃く残り、過去作品の中でも群を抜いてノスタルジー色が強いという一面もある。

現在バインはオリジナルメンバーである田中、西川弘剛(G)、亀井亨(Dr)の3人とサポートメンバーの金戸覚(B)、高野勲(Key)が加わった5人編成で活動しているが、彼らはステージ上にかつてのメンバー西原誠(B)の気配を感じさせる「4人のサウンド」として完全に成立させてしまっていた。実際は、色々と小細工を仕掛けていたことを後日確認したが、当時の音作りやアレンジを新たに塗り返すことなく、かなりの割合で似せて再現しているのではないかと思うほどに、初回に観た衝撃を暫く忘れることができなかった。つまり、それを再現できたことは、大人っぽく見せようとしていたアルバムをバンドは追い越すことができたからで、ラストの”熱の花”では、それまでノスタルジー一色だった客席を強引にも1998年から2016年へと引き戻すような凄まじい轟音を放ったまま、メンバーはステージを去ったのだが…観ていた側としては少し頭の中を整理する時間が欲しいくらい、いわゆる混乱状態に陥ってしまった。 


デビュー当時、バインとトライセラは「陰のバンド」と「陽のバンド」として比較されていたという。とは言え2組の最新アルバムを聴いてみても、相変わらずバインは「陰」でトライセラは「陽」。ライヴとなれば、その世界を更に深化させたものとなり、実際に立て続けにライヴを観ても、目や耳でわかる共通項はそんなに無く、本来この関係性はただの『同期』と呼ぶのかもしれない。しかし、バインとトライセラの場合、我が道を貫き前進してきたことによって独自のスタイルを創り上げた『同志』であり、そこに絶対的な自信があることを理解し合える大切な存在なのだ。メンバー総出演で行われたアンコールの最後に、田中が「是非、和田唱に歌ってもらいたい」とのことでポール・マッカートニーの名曲”Maybe I'm Amazed”が披露されたことがその象徴と言えるだろう。ロックン・ロールへの敬愛に溢れる壮大なバラードには、互いの肩を叩き合うような労いを感じ、また、長くバンドを聴いてくれているファンへの感謝や、同じ時代を生きる音楽仲間への激励とも受け取れた。

バンドを長年続けてきたことで得られた喜びや楽しさをファンと一緒に分かち合う、祝福感に満ちた、とても幸せな夜だった。どちらのバンドにも危機は訪れているし、当然今だって背中合わせである。しかし、彼らは乗り越え、地道ながらも確実に未来への歩みを止めなかった。例えば、その理由を訪ねてみたとしても「バンドしか、音楽しかなかったからだ」とあっさり返されそうだけど、こんなシンプルな答えが似合うバンド、そうそういないだろう。

そして、2017年。バインとトライセラは遂にデビュー20周年を迎えた。

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# by musicorin-nirock | 2017-06-04 10:00 | LIVE | Comments(0)

主にNICO Touches the Walls について書いておりますが、他にはGRAPEVINE と the HIATUS が好きです。記事の無断転載、引用はご遠慮ください。


by タナイユウ
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