7/22‐23 the HIATUS "Keeper Of The Flame Tour 2014"@新木場studio coast

7月22日。
"Keeper Of The Flame Tour 2014"セミ・ファイナル。ステージに立った細美武士から、私はいつも以上にシリアスな雰囲気を感じ取ってしまった。その決定的な場面は、バンドの事を話さなきゃいけないと言いつつも、自身が歩んできた今日までの道についてMCで話し始めた時だった。「超嫌われてて。友達もできなくて。ただバンドをやっているときは、周りに人がいて…」その時、自分の存在価値を見いだせた唯一の存在が音楽であった彼にとって、現在活動中のELLEGARDENがどれだけ大きな存在であったかを改めて思い知り、胸が痛んだ。

雑誌等で自身の過去について触れる発言を時々見かけてきたが、自ら進んで話すことがまずない。そんな細美が直接オーディエンスの目の前で話してくれた事は初めてだと思う。ここからはあくまでも推測になるが、彼がthe HIATUSのメンバーと巡り会い、強い信頼の元作り上げた"Keeper Of The Flame"。このアルバムを引っ提げ回ったツアー中に何か大き心境の変化があったからだろう。ただ、笑顔よりも必死に戦い抜いた表情であった細美の印象が強いのは、今日このステージに立つまでに、壮絶な自分との戦いがあったことを私は感じずにはいられなかった。

しかし、戦い抜いた先に一番手にしたかったものがあった。マイク越しに「音楽こそ、我が人生だ。」と話したのだった。細美の音楽を愛する者にとって、こんなにも嬉しいことはない。絶望の淵から這い上がった彼からの言葉に対して、「おめでとう」という言葉が自然と出てきて、ただ、涙を堪えるのに必死だった。

そして、彼が手にした自らの使命が7月22日のステージだった。哀しみも、怒りも、全てが大きな喜びに変化し、ライヴハウス中が幸福でいっぱいに満たされていた。自分の心が満ちていく瞬間というものが、何度も何度も訪れた。音楽の無限大の力そのものを体感したライヴは生涯で初めてだった。



7月23日。
"Keeper Of The Flame Tour 2014"ファイナルのステージは、「最後だから」という感慨に浸っている暇などなかった。前日、細美の枯れた声から喉の調子はなかり辛そうであったが、声のハリ、響き、全てが違うのだ。バンドの音も、佇まいも、恐ろしいほどに攻撃的だ。ツアー中、至る所で「大変ですね。」と心配されたらしいが「ずっと言ってやろうと思っていた。そんなの楽勝だ!」と細美は言い放った。

5月から始まった"Keeper Of The Flame Tour 2014"によって、アルバム”Keeper Of The Flame”の世界は確実に肉体感を増し、革新的な音の世界はさらに研ぎ澄まされていた。それはまるで一つの生命体の様であり、生々しくその温度をオーディエンスに直に感じさせながら、スタジオコーストを熱狂の渦に巻き込む。40本のツアーの記録一部始終が刻み込まれた壮大なサウンドは、アグレッシヴに攻め続け、41本目のファイナルステージで遂に爆発させる。

私は、ライヴDVD「2009.07.21 Trash We'd Love Tour Final at Studio Coast」の細美の様子を鮮明に覚えている。「自分は今ここに居ていいのか。目の前にいるオーディエンスを信頼していいのか。」必死に堪えている不安と迷いは、画面を通じで胸が苦しくなるほど伝わってきた。そして、必死に彼をを支えるが如く演奏し続けるメンバー。ちょうど5年前の7月、同じスタジオコーストでの出来事だ。

しかし、今はその逆だ。自分自身を取り戻した細美の先頭切ってバンドを引っ張る姿が見える。それを誰よりも喜ぶ、共に戦い音を鳴らし続けてきた最高の仲間がいる。

the HIATUSのサウンドが解放感に溢れ、自分が自由に楽しみたいように体を動かせるのは、細かなリズムを一つたりとも逃さない、柏倉隆史のドラムが生み出すビートであり、ロックにクラシックのベールをかけ、より芸術性の高い音の世界に仕立てるのか伊澤一葉の鍵盤。時に泣き、時に絶叫し、感情そのものをかき鳴らすmasasucksのエレキギター。そしてまるで彼の懐の深さを響きだしたようなウエノコウジのベース。この4人のハーモニーの上に細美武士のヴォーカルが重なり、いつにもまして表情豊かな歌声に心が震え、放つ言葉とサウンドが一つになったとき、身がもだえるような感動をオーディエンスに与え続ける。細美は時折後ろを振り返り、互いを確認するかのように柏倉と伊澤を見つめて歌い、笑顔のウエノに寄り添いギターを奏で、masasucksとは熱い友情の証をグーパンチで私たちに見せた。

彼らのそんな様子はただの仲良しバンドではなく、切磋琢磨する中で生まれた信頼であり、the HIATUSのサウンドがこの5人でしか創造できない「必然」が生み出した,ミクスチャーな音の世界であることを証明してくれたのだ。そこから見えたものは、メンバー全員想像もつかない程の美しい光景が広がっていたに違いない。

ダブルアンコール前に発表された、12月22日、日本武道館で行われる追加公演。オーディエンスからは嵐のような拍手喝采が沸き起こった。細美武士の口から発表されたときの、その堂々たる姿を私は忘れることはないだろう。そして、彼らが歩んで来た道のりの全てを映し出したような、ラストソング"Shimmer"を全身で受け止めながら、あまりにもドラマチックなエンディングにやはり涙が止まらなくなってしまったのだ。


セットリスト(22・23共に)
1 Roller Coaster Ride Memories         
2 Thirst                    
3 Deerhounds
4 Storm Racers
5 Something Ever After
6 Horse Riding                  
7 Superblock
8 Silver Birch
9 The Flare
10 Monkeys
11 Unhurt
12 Tales Of Sorrow Street
13 Sunset Off The Coastline
14 Lone Train Running
15 Burn To Shine
16 Insomnia
17 紺碧の夜に

encore1
1 ペテルギウスの灯
2 Waiting For The Sun

encore2
1 Shimmer



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by musicorin-nirock | 2014-08-16 10:50 | LIVE

主にNICO Touches the Walls について書いておりますが、他にはGRAPEVINE と the HIATUS が好きです。記事の無断転載、引用はご遠慮ください。


by タナイユウ
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