“ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ニホンブドウカン” / NICO Touches the Walls

NICO Touches the Wallsは、2010年3月12日と2014年8月19日に、二度、日本武道館公演を行っている。そして、2015年1月7日にどちらも初の映像化となるLIVE DVDが発売された。このDVDは2010年と2014年、それぞれのライヴ別にも発売されているが、私は二枚組セットを購入した。まず率直に、今までNICO Touches the Walls を聴いたことがない人には、私はこの二枚組のDVDをお勧めしたい。有名な某CMソングに起用されたJ-ROCKの王道的なナンバーから、インディーズ時代に小さなライヴハウスで鳴らしてきたソリッドなギターロックまで。バンドの全てが一番わかりやすく、しかも耳だけではなくて目でも堪能できる、とても優れた素晴らしいLIVE DVDになっているのだ。

ただ、でもここで疑問を持つ人もいるだろう。2010年3月12日の日本武道館の映像がなぜ、今このタイミングでリリースされるのか。時は既に2015年。最初の公演からはすでに5年が経とうとしている。私自身も初めての日本武道館公演が映像化され記録として残っていないことに正直「あれ?」と思っていた。

初めに個人的な話をすると、私はこの2010年3月12日の日本武道館には足を運んではいない。バンドの事は知っていたが、本格的に音を聴くようになったのは2012年の終わりである。ただライヴを楽しみたくて足を運んだ2013年11月25日の1125(イイニコ)の日ライヴで、彼らは二度目の日本武道館を行うことを発表。そして、次の日本武道館は「リベンジ」なのだと事ある毎にフロントマン光村龍哉(Vo&G)は言い続け、遂には日本武道館のリベンジソングであり、サビで<僕らのリベンジ>とまで歌ってしまう『天地ガエシ』をリリースした。なぜここまで「リベンジ」にこだわり、がむしゃらに走り続けてきたのか。それは、実際に2014年8月19日の日本武道館のステージを観て、私の中で2013年のイイニコからの歩みが一つに繋がった(その時のライヴレポート→ http://nirock.exblog.jp/22901705/)。一曲目の“Broken Youth”のギターのイントロが鳴り響き、大きな大きな日本武道館が多幸感で包み込まれていく様は、今思い出すだけでも鳥肌が立つ。でも、この曲のイントロの裏には私の知らない物語があった。それが2010年3月12日の日本武道館であり、封印され続けていた彼らの物語なのであった。

2010年3月12日に開催された『Walls Is Auroras』は、2009年から2010年にかけて行われていた「& Auroras」の追加公演として行われた。「ダダッ」という噛みつくようなイントロの“そのTAXI,160Km/h”から始まるのだが、4人が緊張感が音に吸収され吐き出され、それが硬さに繋がってしまっていることがわかる。しかし初めて立つ日本武道館。緊張するのは当たり前なのだが、彼らはそれをぐっと押さえつけながら、ほとんど完璧に演奏をこなせてしまっている。バンドの土台である2人のリズム隊、坂倉心悟(B)と対馬祥太郎(Dr)は驚く程に安定しているし、古村大介(G)のギタープレイによって、セクシーさも渋さも見事に演出され、当時24歳のメンバーが鳴らす音としては、かなり大人びた表情をしている。また、途中声が出なくなってしまうシーンもあったが、抜群の歌唱力で歌いこなし、全楽曲の作詞作曲を手掛けた光村龍哉というシンガーソングライターの才能が認められるべきステージになっているのだ。だからこそ、この硬さが最後まで残ってしまっている印象が強く、それが開放されたのは“Broken Youth”が始まった、既にライヴも終盤の頃。客電が付き、客席から上がる歓声もこの日一番大きく、ステージ上のメンバーも安堵の表情をやっと見せている。しかし、アンコールのラストにはインディーズ時代に発表された“壁”を演奏している。決して派手ではないこの曲を選曲したことに、彼の誠実さがわかるのだが、あまりにも切なく、もの悲しく響いている。それは、まさに今初めて立った日本武道館が、彼らに立ちふさがる大きな壁になってしまったように聞こえてきてしまったからだ。だから、終演後のフロアには歓喜というものが見当たらない。彼らは素晴らしい演奏を出来たにも、巨大な日本武道館という魔物を唸らせることができなかったのだ。

彼らは2004年にバンドを結成、2007年11月にはメジャーデビュー。2nd Album『オーロラ』ではプロデューサーに亀田誠治氏を迎え、アニメやドラマ主題歌のタイアップも勝ち取った。言ってしまえばとんとん拍子だが、この『Walls Is Auroras』を観て、ただ単に「流れ」に巻き込まれていたわけではないと思った。才能があるが故にもたらした成功と挫折を、バンドの歴史に残る晴れの舞台で味わってしまったのだ。

1月10日、渋谷のタワーレコードで行われたLIVE DVD発売記念のトークショー内で「2010年の武道館を経験してから180度バンドやライヴの内容が変わった」と光村が話していたことが印象に残った。「2010年の武道館は一日4曲づつ観ていった」(光村)、「2010年のDVDを観るのには勇気がいる」(坂倉)と本音を漏らしていたし、苦い思い出ではあるのだが、確実に彼らの大きなターニングポイントになったことは間違いないのだ。そして4年後「リベンジ」を果たせたことで、過去を受け入れることができた。時間はかかってしまったが、彼らにとっては必要な時間であるし、2014年8月19日『ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ブドウカン』を観れば、彼らに与えられた勲章は誰もが手に入れる事が出来ないものであることを、実感できる。

実際に映像を観ていくと、二度目の日本武道館のステージで演奏された1曲目には、“Broken Youth”が一番相応しい。4年前にも演奏された楽曲であり、まさに4年前の映像を新たに塗り替えていく、そのためのステージのスタートダッシュに選んだことに一番納得がいくし、同年2月にリリースされたベスト盤中心のセットリストを組んだことは、生き様をしっかりと日本武道館に刻もうとする責任感すら感じられる。また、ステージ上のリラックスした空気感が画面越しに伝わり、メンバー全員が見せる笑顔のシーンも本当に多い。古村、坂倉、対馬が常に歌を口ずさんでいる姿も、バンバン抜かれている。4年の間に生まれ、育て上げられた楽曲が一曲も残らず輝くようにホール一体に放たれていくが、その中でもライヴ中盤のほぼ光村の独奏の“バイシクル”で恥ずかしげもなく自分たちの姿を剥き出しにし、“Mr.ECHO”で繰り返される自問自答に向き合う覚悟を決め、「俺らに着いて来い!」と言わんばかりの強気な“ローハイド”の流れは本当にドラマティックであり、この4年間にメンバーに起こった全ての出来事(良い事も悪い事も含めて)がどういうものであったか、そして、確実にそれを4人で乗り越えてきたことがわかる。”手をたたけ”の最後のサビで沸き起こるシンガロングは、確実にオーディエンスとの熱い絆が確かめられた感動的場面も収められているし、本編ラストの“天地ガエシ”は、バンド組みたての少年のように無邪気な表情で<僕らだけの秘密の大勝利>である最高のロックンロールを鳴らし、4年前の日本武道館にはない歓喜が溢れ、メンバーそしてオーディエンスから零れるものは涙ではなく満面の笑顔。

アンコールで披露された“TOKYO Dreamer”は、このライヴの翌日にリリースされたのだが、その理由もはっきりとわかる。青さがそのまま綴られた歌詞を10代の光村が歌うよりも、当時28歳の光村が歌う方がよりリアルに伝わる。成功と挫折を味い、そしてそこから這い上り、再びリベンジできた直後に<孤高の戦いは いずれこの夢を叶えるんだ>を歌える自分達になったという事を、日本武道館のステージで、まずは応援し続けてくれている大切なファンに伝えたかった。それが、彼らの次なるリベンジに繋がるシーンでもあるのだ。よって、これは二枚で一枚のLIVE DVDと考えていいだろう。過去を封印するのではなく、見せることで本当にリベンジ出来たんだと、彼らは証明したかったのだ。

気が付けばNICO Touches the Wallsバンド結成から今年で11年目である。この年末年始にバンドメンバーの脱退や活動休止のニュースを多く耳にするたびに、バンドを続けていく事の難しさや、どれだけのエネルギーが必要なのかと考えてしまったのだが、と同時に、彼らが決して諦めず、そして自分達でバンドの舵を取るようになったことを、何よりも評価したい気持ちになった。そして、これからどんな冒険をしていくのか、ただただ楽しみで仕方がないし、改めてNICO Touches the Walls は良いバンドだなと心底思ったのだった。


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by musicorin-nirock | 2015-01-11 18:14 | LIVE DVD
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