ARABAKI ROCK FEST.15 / GRAPEVINE

4月25日から2日間に渡り開催されたARABAKI ROCK FEST.15の会場には、7つのステージがある。その中で唯一の屋内ステージが花笠だ。GRAPEVINEは今年、2010年のARABAKI以来5年振りに、ここ花笠に立つ。

彼らが出演するARABAKI2日目、4月26日は、前日に比べ日差しが強く、一気に夏を呼び寄せたような暑さだった。午前中から会場をほっつき歩いていた私は、この暑さに体力を消耗され、まだまだ続くライヴのために屋内ステージで少しゆっくりしようと一足早く花笠に向った。すると、ステージにはCHABOこと仲井戸麗市率いるCHABO BANDのライヴが始まっていた。私はこの時、休むつもりで向かったはすなのだが、バンドの音を耳にした瞬間に、完全ノックアウトされてしまった。仲井戸は自分自身が楽器となり、自由自在に音を操っている。彼が産み出す重みのあるグルーヴに、私の体は勝手に動きだし、仲井戸の人生が練り込まれたブルースには、思わず目頭が熱くなる。そしてステージを見渡すと、仲井戸らの名演を舞台袖で楽しむGRAPEVINEのメンバーの姿が見えた。下を辿ると田中和将(Vo&G)は、中学2年生の頃に仲井戸に憧れギターを購入した事を、先日発売された『ロックンロールが降ってきた日3(㈱スペースシャワーネットワーク)』 で語っていた。少年時代に憧れたミュージシャンが、今目の前でギターを弾き、歌っている。そしてこの後、自分も同じステージに立てる事は、ミュージシャン冥利に尽きるに違いない。

仲井戸が去った後の花笠は変わらずテンションが高かった。サウンドチェックのためにステージに現れたGRAPEVINEメンバーも、時折オーディエンスに茶々を入れたりとご機嫌だ。そして、開演時刻を5分ほどオーバーした頃に、彼らはビール片手にリラックスした面持ちで、再びステージに現れた。


1曲目は“光について”。芳醇なギターのイントロが花笠に響き渡り、ノスタルジーが漂う中でも、彼らの「今」が感じられる音だった。たっぷりとしたバンドサウンドは、オーディエンスの心をぐっと引き寄せる。そして次曲“疾走”へと続くと、私の目の前にあるステージが涙で滲んでしまった。<まだ未来は空っぽのままで 新しい予感に泣きそうだぜ>という衝動と、ダイナミックな曲展開が、四十路を超えた大人たちが、まさに仲井戸に憧れていた10代の頃のピュアな気持ちのまま、バンドと向き合う姿を曝け出していたからだ。田中の身を振り乱しシャウトする姿も、西川弘剛(G)が鳴らし続けるエレキの音も、亀井亨(Dr)が刻む迫力あるビートも、いつにも増してリアルに迫ってくる。その勢いに乗って、前のめりに攻めてきた“KOL”。持ち前の成熟尽くしたバンドサウンドからは貫録が感じられる。しかし、モッシュが起きてもおかしくない程のフロアの大盛況ぶりは、狭いライブハウスでぎゅうぎゅう詰めになりながら、彼らのステージを観ていた頃を、ふと私に思い出させた。

ここで最新アルバム『Burning tree』より“Weight”が披露されると、花笠は一気にアダルティな空間へと変わる。高野勲(Key)の鍵盤と田中のアコギが絡み合うアンサンブルが、しっとりとフロアを包み込み、田中は祈りを込めるかのように優しく歌い上げていく。「そろそろ、おねむの時間でしょ?寝てもいいんですよ?」なんて曲前のMCに、くすくすと笑い声を上げたオーディエンスも、食い入るようにステージに視線を向けていた。ヒットシングルで始まり、アッパーなロックを立て続けにチョイスした、GRAPEVINE初心者にも優しいセットリストだったが、ライヴ中盤に差し掛かった所で、嫌味もなくミディアムバラードを持ってくる。そんな彼らの姿は、肩肘に力が入るわけでもなく、とても堂々としていた。

続けて、ファンキーに聴かせた“SOUL FOUNDATION”。活動初期の頃の楽曲が披露される嬉しいサプライズに、フロアのテンションもヒートアップ。オーディエンスとメンバーとの間には一体感が生まれていく。そこに鋭く“ Reverb”が切り込むと、熱狂的な歓声が上がった。金戸覚(B)の低音が拍車をかけように、ぐらんぐらんとフロアを揺らし熱気は更に上がっていく。

そしてラストは再び『Burning tree』から“IPA”という、ツアー中ならでは締め括りだった。先日、赤坂BLITZで初めて聴いたときよりも、サウンドに深みが増し、揺るぎないものが感じられた。歌い続ける中で、新たに生まれた田中の感情が、注ぎ込まれているのだろうか。まるで、GRAPEVINEの「現在地」をここARABAKIの地に刻み込んでいるようだった。特にエンディングにかけての盛り上がりは、この先も続くであろう彼らの道程が、柔らかな光に照らし出されていくようで、私は言葉を失った。

メンバー全員40代を迎え、楽曲に対して向き合い方が確実に変わったことをアルバム『Burning tree』は物語っている。よって、近年リリースされたGRAPEVINEの作品の中でも群を抜いてリアルだ。そのリアルが、彼らより下の世代を生きる私には、理解しがたい部分でもあった。しかし、ここARABAKIで、彼らはまだ熱き音楽への情熱を抱えながら、自らの積み重ね上げてきたモノを踏まえ、更に次なる新しい道を今再び模索し始めている事を、私に教えてくれた気がしている。それは、ツアーを続けていく中で、それぞれの心境に変化が訪れ始めている証でもあるが、やはり憧れのCHABO BANDのステージが、彼らに何か気付かせたのかもしれない。彼らの中に存在する、10代の頃の自分が引き出された、今のGRAPEVINEの鳴らすサウンドは、映画のようにドラマティックだった。


set list
1 光について
2 疾走
3 KOL(キックアウト ラヴァ―)
4 Weight
5 SOUL FOUNDATION
6 Reverb
7 IPA


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by musicorin-nirock | 2015-05-02 12:00 | LIVE
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