GRAPEVINE TOUR 2015 ファイナルを迎える前に

 5月6日の横浜Bay Hallで私が観たものは、GRAPEVINEの円熟が大胆に放たれた、物凄い説得力のあるライヴだった。一人一人の心に情景を描くというよりも、GRAPEVINEの現在地をまんまと確かめさせられてしまった。まるで彼らが演奏した曲の全てが、最新アルバム『Burning tree』の世界に封じ込まれたようだった。「これが今年のGRAPEVINEです」。田中和将(Vo&G)はライヴ序盤のMCでこう述べたが、本当に彼の言葉通りだった。

 4月3日のツアー初日。赤坂BLITZのステージでは、バンドとオーディエンスの両者に緊迫感が漂い、演奏には若干硬さが感じられた。個人的にはセットリストもイマイチ腑に落ちず、歯痒さが残ったまま会場を後にした。しかし、4月末に開催されたARABAKI ROCK FEST.15でアルバム収録曲である“IPA”をラストに聴いた時、その手応えは、想像を超えるものだった。ワンマンライヴに比べたらかなり短い演奏時間であったし、『Burning tree』からはたった3曲しか披露されかった。でも、最後の最後で、今、大きな変化がGRAPEVINEに訪れていると、私は確信したのだ。

 そして迎えた横浜Bay Hallのステージで、彼らにガツンと魅せつけられてしまったのだ。勿論『Burning tree』収録曲以外の曲も演奏され、最初期のナンバー始まるとフロアから上がる歓声からは、例え時が流れても、彼らの音楽は色褪せることなく愛され続けていることを、改めて実感させられた。しかし、私はノスタルジーに浸る余裕などなかった。彼らがこれまでに産み出してきた楽曲の延長線にあるのが『Burning tree』であると気付くと同時に、この時点でツアーの集大成を、既に観たような気がしてならなかった。

 私は赤坂BLITZのライヴ後に、GRAPEVINEの全13枚のオリジナルアルバムを、発売された年代順に聴いてみることを試みた。軽い思いつきでもあったが、『Burning tree』を理解する為にはやはり必要な作業だと思ったからだ。デビュー当時の楽曲は、ルーツロックや黒人音楽の匂いが強い。そして昨年再現ライヴも行われた『Lifetime』ではUKロック調のギターサウンドを強く打ち出し、バンドは急成長を遂げる。リーダー西原誠(B)の不在/脱退がもたらした混沌と淋しさを抜け出し、サポートメンバーが加わった5人体制で、試行錯誤を繰り返しながらも、着実に一段ずつ階段を上り続け、現在のGRAPEVINEを確立させて行く。また、作詞の面では、田中が自らの過去と対峙したことで、1人の人間としての成長劇と、そこからのヴォーカリストとしての覚醒が、ダイナミックなサウンドと共に描かれている。そして最後に『Burning tree』を聴き終えた時、彼らがこの作品に辿り着いた理由が、私はようやく理解出来た気がしたのだ。

 GRAPEVINEのロックに「わかりやすさ」は存在しない。GRAPEVINEのロックは「わかりづらさ」が美学であり、近年は聴き手を困惑させることすら、彼らは楽しんでいるようにも感じられる。つまり、受け止め方はリスナーの自由で、委ねられているわけだ。ならば、私は今彼らが一体何を見せ、聴かせ、伝えようとしているのかを、5月6日の横浜Bay Hallから一ヶ月経った6月6日の豊洲PITで、改めて考えてみたい。GRAPEVINE、13枚目のオリジナルアルバム『Burning tree』と纏めてしまえばそれだけだ。しかし、人間の深い部分にまで届くこのサウンドは、デビューから18年間、常に音楽の本質を鳴らし続けてきた彼らだからこそ産み出すことができた。そして、このアルバムがリスナーにもたらすものは、かけがえのないメッセージとして生き続けると思うのだ。


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by musicorin-nirock | 2015-06-02 12:04 | COLUMN

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by yu_tanai_coco
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