7/11 NICO Touches the Walls @ 広島BLUE LIVE

ライヴ内容に触れていますので、閲覧にはご注意ください。




“TOKYO Dreamer” を歌う光村には強い意志が感じられた。バッサリと髪を短髪に切ったことで、その凛々しい表情も一段と映えていた。彼が10代の頃に書いたというこの曲の<必ずこの夢を叶えるんだ>と、純粋無垢な言葉を聴いたとき、私は思わず微笑んでしまった。「光村のまっすぐな視線は既に、未来を見据えているのでなないだろうか」。身勝手な確信ではあるが、ツアーが終わる淋しさよりも、彼らの次を予感させる説得力ある演奏だった 。だから、「今日はひたすらライヴを楽しもう」と、私は珍しくステージ前方までに移動した。ライヴは始まったばかりだった。

5月21日から始まったNICO Touches the Walls『まっすぐなツアー』もいよいよ佳境を迎えている。約2か月間、全国17箇所で行われるライブのうち、16か所目が7月11日の広島BLUE LIVEのステージだ。

開演時間の18時、会場が暗転すると吉田美奈子のSEをバックにメンバーが登場。そしてライヴは始まった。

バンドの王道を辿るような、新旧織り交ぜたセットリスト。MCもほぼなく次々と曲が披露されていく。NICOが広島でライヴをすることは約2年振りという事もあり、曲のイントロが聞こえる度にフロアから沸き起こる大歓声。熱を上げるオーディエンスに応えようと、メンバーも勿論前のめりに攻めてくる。歌詞に合わせ、身振り手振りしながら、表情豊かに光村は歌う。また同時に古村、坂倉、対馬の3人も本当に良く歌い、そして4人とも良く笑っている。「音を楽しむ」。まさにそれが「音楽」であるように、4人の「楽しい」という気持ちが曲にヴァイタリティ―を与え、聴き馴染みのある曲が新鮮に耳に届く。ここ最近では、光村一人の弾き語りスタイルがすっかり定着していた“バイシクル”も、4人の音としてエネルギッシュにステージの上で返り咲いた。コール&レスポンスに、<広島もオーライ>と光村が歌えばフロアはさらに盛り上がり、2年という長い時間もあっという間に縮まってしまう。

そして、前半のパートで一際異色を放っていたのが、“いいこになっちゃいけないの”だ。青とピンクのライトに照らされる中、坂倉が鳴らす歪むベースをバックにオネエ言葉で光村は曲紹介。懐かしのベンチャーズを思い起こさせるギターフレーズを古村がリフレインさせ、妖艶な光村の歌唱が漂わせるのが、ネオン煌めく繁華街のイケナイ雰囲気。この曲の一番の聴きどころでもある、オルガンの音に化けたギターソロも光村が熱演した。歌謡曲とロックを組み合わせた曲は数多く生みしてきたNICOだが、“いいこになっちゃいけないの”は、今まで以上に遊び心がたくさん詰まった進化系だ。この曲がきっかけとなり、今後NICOの可能性は、ぐっと広がるに違いない。

熱気に帯びたフロアの空気がガラリと一変したのは、ライヴ中盤。メンバーがまだ20代前半の頃にリリースされた曲を中心に、情緒的なステージが繰り広げられた。その中でも、“エトランジェ”が最高だった。眩い光が交差するような古村の鳴らすエレキギターの音色が美しく、ジャジーなコード展開が色っぽい。グルーヴ感の強い、大人っぽい曲ではあるが実はデビュー間もない頃にリリースされた。持ち前のポテンシャルの高さ故に、随分と背伸びしてきたNICO。平均年齢29.5歳の今のNICOが鳴らすと、曲本来の年齢にようやくバンドが追いたような気がして、感慨深く聴き入ってしまった。

エンディングにかけては、アレンジの上に更にアレンジを重ねたあの曲この曲のオンパレード。いつにも増してエモーショナルに力強いドラムを対馬は叩き続け、バンドの加速度が増す。ミドルテンポの"Mr.ECHO"は、躍動感溢れるロックナンバーに姿を変え、“ニワカ雨ニモ負ケズ”の間奏部分はアコースティックアルバムVer.で披露し、オーディエンスに噛み付いてきた。一曲一曲、歌い終える毎に、恥ずかしげもなく見せた光村の笑顔は、心の中で「ガッツポーズ」しているような達成感に満ちている。そして、抱えたテレキャスを突然掻き鳴らし、歌い始めた“まっすぐなうた”。 嫌っていたメロコア調の速いビートに乗せて、衝動的に声を張り上げ、大きく見開いたその目は闘いの目をしていた。ステージで熱くスパークしている4人の姿を目にしら、なんだか私も拳を上げてモッシュせずにはいられなくなった。


鳴り止まない拍手に迎えられ再び登場したメンバーは、どこかホッとした表情だった。アンコールはアコースティック編成に切り替わり(これ、ビルボードに行けなかった人にとっては、かなり嬉しい計らいでしょう!)、終始リラックスした、笑いの絶えない時間だった。アンコールラストの”口笛吹いて、こんにちは”では、メンバーとオーディエンスによる口笛の大合奏。からの、最後は「ラララ」で大合唱。これがまた凄まじく感動的なフィナーレで、光村の目が潤んでいるようにも見えた。ライヴが無事終了すると、ステージ前方に4人並んで深々とお辞儀。また広島に来ることを約束して、颯爽とステージを後にした。

まだまだ書きたいことはある。しかし、残すところあと一本、東京国際フォーラムのステージもあることだし、このあたりで切り上げようと思う。でも、一つ最後に書き残したいことは、広島のライヴを観て一番強く思ったこと。それは、NICOが等身大で勝負し始めたことは、バンドの未来を大きく左右する。ということだ。

今年の12月には、大阪城ホールで初のワンマンライヴが開催されると、先日発表があった。ツアーは終わってしまうけれど、NICOには次なる大きな目標がある。だから、“TOKYO Dreamer” を歌う光村から強い意志を私は感じたのだと思う。そして、今のNICOなら間違いなく、最高のライヴをやれるはずだろう。背伸びすることもなく、かといって、若く見せようともしない。等身大のNICO Touches the Wallsは、ロマンがあって最高にかっこいいロックバンドなのだと、ここ広島で証明したのだ。

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by musicorin-nirock | 2015-07-17 22:00 | LIVE
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