10/24 GRAPEVINE @長野CLUB JUNK BOX -club circuit 2015-

まず、力を込めて伝えたいことは、田中和将の歌声が驚くほど素晴らしかった。1曲目の“なしくずしの愛”は、喉の奥から響かせる歌声がしなやかで、漂わせるダンディズムがオーディエンスを一気に酔わせてしまう。しかし、新緑を思わせるギターサウンドでフロアを染め上げた2曲目“夏の逆襲”では、透き通るような透明感ある声で<真実を可能にするのは>とリフレインさせる。丁寧に、そして表情豊かに曲を演出する、まだまだ可能性を秘めたその声に、開始早々私は感服してしまう。

9月に野外ライヴが開催された東京と大阪を抜かした、地方6都市を回るGRAPEVINE club circuit 2015(以下クラサー)。その4本目に当たる10月24日長野CLUB JUNK BOXで、いつものように、のっけから期待を超えるステージに私は動揺してしまったのだが、今夜の目玉は何といっても10月16日の深夜、突然配信された新曲“EVIL EYE”の生演奏だ。配信と同日に公開された、話題騒然のPVを再現するかのように、ステージが七色の照明に照らされ、ホテルの一室に仕立て上げられる。そして始まった“EVIL EYE”は、意外にもシンプルなロックンロールだった。持ち前のグルーヴを最大限に活かしたバンドサウンドが豪快に畳み掛け、田中は突っぱねた態度で歌う。サビではイービルポーズを決めた腕がじゃんじゃん上がり、フロアの熱気も最高潮。彼らのライヴで汗ばむ感覚が久しぶりで「なんだ、まだまだいけるじゃん」と思わずニヤついてしまった。

それもそのはず。今年の1月にリリースされた最新アルバム『Burning tree』は、年齢を重ねたことを強く意識した、田中のリアルな心情が綴られた作品である。彼らの描いた世界に、どこか重苦しさが否めない中でも、今回披露された全4曲(“Big tree song”“MAWATA”“KOL”“IPA”)はフェス等でも良く披露される外向きな選曲だった。その中でも『Burning tree』以前の曲とも見事に絡み合い、壮大な世界を描いていたのがアルバムの核とも言える曲“IPA”だった。“壁の星”“SEA”と続く前衛的な流れに寄り沿いながらイントロが鳴らされると、フロアは神聖な空気に包まれる。何より、5人のアンサンブルがいつになく力強かったのだ。響き渡る亀井亨のドラミングも、金戸覚が爪弾く低音も、高野勲の鍵盤も。円熟が滲み出る西川弘剛が奏でたギターソロには、溜息が出た。老いていく現実を目の前に、音に救いを求める耽美的な空間を創り上げたのが、6月のツアーファイナル。ところが、解放感とともに、現実を突き返すような田中の歌からは、彼らにとって既にそこは通過点でしかなくて、新たなモードに入ったことを予感させるものがあった。

このクラサーの楽しみの一つが、アルバムツアーやフェスでは滅多に披露されないレアな曲が聴けることだ。ライヴがクライマックスに向かう途中“100cc”(2001年発売のシングル“Our Song”のc/w)の登場には悲鳴にも近い大歓声が上がった。そしてこの曲がフックとなり、フロアの熱気が急上昇。田中が今にも泣き出しそうな顔で“その未来”を熱唱し、スケール感のあるバンドサウンドを響かせた“Glare”と続く。尋常ではないエモさが充満する会場は、かつてフロントエリアにモッシュが起きていたライヴの記憶と重なるものがあった。しかし、彼らが出したアンサーは<どこまでも先を描いてゆく(“風の歌”)>という確かな決意を誠実に聴かせ、ライヴを締め括ったのだ。そして、5人が立つステージには、若かりし時代さえ飲み込んでしまうほどの寛容な空気が溢れていた。

例えば、活動初期に発表した曲を発売から20年近く経った現在の彼らが演奏しても、何の違和感を感じないことがそうだが、そもそもGRAPEVINEとは早熟なバンドであった。そして、所謂音楽シーンから一線を引き、独自の世界観を築き上げた長い軌跡を振り返ってみると、この日私が見届けたGRAPEVINEの姿は、本人達が理想とするバンド像にかなり近いのではないかと思った。大胆に鳴らされ続けた成熟味のあるバンドサウンドに、何度も恍惚としてしまった約2時間。キャパ400人の小さなライヴハウスだからこそ味わえた臨場感も相まって、私は彼らの揺るぎないロックバンドへのロマンを強く感じたのだった。

追伸。『GRAPEVINE、秋の名曲選』と題されたアンコールは、あたたかなオレンジ色の照明に包み込まれた、秋実りを感じさせる、味わい深い時間だった。ラストの“ふれていたい”では「善光寺!」というコールが入り、翌日、善光寺に向かう道中のお供には、もちろん彼らを選んだ。

f0342667_10225898.jpg






(セットリストはこちらのサイトからどうぞ)



[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-04 21:53 | LIVE | Comments(0)

主にNICO Touches the Walls について書いておりますが、他にはGRAPEVINE と the HIATUS が好きです。記事の無断転載、引用はご遠慮ください。


by タナイユウ
プロフィールを見る