4/2 NICO Touches the Walls TOUR 2017 "Fighting NICO"@東京NHKホール LIVE REROPT

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東京・渋谷にあるNHKホールで開催されたNICO Touches the Walls TOUR 2017 Fighting NICO”(以下、Fighting NICOツアー)に参加するのは、これで回目になる。ホール公演を観るのはなんと回目で、まぁ行き過ぎだよなと苦笑いしつつも、何度も観たくなるくらい、これまで観てきたニコのどのツアーやワンマンライヴよりも、Fighting NICOツアーを私は魅力的に感じている。そしてこの日は少し特別だった。参加したホール公演のうち唯一取れた階席。視線の先には、ヴォーカルマイクが凛とステージに立っていた。

SEが突然鳴り止むと場内は暗転し、赤いレーザーの光が客席に放たれ、バックスクリーンにはイラストが浮かび上がる。このオープニングは過去回ホールの上階席から見下ろしてきたが、階席から眺めていると、立体的な光の空間の中にいる感覚に陥り、宇宙系アトラクション乗車前みたいなワクワク感でいっぱいになった。

今回のFighting NICO ツアーのホール公演では、オープニング以外でもかなり凝った演出が施されている。音に合わせて照明やレーザーを駆使し、一つの世界観を創造することは、かつて光村龍哉(Vo&G)が「やりたい」とTwitterで呟いていた『ロックオペラ』に到達するまでの階段を着実に上っている証拠だろう。

颯爽とメンバーが登場し、光村が鳴らすサイレンが反響する未発表の“新曲”でいきなりライヴはスタート。“チェインリアクション”、“そのTAXI,160km/h”とノンストップで曲が続く。坂倉心悟(B)のソリッドなベースラインを強調させたイントロから、光村がセクシーな歌声を聴かせる大人な姿へと変貌した“TAXI~”の登場には当然のように大歓声が上がり、ニコの初期楽曲が未だ強い支持を得ていることを実感できた。しかし、原曲にほぼ近いアレンジの“バイシクル”が投下され、サポートメンバー浅野尚志(Key,Vn,G)の鍵盤が加わったことで、一層軽やかな“手をたたけ”では、会場が一気に明るく開放感で溢れ返り、前半のピークと言い切れるほどに、とても感動的だった。

再びシングル曲である“Diver”と“夢1号”によって「孤独と夜」の世界が広がり、浅野のヴァイオリン投入により壮大な世界を描いた“GUERNICA”は演奏時間が10分以上あっただろうか。そして、この日唯一のバラードナンバー“Aurora Prelude)”はオーロラカラーの美しいレーザー演出と共に披露され古村大介Gのエフェクトを掛け浮遊感を与えたギターストロークと対馬祥太郎(Dr)の叩くスネアを軸にアレンジを再構築させた“TOKYO Dreamerへ。基本的に曲と曲の間を繋げ、空白を作らない構成になっているため、ステージに吸い込まれるよう、ただただ見入ってしまう。

…と、ここで改めてセットリストを振り返ってみると、オープニングは“新曲”→“チェインリアクション”→“TAXI~”でまずは攻めの姿勢を見せ、ニコの顔とも言える定番曲“バイシクル”→“手をたたけ”へと続き、“Diver”→“夢1号”という「孤独と夜」を歌うシングルを投下。さらにコアな部分に突っ込むようGUERNICA”を登場させて、“Aurora Prelude)”→“TOKYO Dreamer”によって明るく、開放へと導く流れになっている。セトリの半数がシングル曲で構成され、残りが新曲とレア曲なのだが、元来ニコが任せ持つ2面性、つまり、バンドのマニアックな側面と王道が交互にアプローチできており、バランス良く耳へと届く仕組みが完成されている

かつてニコは「孤独と夜」のバンドと言われていたが、今では「勇気と愛」という対極にあるもの歌うようになり、音楽性に関しては「メインストリーム」と「オルタナティヴ」を行き来する、稀にないバンドである。ゆえに、例えば二コをあまり知らない人が、初めて彼らのライヴを観たとき、その内容がどちらかに偏っていたら、確実に勘違いだけで終わってしまう。私はそれを危惧しているが、何よりもまずニコ自身がステージ上で、その2つの顔を堂々と見せていかなければ、リスナーへの説得力は(厳しいことを言うようだが)生まれない。しかし、Fighting NICO ツアーではこの面性が偏ることなくアプローチできており、メンバーも分け隔てることなく、自然体でパフォーマンスができている。これはセトリ前半に限ったことではないので、この2面性をポイントに於いて、以下後半部分も読み進めていって欲しい。何より、これが冒頭で述べたFighting NICO ツアーを魅力的だと感じる、私なりの理由なのだ。

光のカラーグラデーションをバックに光村・古村・対馬のコーラスが美しく響き渡った“夢号”。確かこのコーラス部分は英ロックバンド・10ccにインスパイアされたものだと音楽雑誌で読み知ったが、「10cc1020の子達のほどんどは知らんやろ」とツッコミを入れたことを覚えている。しかし洋楽からヒントを得て、自分たちのサウンドに積極的に反映させる性格は、今やニコの強みであり、プログレっぽいGUERNICA”や、「亡きチャック・ベリーに捧げる」“ブギウギルティ”についても同じ事が言えるが、先にも述べた通りニコはメインストリームで戦うロックバンドが鳴らす音らしくない音も、平気で演奏するバンドだ。よって、再び浅野によるヴァイオリンが入ったことでアイリッシュ感が増した“天地ガエシ”は、元々オーガニックなダンスナンバーとして作られた曲だけに、その本質が開花されたのか、とにかく聴いてて気持ちが良い。

ニコは曲で好き放題遊んじゃうバンドであり、そこにもう人加わってしまえばさらに遊び心に拍車が掛かる。そんな彼らのMAX好き放題が形になった曲が“MOROHA IROHA”だろう。光村の身振り手振りしまくるヴォーカルは見応えがあるし、CD音源には収録されていない対馬の豪快なドラムソロも、曲中に大きな拍手も上がるほどに聴き応えも抜群だ。

それでも、ここでストレートな一球“Broken Youth”が投げられると、リベンジを掛けた二度目の日本武道館公演の記憶が一気に蘇ってしまい、“渦と渦”のイントロが聴こえたときには、どう抗おうとも、延期になってしまった初の大阪城ホールワンマン公演を、無事昨年5月に成し遂げるまでの日々が思い浮かんできてしまう。ニコは様々な時代を歩んできたが、どちらかと言えば厳しい時を長く生きたバンドに思う。しかし、どんな状況にいたとしても、ステージに立つ人から伝わってきたことは、音楽が、バンドが、ニコが好きなんだという事実。己に降りかかる出来事を何一つ無駄にない、いや、そうは絶対にさせないで巻き返そうとする泥臭い姿は、それがテレビアニメのテーマソングだったとしても、ニコは確実にぶち込む。何食わぬ顔をして生き様を刻みつける。そうやって自らの王道をニコは築き上げてきたのだ。

そして、いよいよ本編ラストであるが、なんとここでも未発表の“新曲”が登場。個人的に過去20年近く色々なロックバンド/シンガーのライヴを観てきたが、こんなの初めての経験である。また、この新曲が曲者だった。ギターのイントロとフックのあるサビの耳に張り付くようなメロディと、間奏で光村の出す指カウントにドキドキ&ニヤニヤしている後ろ4人の表情が忘れられない。

***

ツアーTシャツに着替えたメンバーが再びステージ登場し、古村は自分のスマートフォンを、立ち位置の左手に設置している。アンコール曲目は“THE BUNGY”。一番の見所である白熱のギター古村VSヴァイオリン浅野バトルは、人が交互に見せた「やった!」「やられた!」の表情に当然観てるこちらも熱くなり、そこからの古村ギターソロでは、膝立ちでステージすれすれまで滑り込んでからのプレイ。彼は前々から動くギタリストだとは思っていたが、近年さらに開放的になり、それがすごく良い!

曲が終わると、来る5月6日に彼らの地元、千葉県・浦安市文化会館での追加公演が発表された。今回アンコールのMCで光村は、『好きなことをすること』について話してきたが、凱旋公演の決定を報告した後だからこそ、彼の言葉にも一層の力が込められていたように感じた。


今、好きなことが仕事にできて幸せだ。
しかし、好きなことを仕事にするとは、毎日が戦いだ────

音楽の世界で生きていくために、どれほどの努力と根性が必要であるかを、ニコや他のバンドを追い続けていく中で、 散々思い知らされてきたが、そういう自分の立場を面と向かってリスナーに話すことは、光村の場合、今までなかったはずだ。しかもこの日は自分のような立場にはなれない、好きなことだけをやれない人に向けてのエールも贈られた。「困ったことがあったら、いつでも、俺らの背中を観に来て」という極めつけの一言とともに。

実際、好きなことをだけをやれない、好きなことが仕事にできない立場にいる人の方が圧倒的に多いと思う。かく言う私もその人で、いつからか「音楽ライターになりたい」と思ったはいいけれど、まんまと理想と現実に挟まれチャンスを自ら逃してしまったことがある。「潔く諦めたほうが幸せなのかもしれない」と肩を落としたこともある。けれど、Fighting NICO ツアーが始まってからの約1か月半の間に、夢を諦める必要などちっともなくて、自分に正直に生きることが大切だと気付かされた。「やっぱり私は目指している場所に行きたいんだ」という本心とも改めて向き合えた。それは、光村のMCに背中を押されたことも大きいが、何より自分たちのやりたい音楽を、無理なくやれているニコの姿がいつになく眩しかったからだ。

ニコは険しい道のりのなかで、人一倍背伸びをし、散々小難しいことをやってきた。しかし、今回のFighting NICO ツアーでは、そんな彼らの奮闘劇が確実に肯定されている。自分たちの理想を形にしている今のニコは、最高にかっこいいのだ。


さあ 何度もダメになったって
ゼロから始めるさ 
正解はもう辞書になくたって 
戦うだけなのさ      
         ──“ストラト”より

“ストラト”が終わり、アンコールラストの“マシ・マシ”では、<きみしだい>を<自分次第>に変え、声高らかに光村は歌う。その言葉もバンドサウンドも、いつになく胸に深く響いた。最後の曲は、聴けば聴くほど私自身との距離が縮まっているような気がして、ライヴが終わってからも毎日聴いている御守りのような曲になった。


***

私は2014年2月にニコが開催した『カベニミミ』を観たことがきっかけで、音楽ライターという夢をみつけ、そのおかげで、当時抱えていた孤独を解放できた。だからこそ、バンドを追うだけの立場にいるのではなくて、自分自身をしっかり生きようと奮い立たされ結果、ブログを書いたり、原稿をコンテストに応募したりと年甲斐もなく続けていた。けれど、思うような結果をしばらく出せていなかった。また、若い才能を知ってしまうと、自分は「時代遅れ」なような気もしてきて、さらに落ち込んでしまい、最近はもうずっとずっとその繰り返しだった。

それでも、こんな日々もいつかきっと形になるのだと信じよう。

数年後、ふと今を振り返ったときに「こんな頃もあったよなぁ」と笑えるようになりたい。その時、例え自分がどんな状況にいたとしても、出来る限りの努力をしてきた事実さえあれば、きっと後悔もしないはず。そして、ニコと張り合えるくらい、私も自分をアップデートできていたら最高だな。それを確かめるためにも、彼らがステージに立ち続けてくれる限り、私はニコのライヴを観に行こう。


セットリスト 
新曲 
2 チェインリアクション 
3 そのTAXI,160km/h 
4 バイシクル 
5 手をたたけ 
Diver
夢1号 
GUERNICA 
AuroraPrelude
10 TOKYO Dreamer
11 ブギウギルティ 
12 天地ガエシ
13 MOROHA IROHA 
14 Broken Youth
15 渦と渦 
16 新曲
アンコール
THE BUNGY
2 ストラト 
3 マシ・マシ




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by musicorin-nirock | 2017-05-14 00:41 | LIVE | Comments(0)
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