NICO Touches the Walls TOUR 2017 ”Fighting NICO” LIVE REPORT ④(5/6 浦安市文化会館)

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いよいよ幕を下ろす日が来た。全国19箇所20公演を回って来た、NICO Touches the Walls TOUR 2017 ”FIghting NICO”(以下Fighting NICO ツアー)の最終目的地は、彼らの地元である千葉県・浦安市文化会館。この浦安公演は、ツアーの追加公演という意味合い以上に凱旋公演であることが、彼らの胸中に大きく締められていたことは、冒頭のMCで突然言い放った光村龍哉(Vo&G)の第一声ですぐわかった。


「浦安の産んだロックスター、光村龍哉率いるNICO Touches the Wallsです!」


「随分大きく出たわね!」なんて私は驚いてしまったが、今ならこうも言いたくなる光村の気持ちが解らないでもない。かつて光村は中学生の頃に合唱コンクールで、同舞台に立ったことがある。目立ちたがりだった彼は指揮者を担当し、クラスを最優秀賞に導いただけでなくて、最優秀指揮者賞まで獲得したそうだ。そんな初々しいエピソードにもあるように、今ツアーで回って来たどの会場でも味わうことのなかった感慨と緊張、何より照れが大いにあったのだろう。きっと、「浦安の産んだロックスター、光村龍哉率いるNICO Touches the Wallsです!」とでも言っておかないと、誰よりも当時の自分に面目が立たなかったのだと思う。

定刻の17時を迎えると、ステージ背後のスクリーンにプロジェクションマッピングを駆使したオープニング映像が流れる。メンバーが登場し、ライヴの1曲目に披露された”新曲”のイントロでは、光村が手回しサイレンを鳴らし、リズム隊・対馬祥太郎(Dr)と坂倉心悟(B)が地響きのような重めのビートを刻む。この曲を聴くと必ず頭に浮かぶキーワードが私にはあった。それは『捻くれ者』。それこそ「孤独と夜」を歌っていたインディーズ時代から既に10年以上が経つが、バンドの根本的な部分は変わらないのかもしれないと、このツアーで気づかされてきた。引き続き、”B.C.G”、 ”そのTAXI,160Km/h” と衝動的で尖ったナンバーが続くと、観客のテンションは既にMAXを迎えたかの様な盛り上がりを見せ、そこに疾走感溢れるギターロックナンバー”バイシクル”の登場で、ヘヴィな空気が一変。会場は明るくなり、”手をたたけ”が投下されるとさらに賑やかな雰囲気になる。そう言えば、このツアー中に聴いた”手をたたけ”で私は何度か涙腺をやられたが、浦安でもやられてしまった。

一旦MCが入ると、一気にFighting NICO ツアーの核心へと突っ込んで行く。夢の世界で生まれた曲”夢1号”と、心の葛藤を歌う”Diver”は、照明演出が素晴らしい。ムーディな空間の中で幻想的な風景や主人公の心情描写を光村は色っぽく歌い上げ、サポートメンバーである浅野尚志(Key,Vn,G)の鍵盤によって、バンドサウンドには厚みと深みが生まれ、成熟を一番強く感じさせられた2曲だった(”夢1号”のコーラスワークも然り)。そして、”GUERNICA” 、”Aurora(Prelude)”、 ”TOKYO Dremer”と連なる金字塔が建てられる。この3曲については、過去ブログでも散々書いてきたので割愛するが、個人的にはロームシアター京都で聴いた”GUERNICA” の方がアンサンブルに躍動感があったと実感していて、浦安公演では全体的にソフトな印象を持った。

ここまでは、前回観た京都公演と同じ内容。でも、次は浦安公演のハイライト、光村が浦安の景色を歌ったという”ランナー”が披露される。アコースティックギターを抱える光村。彼が10代の頃に作った素朴なメロディに乗る歌詞の一人称が<俺>であることに、ふと「あぁ、背伸びしたい年頃だったのだろうなぁ」と、少しこそばゆい気持ちになる。スピッツの”ロビンソン”に感銘を受け、自分でも曲を書こうと思い立った光村は、この浦安という街で、音楽への純粋な憧れだけを胸にいっぱい抱え過ごしていたのだろう。しかし、あれから15年以上経った今は、音楽が憧れだけでは続けていけない現実を知っている。それでも諦めることなく、当時憧れていた東京の街で、今も戦い続けている。

聴かせることに重点を置いていたようなライヴ中盤だった。そして後半は、クライマックスに向けて、”天地ガエシ”からの”MOROHA IROHA”、"妄想隊員A" とバンドは一気にヴォルテージを上げるのだが、かつての<俺>を<冴えない僕ら>と歌い、<この声が嗄れたって/消せない歌届けたいよ>と、あまりに切実過ぎる想いを曝した”渦と渦”で、私の涙腺は崩壊した。Fighting NICO ツアーのコンセプトは強いて言うなら『好き放題』。だからこそ、メンバーは何かに囚われることもなく自由に演奏していたと思う。ただ、この時は確かに(それまでステージでは姿形を見せなかった)彼らの歩んできたバンドストーリーが、一気に弾けだした気がした。ニコの歌ってきた<僕>は、様々な局面で覚悟を決めてきた<僕>なのだ。

”新曲”で始まったFighting NICO ツアー浦安公演は、また別の”新曲”で締め括ることになる。古村大介(G)の鳴らすギラついたギターのリフから始まるこの曲の聴き所は、光村の気まぐれな指カウントの数でメンバーがキメるという、観ている側もハラハラしてしまう挑発的な間奏部分。あれはアレンジで遊ぶのにも程がある(笑)。それこそ『好き放題』というツアーコンセプトを強く表している曲であり、これがNICO Touches the Walls というバンドの本来の姿、いやバンドのアイデンティティなのもしれない。

アンコールの1曲目の”波”は、浅野を呼ばすにオリジナルメンバーの4人で披露された。この曲は「俺が思う浦安っぽい曲」として、光村が選んだ曲で、偶然だがこの曲の一人称も<俺>。哀愁漂う歌と演奏にノスタルジーを感じてしまい、聴いていくうちに、今度は私自身の学生時代の記憶が紐解かれてしまう。そして浅野を呼び寄せ、ホール公演の名物でもあった、古村ギターと浅野ヴァイオリンのソロ対決も行われる”THE BUNGY”へ。最終ステージでは両者見事な熱演を見せ、レフェリーに扮する光村の勝敗は2人に捧げられた。

最後のMCで発表されたのが、毎年11月25日に開催される「1125(イイニコ)の日ライブ」の詳細だった。今年の開催会場は、都内ではなく同県にある幕張メッセ。例年のチケット争奪戦を考慮して「皆が来れるように」と選別した会場だそうだ。しかし、Fighting NICO ツアーファイナルのステージで、ようやく地元千葉県浦安市に帰って来きたニコが、年に一度のお祭りであるイイニコも同県にある会場で行うこととなったその裏側には、『バンド結成13年目、メジャーデビュー10年を迎える2017年に、全ての始まりの場所千葉でライヴを行う』というもう一つの目的の存在も考えられる。つまり、2017年はニコにとって本当の意味での原点回帰になるのだろう。光村は特別言葉にはしなかったが、バンドが大きな節目を迎えていることは間違いない。

結成から13年の間に着々と増え続けている引き出しの中身を引っ張り出すと、そこには自問自答を繰り返す中で生まれた、多種多様なマスターピースが揃っていた。その中から今のバンドのモードに相応しい曲を手加減なく放出したツアーが、Fighting NICO ツアーである。『好き放題』というコンセプトであるが故、ステージを重ねる毎にメンバーのリミッターはどんどん外れてしまい、本当に自由な姿で音楽と向き合えたからこそ、ステージから漲る自信と、会場一帯を包む肯定感、そして終始一貫の祝福に、浦安市文化会館は満ちていた。だからこそ、ライヴを締め括った最後2曲、信じることの大切さを歌った”ストラト”と、<あとはぜんぶ自分次第>と歌詞を変えた”マシ・マシ”は、観客以上に、歌詞の世界を体現し続けているメンバーの心にこそ、深く響いたのではないだろうか。このライヴは誰のためのライヴだったかと聞かれたら、私は間違いなくメンバー自身の為のライヴだと答えるし、それで良いと思うのだ。だって、誰よりもこの日を待ち望んでいたのは、メンバーなのだから。

「浦安の産んだロックスター」には、最初、笑ってしまったけれど、私はそんな光村を間違いなくロックスターとして見ていた。ライヴ中に何度も片手でエレキギターを掲げた光村は、その時、勝者の顔をしていて、誰が何と言おうがロックスターの顔だった。これから先、ニコはどんな楽曲を生み出すのか。バンドの性格を考えると、こちらの予想を大幅に裏切ってきそうだけど、いちいちバンドに振り回されてしまうことこそが、ニコリスナーとしての醍醐味である。そう気づかされたのも、Fighting NICO ツアーがあったからだ。つまり、それが私は楽しみで仕方がない。


☆☆☆

set list
1 新曲
2 B.C.G
3 そのTAXI,160km/h
4 バイシクル
5 手をたたけ
6 夢1号
7 Diver
8 GUERNICA
9 Aurora(Prelude)
10 TOKYO Dreamer
11 ランナー
12 天地ガエシ
13 MOROHA IROHA
14 妄想隊員A
15 渦と渦
16 新曲

encore
1 波
2 THE BUNGY
3 ストラト
4 マシ・マシ

☆☆☆

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by musicorin-nirock | 2017-08-05 08:41 | LIVE | Comments(0)

主にNICO Touches the Walls について書いておりますが、他にはGRAPEVINE と the HIATUS が好きです。記事の無断転載、引用はご遠慮ください。


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