2014年 12月 25日 ( 1 )

12/22 the HIATUS @日本武道館

Closing Night -Keeper Of The Flame Tour 2014-

2014年3月にリリースされたthe HIATUS 4thアルバム『Keeper Of The Flame』を引っさげ、同年5月から7月にかけて行われた「Keeper Of The Flame Tour 2014」の追加公演として行われたバンド史上初の日本武道館公演。これは、バンドの結成から今日までthe HIATUSが歩んできた道を、一歩一歩確かめ、そして辿り着いた日本武道館は、大切な「お前ら」と、この素晴らしい時間を共有する。その為だけのライヴだった。

彼らの初期の楽曲から始まったこのライヴのセットリストは、フロントマンである細美武士(Vo&G)が孤独から解放されていく姿であり、先日スペースシャワーTVで放送された今回のツアードキュメントのエンディングでナレーションを務めたTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)が語りかけた言葉そのものだ。

「the HIATUSは、バンドになったんだね」

そう。この一枚のアルバムがきっかけとなり、積み重ねてきた濃厚な時間の中で、the HIATUSは本当の“バンド”になった。そして、彼らを祝福するかのように、二階席の奥までみっしり「お前ら」で埋め尽くされた光景は、結成当初はメンバーの誰一人と、想像出来ないものだったはずだ。


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舞台を覆う紗幕越しに”Interlude”が始まると、オーディエンスから沸き起こる大歓声は既に最高潮に達している。上がり続ける熱気の中を“Roller Coaster Ride Memories”を歌う細美の声がフロアを這うように行き渡り、震動させる。プログラミングと生音を掛け合わせたバンドアンサンブルは、燃えたぎる炎のように熱い。そして、“The Ivy”“The Flare”“My Own Worst Enemy”と1stアルバム『Trash We'd Love』、2ndアルバム『ANOMALY』に収録されたアイテムが、勢い良く立て続けに投下されていく。ステージ背後に設置されたLEDに流れる映像をバックにダイナミックなプレイを魅せるmasasucks(G)、ウエノコウジ(B)、柏倉隆史(Dr)。そこにナイフのような鋭さを持つ伊澤一葉(Key)の鍵盤が切り込めば、the HIATUSの創り上げた音世界は、ロックという概念を飛び出し、芸術の領域にまで達してしまっていることがまんまと証明された。

「テンション上がっておかしくなっちゃう前に言っておくわ。俺たちを武道館に連れて来てくれてありがとう!」。始まって早々に細美がお礼を述べると、”Storm Racers”をぶつけてくる。熱狂の渦と化したアリーナゾーンは、迫り来る波のようにタイバーが続々と出現。そして、さらに彼らを煽り立てるように“Centipede”“Monkeys”とハードネスなナンバーを間髪入れずにぶち込み、武道館という巨大な空間を5人のモンスターはペロリと飲み込んでしまった。

「俺、お前らの楽しそうな顔を見るのが何よりも好きなんだけど、普段はここだけじゃん?(アリーナを指さす)今日はさ、横にも上にも見えるんだよ。武道館には、何っにも思い入れもなかったけど、俺この景色超~好きだわ。こんなに良い景色見れるとは、思っていなかったよ。」

細美はアコースティックギターに持ち替え、柔らかなイントロが鳴り響く。3rdアルバム『A World Of Pandemonium』からまずは“Deerhounds”。武道館一体を溢れんばかりの多幸感で包み込むと、人間の内面へとぐっと入り込んいく“Bittersweet / Hatching Mayflies”、そして柏倉の細やかなドラミングとウエノの重たいベースが絡み合い、心地よいグルーヴを生んだ“Superblock”へと続いた。

ここで細美はとある事を試みる。

「5年くらい前に矢野顕子さんからメールが来て。電子メールね。<あなたこれ観てみなさい。>って動画のURLが張ってあって。アメリカのフェスで、聴覚障害者ブロックに手話通訳の人がいて、音楽に合わせて歌詞を通訳してて。それが、本当に最高で。日本でもやんねぇかなって待っていたけど、やる気配もないし、ロッキンでもやらないし(笑)だから今日やってみようと思って。」

と、手話通訳士の女性を招いた。彼女がこのステージに立てた喜びを細美の言葉に合わせ手話で伝えると、細美と共に“Horse Riding”を歌い始める。彼女が音に合わせ、手話通訳をする姿は、まるで音が鳴るままに自由に振る舞うダンサーのようだ。耳が不自由な人でも楽しめるライヴをやることで、彼らは一つ、私達の日常に於ける隔たりを無くした。この配慮には誰もが胸が熱くなったのではないだろうか。そして、もう一人ゲストとして、ロサンジェルスよりやって来たジェイミー・ブレイク(The Rentals)が登場。ライヴ前日に訪れたというロボットレストランが「Crazy!」だったと驚いた様子を話し和やかな雰囲気のまま“Tales Of Sorrow Street”へ。細美の声にそっと寄り添い、続く“Souls”で聴かせた二人のハーモニーは、かつてアルバムを共に創り上げた仲間としての愛情が感じられるひとときだった。

この時点でライヴ開始から1時間ほど。ここからは『Keeper Of The Flame』の世界へ導かれていった。アルバムの1曲目を飾る”Thirst“のイントロが始まると、一気に緊迫した空気が漂う。ハンドマイク姿になった細美はステージ前方ギリギリに立ち、拳を掲げ、吠えるように歌い上げると、続くエレクトロポップなナンバー“Unhurt”でフロアがぐんぐんと開放され、再び熱気が上がり始めたオーディエンスの「Away now,Away now」というシンガロングがエモーショナルな空間を創り上げた“Lone Train Runnning”。私はここで、込み上げてくる感情が涙として溢れ出し、止まらなくなってしまった。そして、マイクを離れ、響き渡る声に聴き入る細美の姿もとても印象的だった。

「今41で、この歳になると先に逝ってしまう奴らがいて。俺らだって、明日あっちに行っているかもしれないし、お前らだってそう。誰がいつ逝くかはわからねぇ。・・・今日はそいつらも、ここに来て一緒に聴いててくれるといいな。いつか俺らもそっちへ行くからよ。そんな気持ちで作った曲です。」

曲紹介の後に始まったのは“Something Ever After”だった。背後のスクリーンに流れる映像は、高速道路を走る車窓から見える景色や、広がる緑の光景。優しさがいっぱいに溢れるサウンドに乗せて、言葉一つ噛み締めるように細美は歌う。年齢を重ねていく毎に向き合わねばならない死を受け入れた時、この一瞬一瞬を生かされていることは奇跡であり、儚いものであることを、彼らは温かく伝えてくれる。そして、武道館を大きく唸らせたのが“Insomnia”。全てを出し切る勢いで莫大なるサウンドをぶつけるメンバーと、天井が突き抜けるかの如く「Save me!,Save me!」というオーディエンスの巨大なシンガロングは、未だかつて体感したことのない凄まじさだった。その余韻を引きずったままのフロアに心地良く“紺碧の夜に”のギターのイントロが響くと、再び多幸感に包み込まれ、シンガロングの嵐が起こる。今日、ここに居る「お前ら」一人一人の記憶の中に、この時間が確実に切り刻まれていくように。彼らの願いが胸のど真ん中に、直球で伝わってくる。

そして。本編ラストに選ばれた曲は、なんと1stアルバムの1曲目を飾る“Ghost In The Rain”だった。予想もしていなかったこの展開に、私の目から大粒の涙が止まらなくなってしまったのだが、一つだけ、はっきりと確信したことがある。それは、彼らの物語がここで一旦終わりを告げてしまうが、また再びこの5人で新しい物語を描き続けていくという事だ。

ライヴ中盤のMCで細美は言った。

「武道館に来るまでの間、神様っているのかなって考えてた。おセンチな話だけど(笑)、困っている奴を助けてくれるわけでもないし、すっげぇ良い奴が一番幸せになれるわけでもないし。でも、一個だけ、一個だけ神様が叶えてくれることがあって。何かを頑張ればちょっとくらいは絶対に強くなる。だから、来年もthe HIATUS頑張ります。」

それは、この言葉に繋がっていく。

ーYou carry on / The world will find you after allー
(対訳:君はそのまま進むんだ やがて世界は君を見つけ出す)

苦悩の中で生み出されたこの曲が、希望という言葉で塗り替えられた瞬間だった。真実を胸にした5人の英雄達が鳴らす、強くて感動的な“Ghost In The Rain”だった。

アンコール。
ステージに登場したメンバーが、再びそれぞれの居場所に戻った。

「エルレ(ELLEGARDEN)が休止したおかげでここに居る仲間と出会えたし、震災があったおかげて、いっぱい仲間ができた。それって“~せい”なんだけど、“~おかげ”にしないとやってられない。俺たちみたいなバカ野郎は、お前らも、下を向いて落ち込んでいたってしょうがないんだよ。ピンチをチャンスに変えてやって行くしかない。これからも、バカみたいにゲラゲラ笑って、前を向いて生きていこうぜ!」

この言葉の後、細美のエレキギターによる弾き語りから始まった“Twisted Maple Trees”。思い出すのは2012年に開催された「The Afterglow Tour」、NHKホールで行われたツアーファイナルのステージに立つ細美だ。全力を出し切り、この曲を歌い終わった後、彼は叫びそして泣き崩れたのだ。しかし、ここ武道館のステージに立つ細美は、しっかりと前を見て、時折笑顔を覗かせながら、気持ちよさそうに歌い、クライマックスにかけての盛り上がりは、長編映画を見終えた後のような興奮と感動をオーディエンスにもたらした。

そして、荘厳な空気に染まったフロアに清らかな水が注がれるよう“Silver Birch”のイントロが鳴り響く!細美によって紡がれていく一言一言に合わせ、この日何度目なのかわからない盛大なシンガロングが沸き起こり、武道館一体が輝き出す。演奏を終えた5人はステージ前方へと集まり、堅く繋いだ手と手を掲げ、深々とお辞儀をして颯爽とその場を去った。ステージ袖に向かうとき、お互いの肩を叩き合っていた姿は今でも目に焼き付いたままだ。

これで最後・・・と思いきや再び止まないアンコール。そして、すぐに応えてくれたthe HIATUS。

「武道館のこの景色は気に入ったけど、やっぱ、俺たちには似合わねぇ。お前らも遠いし。次会うときは、どっかの街の小汚ぇ路地裏で会いましょう!」

マイクレスでオーディエンスに向かって叫んだ細美。“Waiting For The Sun”のラストに起こったコール&レスポンスでは、まるで宙にオーディエンスが伸ばした手とメンバーの手が、がっちりと繋がれたようだった。再びthe HIATUSと会えること。ここにいる全ての人が、期待を胸に帰路に就いた事だろう。


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ヒットチャートを賑わせるような音楽シーンとは一線を引き、頑なに自分達を貫いてきた、それが形となった夜だった。同じミュージシャンとは言え、畑違いの5人が集まり、既に手にしているものを差し出しながらthe HIATUSを通じ学び得たものの全てが熟成された音となり、喜びと共に鳴り響いていた。今回の日本武道館公演は、私が今まで観てきた数多くのアーティストのライヴの中でも、桁違いのレベルに達していると実感し、具体的に世界進出を考えても良いのではないかと思ったのだが、細美が肉声で伝えた最後の言葉の後に、笑顔で拍手をする柏倉の姿が見えたとき、彼らの意志は誰に何を言われようが固まっているように思えた。日本武道館の大きなステージに立つthe HIATUSも、とある街の小さな箱のステージに立つthe HIATUSも何一つ変わらない。「お前ら」の笑顔が見られるんだったら、彼らはいつでもどんな場所でも、私達の目の前にずっと立ち続けてくれるのだ。

私にとっても、一生忘れられない、とても大切なライヴとなった。
the HIATUSのメンバーに心の底から「ありがとう」とお礼を述べたい。



Set List
1 Roller Coaster Ride Memories
2 The Ivy
3 The Flare
4 My Own Worst Enemy
5 Storm Racers
6 Centipede
7 Monkeys
8 Deerhounds
9 Bittersweet / Hatching Mayflies
10 Superblock
11 Horse Riding
12 Tales Of Sorrow Street (with Jamie Blake)
13 Souls (with Jamie Blake)
14 Thirst
15 Unhurt
16 Lone Train Running
17 Something Ever After
18 Insomnia
19 紺碧の夜に
20 Ghost In The Rain

encore 1
1 Twisted Maple Trees
2 Silver Birch

encore 2
1 Waiting For The Sun


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by musicorin-nirock | 2014-12-25 18:37 | LIVE