カテゴリ:LIVE( 49 )

10/14 the HIATUS @ Blue Note TOKYO ~ 1st Stage ~

普段the HIATUSのライヴに行くと、感情という感情が全て放出されてしまうくらい、私はめちゃくちゃ興奮させられる。彼らは楽曲のスケールのデカさも相まって、観る側も覚醒してしまうくらいもの凄いライヴをする、稀ないロックバンドだ。しかし、伊澤一葉(Key)の奏でるグランドピアノの演奏をSEに、黒いスーツ姿に身を包んだメンバーが登壇すると、ジャズクラブの名門・Blue Note TOKYOならではの格別な音楽空間が広がった。

最新アルバム『Hands Of Gravity』の楽曲を中心に、新旧織り交ぜたセットリストで繰り広げられた約70分間の短いステージは、楽曲の壮絶さやスケール感ではなくて、メロディの美しさにスポットを当て続ける臨場感あるアンサンブルが、しっとりとオーディエンスを魅了させる。

聞き応えのある伊澤の生ピアノがジャジーでアダルトな雰囲気を演出し、1人革のジャケットを羽織りパンクスのプライドを胸に掲げるmasasukes(G)が1音1音繊細にギターを鳴らした。最新アルバムでは作曲も手がける柏倉隆史(Dr)が、そのメロディを歌うよう滑らかにリズムを刻むと、MCの助け船としても登場したバンドの最年長・ウエノコウジ(B)が渋いグルーヴを放つ。「ギターを弾かずに歌う」という意志を持ってライヴに挑んだ細美武士(Vo&G)は、メンバーに演奏を委ね、歌に全神経を注ぐ。その歌声はとても自由で、豊潤な表現力で大きな花を咲かせていた。


***


9月13日、STUDIO COASTで観た『Hands Of Gravity TOUR』のMCで細美は「酒を呑んでも呑んでも声が出る」などとオーディエンスを沸かせ、言葉通りの凄まじい歌唱を披露した。コンディションを整える為の見えない努力もあるに違いないが、それだけ歌に対する意識がここ数年で変わったように感じる。その大きな理由が、昨年より始動させたやんちゃなロックバンド、MONOEYESの存在だ。全くモードの違う2バンドのフロントマンとして生きる細美は、今日本で一番忙しいミュージシャンと言ってもおかしくない。しかし、今の彼の歌声を聴いていれば、音楽人生の充実であることがはっきりとわかるのだ。

そして彼の充実がメンバーにも伝染し、今公演にて5人が起こした最大のハイライトが、喪失感と孤独の最中で生まれた初期楽曲を見事に生まれ変わらせたことだ。ライヴのオープニングを飾ったのは、<I'm trapped inside infinity / And have lost sight of a trinity(対訳:僕は無限の中に捕らえられて/3人組を見失ってしまった)>と当時の細美の心情を痛感させられる”Centipede”。彼らの1stアルバム『Trash We'd Love』に収録され、近年ライヴで披露されることは滅多にない。しかも、今回はイントロを聴いただけでは何の曲か全くわからず、細美が歌い出してやっと気づかされる始末。その変貌振りに思わず感嘆の声を漏らしそうになれば、何故この曲が1曲目に選ばれたのか戸惑った。それでも、威嚇のようなエレキギターは聴こえず、夜空に浮かぶ星屑のような輝きを放ち、色気と哀しみが混同する濃紺のブルースに、心が大きく揺さぶられた。

その後も、次から次へと曲が始まるごとにを強烈に実感させられたのは、5人の途絶えることのない音楽への情熱だった。the HIATUSは結成して7年が経ち、同時にメンバーも同じ年数歳を重ねている。当然、若さは失われ、懐古的な気分に陥る時もきっとある。しかし、このバンドの音楽への好奇心やチャレンジスピリットは衰えることを知らない。音楽を生業にしている身であるし「当然だ」という面持ちで5人はステージに立っていたが、その姿が全く傲慢にも嫌みにも感じなかったのは、一貫してチケット代2600円を守り、キャパの小さいライヴハウスのステージに立ち続けてきたからだ。

Blue Note TOKYOという高貴な場所であれ、泥臭い己の精神を彼らが曲げることはない。細美は高いチケット代を払い、今日のステージを観に来てくれた事に心からの感謝を述べていた。また、次の回に来るオーディエンスの楽しみを奪わないためにも「セットリストをライヴが終わるまでは、ネットに上げないで欲しい」と訴えかけ、実際に10月22日のMotion Blue YOKOHAMA公演終了まで、セットリストがネット上に出回ることはなかった。これはSNS時代と呼ばれる今のご時世、本当にあり得ないことである。それを可能に出来たのは、今まで培ってきたオーディエンスとの強い信頼関係が彼らにはあるからだ。

***


アンコールの”Insomnia”は、聴き手の心に明かりを灯すような優しさが生まれていた。

本来この曲は、<僕は無限の中に捕らえられて/3人組を見失ってしまった>と嘆く1人の男が<Save me!>と、どん底から声を上げる歌だ。しかし、男は音楽を信じ、信頼できる仲間と共に音を鳴らせる喜びを知り、精神的なタフネスを手に入れた。

細美の抱える喪失感が、消えたとは思わない。しかし今は、彼を音楽に向かわせる「一部」になっているのではないだろうか。だから、最大の武器である歌声を自由に羽ばたかせ、今は希望の歌として<Save me!>とオーディエンスと共にシンガロングができるのだろう。この光景を目の前に、満たされたもの感じた。私に生まれた感情を言葉にするのなら、幸福と呼ぶのだと思った。きっとメンバーも会場に集まっている誰もが、そう感じていたはずだ。


***


the HIATUS。このバンドの精神性に救われ続けている私は、彼らの音に頼ったり、時に敢えて突き放したりしながら、バランスを取って生きている。そんな中でも、心に余裕が無くなってしまい、どんなに好きな彼らの音でさえも耳に入って来ない時期があった。私は音楽の力が全てだと信じていたが、やはりそれは全てではなくて、人が立ち上がるための一つ手段でしかないと身をもって知ったのだ。正直、これまでにも「そういうものなのかもしれない」と腑に落ちる瞬間が訪れたこともある。それでも、音楽は決して無力ではなかったから、私はライヴへ通う。そして、音楽に無限の力があるんだと強く体感したのが、最新アルバム『Hands Of Gravity』であり、先述したSTUDIO COASTでのライヴだった。

今回のBlue Note TOKYO公演では、the HIATUSが生み出してきた楽曲の素晴らしさに心を打たれ、目の当たりにしたプレイヤーとしての技術力に感嘆し、何より純粋にthe HIATUSが好きだという気持ちを、初めて彼らの音を聴いたかのような興奮と共に味わうことができた。それが一番の喜びだった。ライヴハウスの爆音よりも、少し小さな音を鳴らす5人。だからこそ、彼らを至近距離で感じられるこの空間の温かさに私は泣いた。特別、辛いことや悲しいことがあったわけではない。ただ「いつだって、またここに来れば良いじゃないか」と優しく肩を叩いてもらったようで、それだけの理由で涙が出た。

演奏を終え、オーディエンスとハイタッチしながら満足げに会場を去って行く背中から、終わりなき挑戦者達の旅が、また再び始まる予感を私はしかと感じ取る。

会場を出て表参道駅へと向かい、知人と別れ地下鉄に乗った。「さあ。顔を上げて行かなくちゃ」。私の心にも新しい追い風が、すでに吹き始めていた。


***


f0342667_11210568.jpg


[PR]
by musicorin-nirock | 2016-10-29 21:02 | LIVE | Comments(0)

10/4 NICO Touches the Walls @豊洲PIT「『弱虫のロック論2(仮)』リリースパーティ」





今から2年前、2014年の2月。NICO Touches the Wallsは東京・原宿にあるギャラリーを貸し切り、篭城型ライヴ『カベニミミ』を敢行した。1ヶ月間週5でステージに立つという前代未聞の挑戦。そして、同時期にリリースされたベストアルバムに収録され、翌月シングルとしてもリリースされたのが「ローハイド」という曲である。

この曲の主人公はNICO Touches the Walls自身だ。

自ら嵐に打たれに出掛けていったような日々を<駆け抜けろ>と歌い、後に二度目となる日本武道館公演のリベンジを果たし、大きな飛躍を遂げることになるニコの濃厚な物語のはじまりの歌でもある。

10月4日、音楽評論家・平山雄一氏が自身の著書の発売を記念し東京・豊洲PITで開催された『「弱虫のロック論2(仮)」リリースパーティ』で1曲目にニコが演奏した曲は「ローハイド」。それは原曲とは一味も二味も違う、素晴らしいアレンジが施されていた。

荒野に吹く風らしき音を流しながら、荒いアコースティックギターを掻き鳴らし、光村龍哉(Vo&G)は歌い始めた。抱える不安や孤独感を、ただ吐き出すように歌うのではなくて、真摯に向き合い受け止めていくような逞しい歌声だ。サビに近づくとダンダンダンダンと力強くバスドラが響き渡り、その歌声は勢いを加速させた。

  駆け抜けろ この荒野 
  独裁者 俺を解き放てばいいさ
  準備オーライ? 準備オーライ?
  ろくでもない やんちゃな夢 追いかけたい

  準備オーライ 準備オーライ
  いざローハイド

1番が終わるタイミングで、耳なじみのある煌びやかなギターのイントロが始まる。瞬く間にフロアに広がる多幸感。音の光の中へと吸い込まれて行くオーディエンス。私の目の前には、とても美しい景色が広がっていた。

曲を明暗に分けた今回のアレンジには、強い訴求力があった。
何より、バンドの軌跡の裏側にあるものを隠そうとはしないニコの姿勢から、彼らの本質を見た気がした。

***

振り返ってみれば、「ローハイド」をリリースしたばかりのニコはただの弱虫だった。

先に述べた『カベニミミ』も、若さと勢いがあったからこそやり通せたもので、精神的・肉体的な疲労やストレスを考えれば、誰もが無謀だと言う挑戦だ。しかし、なんとしても当時の現状からニコは脱却したかったのだろう。『カベニミミ』が、バンドをさらにタフにしたことは事実であるが、敢行する決断の裏側には、大きな危機感もあったのではないかと思う。その後も相変わらず遠回りを繰り返していたが、その分何度も脱皮できたからこそ、楽しさと、ロックバンドとしての説得力を感じさせるライヴができるようになった。そして、ニコの音楽が確実にリスナーの心を掴み、生きる希望や勇気を与える存在へと成長していることは、最新アルバム『勇気も愛もないなんて』や、シングル「ストラト」を聴けば、一目瞭然である。

私は『「弱虫のロック論2(仮)」リリースパーティ』というイベントタイトルを見た時に、ニコがこのイベントに呼ばれたことと(大袈裟ではあるが)良い意味で運命的なものを感じた。その時はただ、決定的なものを掴んだわけではなくて、ぼんやりとそう感じていただけなのだが、この「ローハイド」を聴いた時に確かな理由が見えてきた。弱虫の決断は、バンドの運命を変えた。そして彼らの音楽は、リスナーの日常に光を照らし続けている。これは、弱虫が手に入れた最大の強みであり、ロックバンドとしての然るべき姿だ。

また、この日は暫くライヴで披露されていない、活動初期の楽曲も披露された。スタイリッシュなギターのカッティングをフックとなり、ゴリっとしたの低音が絡む都会的なグルーヴで沸かせた「anytime,anywhere」や、素朴な言葉を光村が色っぽく歌い上げた「梨の花」など。聴いていると、メンバーの20代前半だった頃の姿と重なり合う瞬間もあったが、ステージに立っていたのは音楽とフラットに向き合う姿が自然体なグルーヴを生む30代のニコだった。

残念ながらイベントの途中で私は離脱せざるを得なかったのだが、また来月、年に一度のあのお祭りでニコと再会したい。そして、新たな季節が訪れているニコを、これからも見届けていきたいと思う。


[PR]
by musicorin-nirock | 2016-10-06 21:48 | LIVE | Comments(0)

1/8 NICO Touches the Walls LIVE SPECIAL 2016 ”渦と渦~東の渦“@ 日本武道館

     
f0342667_22294403.jpg


2006年1月8日、NICO Touches the Wallsは東京・下北沢にあるライブハウス「下北沢club 251」にて初めてのワンマンライヴ『成人前夜』を開催した。その日、集まったお客さんは264人。それから10年後の2016年1月8日、彼らが立つステージは3度目の日本武道館だ。過去2回の武道館公演『チャレンジ』と『リベンジ』を経て、集まった約8,000人のオーディエンスを目の前に掲げたテーマは『アレンジ』。「武道館を俺達色にアレンジしてやります!」と冒頭のMCで意気込む光村龍哉(Vo&G)の言葉のとおり、鳴らされるバンドサウンドと共にこだわり抜かれた映像や照明を駆使しながら、一曲一曲の背景を描く。結果的に、武道館は彼ら一色に染め上げられてしまい、まるで『NICO Touches the Walls』という一本の映画を観ているような、とても丁寧なライヴだった。何よりこの『アレンジ』こそ今ではNICOの個性でもあるが、ほぼ原曲に近いままで披露された曲も一層の輝きを放っていたのは、ここ数年間の活動による精神的な成長が大きく関わっているからだろう。

また、11月に右手を負傷した古村大介(G)の復活ライヴでもあった今回の武道館。ステージの上は無事4人で立てたことへの安堵に溢れ、メンバー間で目配せし合う場面も通常より気持ち多かったように思う。逆に、どことなく伝わる緊張感も、NICOがこの4人でなくてはならない理由の一つなのだと実感した。MCで『成人前夜』から10年経ち、今武道館に立てていることを振り返りながら笑顔で「続けてきて良かった!」とこぼした光村からは、これまでのバンドの軌跡が肯定され、ずっと夢に描いていたようなライヴができることへの喜びが感じられた。そして、全体的にどっしりとした安定感ある演奏だったことも印象強く、本格的にNICOが30代に突入したことを気づかされたライヴでもあった。

***

場内が暗転すると、ステージ中央に設置された白い筒状の幕に、アニメーション作家・加藤隆氏によるアニメーションが流れ始めた。ハットを被った青年(光村に似ている彼)が“口笛吹いて、こんにちは”のメロディを口笛で吹きつつ街を闊歩していると、突然、渦に吸い込まれ降り立ったのは「渦の街」。そして、先にスタンバイしていたメンバーによって“渦と渦”のインストVer.が披露される中ゆっくりと幕は上がった。堂々の開幕宣言は『リベンジ』を果たせたからこそできる“天地ガエシ”。ところが“Broken Youth”で始まった前回の武道館のように、のっけから客席に噛みつくような勢いがなく、ステージに立つメンバーの様子はどこか物腰が柔らかい。それは続く“まっすぐなうた”も同じだった。先陣切ってバンドを引っ張る対馬祥太郎(Dr)がパワフルなドラミングを響かせるが、アッパーなビートのままに駆け抜けるのではなくて、メンバー全員、一音一音を確実に聴かせることを強く意識しているように見えた。そして、骨太なバンドサウンドに乗る健気な言葉がひたすら胸に迫ってきた“ランナー”は、音楽で食べていくことを夢見ていた10代の自分達に捧げられているような気がして、一皮むけたNICOの姿に少し感動してしまった。すると、聴きなじみのあるキラキラとしたエレキのイントロが…そう、“ローハイド”のイントロが会場いっぱいに広がり、古村と坂倉心悟(B)がステージ前方まで歩み寄ってきた。この日、私の座席はアリーナ指定席の前から2列目。ちょうど目の前が古村の立ち位置にあたる場所だった。軽やかなステップを踏みつつ笑顔で歌詞を口ずさみ、ギターを弾きまくる姿からは、バンドやギターが大好きであることがわかる。そして、感極まる寸前の表情すら隠そうとはしていない。そんな古村が鳴らすフレーズには、様々な想いが込められているようで、私は涙を堪えることができなかった。

ここでいったんMCが入り、怒涛のメガミックスがスタート。“バニーガールとダニーボーイ”を皮切りに、インディーズ時代の名曲“泥んこドビー”、ライヴの必須アイテム“N極とN極“が投下され、フロアの熱気がぐんと上がる。また過去2回の武道館でも歌われてきた“Broken Youth”もここにて登場。自らの歴史を刻んだ証も忍ばせるところが、このバンドの憎めない性格でもある。変拍子の原曲とはガラリと雰囲気を変え、落ち着いたディスコビートに合わせ光村が妖艶な歌声を放った“ストロベリーガール”、古村のロカビリータッチなエレキを合図に躍動感極まる豪快なアンサンブルをきめた“THE BUNGY”ときて、個人的にメガミックスで一番感銘を受けたのが“夜の果て”だ。ひっそりとした静寂を感じさせる前半から、疾走感溢れるビートに切り替わり、バンドさらに加速する。ミラーボールが回り始め、会場一帯に光の粒が広がる中迎えたクライマックスは<無情な夜空の星に吸い込まれて揺れてる>主人公が闇から解放される心情を客席に体感させていくようで、非常にドラマチックな時間だった。ラストはジャジーなギターが色気で魅せる“行方”で大人っぽい締めくくり。活動初期の曲中心で構成され、今やNICOのライヴでは滅多に聴けない曲の登場が続き、想像以上の聴きごたえがあった今回のメガミックス。他サイトのライヴレポートによると約40分にわたっていたらしく、ノンストップで歌いこなした光村の怪物っぷりにも驚嘆した。

再び入ったMCでニューアルバム『勇気も愛もないなんて』のリリースが発表され、鶏の映るアルバムジャケットも公開。撮影現場でのエピソードなど和やかに話しつつも、なぜ「勇気と愛」を伝えたいのか?という経緯を話し始め、そして、集まったオーディエンスへのお年玉としてアルバム収録曲を2曲披露。1曲目は突き抜けるような爽快感を携えた、ポップで軽快なナンバーで、2曲目はアコギが哀愁漂わせる、しっとりとした大人っぽい曲だった。

ステージの背後には巨大なスクリーンが設置してあり、そこに再び加藤隆氏のアニメーションが流れ始めたのは“TOKYO Dreamer”の時だ。オープニングで登場した青年が街を歩いていると<32連のジオラマ>や、ダンスする少女と出会う。前回の『リベンジ』では、NICOは新たな決意表明としてこの曲をアンコールで演奏している。しかし『アレンジ』で聴かせたものは、このファンタスティックな世界を包み込むような、温かみのあるサウンドだ。そして、スクリーンに今宵一番熱い名シーンが映し出されたのが“ニワカ雨ニモ負ケズ”の時だ。炸裂する光村のスキャット。光村から一切視線を逸らさずエレキを弾き続けた古村の集中力。互いに火花を散らし合い、売られたケンカには果敢に挑み合う壮絶な間奏シーンに、私は思わず息を呑んだ。そして、捻くれ者のロックンロール“バイシクル”と、色褪せることないフレッシュさで放たれた“ホログラム”という彼らの王道を畳み掛け、いよいよ本編ラストの“渦と渦”が登場した。この曲に潜む「人を巻き込ませる威力」は今回の『東の渦』と、5月6日大阪城ホールで開催される『西の渦』で発揮される。その第一弾として渾身のパフォーマンスを見せた4人は、武道館を大いに唸らせた。思い残すことなくすべてを出し切ることができたのだろう。光村のギターの弦は、ここで切れた。

鳴りやまない拍手と歓声に迎えられステージに現れたメンバーは、生まれ年の「1985」がプリントされたスウェットを揃って着用。もちろん、アンコールの1曲目は“僕は30になるけれど”。威勢の良いアコギに合わせオーディエンスのハンドクラップが盛大に響き渡る。2曲目の“手をたたけ”は久しぶりのバンドVer.。ハンドクラップに加わるオーディエンスのシンガロングと共に、今この瞬間を鳴らしていく。そしてアンコールラストは、アルバムに収録予定の、まだアレンジも決まっていないという新曲を光村の弾き語りで披露された。爪弾かれるアコギの優しいメロディの上に乗るのは、初見でも脳裏にその情景が思い浮かび上がるほどの恋する切なさが胸に迫る、どストレートなラブソングだった。

「孤独と夜」を歌い続けてきたNICOが「勇気と愛」を伝える選択。これは音楽家として生きる彼らの、とても大きな成長だろう。歌い始める前、自分の「捻くれた部分も(曲に)出していきたい」とすら正直に話した光村は、どこかほっとしている表情にも見えたが、産まれて間もないラブソングを一人武道館のステージで堂々と弾き語ること自体、ミュージシャン人生を全うするために何か大きな決断を下した、その証に見えた。個人的な事を言えば、孤独と向き合い、はち切れそうな胸の内を吐き出すNICOの青きブルースが好きであり、アンコールラストのラブソングには正直、動揺した部分もある。しかし、私にとって初めて観たNICOのワンマンライヴであった、2012年開催の『1125(イイニコ)の日ライブ』から約3年間、変わり続けるNICOの姿を見届けてきた中でも、今回の日本武道館公演が一番泣けて、私は心の底から感動したのである。

私の思う今のNICOの魅力とは、得たもの全てを音で表現できるポテンシャルの高さと、泥臭い部分まで隠さず見せてくれるようになった素直さだ。そして、そんな彼らから多くのものを私が受け取ってきた事実が、今「信頼」として蓄積されていることを今回の日本武道館公演後に実感し、だから、「勇気を愛」を歌う彼らが見たいと切実に思ってしまうのだ。ニューアルバム『勇気も愛もないなんて』の発売日は3月16日。それに先駆け同月4日からは全国ツアーもスタートする。勇気と愛を伝える使命を掲げたNICOの2016年は、明るくて楽しいものになるだろう。流行り廃りも関係ない、聴き手の心に永遠に寄り添い続けてくれる「本物の音楽」を彼らは届けてくれるはずだ。

SET LIST
1 天地ガエシ
2 まっすぐなうた
3 ランナー
4 ローハイド
5 バニーガールとダニーボーイ
6 泥んこドビー
7 N極とN極
8 Broken Youth
9 ストロベリーガール
10 THE BUNGY
11 夜の果て
12 行方
13 新曲
14 新曲
15 TOKYO Dreamer
16 ニワカ雨ニモ負ケズ
17 バイシクル
18 ホログラム
19 渦と渦

ENCORE
1 僕は30になるけれど
2 手をたたけ
3 新曲


[PR]
by musicorin-nirock | 2016-01-24 10:44 | LIVE | Comments(0)

12/29 GRAPEVINE @ COUNT DOWN JAPAN 15/16

相変わらず飄々と彼らはステージに現れた。

来年2月3日発売される「節分アルバム」『BABEL,BABEL』と4月から始まる全国ツアーの告知ぐらいの言葉数少ないMCは、いつもより、ちょっぴり素っ気なかった。

しかし、淡々と、黙々と、演奏される一曲一曲が放つ存在感は、物応じできない程に聴き手を圧倒させてゆく。

「GRAPEVINEのかっこよさは、これなんだ」

***

ライヴは挨拶代わりの“光について”から始まり、田中和将(Vo&G)と女王様の絡みPVで話題騒然となった”EVIL EYE”のキワどいロックンロールで早々にフロアを揺らした。そして、今回ライヴで初お披露目となった新曲”EAST OF THE SUN”は、田中がつま弾くアコースティックギターに、西川弘剛(G)が鳴らすエレキギターと高野勲(Key)のトリッキーなシンセが重なるイントロから、鮮やかに、繊細に、一音一音紡がれてゆき、メロディメーカー亀井亨(Dr)の腕が光るメロディの美しい名曲だった。冬のソングとしてお馴染みの”Our Song”で、<ぼくらは/ねえ/何が見たくて/全てを欲しがって/きたんだっけ>と、ドラマティックに歌い上げた田中の声は胸に迫るものがあり、”スロウ“の厚みあるギターサウンドからは、ひしと貫録を感じさせられた。

人の心に必ず何かを描き続けるGRAPEVINEのライヴは、ゆったりとした流れの中で、MOON STAGEに集まったオーディエンスを、完全に異空間へと引き込ませてしまう。

だから、COUNT DOWN JAPAN 15/16 (以下CDJ)の多くのステージで見られるような一体感を味わう光景は、当然一度も訪れなかった。シンガロングにハンドウェイブ、かつては彼らのライヴでもよく発生していたモッシュですら、今はもう、ほとんど起こらない。もちろん、曲に合わせ歌詞を口ずさんている人もいたし、拳を上げている人もいた。しかし、曲が終わるごとに盛大な拍手が響き渡り、バンドとオーディエンスに通ずる何かが確実にあった事が証明される。そんなライヴだった。

ただ、CDJのような今の音楽シーンのど真ん中に位置するロックフェスに、GRAPEVINEのようなバンドが出演することは、今やもう稀に映る時代なのかもしれないと思った。CDJの各ステージの盛り上がる様子を覗いてみると、そう思わざるを得ない場面に私は何度も遭遇した。実際、GRAPEVINEの裏ではMAN WITH A MISSION、KEY TALK、DJ やついいちろうのステージが繰り広げられており、集客状況に関して厳しいものがあったことは事実だ。そしてそれは、彼らと共に青春を過ごしてきた私にしてみると、寂しさを感じる現実だった。

それでも、ラストソングの”Silverado“が、フロア一帯をあたたかく包み込めば、まるで、新しい年へと続く彼らの旅路を、しかと照らし出すようで、年々研ぎ澄まされていくバンドサウンドと共に過ごした約30分間は、その場を離れるのが惜しい程の感動と余韻を残していった。

変化の激しい世界の中にいても、ぶれることなく自らのスタイルを貫き続けるGRAPEVINEは、私にとって、いくつになってもロックヒーローのなのだ。2016年、2月にはアルバムリリースに付け加え対バンイベントが、4月からは全国ツアーが決定している。今年もこうして、彼らの新しい音楽と出合える喜びを糧に、私は日々、過ごしていきたいと思う。





SET LIST
1 光について
2 EVIL EYE
3 EAST OF THE SUN
4 Our Song
5 スロウ
6 Silverado


[PR]
by musicorin-nirock | 2016-01-03 11:10 | LIVE | Comments(2)

12/19 BONNIE PINK @ Zepp Tokyo

9月21日、場所は渋谷公会堂。シンガーソングライターBONNIE PINK(以下ボニー)のメジャーデビュー20周年記念日に開催された一夜限りのスペシャルライヴ『BONNIE PINK 20th Anniversary Live "Glorious Kitchen"』。このライヴは、彼女の赤毛時代(活動初期の頃)の楽曲を軸に構成されたセットリストで、会場に集まったファンと共に20年を振り返り、その一つ一つを噛み締めるような感慨深い内容だった。

ライヴ後半のMCで、長年「ファンと一緒の時を歩んできたことに歌いながら気づいた」という彼女の言葉がとても印象的であったことと、彼女を産み育ててくれたご両親への感謝の言葉の後に、最初期のシングル"Surprise!"を本編ラストに披露した姿を観て、10年前、20年前の自分よりも年齢を重ね、当時のようにいかなくなることもあるけれど、だからこそ、20年という大きな区切りが、初心を取り戻させてくれる、本当の新しいスタートなのだと教えられた。

そして、彼女のデビュー20周年を記念し開催された全国ツアー『BONNIE PINK 20th Anniversary TOUR 2015』、そのファイナルに当たる12月19日、Zepp Tokyoのステージは、まるで彼女のが主催するパーティーに招かれたような弾けた楽しさに溢れ、今のボニーの魅力が存分に味わえるステージだった。

長年、彼女のバックバンドとして活躍する八橋義幸(G)、鈴木正人(B)、白根賢一(Dr)、奥野真哉(Key)(バンド名はBAD BAD BOYS)という名プレイヤーによる貫録の演奏と、ボニーが艶やかな歌声を放つと、一曲一曲がキラキラと輝く宝石のような完成度で、一曲一曲聴き終えるたびに私はいちいち感極まってしまう。

彼女はファンに苦労を見せるタイプではない。関西出身の明るいキャラクターで鋭い突っ込みをバンドメンバーにふっかけながら、和やかにステージを進めていく。けれど、20年間、常に丁寧に曲を作り続け、絶えず愛を注ぎながら、一曲一曲を大切に歌い続けてきたのだろう。ステージ上から終始溢れる多幸感が、逆に彼女の音楽に対する真摯な姿勢を私には見せてくれた。

大ヒットしたシングル曲も、久しぶりに耳にしたアルバムの中の一曲も、どれもこれも名曲揃い。ロックにソウル、ファンクにジャズ。そしてR&Bという、ジャンルレスなボニーの楽曲。その中で主人公たちは、恋に落ちたり、失恋したり、立ち上がったり、へこんだりと忙しい。正しくそれは現代を生きていく人々の生々しい姿である。10年以上ボニーの曲を聴いてきた私にとって彼女の曲は人生の写し鏡であり、ライヴ中に、とあるキツイ失恋の記憶が蘇ってきてしまい、思わず涙をこぼしてしまったけれど、彼女の楽曲から湧き出す親近感には、随分と救われてきたのだなと改めて思った。

しかし、最近の彼女からは、ポジティヴなエネルギーが強く感じられる曲が多く、先日配信された"Spin Big"は、女性らしさの中にも、どこか野性を感じさせるアコースティックサウンドで、一歩外に踏み出す勇気を聴き手には与えてくれる。そんなボニーの楽曲の進化からは、年齢を重ねた分だけ女性は強くなることができ、どんどん余計なものがそぎ落とされ、本当に大切にしたいもの、表現したいものが見えてくるのだと気づかされる。

「来年はアルバムをリリースしたい!」と意気込んでいたボニー。21年目の彼女への期待は高まるばかりだし、またライヴ会場で会えることを私も願っている。



"Spin Big"

f0342667_12334827.jpg

[PR]
by musicorin-nirock | 2015-12-20 12:16 | LIVE | Comments(0)

11/19 YUKI@日本武道館

千葉・東京・大阪で行われた『YUKI LIVE dance in a Circle '15 』。そのツアーファイナルである11月19日、日本武道館。開演時間の18時半から21時までの2時間半、アンコールなしで行われた怒涛のロングパフォーマンスは、YUKIの代表的なヒットソングのオンパレードで、どこを切り取ってもライヴのクライマックスを迎えているような、壮絶な盛り上がりを見せた。

JUDY AND MARY時代から20年以上女性ヴォーカリストの第一線に居続けているYUKIには、当然ながら、並々ならぬ苦労や努力がある。しかし、常に好奇心旺盛で、何事にも果敢に挑み、ひたすら目の前にいるオーディエンスを楽しませ、愛を歌い続ける姿からは一切、彼女の抱える苦悩など感じさせる余地がなかった。YUKIという楽器が鳴らす音楽は、人間の抱える痛みや悲しみを、そっと優しく包み込む。そして、「私がいるから大丈夫!」「私に付いて着て!」と、オーディエンスの手を取るようステージを展開していくのだ。

YUKIの描く音世界にはネガティヴは存在しない。多幸溢れる空間は、ワクワクする気持ちを思い起こさせ、日々、忙しく生活していると忘れがちなことに、たくさん気づかされていく。好きな人には「好き」ということ。大切な人を大切にすること。そして人を愛すること。YUKIは人が人らしく生きることを、もっと原始的な意味を含ませて、それが自分の使命であるかのごとく、私達に伝え続けていた。

最後の最後に“WAGON”を歌い切ったYUKIは必死で涙を抑えていた。かつて、コンディションが不安定で思うように声が出ない時期もあったが、この日は、私が知っている中でも、これまでのキャリアの中で一番最高の歌声だったのではないかと思った。また、堪えていた涙が突然あふれ出してしまったYUKIも、同じことを思っていたように感じている。

年齢を重ねていけば重ねたぶんだけ、自身の音楽への可能性を広げ、魅力が倍増しているYUKI。それは、自分に対しストイックに接し続けている成果であり、彼女がを成し遂げ続けていることは決して誰もができることではない。しかし、私が10代の頃から一番憧れているYUKIが今もなお、輝き続けていてくれることは、どんなことにも勝る大きな励ましだった。だから、YUKIを聴いていると、かの有名なクラークの言葉『Boys be ambitious』ならぬ『Girls be ambitious』という言葉が私の頭には浮かんでくるのだ。


f0342667_16534490.jpg
SET LIST
1 プリズム
2 ロックンロールスター
3 ふがいないや
4 JOY
5 誘惑してくれ
6 好きってなんだろう…涙
7 キスをしようしょ
8 ハローグッバイ
9 tonight
10 愛に生きて
11 COSMIC BOX
12 ドラマチック
13 Home Sweet Home
14 ハミングバード
15 ひみつ
16 恋愛模様
17 Hello!
18 星屑サンセット
19 Night & Day
20 ランデヴー
21 ワンダーライン
22 鳴いてる怪獣
23 歓びの種
24 WAGON



[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-22 17:30 | LIVE | Comments(2)

11/6 Nothing's Carved In Stone@ 豊洲PIT

Nothing's Carved In Stone(以下NCIS)が2015年8月にリリースしたアルバム『円環ーENCOREー』は、同年3月から3か月に渡り開催された、全6枚のオリジナルアルバムを全曲披露したライヴ『Monthly Live at QUATTRO』より、ファン投票で決められた上位17曲を収録するライヴアルバムだ。結果的にバンドの軌跡を辿る内容となっており、ファンと共に作り上げたベストアルバムと言っても良いだろう。そして11月6日、東京・豊洲PITで開催された『円環ーENCOREー』再現ライヴでは、加えて「シングルのc/wも全て演奏する」と事前にアナウンスがあった。つまりNCISは今年、これまでにリリースしてきた全曲を演奏することになった。結成7年目を総括する上でも、新境地を切り開いた7thアルバム『MAZE』制作の上でも、大きく関係しているこのアルバム。激動の2015年最後となるワンマンライヴに『円環ーENCOREー』再現ライヴを行うことは、彼らにとって大きな意味のある出来事だったに違いない。また、会場を訪れたオーディエンスにとっても特別な時間であったと思う。終演後、堂々とステージを成し遂げたメンバーの姿がいつも以上に眩しく、本当に素晴らしい夜だった。


***


ライヴは“Isolation”からスタートし、メンバーは期待溢れるフロアに牙を向け、勢い良く噛みついてきた。気迫のこもったバンドサウンドに煽られたオーディエンスが<Now is everything>とレスポンスをステージへ送ると、村松拓(Vo&G)は拍手で応える。そこに“ツバメクリムゾン”“Crystal Beat”と立て続けに投下され、バンドもフロアも共にヴォルテージが急上昇。そして、流れるような生形真一(G)のリフの裏でトビウオの様に日向秀和(B)のベースが飛び跳ね、大喜多崇規(Dr)が緻密なドラミングを披露した“The swim”。奔放に降り舞う3人が編み出すサウンドに乗る村松の伸びやかな歌声が、会場一面を駆け巡ると一気に開放感で溢れる。

「今日はみんなと一緒に作ったライヴだと思っているので、存分に楽しんで帰って行って下さい」と村松のMCが入ると、次々に曲を畳み掛けていく。しかし、ステージに立つメンバーは肩肘を張るわけでもなく、この時を楽しむことにフォーカスしているように見えた。そして、メンバーから真摯に受け止めようとするオーディエンスのエネルギーも凄まじい。大音量で響き渡るサウンドの中で互いに剥き出しになりながら、今日まで信じ合ってきたことを確かめ合う・・・そういった瞬間がライヴが行われた2時間半の間に何度も訪れることになる。後半のMCでは、ベストアルバムを出すことに自体あまり執着がなかったと漏らしていたが、一曲一曲投げかけるたびに沸き起こる大歓声と、渦巻き続けるフロアの熱量には、メンバー4人手ごたえを感じていたはずだ。

ライヴ中盤に差し掛かった頃には「Nothing's Carved In Stoneとは『何も彫られていない石』という意味。今日はそこに何かを刻み付けていって下さい」と村松が話し、その直後に始まった“村雨の中で”の新鮮な響きは、バンドマンとして生きる彼の姿と重なった。そして真っ赤なライトの下で情熱的に鳴らされた“Red Light”、青いレーザーを駆使したことで美しい音世界を描いた“BLUE SHADOW”と続き、“It means”のアコギの繊細な音色を合図に、ディープな場所へと引き連れていく。そこから“Diachronic”を皮切りに繰り広げられた壮大なステージは、オーディエンスの足元を明るく照らし出すよう、希望に満ちた、とても感動的な時間だった。

ライヴの後半戦には、お待ちかねのダンスタイム。“Idols”と”Spirit Inspiration”の投入で再びフロアの熱気が上昇する中、サイバー感たっぷりの“Out of Control”が激しく揺らし、ファン投票数ベスト1を獲得した“November 15th”では大漁のクラウドサーファーが出現する。スティックを片手にした大喜多の腕と、笑顔で体を揺らし続ける日向に合わせ盛大なハンドウェイブが広がる“きらめきの花”。この光景には何度も遭遇してきたが、やはり胸が熱くなる。そしてチカチカと光り続けるライトをバックに“Shimmer Song”のイントロが流れ出すと、私はあの日のことを思い出した。

5月14日『Monthly Live at QUATTRO 3×6=構築』のステージで、本編ラストの“Shimmer Song”を歌い始める前。村松はこう話したのだ。「俺達まだ全然、俺自身至らないところもあって。ロックバンドとして。もっと成長して、もっとみんなを遠くまで連れていけるように頑張ってるんで、付いて着てください。ありがとうございました」。メジャーからインディーへの移籍が発表されたばかりで、まだ吹っ切れていないものがあったのだろう。悔しさを隠しきれていない表情だったことを私は覚えている。しかし、この5月の出来事を境に確実にバンドはタフになり、急速な進化を遂げた。と同時にリスナーとの信頼も更に深まったことは、9月の発売された7thアルバム『MAZE』が一つの証拠でもある。私の目の前で一段と逞しく鳴り響いていた、“Shimmer Song”。<誰だってそうだろう/孤独な夜を超え/夢見て傷付いて/でも前を見る>と、眩いこの瞬間を歌い上げながら確かな未来を約束するのは、この逆境を乗り越えたNothing's Carved In Stoneそのものだった。彼らはいつだって、こうやって、夢を運び続けてくれるバンドなのだ。

アンコールで、来年5月15日に初の日比谷野外大音楽堂公演の開催が発表されると、この日一番大きな歓声が上がり、祝福感に満ちたフロアには”Around the Clock”が投下されライヴは無事終了。「気をつけて帰れよー!」と村松は笑顔で投げかけステージを去っていくが、この場を離れてしまうことを誰もが名残惜しみたくなるほどに、大きな余韻を残していた。

f0342667_20424269.jpg

SET LIST
1 Isolation
2 ツバメクリムゾン
3 Crystal Beat
4 The Swim
5 Brotherhood
6 Sands of Time
7 Lighthouse
8 Rendaman
9 Bone Age
10 GOD HAND GAME
11 村雨の中で
12 Red Light
13 BLUE SHADOW
14 It means
15 Diachronic
16 Sunday Morning Escape
17 Raining Ash
18 Idols
19 Spirit Inspiration
20 Out of Control
21 November 15th
22 きらめきの花
23 Shimmer Song

ENCORE
1 Chain Reaction
2 Inside Out
3 Around the Clock

以下、『Monthly Live at QUATTRO 』より


1×4=衝動 “November 15th”


2×5=感触 “Out of Control”


3×6=構築 “Brotherhood”



[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-18 21:14 | LIVE | Comments(0)

10/24 GRAPEVINE @長野CLUB JUNK BOX -club circuit 2015-

まず、力を込めて伝えたいことは、田中和将の歌声が驚くほど素晴らしかった。1曲目の“なしくずしの愛”は、喉の奥から響かせる歌声がしなやかで、漂わせるダンディズムがオーディエンスを一気に酔わせてしまう。しかし、新緑を思わせるギターサウンドでフロアを染め上げた2曲目“夏の逆襲”では、透き通るような透明感ある声で<真実を可能にするのは>とリフレインさせる。丁寧に、そして表情豊かに曲を演出する、まだまだ可能性を秘めたその声に、開始早々私は感服してしまう。

9月に野外ライヴが開催された東京と大阪を抜かした、地方6都市を回るGRAPEVINE club circuit 2015(以下クラサー)。その4本目に当たる10月24日長野CLUB JUNK BOXで、いつものように、のっけから期待を超えるステージに私は動揺してしまったのだが、今夜の目玉は何といっても10月16日の深夜、突然配信された新曲“EVIL EYE”の生演奏だ。配信と同日に公開された、話題騒然のPVを再現するかのように、ステージが七色の照明に照らされ、ホテルの一室に仕立て上げられる。そして始まった“EVIL EYE”は、意外にもシンプルなロックンロールだった。持ち前のグルーヴを最大限に活かしたバンドサウンドが豪快に畳み掛け、田中は突っぱねた態度で歌う。サビではイービルポーズを決めた腕がじゃんじゃん上がり、フロアの熱気も最高潮。彼らのライヴで汗ばむ感覚が久しぶりで「なんだ、まだまだいけるじゃん」と思わずニヤついてしまった。

それもそのはず。今年の1月にリリースされた最新アルバム『Burning tree』は、年齢を重ねたことを強く意識した、田中のリアルな心情が綴られた作品である。彼らの描いた世界に、どこか重苦しさが否めない中でも、今回披露された全4曲(“Big tree song”“MAWATA”“KOL”“IPA”)はフェス等でも良く披露される外向きな選曲だった。その中でも『Burning tree』以前の曲とも見事に絡み合い、壮大な世界を描いていたのがアルバムの核とも言える曲“IPA”だった。“壁の星”“SEA”と続く前衛的な流れに寄り沿いながらイントロが鳴らされると、フロアは神聖な空気に包まれる。何より、5人のアンサンブルがいつになく力強かったのだ。響き渡る亀井亨のドラミングも、金戸覚が爪弾く低音も、高野勲の鍵盤も。円熟が滲み出る西川弘剛が奏でたギターソロには、溜息が出た。老いていく現実を目の前に、音に救いを求める耽美的な空間を創り上げたのが、6月のツアーファイナル。ところが、解放感とともに、現実を突き返すような田中の歌からは、彼らにとって既にそこは通過点でしかなくて、新たなモードに入ったことを予感させるものがあった。

このクラサーの楽しみの一つが、アルバムツアーやフェスでは滅多に披露されないレアな曲が聴けることだ。ライヴがクライマックスに向かう途中“100cc”(2001年発売のシングル“Our Song”のc/w)の登場には悲鳴にも近い大歓声が上がった。そしてこの曲がフックとなり、フロアの熱気が急上昇。田中が今にも泣き出しそうな顔で“その未来”を熱唱し、スケール感のあるバンドサウンドを響かせた“Glare”と続く。尋常ではないエモさが充満する会場は、かつてフロントエリアにモッシュが起きていたライヴの記憶と重なるものがあった。しかし、彼らが出したアンサーは<どこまでも先を描いてゆく(“風の歌”)>という確かな決意を誠実に聴かせ、ライヴを締め括ったのだ。そして、5人が立つステージには、若かりし時代さえ飲み込んでしまうほどの寛容な空気が溢れていた。

例えば、活動初期に発表した曲を発売から20年近く経った現在の彼らが演奏しても、何の違和感を感じないことがそうだが、そもそもGRAPEVINEとは早熟なバンドであった。そして、所謂音楽シーンから一線を引き、独自の世界観を築き上げた長い軌跡を振り返ってみると、この日私が見届けたGRAPEVINEの姿は、本人達が理想とするバンド像にかなり近いのではないかと思った。大胆に鳴らされ続けた成熟味のあるバンドサウンドに、何度も恍惚としてしまった約2時間。キャパ400人の小さなライヴハウスだからこそ味わえた臨場感も相まって、私は彼らの揺るぎないロックバンドへのロマンを強く感じたのだった。

追伸。『GRAPEVINE、秋の名曲選』と題されたアンコールは、あたたかなオレンジ色の照明に包み込まれた、秋実りを感じさせる、味わい深い時間だった。ラストの“ふれていたい”では「善光寺!」というコールが入り、翌日、善光寺に向かう道中のお供には、もちろん彼らを選んだ。

f0342667_10225898.jpg






(セットリストはこちらのサイトからどうぞ)



[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-04 21:53 | LIVE | Comments(0)

10/24 GRAPEVINE @長野CLUB JUNK BOX -club circuit 2015(番外編)-

後日きちんとしたライヴレポートをアップする予定なので、こちらでは番外編をお送りします。



***

GRAPEVINEの毎年ほぼ恒例?で開催されるclub circuit (通称:クラサー)。今年は9月に野外コンサートが行われた東京と大阪の2都市を抜かした地方6都市(広島、福岡、名古屋、長野、仙台、札幌)を回り、残す所は仙台と札幌の2ヵ所であり、只今絶賛開催中。今回私は在住している関東から一番行きやすいと思われる街、長野へと向かいました。北陸新幹線で約2時間だったので、関東近郊にお住まいのバインファンの方がたくさん集まっていたのではないのでしょうか?

12時過ぎに長野には到着。お昼にお蕎麦を食べ、駅ビルで翌日の朝ご飯を買って(お焼きと林檎ジュース)、ホテルでのんびりした後に会場へと向かいました。

長野CLUB JUNK BOXは長野駅から徒歩10分足らずで行ける距離だったような・・・長野駅で降りたことが初めてであり、慣れてない場所なので定かではありませんが、そう遠くは無かったです。『again』というショッピングビルの7階に位置する長野CLUB JUNK BOXの壁には、バンドのフライヤーやらステッカーが隙間なく張ってあって、それだけで私はテンション上がる!!何よりもキャパ400人という狭い箱で、天井も低く、久しぶりに『THE・街のライヴハウス』という場所でのGRAPEVINEのライヴに大興奮しておりました。

定刻の18時を少し過ぎた頃にメンバー登場。ライヴはスタートします。

曲などについては一旦置いておき、それ以外でライヴを観ていて気付いたことを。Vo&Gの田中和将さんは、ほんっと~に良くお客さんを観てます。これにはびっくりしました。お客さん1人1人の表情を確かめているようでした。ライヴ中、ヴォーカリストの方は目線をPAさんに持って行くと良く聞きますが、彼の場合は違いますね。しかも、これまたにこやか~に歌うもんだから、目が合ってしまったもんなら本気で照れます。(それが勘違いだったとしても、彼の笑顔を観ているだけでも、照れてしまいます)。

そして、デタラメ言うのもほどほどにしないと怒られますよ…と内心思いつつも「田中さん、丸くなったよな~」としみじみ思ってしまったのがMC。先日、突然配信された“EVIL EYE”。話題のPVはご本人の私生活らしく(デタラメですよね?!)、またサビの♪確かめるぜ~イェッで決めるEVIL ポーズは相当お気に入りのようで、突然歌い出してはこのポーズ決める。この悪ノリ感はまるで小学生。あ、奈良県もお気に入りのようでしたね。お酒も入っていたこともあり終始ご機嫌で、突然♪フフフ~ンと鼻歌歌っちゃうし。あとはもう、いつものお決まりのパターン「長野にはもう二度とこないぜ~」とおっしゃられておられました(勿論デタラメ)。しかも、本編最後の曲が終わりステージをはけるときに、紙コップに入っていたお酒を、田中さんうっかりこぼしてしまって。「アンプにはかかっていない」とか云々言いながら立ち去って行きましたけど、ローディーさんがすぐにタオルで拭いてました…。

「マイペースにやらせてもらっています」とMCで話していた通りの(笑)驚く程のマイペースっぷりを発揮していましたが、決めるところはガツン決める。音楽へのプライドは、申し分なく演奏でガッツリ味わってしまいました。

そんな大らか過ぎる田中さんとライヴの雰囲気に「こいつらならわかってもらえるやろ」というファンに対して確固たるものが、今、あるんだろうなと思いました。私達リスナー1人1人の心の中にもあるように。言葉にするなら「信頼」。もう、そうとしか考えられないです。

最近のライヴや音楽全般のムードは、「皆で共有すること」が強いられている流れにあると思います。私はこの「皆と共有すること」で覚えた感動に救われてきた部分もあるので、一概に否定はできないけれど、長野CLUB JUNK BOXのライヴを観終えて、GRAPEVINEが提示し続けているライヴスタイルを改めていいなと思いました。ハンドウェイヴもシンガロングもなし。皆で一斉にジャンプなんて確実にしない。それでも、GRAPEVINEの音楽を聴いた一人一人が、思い思いに感じるものが彼らからのメッセージならば、それは本人だけにしかわからない特別なもの。それって、とても素敵なことだと思いました。音楽の本質的な部分の一つだし、何より心が豊かになる。夜にツイッターでも呟いたけど、本当に「GRAPEVINEを知らないなんて勿体ない!」と思いました。だから、一人でも多くの人に手に取ってもらいたい。

そんな思いで、今もいます。もしも、私にできることがあるのなら、できる範囲でGRAPEVINEについて伝えていけたらと思います。


***


最後に。私は年齢の半分つまり人生の半分の時間GRAPEVINEを聴いていることに、つい最近気付きました(遅い)。高校生の頃から聴き始めたのですが、社会人1年目から30歳を迎える8年間は、取り敢えずCDは買ってライヴに行くことが習慣にはなっていたけれど、今のような熱心さは正直ありませんでした。音楽は常に流れている生活でしたが、とにかく自分の事が忙しくて、精神的にも肉体的にも余裕ゼロ状態で。前回「GRAPEVINEは心の特効薬」とライヴレポートに書いたように唯一の救いが彼らの音楽でした。

それでも、その精神的にアップアップな8年の間に耳にしていた曲を聴くと、思い起こされる記憶や感情が、実はたくさんあったことを思い知らされます。自分のことは勿論、印象的だった彼らのライヴのこともそう。どんどん、引っ張り出されます。

長野CLUB JUNK BOXでの私は、次々と披露される曲と、それを聴いたことで思い出した記憶を照らし合わせる作業を、自然と繰り返していました。まるでバンドと会話をしているような感覚で、当然ながら忘れていた感情がいくつも蘇りました。そして、とある曲を聴いたときに「私このままでいいんだな。大丈夫じゃん」と思うことが出来きました。悪戦苦闘の8年の間に出会った大切な一曲を聴きながら、これまでに、数多く色々なアーティストのライヴに行ってきたけど、自分の人生が絡みまくっているからこそ、一番自分らしくいられるライヴがGRAPEVINEなんだよなと思えました。

とても貴重な時間を長野で過ごすことができた私は「自分の夢に向けてがんばろう」と誓いました。諦めかけてはいたんだけど、でも、いつかまた何年後かにその曲をどこかで聴いたら、長野での出来事を間違いなく思い出すことになるはず。後悔はしたくない。だからその時までには、2015年10月24日に立てた誓いを果たせている自分でいられますように。勇気を出そうと思います。







[PR]
by musicorin-nirock | 2015-10-26 22:55 | LIVE | Comments(2)

9/12 GRAPEVINE@日比谷野外大音楽堂

数日前の大雨が嘘のような晴天に恵まれ、会場に到着するとセミの大合唱が私を迎えた、2015年9月12日。6年ぶりのGRAPEVIVE、日比谷野外大音楽堂ワンマンライヴ。

最新アルバム『Burning tree』の1曲目を飾る“Big tree song”でライヴの幕が上がり、“放浪フリーク”“真昼の子供たち”と、いつになく優しい空気が会場には広がる。オーディエンスを見渡しながらにこやかに歌う田中和将(Vo&G)を観ていると、自然と微笑み返したくなるほどの幸福感で胸がいっぱいだった。そして、亀井亨(Dr)が力強くドラムを叩き出し、西川弘剛(G)が眩い光のようなギターを鳴らし始めると、バンドのギアが切り替わったことがわかる。4曲目は“Glare”。<たかが満ち足りた世界で/胸がいっぱいになって/見たろ光を/走り出したくなって正解だ>と精いっぱい歌い上げる田中の声は、拭い切れぬ哀しみを歌い続けてきた過去よりも、ただ今を「生きたい」というひたむきな意志が強く感じられるものだった。そんな彼の背中を押すように、生命力溢れるバンドサウンドが会場一帯包み込むと、ライヴはまだ始まったばかりなのに私は涙が止まらない。しかし、強烈な余韻を残しながらも、奇天烈なギターリフを皮切りに始まった“コヨーテ”がブルージーな世界へと導き、金戸覚(B)の低音が炸裂する“冥王星”でフロアは熱を帯びていく。そこにノスタルジックな風を呼び込んだのは1997年リリースの1st Single“そら”。色褪せるものなど見当たらない。ただ、彼らの軌跡を感じさせるどっしりとした演奏だった。

曲の合間にビールの進む手が止まらない田中のMCは「飲めよ飲めよ」と言わんばかりに、売店の閉店時間が19時半までとご丁寧に何度もアナウンス。また、今のうちにビールを買っておけよと促す内容で大半が占められていた(笑)。そして、田中が一通り話し終えるとメンバー各々体制を整えバンドは演奏をスタート。先ほどまでとは別人のように、田中は歌い始めるのである。あまりに大らかにステージを進めるその様は、驚くというよりも、私は「さすがだ」としかもう言えない(笑)。例えば自身の生き様や、ロックバンドの在り方をMCを使って語り始めるバンドマンは数多くいる。ところがGRAPEVINEの場合は、この通りほとんど皆無である。彼らが腹の奥底に抱える情熱は、鳴らされるサウンドだけで存分に表現できてしまうのだ。その姿勢が顕著に表れていたのが”無心の歌”から始まった本日のディープゾーン。中でも一際異色を放っていた“SEA”は圧巻だった。重みのある鍵盤を高野勲(Key)が奏で、ゆったりとした波のようなアンサンブルが続く。ギリギリの精神状態を、冷めた表情で淡々と田中は歌い、どことなく漂う緊迫感。いつの間にか、催眠術にかけられたかのように、私の体は硬直し始める。この曲の前後に数曲演奏されているのだが、記憶と呼べる記憶が、私には正直見当たらないのだ。派手な演出などなかった。ただ、5人で紡ぎ出す音の引力によって、心が蝕まれてしまい、平常心を取り戻すのには、しばらく時間が必要だった。

だからきっと体内にアルコールを入れつつ、緩めのMCを挟んだほうが、メンバーもオーディエンスも精神的に楽なのかもしれない。「どうぞ皆さんご自由に今日のライヴをお楽しみ下さいね」ーーこれがGRAPEVINEお決まりの(暗黙の了解に近い)ライヴスタイルで、オーディエンスの様子も自由。会場は指定席であったため立って観ている人はもちろん、座って観ている人もチラホラいる。途中、席を外していた人を見かけたが、果たしてビールを買いに行ったのだろうか(笑)。曲の合間にそっと辺りを見回すと、GRAPEVINEを長年聴き続け、彼らと共に歳を重ねてきたであろう、いい大人の顔ぶればかり。その雰囲気に「ほっ」と安心していた、私もGRAPEVINEと共に歳を重ねてきた一人。

「日比谷に捧げる”This town”!」とお馴染みの前振りからの後半戦は、久しぶりに夏の暑さを取り戻したこの日のための“夏の逆襲“から、”KOL”“ GRAVEYARD”とオーディエンスを再び沸き上がらせて行く。そこにストンと落とし込んで来たのがPermanents(田中の高野のユニット)では最近では良く耳にしていた“smalltown,superhero”。田中の少年時代を歌う曲ではあるが、緻密なアンサンブルに乗る歌声には、現在の父親としての表情を覗かせていたような気がした。そして、本編ラストは“超える″。バンドの生き様をまじまじと見せつけるかの如く、ダイナミックなサウンドが大都会の夜空に響き渡る中<今限界を超える/そのくらい言って良いか>とガツンと決めた最後のサビ。その時、私は彼らのことを心から誇らしく思った。

私にとってGRAPEVINEとは心の特効薬である。ロックバンドに興味を持ち始め、彼らと出会った10代後半から15年以上、GRAPEVINEのサウンドがとことん心に効くことで何度もピンチを乗り越えてきた。そして、いつのまにか私の人生の節目には必ずGRAPEVINEが側で鳴っていて、切っても切れない不思議な縁が出来上がってしまっていた。ただ、彼らと同時期に出会い好きで聴いていたバンドのいくつかは、残念ながら既に解散をしている。この現実をふと思い出し、GRAPEVINEに出会ってから17年後、私がこの日を迎えられたことは奇跡のようなものだと気付くと、“超える”が演奏されている最中、急に感慨深さに襲われた。自らの表現に対する使命感を持ち、着実に可能性を広げながら、天邪鬼な姿勢を貫き続ける孤高のロックバンドは、メジャーデビューから18年間、時に荒波に揉まれながらもぶれることなく続いている。それを確信づけるかのように<今限界を超える/そのくらい言って良いか>と放てる姿は、あまりに格好良すぎるだろう。目から涙はこぼれなかった。しかし、私は胸の高まりを抑えることができなくなっていた。

温かな拍手に迎えられアンコールのステージに登場したメンバー。すると聴き覚えのあるベースのイントロに、ふわりと歓声が上がった。1曲目は“君を待つ間”。離れて暮らす恋人に向けた苦くも瑞々しい想いを、酸いも甘いも知ってしまった四十路を越えた主人公が当時を懐かしむよう歌う姿は、オーディエンスの恋の古傷にも、ちくりと沁みるものがあっただろう。しかし次の“RAKUEN“で見せたものは、歳を重ね、背負わざるを得ない代償をシリアスなロックンロールで提示していく姿だった。そしてアンコールのラストは“ふれていたい”。これが、最大級の多幸感に包まれた、どこまでも優しいエンディングだったのだ。思い返してみると、今から14年前に私が初めて行ったGRAPEVINEのライヴには今のような緩さはなかった。フロアから黄色い声が上がっても、メンバーはどこか素っ気なかった。しかし、メンバーも歳を重ね、彼らを聴き続けてきたオーディエンスも、同じ年数歳を取った。それを互いに確かめ合えたからこそ、緩さの中にも身をわきまえた心地よい大人のグルーヴが、日比谷野外大音楽堂には溢れていた。そして、「ファンと共にこの時まで歩いて来た」という想いが彼らにあるのならば、それがGRAPEVINEにしか鳴らせない「優しさ」なのだろう。「みんなで同じ方向を向かない(田中のMCより抜粋)」バンド、GRAPEVINEではあるが、サビの<ふれてイエーいよう!>の部分では自然と沢山の腕が上がっていた。その全てに応えていくよう、笑顔で歌い続ける田中を観ていたら、そう信じずにはいられなかった。


***

10代の頃からの憧れている人たちが、今も変わらず現役で新しい音楽を生み出し、ステージに立ち続けていることは、驚くほどの莫大な力を私に与えてくれる。そして、今回の日比谷野外大音楽堂ワンマンライヴで、この関係はきっとこれからも、ずっと続いていくのだと確信し、GRAPEVINEと出会えたことへの感謝の気持ちでいっぱいだ。


SET LIST
1 Big tree song
2 放浪フリーク
3 真昼の子供たち
4 Glare
5 コヨーテ
6 冥王星
7 そら
8 無心の歌
9 MAWATA
10 おそれ
11 壁の星
12 SEA
13 愁眠
14 This town
15 夏の逆襲
16 KOL
17 GRAVEYARD
18 smalltown,superhero
19 超える

ENCORE
1 君を待つ間
2 RAKUEN
3 ふれていたい


[PR]
by musicorin-nirock | 2015-10-24 00:03 | LIVE | Comments(0)

主にNICO Touches the Walls について書いておりますが、他にはGRAPEVINE と the HIATUS が好きです。記事の無断転載、引用はご遠慮ください。


by タナイユウ
プロフィールを見る