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12/29 GRAPEVINE @ COUNT DOWN JAPAN 15/16

相変わらず飄々と彼らはステージに現れた。

来年2月3日発売される「節分アルバム」『BABEL,BABEL』と4月から始まる全国ツアーの告知ぐらいの言葉数少ないMCは、いつもより、ちょっぴり素っ気なかった。

しかし、淡々と、黙々と、演奏される一曲一曲が放つ存在感は、物応じできない程に聴き手を圧倒させてゆく。

「GRAPEVINEのかっこよさは、これなんだ」

***

ライヴは挨拶代わりの“光について”から始まり、田中和将(Vo&G)と女王様の絡みPVで話題騒然となった”EVIL EYE”のキワどいロックンロールで早々にフロアを揺らした。そして、今回ライヴで初お披露目となった新曲”EAST OF THE SUN”は、田中がつま弾くアコースティックギターに、西川弘剛(G)が鳴らすエレキギターと高野勲(Key)のトリッキーなシンセが重なるイントロから、鮮やかに、繊細に、一音一音紡がれてゆき、メロディメーカー亀井亨(Dr)の腕が光るメロディの美しい名曲だった。冬のソングとしてお馴染みの”Our Song”で、<ぼくらは/ねえ/何が見たくて/全てを欲しがって/きたんだっけ>と、ドラマティックに歌い上げた田中の声は胸に迫るものがあり、”スロウ“の厚みあるギターサウンドからは、ひしと貫録を感じさせられた。

人の心に必ず何かを描き続けるGRAPEVINEのライヴは、ゆったりとした流れの中で、MOON STAGEに集まったオーディエンスを、完全に異空間へと引き込ませてしまう。

だから、COUNT DOWN JAPAN 15/16 (以下CDJ)の多くのステージで見られるような一体感を味わう光景は、当然一度も訪れなかった。シンガロングにハンドウェイブ、かつては彼らのライヴでもよく発生していたモッシュですら、今はもう、ほとんど起こらない。もちろん、曲に合わせ歌詞を口ずさんている人もいたし、拳を上げている人もいた。しかし、曲が終わるごとに盛大な拍手が響き渡り、バンドとオーディエンスに通ずる何かが確実にあった事が証明される。そんなライヴだった。

ただ、CDJのような今の音楽シーンのど真ん中に位置するロックフェスに、GRAPEVINEのようなバンドが出演することは、今やもう稀に映る時代なのかもしれないと思った。CDJの各ステージの盛り上がる様子を覗いてみると、そう思わざるを得ない場面に私は何度も遭遇した。実際、GRAPEVINEの裏ではMAN WITH A MISSION、KEY TALK、DJ やついいちろうのステージが繰り広げられており、集客状況に関して厳しいものがあったことは事実だ。そしてそれは、彼らと共に青春を過ごしてきた私にしてみると、寂しさを感じる現実だった。

それでも、ラストソングの”Silverado“が、フロア一帯をあたたかく包み込めば、まるで、新しい年へと続く彼らの旅路を、しかと照らし出すようで、年々研ぎ澄まされていくバンドサウンドと共に過ごした約30分間は、その場を離れるのが惜しい程の感動と余韻を残していった。

変化の激しい世界の中にいても、ぶれることなく自らのスタイルを貫き続けるGRAPEVINEは、私にとって、いくつになってもロックヒーローのなのだ。2016年、2月にはアルバムリリースに付け加え対バンイベントが、4月からは全国ツアーが決定している。今年もこうして、彼らの新しい音楽と出合える喜びを糧に、私は日々、過ごしていきたいと思う。





SET LIST
1 光について
2 EVIL EYE
3 EAST OF THE SUN
4 Our Song
5 スロウ
6 Silverado


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by musicorin-nirock | 2016-01-03 11:10 | LIVE | Comments(2)

12/19 BONNIE PINK @ Zepp Tokyo

9月21日、場所は渋谷公会堂。シンガーソングライターBONNIE PINK(以下ボニー)のメジャーデビュー20周年記念日に開催された一夜限りのスペシャルライヴ『BONNIE PINK 20th Anniversary Live "Glorious Kitchen"』。このライヴは、彼女の赤毛時代(活動初期の頃)の楽曲を軸に構成されたセットリストで、会場に集まったファンと共に20年を振り返り、その一つ一つを噛み締めるような感慨深い内容だった。

ライヴ後半のMCで、長年「ファンと一緒の時を歩んできたことに歌いながら気づいた」という彼女の言葉がとても印象的であったことと、彼女を産み育ててくれたご両親への感謝の言葉の後に、最初期のシングル"Surprise!"を本編ラストに披露した姿を観て、10年前、20年前の自分よりも年齢を重ね、当時のようにいかなくなることもあるけれど、だからこそ、20年という大きな区切りが、初心を取り戻させてくれる、本当の新しいスタートなのだと教えられた。

そして、彼女のデビュー20周年を記念し開催された全国ツアー『BONNIE PINK 20th Anniversary TOUR 2015』、そのファイナルに当たる12月19日、Zepp Tokyoのステージは、まるで彼女のが主催するパーティーに招かれたような弾けた楽しさに溢れ、今のボニーの魅力が存分に味わえるステージだった。

長年、彼女のバックバンドとして活躍する八橋義幸(G)、鈴木正人(B)、白根賢一(Dr)、奥野真哉(Key)(バンド名はBAD BAD BOYS)という名プレイヤーによる貫録の演奏と、ボニーが艶やかな歌声を放つと、一曲一曲がキラキラと輝く宝石のような完成度で、一曲一曲聴き終えるたびに私はいちいち感極まってしまう。

彼女はファンに苦労を見せるタイプではない。関西出身の明るいキャラクターで鋭い突っ込みをバンドメンバーにふっかけながら、和やかにステージを進めていく。けれど、20年間、常に丁寧に曲を作り続け、絶えず愛を注ぎながら、一曲一曲を大切に歌い続けてきたのだろう。ステージ上から終始溢れる多幸感が、逆に彼女の音楽に対する真摯な姿勢を私には見せてくれた。

大ヒットしたシングル曲も、久しぶりに耳にしたアルバムの中の一曲も、どれもこれも名曲揃い。ロックにソウル、ファンクにジャズ。そしてR&Bという、ジャンルレスなボニーの楽曲。その中で主人公たちは、恋に落ちたり、失恋したり、立ち上がったり、へこんだりと忙しい。正しくそれは現代を生きていく人々の生々しい姿である。10年以上ボニーの曲を聴いてきた私にとって彼女の曲は人生の写し鏡であり、ライヴ中に、とあるキツイ失恋の記憶が蘇ってきてしまい、思わず涙をこぼしてしまったけれど、彼女の楽曲から湧き出す親近感には、随分と救われてきたのだなと改めて思った。

しかし、最近の彼女からは、ポジティヴなエネルギーが強く感じられる曲が多く、先日配信された"Spin Big"は、女性らしさの中にも、どこか野性を感じさせるアコースティックサウンドで、一歩外に踏み出す勇気を聴き手には与えてくれる。そんなボニーの楽曲の進化からは、年齢を重ねた分だけ女性は強くなることができ、どんどん余計なものがそぎ落とされ、本当に大切にしたいもの、表現したいものが見えてくるのだと気づかされる。

「来年はアルバムをリリースしたい!」と意気込んでいたボニー。21年目の彼女への期待は高まるばかりだし、またライヴ会場で会えることを私も願っている。



"Spin Big"

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by musicorin-nirock | 2015-12-20 12:16 | LIVE | Comments(0)

11/19 YUKI@日本武道館

千葉・東京・大阪で行われた『YUKI LIVE dance in a Circle '15 』。そのツアーファイナルである11月19日、日本武道館。開演時間の18時半から21時までの2時間半、アンコールなしで行われた怒涛のロングパフォーマンスは、YUKIの代表的なヒットソングのオンパレードで、どこを切り取ってもライヴのクライマックスを迎えているような、壮絶な盛り上がりを見せた。

JUDY AND MARY時代から20年以上女性ヴォーカリストの第一線に居続けているYUKIには、当然ながら、並々ならぬ苦労や努力がある。しかし、常に好奇心旺盛で、何事にも果敢に挑み、ひたすら目の前にいるオーディエンスを楽しませ、愛を歌い続ける姿からは一切、彼女の抱える苦悩など感じさせる余地がなかった。YUKIという楽器が鳴らす音楽は、人間の抱える痛みや悲しみを、そっと優しく包み込む。そして、「私がいるから大丈夫!」「私に付いて着て!」と、オーディエンスの手を取るようステージを展開していくのだ。

YUKIの描く音世界にはネガティヴは存在しない。多幸溢れる空間は、ワクワクする気持ちを思い起こさせ、日々、忙しく生活していると忘れがちなことに、たくさん気づかされていく。好きな人には「好き」ということ。大切な人を大切にすること。そして人を愛すること。YUKIは人が人らしく生きることを、もっと原始的な意味を含ませて、それが自分の使命であるかのごとく、私達に伝え続けていた。

最後の最後に“WAGON”を歌い切ったYUKIは必死で涙を抑えていた。かつて、コンディションが不安定で思うように声が出ない時期もあったが、この日は、私が知っている中でも、これまでのキャリアの中で一番最高の歌声だったのではないかと思った。また、堪えていた涙が突然あふれ出してしまったYUKIも、同じことを思っていたように感じている。

年齢を重ねていけば重ねたぶんだけ、自身の音楽への可能性を広げ、魅力が倍増しているYUKI。それは、自分に対しストイックに接し続けている成果であり、彼女がを成し遂げ続けていることは決して誰もができることではない。しかし、私が10代の頃から一番憧れているYUKIが今もなお、輝き続けていてくれることは、どんなことにも勝る大きな励ましだった。だから、YUKIを聴いていると、かの有名なクラークの言葉『Boys be ambitious』ならぬ『Girls be ambitious』という言葉が私の頭には浮かんでくるのだ。


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SET LIST
1 プリズム
2 ロックンロールスター
3 ふがいないや
4 JOY
5 誘惑してくれ
6 好きってなんだろう…涙
7 キスをしようしょ
8 ハローグッバイ
9 tonight
10 愛に生きて
11 COSMIC BOX
12 ドラマチック
13 Home Sweet Home
14 ハミングバード
15 ひみつ
16 恋愛模様
17 Hello!
18 星屑サンセット
19 Night & Day
20 ランデヴー
21 ワンダーライン
22 鳴いてる怪獣
23 歓びの種
24 WAGON



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by musicorin-nirock | 2015-11-22 17:30 | LIVE | Comments(2)

11/6 Nothing's Carved In Stone@ 豊洲PIT

Nothing's Carved In Stone(以下NCIS)が2015年8月にリリースしたアルバム『円環ーENCOREー』は、同年3月から3か月に渡り開催された、全6枚のオリジナルアルバムを全曲披露したライヴ『Monthly Live at QUATTRO』より、ファン投票で決められた上位17曲を収録するライヴアルバムだ。結果的にバンドの軌跡を辿る内容となっており、ファンと共に作り上げたベストアルバムと言っても良いだろう。そして11月6日、東京・豊洲PITで開催された『円環ーENCOREー』再現ライヴでは、加えて「シングルのc/wも全て演奏する」と事前にアナウンスがあった。つまりNCISは今年、これまでにリリースしてきた全曲を演奏することになった。結成7年目を総括する上でも、新境地を切り開いた7thアルバム『MAZE』制作の上でも、大きく関係しているこのアルバム。激動の2015年最後となるワンマンライヴに『円環ーENCOREー』再現ライヴを行うことは、彼らにとって大きな意味のある出来事だったに違いない。また、会場を訪れたオーディエンスにとっても特別な時間であったと思う。終演後、堂々とステージを成し遂げたメンバーの姿がいつも以上に眩しく、本当に素晴らしい夜だった。


***


ライヴは“Isolation”からスタートし、メンバーは期待溢れるフロアに牙を向け、勢い良く噛みついてきた。気迫のこもったバンドサウンドに煽られたオーディエンスが<Now is everything>とレスポンスをステージへ送ると、村松拓(Vo&G)は拍手で応える。そこに“ツバメクリムゾン”“Crystal Beat”と立て続けに投下され、バンドもフロアも共にヴォルテージが急上昇。そして、流れるような生形真一(G)のリフの裏でトビウオの様に日向秀和(B)のベースが飛び跳ね、大喜多崇規(Dr)が緻密なドラミングを披露した“The swim”。奔放に降り舞う3人が編み出すサウンドに乗る村松の伸びやかな歌声が、会場一面を駆け巡ると一気に開放感で溢れる。

「今日はみんなと一緒に作ったライヴだと思っているので、存分に楽しんで帰って行って下さい」と村松のMCが入ると、次々に曲を畳み掛けていく。しかし、ステージに立つメンバーは肩肘を張るわけでもなく、この時を楽しむことにフォーカスしているように見えた。そして、メンバーから真摯に受け止めようとするオーディエンスのエネルギーも凄まじい。大音量で響き渡るサウンドの中で互いに剥き出しになりながら、今日まで信じ合ってきたことを確かめ合う・・・そういった瞬間がライヴが行われた2時間半の間に何度も訪れることになる。後半のMCでは、ベストアルバムを出すことに自体あまり執着がなかったと漏らしていたが、一曲一曲投げかけるたびに沸き起こる大歓声と、渦巻き続けるフロアの熱量には、メンバー4人手ごたえを感じていたはずだ。

ライヴ中盤に差し掛かった頃には「Nothing's Carved In Stoneとは『何も彫られていない石』という意味。今日はそこに何かを刻み付けていって下さい」と村松が話し、その直後に始まった“村雨の中で”の新鮮な響きは、バンドマンとして生きる彼の姿と重なった。そして真っ赤なライトの下で情熱的に鳴らされた“Red Light”、青いレーザーを駆使したことで美しい音世界を描いた“BLUE SHADOW”と続き、“It means”のアコギの繊細な音色を合図に、ディープな場所へと引き連れていく。そこから“Diachronic”を皮切りに繰り広げられた壮大なステージは、オーディエンスの足元を明るく照らし出すよう、希望に満ちた、とても感動的な時間だった。

ライヴの後半戦には、お待ちかねのダンスタイム。“Idols”と”Spirit Inspiration”の投入で再びフロアの熱気が上昇する中、サイバー感たっぷりの“Out of Control”が激しく揺らし、ファン投票数ベスト1を獲得した“November 15th”では大漁のクラウドサーファーが出現する。スティックを片手にした大喜多の腕と、笑顔で体を揺らし続ける日向に合わせ盛大なハンドウェイブが広がる“きらめきの花”。この光景には何度も遭遇してきたが、やはり胸が熱くなる。そしてチカチカと光り続けるライトをバックに“Shimmer Song”のイントロが流れ出すと、私はあの日のことを思い出した。

5月14日『Monthly Live at QUATTRO 3×6=構築』のステージで、本編ラストの“Shimmer Song”を歌い始める前。村松はこう話したのだ。「俺達まだ全然、俺自身至らないところもあって。ロックバンドとして。もっと成長して、もっとみんなを遠くまで連れていけるように頑張ってるんで、付いて着てください。ありがとうございました」。メジャーからインディーへの移籍が発表されたばかりで、まだ吹っ切れていないものがあったのだろう。悔しさを隠しきれていない表情だったことを私は覚えている。しかし、この5月の出来事を境に確実にバンドはタフになり、急速な進化を遂げた。と同時にリスナーとの信頼も更に深まったことは、9月の発売された7thアルバム『MAZE』が一つの証拠でもある。私の目の前で一段と逞しく鳴り響いていた、“Shimmer Song”。<誰だってそうだろう/孤独な夜を超え/夢見て傷付いて/でも前を見る>と、眩いこの瞬間を歌い上げながら確かな未来を約束するのは、この逆境を乗り越えたNothing's Carved In Stoneそのものだった。彼らはいつだって、こうやって、夢を運び続けてくれるバンドなのだ。

アンコールで、来年5月15日に初の日比谷野外大音楽堂公演の開催が発表されると、この日一番大きな歓声が上がり、祝福感に満ちたフロアには”Around the Clock”が投下されライヴは無事終了。「気をつけて帰れよー!」と村松は笑顔で投げかけステージを去っていくが、この場を離れてしまうことを誰もが名残惜しみたくなるほどに、大きな余韻を残していた。

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SET LIST
1 Isolation
2 ツバメクリムゾン
3 Crystal Beat
4 The Swim
5 Brotherhood
6 Sands of Time
7 Lighthouse
8 Rendaman
9 Bone Age
10 GOD HAND GAME
11 村雨の中で
12 Red Light
13 BLUE SHADOW
14 It means
15 Diachronic
16 Sunday Morning Escape
17 Raining Ash
18 Idols
19 Spirit Inspiration
20 Out of Control
21 November 15th
22 きらめきの花
23 Shimmer Song

ENCORE
1 Chain Reaction
2 Inside Out
3 Around the Clock

以下、『Monthly Live at QUATTRO 』より


1×4=衝動 “November 15th”


2×5=感触 “Out of Control”


3×6=構築 “Brotherhood”



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by musicorin-nirock | 2015-11-18 21:14 | LIVE | Comments(0)

10/24 GRAPEVINE @長野CLUB JUNK BOX -club circuit 2015-

まず、力を込めて伝えたいことは、田中和将の歌声が驚くほど素晴らしかった。1曲目の“なしくずしの愛”は、喉の奥から響かせる歌声がしなやかで、漂わせるダンディズムがオーディエンスを一気に酔わせてしまう。しかし、新緑を思わせるギターサウンドでフロアを染め上げた2曲目“夏の逆襲”では、透き通るような透明感ある声で<真実を可能にするのは>とリフレインさせる。丁寧に、そして表情豊かに曲を演出する、まだまだ可能性を秘めたその声に、開始早々私は感服してしまう。

9月に野外ライヴが開催された東京と大阪を抜かした、地方6都市を回るGRAPEVINE club circuit 2015(以下クラサー)。その4本目に当たる10月24日長野CLUB JUNK BOXで、いつものように、のっけから期待を超えるステージに私は動揺してしまったのだが、今夜の目玉は何といっても10月16日の深夜、突然配信された新曲“EVIL EYE”の生演奏だ。配信と同日に公開された、話題騒然のPVを再現するかのように、ステージが七色の照明に照らされ、ホテルの一室に仕立て上げられる。そして始まった“EVIL EYE”は、意外にもシンプルなロックンロールだった。持ち前のグルーヴを最大限に活かしたバンドサウンドが豪快に畳み掛け、田中は突っぱねた態度で歌う。サビではイービルポーズを決めた腕がじゃんじゃん上がり、フロアの熱気も最高潮。彼らのライヴで汗ばむ感覚が久しぶりで「なんだ、まだまだいけるじゃん」と思わずニヤついてしまった。

それもそのはず。今年の1月にリリースされた最新アルバム『Burning tree』は、年齢を重ねたことを強く意識した、田中のリアルな心情が綴られた作品である。彼らの描いた世界に、どこか重苦しさが否めない中でも、今回披露された全4曲(“Big tree song”“MAWATA”“KOL”“IPA”)はフェス等でも良く披露される外向きな選曲だった。その中でも『Burning tree』以前の曲とも見事に絡み合い、壮大な世界を描いていたのがアルバムの核とも言える曲“IPA”だった。“壁の星”“SEA”と続く前衛的な流れに寄り沿いながらイントロが鳴らされると、フロアは神聖な空気に包まれる。何より、5人のアンサンブルがいつになく力強かったのだ。響き渡る亀井亨のドラミングも、金戸覚が爪弾く低音も、高野勲の鍵盤も。円熟が滲み出る西川弘剛が奏でたギターソロには、溜息が出た。老いていく現実を目の前に、音に救いを求める耽美的な空間を創り上げたのが、6月のツアーファイナル。ところが、解放感とともに、現実を突き返すような田中の歌からは、彼らにとって既にそこは通過点でしかなくて、新たなモードに入ったことを予感させるものがあった。

このクラサーの楽しみの一つが、アルバムツアーやフェスでは滅多に披露されないレアな曲が聴けることだ。ライヴがクライマックスに向かう途中“100cc”(2001年発売のシングル“Our Song”のc/w)の登場には悲鳴にも近い大歓声が上がった。そしてこの曲がフックとなり、フロアの熱気が急上昇。田中が今にも泣き出しそうな顔で“その未来”を熱唱し、スケール感のあるバンドサウンドを響かせた“Glare”と続く。尋常ではないエモさが充満する会場は、かつてフロントエリアにモッシュが起きていたライヴの記憶と重なるものがあった。しかし、彼らが出したアンサーは<どこまでも先を描いてゆく(“風の歌”)>という確かな決意を誠実に聴かせ、ライヴを締め括ったのだ。そして、5人が立つステージには、若かりし時代さえ飲み込んでしまうほどの寛容な空気が溢れていた。

例えば、活動初期に発表した曲を発売から20年近く経った現在の彼らが演奏しても、何の違和感を感じないことがそうだが、そもそもGRAPEVINEとは早熟なバンドであった。そして、所謂音楽シーンから一線を引き、独自の世界観を築き上げた長い軌跡を振り返ってみると、この日私が見届けたGRAPEVINEの姿は、本人達が理想とするバンド像にかなり近いのではないかと思った。大胆に鳴らされ続けた成熟味のあるバンドサウンドに、何度も恍惚としてしまった約2時間。キャパ400人の小さなライヴハウスだからこそ味わえた臨場感も相まって、私は彼らの揺るぎないロックバンドへのロマンを強く感じたのだった。

追伸。『GRAPEVINE、秋の名曲選』と題されたアンコールは、あたたかなオレンジ色の照明に包み込まれた、秋実りを感じさせる、味わい深い時間だった。ラストの“ふれていたい”では「善光寺!」というコールが入り、翌日、善光寺に向かう道中のお供には、もちろん彼らを選んだ。

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(セットリストはこちらのサイトからどうぞ)



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by musicorin-nirock | 2015-11-04 21:53 | LIVE | Comments(0)

10/24 GRAPEVINE @長野CLUB JUNK BOX -club circuit 2015(番外編)-

後日きちんとしたライヴレポートをアップする予定なので、こちらでは番外編をお送りします。



***

GRAPEVINEの毎年ほぼ恒例?で開催されるclub circuit (通称:クラサー)。今年は9月に野外コンサートが行われた東京と大阪の2都市を抜かした地方6都市(広島、福岡、名古屋、長野、仙台、札幌)を回り、残す所は仙台と札幌の2ヵ所であり、只今絶賛開催中。今回私は在住している関東から一番行きやすいと思われる街、長野へと向かいました。北陸新幹線で約2時間だったので、関東近郊にお住まいのバインファンの方がたくさん集まっていたのではないのでしょうか?

12時過ぎに長野には到着。お昼にお蕎麦を食べ、駅ビルで翌日の朝ご飯を買って(お焼きと林檎ジュース)、ホテルでのんびりした後に会場へと向かいました。

長野CLUB JUNK BOXは長野駅から徒歩10分足らずで行ける距離だったような・・・長野駅で降りたことが初めてであり、慣れてない場所なので定かではありませんが、そう遠くは無かったです。『again』というショッピングビルの7階に位置する長野CLUB JUNK BOXの壁には、バンドのフライヤーやらステッカーが隙間なく張ってあって、それだけで私はテンション上がる!!何よりもキャパ400人という狭い箱で、天井も低く、久しぶりに『THE・街のライヴハウス』という場所でのGRAPEVINEのライヴに大興奮しておりました。

定刻の18時を少し過ぎた頃にメンバー登場。ライヴはスタートします。

曲などについては一旦置いておき、それ以外でライヴを観ていて気付いたことを。Vo&Gの田中和将さんは、ほんっと~に良くお客さんを観てます。これにはびっくりしました。お客さん1人1人の表情を確かめているようでした。ライヴ中、ヴォーカリストの方は目線をPAさんに持って行くと良く聞きますが、彼の場合は違いますね。しかも、これまたにこやか~に歌うもんだから、目が合ってしまったもんなら本気で照れます。(それが勘違いだったとしても、彼の笑顔を観ているだけでも、照れてしまいます)。

そして、デタラメ言うのもほどほどにしないと怒られますよ…と内心思いつつも「田中さん、丸くなったよな~」としみじみ思ってしまったのがMC。先日、突然配信された“EVIL EYE”。話題のPVはご本人の私生活らしく(デタラメですよね?!)、またサビの♪確かめるぜ~イェッで決めるEVIL ポーズは相当お気に入りのようで、突然歌い出してはこのポーズ決める。この悪ノリ感はまるで小学生。あ、奈良県もお気に入りのようでしたね。お酒も入っていたこともあり終始ご機嫌で、突然♪フフフ~ンと鼻歌歌っちゃうし。あとはもう、いつものお決まりのパターン「長野にはもう二度とこないぜ~」とおっしゃられておられました(勿論デタラメ)。しかも、本編最後の曲が終わりステージをはけるときに、紙コップに入っていたお酒を、田中さんうっかりこぼしてしまって。「アンプにはかかっていない」とか云々言いながら立ち去って行きましたけど、ローディーさんがすぐにタオルで拭いてました…。

「マイペースにやらせてもらっています」とMCで話していた通りの(笑)驚く程のマイペースっぷりを発揮していましたが、決めるところはガツン決める。音楽へのプライドは、申し分なく演奏でガッツリ味わってしまいました。

そんな大らか過ぎる田中さんとライヴの雰囲気に「こいつらならわかってもらえるやろ」というファンに対して確固たるものが、今、あるんだろうなと思いました。私達リスナー1人1人の心の中にもあるように。言葉にするなら「信頼」。もう、そうとしか考えられないです。

最近のライヴや音楽全般のムードは、「皆で共有すること」が強いられている流れにあると思います。私はこの「皆と共有すること」で覚えた感動に救われてきた部分もあるので、一概に否定はできないけれど、長野CLUB JUNK BOXのライヴを観終えて、GRAPEVINEが提示し続けているライヴスタイルを改めていいなと思いました。ハンドウェイヴもシンガロングもなし。皆で一斉にジャンプなんて確実にしない。それでも、GRAPEVINEの音楽を聴いた一人一人が、思い思いに感じるものが彼らからのメッセージならば、それは本人だけにしかわからない特別なもの。それって、とても素敵なことだと思いました。音楽の本質的な部分の一つだし、何より心が豊かになる。夜にツイッターでも呟いたけど、本当に「GRAPEVINEを知らないなんて勿体ない!」と思いました。だから、一人でも多くの人に手に取ってもらいたい。

そんな思いで、今もいます。もしも、私にできることがあるのなら、できる範囲でGRAPEVINEについて伝えていけたらと思います。


***


最後に。私は年齢の半分つまり人生の半分の時間GRAPEVINEを聴いていることに、つい最近気付きました(遅い)。高校生の頃から聴き始めたのですが、社会人1年目から30歳を迎える8年間は、取り敢えずCDは買ってライヴに行くことが習慣にはなっていたけれど、今のような熱心さは正直ありませんでした。音楽は常に流れている生活でしたが、とにかく自分の事が忙しくて、精神的にも肉体的にも余裕ゼロ状態で。前回「GRAPEVINEは心の特効薬」とライヴレポートに書いたように唯一の救いが彼らの音楽でした。

それでも、その精神的にアップアップな8年の間に耳にしていた曲を聴くと、思い起こされる記憶や感情が、実はたくさんあったことを思い知らされます。自分のことは勿論、印象的だった彼らのライヴのこともそう。どんどん、引っ張り出されます。

長野CLUB JUNK BOXでの私は、次々と披露される曲と、それを聴いたことで思い出した記憶を照らし合わせる作業を、自然と繰り返していました。まるでバンドと会話をしているような感覚で、当然ながら忘れていた感情がいくつも蘇りました。そして、とある曲を聴いたときに「私このままでいいんだな。大丈夫じゃん」と思うことが出来きました。悪戦苦闘の8年の間に出会った大切な一曲を聴きながら、これまでに、数多く色々なアーティストのライヴに行ってきたけど、自分の人生が絡みまくっているからこそ、一番自分らしくいられるライヴがGRAPEVINEなんだよなと思えました。

とても貴重な時間を長野で過ごすことができた私は「自分の夢に向けてがんばろう」と誓いました。諦めかけてはいたんだけど、でも、いつかまた何年後かにその曲をどこかで聴いたら、長野での出来事を間違いなく思い出すことになるはず。後悔はしたくない。だからその時までには、2015年10月24日に立てた誓いを果たせている自分でいられますように。勇気を出そうと思います。







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by musicorin-nirock | 2015-10-26 22:55 | LIVE | Comments(2)

9/12 GRAPEVINE@日比谷野外大音楽堂

数日前の大雨が嘘のような晴天に恵まれ、会場に到着するとセミの大合唱が私を迎えた、2015年9月12日。6年ぶりのGRAPEVIVE、日比谷野外大音楽堂ワンマンライヴ。

最新アルバム『Burning tree』の1曲目を飾る“Big tree song”でライヴの幕が上がり、“放浪フリーク”“真昼の子供たち”と、いつになく優しい空気が会場には広がる。オーディエンスを見渡しながらにこやかに歌う田中和将(Vo&G)を観ていると、自然と微笑み返したくなるほどの幸福感で胸がいっぱいだった。そして、亀井亨(Dr)が力強くドラムを叩き出し、西川弘剛(G)が眩い光のようなギターを鳴らし始めると、バンドのギアが切り替わったことがわかる。4曲目は“Glare”。<たかが満ち足りた世界で/胸がいっぱいになって/見たろ光を/走り出したくなって正解だ>と精いっぱい歌い上げる田中の声は、拭い切れぬ哀しみを歌い続けてきた過去よりも、ただ今を「生きたい」というひたむきな意志が強く感じられるものだった。そんな彼の背中を押すように、生命力溢れるバンドサウンドが会場一帯包み込むと、ライヴはまだ始まったばかりなのに私は涙が止まらない。しかし、強烈な余韻を残しながらも、奇天烈なギターリフを皮切りに始まった“コヨーテ”がブルージーな世界へと導き、金戸覚(B)の低音が炸裂する“冥王星”でフロアは熱を帯びていく。そこにノスタルジックな風を呼び込んだのは1997年リリースの1st Single“そら”。色褪せるものなど見当たらない。ただ、彼らの軌跡を感じさせるどっしりとした演奏だった。

曲の合間にビールの進む手が止まらない田中のMCは「飲めよ飲めよ」と言わんばかりに、売店の閉店時間が19時半までとご丁寧に何度もアナウンス。また、今のうちにビールを買っておけよと促す内容で大半が占められていた(笑)。そして、田中が一通り話し終えるとメンバー各々体制を整えバンドは演奏をスタート。先ほどまでとは別人のように、田中は歌い始めるのである。あまりに大らかにステージを進めるその様は、驚くというよりも、私は「さすがだ」としかもう言えない(笑)。例えば自身の生き様や、ロックバンドの在り方をMCを使って語り始めるバンドマンは数多くいる。ところがGRAPEVINEの場合は、この通りほとんど皆無である。彼らが腹の奥底に抱える情熱は、鳴らされるサウンドだけで存分に表現できてしまうのだ。その姿勢が顕著に表れていたのが”無心の歌”から始まった本日のディープゾーン。中でも一際異色を放っていた“SEA”は圧巻だった。重みのある鍵盤を高野勲(Key)が奏で、ゆったりとした波のようなアンサンブルが続く。ギリギリの精神状態を、冷めた表情で淡々と田中は歌い、どことなく漂う緊迫感。いつの間にか、催眠術にかけられたかのように、私の体は硬直し始める。この曲の前後に数曲演奏されているのだが、記憶と呼べる記憶が、私には正直見当たらないのだ。派手な演出などなかった。ただ、5人で紡ぎ出す音の引力によって、心が蝕まれてしまい、平常心を取り戻すのには、しばらく時間が必要だった。

だからきっと体内にアルコールを入れつつ、緩めのMCを挟んだほうが、メンバーもオーディエンスも精神的に楽なのかもしれない。「どうぞ皆さんご自由に今日のライヴをお楽しみ下さいね」ーーこれがGRAPEVINEお決まりの(暗黙の了解に近い)ライヴスタイルで、オーディエンスの様子も自由。会場は指定席であったため立って観ている人はもちろん、座って観ている人もチラホラいる。途中、席を外していた人を見かけたが、果たしてビールを買いに行ったのだろうか(笑)。曲の合間にそっと辺りを見回すと、GRAPEVINEを長年聴き続け、彼らと共に歳を重ねてきたであろう、いい大人の顔ぶればかり。その雰囲気に「ほっ」と安心していた、私もGRAPEVINEと共に歳を重ねてきた一人。

「日比谷に捧げる”This town”!」とお馴染みの前振りからの後半戦は、久しぶりに夏の暑さを取り戻したこの日のための“夏の逆襲“から、”KOL”“ GRAVEYARD”とオーディエンスを再び沸き上がらせて行く。そこにストンと落とし込んで来たのがPermanents(田中の高野のユニット)では最近では良く耳にしていた“smalltown,superhero”。田中の少年時代を歌う曲ではあるが、緻密なアンサンブルに乗る歌声には、現在の父親としての表情を覗かせていたような気がした。そして、本編ラストは“超える″。バンドの生き様をまじまじと見せつけるかの如く、ダイナミックなサウンドが大都会の夜空に響き渡る中<今限界を超える/そのくらい言って良いか>とガツンと決めた最後のサビ。その時、私は彼らのことを心から誇らしく思った。

私にとってGRAPEVINEとは心の特効薬である。ロックバンドに興味を持ち始め、彼らと出会った10代後半から15年以上、GRAPEVINEのサウンドがとことん心に効くことで何度もピンチを乗り越えてきた。そして、いつのまにか私の人生の節目には必ずGRAPEVINEが側で鳴っていて、切っても切れない不思議な縁が出来上がってしまっていた。ただ、彼らと同時期に出会い好きで聴いていたバンドのいくつかは、残念ながら既に解散をしている。この現実をふと思い出し、GRAPEVINEに出会ってから17年後、私がこの日を迎えられたことは奇跡のようなものだと気付くと、“超える”が演奏されている最中、急に感慨深さに襲われた。自らの表現に対する使命感を持ち、着実に可能性を広げながら、天邪鬼な姿勢を貫き続ける孤高のロックバンドは、メジャーデビューから18年間、時に荒波に揉まれながらもぶれることなく続いている。それを確信づけるかのように<今限界を超える/そのくらい言って良いか>と放てる姿は、あまりに格好良すぎるだろう。目から涙はこぼれなかった。しかし、私は胸の高まりを抑えることができなくなっていた。

温かな拍手に迎えられアンコールのステージに登場したメンバー。すると聴き覚えのあるベースのイントロに、ふわりと歓声が上がった。1曲目は“君を待つ間”。離れて暮らす恋人に向けた苦くも瑞々しい想いを、酸いも甘いも知ってしまった四十路を越えた主人公が当時を懐かしむよう歌う姿は、オーディエンスの恋の古傷にも、ちくりと沁みるものがあっただろう。しかし次の“RAKUEN“で見せたものは、歳を重ね、背負わざるを得ない代償をシリアスなロックンロールで提示していく姿だった。そしてアンコールのラストは“ふれていたい”。これが、最大級の多幸感に包まれた、どこまでも優しいエンディングだったのだ。思い返してみると、今から14年前に私が初めて行ったGRAPEVINEのライヴには今のような緩さはなかった。フロアから黄色い声が上がっても、メンバーはどこか素っ気なかった。しかし、メンバーも歳を重ね、彼らを聴き続けてきたオーディエンスも、同じ年数歳を取った。それを互いに確かめ合えたからこそ、緩さの中にも身をわきまえた心地よい大人のグルーヴが、日比谷野外大音楽堂には溢れていた。そして、「ファンと共にこの時まで歩いて来た」という想いが彼らにあるのならば、それがGRAPEVINEにしか鳴らせない「優しさ」なのだろう。「みんなで同じ方向を向かない(田中のMCより抜粋)」バンド、GRAPEVINEではあるが、サビの<ふれてイエーいよう!>の部分では自然と沢山の腕が上がっていた。その全てに応えていくよう、笑顔で歌い続ける田中を観ていたら、そう信じずにはいられなかった。


***

10代の頃からの憧れている人たちが、今も変わらず現役で新しい音楽を生み出し、ステージに立ち続けていることは、驚くほどの莫大な力を私に与えてくれる。そして、今回の日比谷野外大音楽堂ワンマンライヴで、この関係はきっとこれからも、ずっと続いていくのだと確信し、GRAPEVINEと出会えたことへの感謝の気持ちでいっぱいだ。


SET LIST
1 Big tree song
2 放浪フリーク
3 真昼の子供たち
4 Glare
5 コヨーテ
6 冥王星
7 そら
8 無心の歌
9 MAWATA
10 おそれ
11 壁の星
12 SEA
13 愁眠
14 This town
15 夏の逆襲
16 KOL
17 GRAVEYARD
18 smalltown,superhero
19 超える

ENCORE
1 君を待つ間
2 RAKUEN
3 ふれていたい


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by musicorin-nirock | 2015-10-24 00:03 | LIVE | Comments(0)

9/22 NICO Touches the Walls@スペースシャワー列伝15周年記念公演“大大大宴会”~東の宴~

9月22日、新木場STUDIO COASTで開催されたスペースシャワーTV主催『スペースシャワー列伝15周年記念公演“大大大宴会”~東の宴~。出演アーティストにはメインアクトをTHE ORAL CIGARETS、グッドモーニングアメリカ、NICO Touches the Walls、the telephonesの4組が務め、ニューカマーアクトとしてHalo at 四畳半、Bentham、PELICAN FANCLUB、LILI LIMITが選ばれた。

NICO Touches the Walls(以下NICO)のライヴが始まる前、メインアクト4組のバンドが過去に回った『列伝TOURダイジェスト映像』が流れた。そのトップは『スペースシャワー列伝JAPAN TOUR 2007』に出演したNICO。当時メンバー皆22歳で、ライヴ中に当時を振り返る光村龍哉(Vo&G)曰く「毎晩飲んで喉をガラガラ」にしながらツアーを回っていたそうだ。“泥んこドビー”と“そのTAXI,160Km/h”を演奏する様子は、目の前にいるオーディエンス相手に斜め目線で突っ掛かり、20代前半ならではの青さを吐き散らす。ただ、若干22歳の青年達が組んだロックバンドにしてはどこか古風な印象も受けたのだが、ポップでメジャーなものではない表現で、音楽の世界に飛び込んできた彼らの姿勢は、当時から本物だったと私は感心してしまう。そして、この2007年のライヴ映像を観た直後に始まったのが、平均年齢30歳のNICOのライヴ。演奏時間も短く、今年の夏フェスで披露されているお馴染みのセットリストではあったが、ダイジェスト映像を目の当たりにしたことで、強烈なインパクトを私に与えたのである。

真っ白なシャツとデニムパンツに身を包みステージに現れた4人。1曲目に披露されたのは“まっすぐなうた”だった。<間違ってた/なんか全部間違ってた>。2007年のスペシャ列伝後にメジャーデビューを果たし、今日まで走り続けてきた長い長い時間のことを歌っているのかと思うと、なんてドラマチックな始まりなのだろうと感極まりかけたのだが、そんな私の気持ちをよそに「今のNICOは最強」「誰にも負ける気がしないぜ」と強気なMCで光村は客を煽る。古村大介(G)はステージ上を動き回り、奔放にエレキギターを掻き鳴らし続け、坂倉心悟(B)と対馬祥太郎(Dr)の強力なリズム隊がフロアをグラグラと揺らし、光村はギラギラとした視線を投げつけながら歌う。4人の情熱がビシバシ伝わるサウンドを全身で浴びていると、歌が上手いだの、演奏が上手いだの、そういったことは一切無視して、『自分達はロックバンドとしてどうありたいのか?』という、バンドマンとしての根本的な部分で勝負に出ているように観え、ライヴ後半に披露された“渦と渦”がえらい感動的だったのだ。

NICOには、あれもこれも自分たちのものにしようと蓄えてきた過去がある。そして、メンバー全員30代を迎える前に一度全て削ぎ落とせたことで、「あなたに歌を届けたい」という、バンドの使命を担うこの曲が、結成11年目にしてようやく誕生した。決して器用とは言えないバンドであり苦労も多かったと思うが、諦めずに走り続けてきたからこそ「今のNICOは最強」「誰にも負ける気がしないぜ」と他のバンドを目の前に堂々と宣言でき、言葉通りのステージが私の目の前で繰り広げられていた。その姿は、今回共演したバンドにも、大きな勇気を与えたはずだ。この勢いを止められる曲者は、どこにもいないのではないかと思わざるを得ない程、野心剥き出しの4人。2007年のスペシャ列伝ツアーを回る彼らよりもどこか若々しく感じ、始まったばかりの30代を期待させるものがあった。年末には初の大阪城ホール公演、年明けは三度目の日本武道館公演を控えている。新たな壁に4人がどう立ち向かい、どんなフィナーレを見せてくれるのか。今からとても楽しみにさせてくれる、素晴らしいアクトだった。

SET LIST
1 まっすぐなうた
2 手をたたけ
3 THE BUNGY
4 ニワカ雨ニモ負ケズ
5 渦と渦
6 天地ガエシ


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by musicorin-nirock | 2015-10-11 09:42 | LIVE | Comments(0)

8/4 MONOEYES@渋谷CLUB QUATTRO

細美武士のソロプロジェクトはMONOEYESというバンドで始動した。メンバーは通称“トディ”こと戸高賢史、ベース&コーラスはスコット・マーフィー、そしてドラムは一瀬正和。それぞれに長年のバンドマンとしてのキャリアがあり、バンドが大好きな4人である。細美が一人一人に声を掛けバンド結成に至るまでには、個々に山あり谷あり超えてきた過去がある。しかし、このバンドには重苦しさが何一つ存在しない。とにかくメンバー間の風通しが良い。細美がDJを務めるラジオ番組を聴いたとき、全員参加のインタビューを読んだとき、4人の絶えない笑い声と、流れ続ける和やかな空気から、そんな仲間に出会えた彼らが、私は心から羨ましく思っていた。

7月30日、千葉LOOKからスタートしたMONOEYES『A Mirage In The Sun Tour 2015』。その3公演目にあたる8月4日、渋谷CLUB QUATTRO。某有名映画のテーマソングをSEにメンバーは登場し、大歓声が上がる中一曲目が始まると、そこから絶え間なくクラウドサーファーが出現。ライヴが進むに連れモッシュの波がどんどん広がり、上がり続ける拳の数も増え、細美の声が聞こえない位のシンガロングがキャパ800人規模のライブハウスに充満する。熱気と共にフロアが高揚してく光景は、あまりに壮観で思わず私もフロアに飛び込みたくなった。

何よりメンバー4人、オーディエンスに負けないくらいライヴを楽しんでいる姿が印象的だった。くるくると回りながらベースを弾く姿がファニーなスコットが、細美の声にハモるコーラスなんて、びっくりするほど気持ちが良かった。全身振り乱し、フロアを煽るようにエレキを掻き鳴らす戸高の姿には強い男気を感じ、スコーンと突き抜ける様な爽快感と地響きのようなダイナミックさを持つドラミングで、動きまくる3人を背後からどっしり支える一瀬は、メンバー1頼もしかった。そして、ガッツポーズを何度も見せ基本笑顔の細美。彼は、いつになくオープンな気持ちでステージに立っているように見えた。最高の仲間と共にMONOEYESを始動させ、たくさんのオーディエンスに囲まれ歌を歌えることが、どうしようもなく幸せなのだと、彼の全部から伝わってくるのだった。そして、最後のMCで「心が折れそうになったら、ライヴハウスで待ってるよ」と投げかけられるくらいオーディエンスとの距離も近い。この近さこそ、細美が信念通して音楽を続けてきた結果なのだと思う。

アンコールでは、突然乱入したTOSHI-LOW(BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)がフロアに突然ダイヴするというハプニングもあり、負けじとスコットも最後はダイヴ。メンバーとオーディエンスの垣根が吹っ飛ばされ更に一体感が増し、ハッピーな空気で始まったライヴはハッピーな空気ままで終わった。冒頭でも述べたが『このバンドには重苦しさが何一つ存在しない。とにかくメンバー間の風通しが良い。』だからこそ『絶えない笑い声と、流れ続ける和やかな空気』がライヴハウスには広がる。最高のメンバーと、目の前で思いっきり笑顔を見せるオーディエンス。そして、そこに音楽があれば最高な時間を過ごせるのである。簡単なようであるが、そう簡単に表現できるバンドは、なかな存在しないだろう。それをMONOEYESは堂々と証明し、まさにこれがMONOEYESの世界なのだ、と私は強く、そう感じた。






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by musicorin-nirock | 2015-08-11 12:16 | LIVE

7/18 田中和将(GRAPEVINE)+高野寛@Zher the ZOO YOYOGI

ラジオパーソナリティの中村貴子さん主催の“y's presents 『貴ちゃんナイト vol.7』”へ行ってきました。出演は、カミナリグモ、田中和将(GRAPEVINE)+高野寛、高野寛の3組(出演順)。中村貴子さんと馴染みのあるアーティストによる、キャパ300人にも満たないライヴハウスでの過ごした約3時間は、予想以上に贅沢な時間となりました。いやぁ、貴子さんありがとう(笑)。私は高校生の頃に、中村貴子さんがDJを務められていたNHK-FM「ミュージック・スクエア」を毎晩聴いてまして、この番組のおかげで多くのバンド・ソロアーティストを知り、今回出演された田中さんのバンド、GRAPEVINEとも出合いました。多分、このラジオと音楽雑誌「ロッキン・オン・ジャパン」が無ければ、今の私ない、と言い切れるほど思い入れの強い番組で、妙にノスタルジーに浸りながら一人家路につきました。

では、個人的メインであった、田中さんと高野さんのステージについてのレポートを以下記載します。

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いつものように白シャツ姿で田中和将は現れた。相変わらず飄々としていて、リラックスしているようにも見えたのだが、今夜はGRAPEVINEではないし、勿論Permanentsでもない。大先輩・高野寛との一夜限りのユニットであり、ドラムに高野とのコンビでもお馴染み宮川剛も加わった3人編成のステージである。いつもよりMCが控えめに聞こえたのは(それでも良く話すようになったのだけれど)、やはり緊張していたのだろう。

1曲目。田中が突然歌いだしたのは“光について”。抱えたアコースティックギターを荒々しく鳴らし、力強い歌声を上げた。高野と宮川の鳴らすソリッドなアンサンブルに導かれ、男らしく、ブルージーに化けている。「挨拶代りに」と曲紹介をしていたが、そのわりには随分渋い。元々曲に存在する繊細さをいい意味で打ち消し、今の田中にしか歌えない”光について”であった。

「GRAPEVINEやPermanentsではやらない曲をやります」という事で、続いたのは“また始まるために”と“鏡”である。オーディエンスからの久しぶりに聴くことができた高揚感がフロアには終始漂う。高野はギターを弾いたり沢山セッティングされた機材をごそごそ操ったりと、何かと忙しそうであったが、彼の柔らかな歌声が田中の声に重なると、一層歌の世界が広がった。つまり、演奏する人や歌う人によって曲に新たな色が加わり、また違う一面を聴き手に見せてくれるのだ。次から次への新しい曲が生まれる世の中で、これは古いやり方に映るのかもしれないが、別の魅力を引き出せるとは、長年経験を培い、リスペクトされ続けてきたアーティストだからこそ、なせる業なのだろう。

田中自身、高野の曲は好きでよく聴いてきたそうだ。「あまり聴いていない人からには感じないんですけど、聴いてきた人なので(高野からの)圧が…(苦笑)」と言いつつもにこやかで、とても嬉しそうだった。続いては高野がVocalを務めたトッド・ラングレンのカバー"I Saw The Light"(日本語歌詞Ver)。田中のリクエストで決めた曲らしく、彼がギタリストに徹する姿も新鮮だ。そして、再び田中のステージへ。私自身、何年振りに聴いたのか正直思い出せない、しかし貫禄に満ちた"フラクタル"と、最後の曲の“TWANG”は、3人のアンサンブルと田中の歌が胸に迫る勢いで、圧巻のパフォーマンスだった。

憧れのミュージシャン、大好きなバンド。そういった自分のルーツに近づくために、まずは「似させよう」と必死に努力するのだろう。そして、経験を積むことで、その努力が血となり肉となり、いつの間にか自分自身として表現できるようになる。今日の田中のパフォーマンスは、まさに今述べたまんまである。CDで聴く声の初々しさは彼にはもうないが、年齢を重ねたからこそ歌える歌がある。40代の哀愁漂うブルージーな”光について”は、リアルタイムで聴いていた頃よりも妙に胸に染み入る声だった。

そして、一夜限りのユニットとは言わずに、またいつか実現してほしい。


set list
1 光について
2 また始まるために
3 鏡
4 I Saw The Light
5 フラクタル
6 TWANG


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by musicorin-nirock | 2015-07-19 00:00 | LIVE