カテゴリ:LIVE( 43 )

5/21 NICO Touches the Walls @豊洲PIT

ツアー初日の雑感です。内容にも軽く触れていますので、閲覧にはご注意下さい。

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by musicorin-nirock | 2015-05-23 09:53 | LIVE

ARABAKI ROCK FEST.15 / GRAPEVINE

4月25日から2日間に渡り開催されたARABAKI ROCK FEST.15の会場には、7つのステージがある。その中で唯一の屋内ステージが花笠だ。GRAPEVINEは今年、2010年のARABAKI以来5年振りに、ここ花笠に立つ。

彼らが出演するARABAKI2日目、4月26日は、前日に比べ日差しが強く、一気に夏を呼び寄せたような暑さだった。午前中から会場をほっつき歩いていた私は、この暑さに体力を消耗され、まだまだ続くライヴのために屋内ステージで少しゆっくりしようと一足早く花笠に向った。すると、ステージにはCHABOこと仲井戸麗市率いるCHABO BANDのライヴが始まっていた。私はこの時、休むつもりで向かったはすなのだが、バンドの音を耳にした瞬間に、完全ノックアウトされてしまった。仲井戸は自分自身が楽器となり、自由自在に音を操っている。彼が産み出す重みのあるグルーヴに、私の体は勝手に動きだし、仲井戸の人生が練り込まれたブルースには、思わず目頭が熱くなる。そしてステージを見渡すと、仲井戸らの名演を舞台袖で楽しむGRAPEVINEのメンバーの姿が見えた。下を辿ると田中和将(Vo&G)は、中学2年生の頃に仲井戸に憧れギターを購入した事を、先日発売された『ロックンロールが降ってきた日3(㈱スペースシャワーネットワーク)』 で語っていた。少年時代に憧れたミュージシャンが、今目の前でギターを弾き、歌っている。そしてこの後、自分も同じステージに立てる事は、ミュージシャン冥利に尽きるに違いない。

仲井戸が去った後の花笠は変わらずテンションが高かった。サウンドチェックのためにステージに現れたGRAPEVINEメンバーも、時折オーディエンスに茶々を入れたりとご機嫌だ。そして、開演時刻を5分ほどオーバーした頃に、彼らはビール片手にリラックスした面持ちで、再びステージに現れた。


1曲目は“光について”。芳醇なギターのイントロが花笠に響き渡り、ノスタルジーが漂う中でも、彼らの「今」が感じられる音だった。たっぷりとしたバンドサウンドは、オーディエンスの心をぐっと引き寄せる。そして次曲“疾走”へと続くと、私の目の前にあるステージが涙で滲んでしまった。<まだ未来は空っぽのままで 新しい予感に泣きそうだぜ>という衝動と、ダイナミックな曲展開が、四十路を超えた大人たちが、まさに仲井戸に憧れていた10代の頃のピュアな気持ちのまま、バンドと向き合う姿を曝け出していたからだ。田中の身を振り乱しシャウトする姿も、西川弘剛(G)が鳴らし続けるエレキの音も、亀井亨(Dr)が刻む迫力あるビートも、いつにも増してリアルに迫ってくる。その勢いに乗って、前のめりに攻めてきた“KOL”。持ち前の成熟尽くしたバンドサウンドからは貫録が感じられる。しかし、モッシュが起きてもおかしくない程のフロアの大盛況ぶりは、狭いライブハウスでぎゅうぎゅう詰めになりながら、彼らのステージを観ていた頃を、ふと私に思い出させた。

ここで最新アルバム『Burning tree』より“Weight”が披露されると、花笠は一気にアダルティな空間へと変わる。高野勲(Key)の鍵盤と田中のアコギが絡み合うアンサンブルが、しっとりとフロアを包み込み、田中は祈りを込めるかのように優しく歌い上げていく。「そろそろ、おねむの時間でしょ?寝てもいいんですよ?」なんて曲前のMCに、くすくすと笑い声を上げたオーディエンスも、食い入るようにステージに視線を向けていた。ヒットシングルで始まり、アッパーなロックを立て続けにチョイスした、GRAPEVINE初心者にも優しいセットリストだったが、ライヴ中盤に差し掛かった所で、嫌味もなくミディアムバラードを持ってくる。そんな彼らの姿は、肩肘に力が入るわけでもなく、とても堂々としていた。

続けて、ファンキーに聴かせた“SOUL FOUNDATION”。活動初期の頃の楽曲が披露される嬉しいサプライズに、フロアのテンションもヒートアップ。オーディエンスとメンバーとの間には一体感が生まれていく。そこに鋭く“ Reverb”が切り込むと、熱狂的な歓声が上がった。金戸覚(B)の低音が拍車をかけように、ぐらんぐらんとフロアを揺らし熱気は更に上がっていく。

そしてラストは再び『Burning tree』から“IPA”という、ツアー中ならでは締め括りだった。先日、赤坂BLITZで初めて聴いたときよりも、サウンドに深みが増し、揺るぎないものが感じられた。歌い続ける中で、新たに生まれた田中の感情が、注ぎ込まれているのだろうか。まるで、GRAPEVINEの「現在地」をここARABAKIの地に刻み込んでいるようだった。特にエンディングにかけての盛り上がりは、この先も続くであろう彼らの道程が、柔らかな光に照らし出されていくようで、私は言葉を失った。

メンバー全員40代を迎え、楽曲に対して向き合い方が確実に変わったことをアルバム『Burning tree』は物語っている。よって、近年リリースされたGRAPEVINEの作品の中でも群を抜いてリアルだ。そのリアルが、彼らより下の世代を生きる私には、理解しがたい部分でもあった。しかし、ここARABAKIで、彼らはまだ熱き音楽への情熱を抱えながら、自らの積み重ね上げてきたモノを踏まえ、更に次なる新しい道を今再び模索し始めている事を、私に教えてくれた気がしている。それは、ツアーを続けていく中で、それぞれの心境に変化が訪れ始めている証でもあるが、やはり憧れのCHABO BANDのステージが、彼らに何か気付かせたのかもしれない。彼らの中に存在する、10代の頃の自分が引き出された、今のGRAPEVINEの鳴らすサウンドは、映画のようにドラマティックだった。


set list
1 光について
2 疾走
3 KOL(キックアウト ラヴァ―)
4 Weight
5 SOUL FOUNDATION
6 Reverb
7 IPA


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by musicorin-nirock | 2015-05-02 12:00 | LIVE

ARABAKI ROCK FEST.15 / the HIATUS

ARABAKI ROCK FEST.15(以下ARABAKI)、その1日目にあたる4月25日。磐越のステージに現れたthe HIATUSのメンバーをオーディエンスは温かく迎え入れていた。その理由を、私は彼らの活動を追い続けていく中で、十二分に理解していたつもりだった。しかし、広大なみちのくの大地を目の前に<Revolution needs a soundtrack(和訳:革命にはサウンドトラックが必要だろ“Horse Riding”>と威勢良く細美武士(Vo&G)が投げ掛けた時、改めて東北の人々にとって、the HIATUSの存在の大きさを、目の当りにすることになる。

ライヴは“The Ivy”から衝撃的に幕を開け、伊澤一葉(Key)の鳴らす繊細なピアノの音が大空に響き渡る“The Flare”へと続く。そして、絶え間ないダイバーとモッシュの嵐で、スモークのように砂埃が舞い上がった“Storm Racers”で畳み掛け、細美はハンドマイク姿になった。最新アルバム『Keeper Of The Flame』の1曲目を飾る“Thirst”では、細美と共にオーディエンスのたくさんの拳が上がり、熱気まみれのまま次曲“Unhurt”へ。柏倉隆史(Dr)とウエノコウジ(B)が産む生々しいグルーヴにエレクトロな打込みが交じり合い、その上に、masasucks(G)の風を切るようなエレキギターが重なるバンドアンサンブルは、この上なく最高だった。

昨年のARABAKIでは、ステージに立てた喜びからか、思わず涙ぐんでしまう細美がいた。私自身にも何度も感極まる瞬間が訪れたのだが、会場中にエモーショナルな空気が漂い続けていた。しかし、2015年のARABAKIでは、MCの最中、時折言葉に詰まりながらも終始笑顔を見せ、力強く歌い上げる細美がいる。サウンドも進化の歩みが止まることなく、更に肉体感を増しており、まるで“Unhurt”の歌詞そのものように、ステージに立つ5人はタフだった。

“Lone Train Running”の<Away now>と繰り返される盛大なシンガロングは、この日、一段と美しかった。また、私もオーディエンスの一人として<Save me>と歌いながら、様々な想いが込められているであろう“Insomnia”が、ここARABAKIで披露される深い意味を考えた。日も暮れ始め、肌寒さを感じる頃には“紺碧の夜に”が投下され、再びモッシュとダイブも始まり、熱気に拍車が掛かっていく。そしてラストソング。アコースティックギターを抱えた細美は“Horse Riding”を歌い始めた。柏倉の刻む躍動的なビートに乗せて、強く優しく歌い上げる中で、<Revolution needs a soundtrack>というフレーズに、思わず身震いしてしまう。それは、2014年のARABAKIから今日を迎えるまでの1年間、the HIATUSが培ってきた全てを、物語っていたからだ。

the HIATUSにとっての2014年は、メンバー全員で初めて東北のライヴハウスも回った全国ツアーや、弾き語りライヴや支援活動といった個人の活動を通して、地元の人々やオーディエンスとの絆をより深めてきた一年だった。その過程で5人全員が同じ方向を向き、the HIATUSが本物のバンドになった事を証明したのが、昨年末の日本武道館公演だ。しかし、もっと至近距離で昨年の集大成を味わえたのが、今年のARABAKIだったと思う。ライヴ中「おかえりなさい」という言葉を、オーディエンスはメンバーに向けて、ずっと投げ掛けているようだった。変わりゆく東北の地で彼らと共に過ごした時間が、人々の生きる希望となり、彼らが鳴らす音楽は、一人一人の記憶の中で、いつまでも輝き続けているのだろう。ステージからメンバーが去った後も、温かく、祝福感に満ちていた。それは、the HIATUSがオーディエンス一人一人の人生のサウンドトラックであることを、確実に証明していた。



set list
1 The Ivy
2 The Flare
3 Storm Racers
4 Thirst
5 Unhurt
6 Lone Train Running
7 Insomnia
8 紺碧の夜に
9 Horse Riding



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by musicorin-nirock | 2015-04-29 12:20 | LIVE

4/8 Nothing's Carved In Stone @渋谷CLUB QUATTRO

Monthly Live at QUATTRO Vol.2 “2×5=感触”

2015年3月より3カ月間に渡り開催されている『Monthly Live at QUATTRO』。Nothing's Carved In Stone (以下NCIS)がリリースしてきたアルバム6枚のうち2枚つづ、全曲披露してしまうというプレミアムなライヴである。3月10日に行われたVol.1“1×4=衝動”では、1st album『PARALLEL LIVES』と4th album『Silver Sun』が。そして迎えた4月8日のVol.2は、2nd album『Sands of Time』と5th album『REVOLT』が選ばれ、ライヴのタイトルは“2×5=感触”。

ライヴ終盤に差し掛かった頃「“2×5=感触”、かなり好感触じゃない?」と大満足な笑みで話した村松拓(Vo&G)の言葉があったが、彼の言葉以上の夜だった。約2時間という短い時間で彼らバンドマンとしての生き様を見せつけ、目の前にいる全てのオーディエンスに勇気を与えたであろう、最高にドラマチックなライヴだったのだ。

“Song for an Assassin”をSEにメンバーが登場し、生形真一(G)のメタリックなイントロで始まった“Assassin”。フロアを覆う期待感を優しく抑え、じわじわとゆっくり熱を上げたところで、“Chaotic Imagination”を潔く投下。こちらは2nd album『Sands of Time』の1曲目であり、長年のファンにとってはいきなりの嬉しいセレクトに歓声が上がる。ヴィンテージ感漂うギターが鳴り響くと、村松の「踊ろうぜ!」の掛け声と共に“Out of Control”を持ってきた。突き上げる鼓動のようなビートを叩き出す大喜多崇規(Dr)と全身を使いグルーヴを産み出す日向秀和(B)という鉄壁のリズム隊がフロアを揺らし、泣く子も黙るであろう生形の凄まじいギターソロ、そして深みのある力強い歌声を放つ村松に煽られ、既に最高潮の盛り上がり!でもこれはまだ序の口だった。ここからは、NCISの核へと迫って行く。

ライヴ中MCはほぼなく、曲間をインストゥルメンタルで繋ぎながら進められて行った。絡みつく生形のギターが印象的だった“Cold Reason”、大喜多の見事なドラミングが全身に衝撃を与えた“ Rendaman”と、厳ついゴッツゴツのバンドアンサンブルは、今の音楽シーンに於けるNCISの在り方そのものだった。時代に媚びることなく自らが信じ続けてきたロックをかき鳴らすNCISの姿勢。それを保ちながら今日まで突き進んできた事実が、2枚のアルバムの楽曲を並べて聴くことで良くわかる。最近の楽曲の傾向ではダンスとロックを融合させ、四つ打ちを取り入れた作品もリリースしており、「初期の頃の作品が好きだ」という声を耳にすることもある。しかし、あくまでもそれはバンドをより進化させるための手段。彼らの根っこの部分は(当たり前だが)何一つ変わっていないのだ。

熱狂するフロアが静寂を取り戻していったのは、“Memento”から“Palm”へ緩やかに流れた時。村松の男らしさの中にある優しさが声となり、ライヴハウスに響かせる。情緒的に歌い上げた“朱い群青”には胸が熱くなり、何度も涙を拭った。そして、まるで窓から差し込む朝日のように、音の光で包み込んだ“Sunday Morning Escape”。心の奥深い場所にまで届くNCISのサウンドは、生半可なものではないことを、フロアいっぱいに満ち溢れる多幸感がはっきりと証明していたと思う。

「今日のライヴが、楽しみで楽しみで、仕方なかったんだよー!」と突然たっきゅん節(注:たっきゅんとは村松の愛称)が炸裂する中始まった“Bog”。しかし、ハンドマイク姿で歌い始めると、とてつもないカリスマ性を放つヴォーカリストと化し、サビではオーディエンス一体となってジャンプ!ここで生まれた一体感を保ったまま、エンディングにかけてバンドは更に加速する。MCを挟み「待ってました!」と言わんばかりの、大大大歓声がフロアから湧き起こったのは“Sands of Time”。続いて“The Fool”“You're in Motion”では、メンバー四人互いの情熱をぶつけ合うような熱いプレイが繰り広げられていく。その勢いで“Around the Clock”を投下!彼らのライヴではもう「限界」という言葉が存在しないのではないか?と言い切っても良い程にメンバーとオーディエンスが一体となり、大盛況の盛り上がりだった。

その勢いが冷めやらぬまま、大喜多の安定感あるビートに乗せて“きらめきの花”が披露される。<灰色の日々を過ごした僕らは 希望をもった音に救われて>と、村松は両手を広げ、あたかも自分達の事であると言う様に歌えば、サビでフロア一面に上がる手がゆらゆら左右に揺れた時には、日向も一緒に全身揺らし笑顔でベースを弾く。僕らが音に救わたれて来たように、NCISはいつもあなたの側にいるーーー彼らはこうしてリスナーとの距離をぐっと縮めてきたのだろうと、再び胸が熱くなるばかりだった。そして、“村雨の中で”で本編はフィナーレを迎え、メンバーが一度ステージから引き下がった。フロアには彼らが残した情熱と歓喜が途切れることなく充満し、アンコールの拍手が鳴らされる。

暴れ足りないオーディエンスに向けて放たれたアンコール1曲目は爽快感溢れる“The Swim”だった。その後のMCでは緊張の糸が切れたのか村松はしゃべり倒し、生形やマイクレスの日向にも無理矢理話させようとする。最近NCISの4人はそれぞれマイ・イヤーモニター(通称イヤモニ)を作り、日向と大喜多は初めて装着してライヴに臨んだのだが、生形が「付けようとしたら、22歳の年下のローディーから「うぶさんは着けちゃいけません!」と阻止された」というエピソードを悔しそうに暴露。まるで公開打ち上げの様な雰囲気だったが、「後ろを振り返らずにやってきた」と話した彼の言葉には感慨深いものがあった。今年で結成7年目のNCIS。メンバー全員、 既に卓越した技術を持ち合わせながらも、さらに新しいものを生み出そうとするバイタリティに溢れているのは、一人一人の背景には様々な物語があるからだ。そして今、彼らは日本の音楽シーンに深い傷跡を残そうとしている。アンコールラストに披露された“Pendulum”が全23曲のどの曲よりも輝かしく、ドラマチックに聴こえた理由は、きっとそのせいだろう。また、現在制作中である新曲のイントロ部分だけ披露されたが、これがとてもかっこ良く、「2015年もNCISについて行けば間違いなし!」という太鼓判を押されたような夜だった。

なお、来月5月14日にはVol.3“3×6=構築”が開催される。個人的にはNCISと出合ったアルバムである6th album『Strangers In Heaven』と3rd album『echo』が披露されるということで、どうしても行きたかったライヴである。開催まであと一ヶ月、今から非常に楽しみだ。


set List
1 Song for an Assassin
2 Assassin
3 Chaotic Imagination
4 Out of Control
5 Sick
6 Cold Reason
7 Rendaman
8 Predestined Lovers
9 Memento
10 Palm
11 朱い群青
12 Sunday Morning Escape
13 Slow Down
14 Bog
15 Sands of Time
16 The Fool
17 You're in Motion
18 Around the Clock
19 きらめきの花
20 村雨の中で

encore
1 The Swim
2 新曲(イントロのみ)
3 Pendulum

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by musicorin-nirock | 2015-04-12 11:30 | LIVE

4/3 GRAPEVINE TOUR 2015 @ 赤坂BLITZ

※若干ですがライヴ内容について触れていますので、閲覧にはご注意ください。(セットリストの記載は控えます。)










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by musicorin-nirock | 2015-04-04 22:42 | LIVE

3/5 ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ フェスト’ 15 @ STUDIO COAST

3月5日、新木場にあるライブハウスSTUDIO COASTにて開催された“ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ フェスト’15”。その主催者であるNICO Touches the Wallsのライヴレポートをお届けします。


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客電が落ちると凄まじい歓声が上がった。アコースティックにスカを掛け合わせた陽気なSEに合わせて、自然と始まるハンドクラップ。その中を颯爽とNICO Touches the Walls(以下NICO)、光村龍哉(Vo&G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)、対馬祥太郎(Dr)が登場する。


「楽しんでるか?新木場!お祭り騒ぎだぜ!」。威勢のいい光村の第一声と共に始まったのは、彼らの最新アルバム『Howdy!! We are ACO Touches the Walls』からアコースティックヴァージョンの“手をたたけ”。古村、坂倉そして対馬の叩き出す迫力あるトリプルドラムがフロアを震わせ、アコースティックギターを抱えた光村の歌声は、今宵は一段と逞しい。<今この瞬間を鳴らそうぜ>と歌詞を変えて歌い、間奏部分で始まったのがメンバー4人、息の合ったドラムセッション。このコーナーのハイライトとして対馬のドラムソロも披露される。勢いのままに続いたのは“THE BUNGY”。ガットギターを抱えた古村が鳴らすイントロが軽やかに宙を舞う。そして、「飛び跳ねろ!」と、雄叫びにも近い光村の声を浴びたオーディエンスが波のようにステージに押し寄せてくれば、彼らは野心剥き出しのダイナミックなサウンドで受けて立つ。立て続けに披露されたアコースティックの2曲は、先月ビルボードのステージで聴いた時よりも開放的で生々しさが際立っていた。


「改めましてこんばんは!NICO Touches the Wallsです。“ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ フェスト”へようこそ!」。今年でフェストは第2回を迎える。光村は、去年初めて自主フェスを開催したら想像以上に楽しくて今年も開催を決めた事、また対バン相手からも刺激を受け自分達にとってのターニングポイントでもあった事を明かす。そして、今宵のお相手[Alexandros]は、昨年も出演してもらっている。当時、バンド名が改名前の[Champagne]だったため[Alexandros]としては初めてなのだが「去年も似たような曲をやられていましたけど。名古屋辺りで(笑)」と笑いを誘い、ライブ前日、光村の元に川上洋平([Alexandros]Vo&G)から「映画観に行かない?」と今日会うのにメールがあったと、公私共に仲が良いことをアピール。しかしフェストの先攻を務めた[Alexandros]の川上は容赦しなかった。公私ともに長が良いことを話しつつも、「NICOをぶっ潰しに来ました~!!」とのっけからの宣戦布告。「良い空気のままNICOに渡そうとは思っていません!俺らはそんな良い子ちゃんじゃありません![Alexandros]の空気を作ってNICOに渡したいと思っています!」。この言葉通りライヴの熱量も半端なく、スケール感のあるハイブリットサウンドで一気に観客を魅了しまったのだ。盟友であり、時にシビアな目線を投げることもあるライバル関係でもある二組の共演。もちろんNICOの掴みは決して悪くない。ここから底力の見せ所だ。


オープニングから光村がずっと抱えているアコースティックギターは、ビルボードのステージで可愛い音色をお披露目された「大先輩」だ。次曲“Mr.ECHO”のイントロも、この「大先輩」で優しく奏でられていく。自問自答が繰り返される歌の主人公は作詞者である光村自身であり、孤独と向き合い続けた作品を創り上げてきたNICOの姿でもある。昨年の日本武道館のステージでは、光村の後を追いかける古村、坂倉、対馬の力強いコーラスがとても印象的であったが、ここSTUDIO COASTでは3人のコーラスが後押しとなったのか、フロア一体に広がっていくシンガロングが言葉にならない程に感動的だったのだ。まるで曲がバンドの元を離れ、目の前の一人一人の歌への変化していく瞬間を観たかのようだった。「僕らの歌でもあるけれど、君の歌でもあるんだよ」と、伝えているようだった。そして、幻想的な夜の世界へ一瞬にして引き込ませた“夢1号”で、美しく繊細なコーラスに対し、光村の歌唱が力強く映ったことも、“Diver”の王道のメロディには肉体感が生まれ、男臭さ漲るバンドサウンドでがっついてきたことも、ストイックにロックバンドであることをこだわり続けた結果だろう。安定感ある坂倉のビートに乗せて、オレンジ色のライトの中を疾走していく“ローハイド”は、まさに2015年を駆け抜けるNICOそのものであったし、“ニワカ雨ニモ負ケズ”の途中のブレイクで光村が、「へへへ、明日はどしゃぶりかな」と言葉を零せば、悲鳴にも近い大歓声。スリリングかつ爽快感あるサウンドで、たくさんの笑顔を咲かせてみせたのだ。


「やべぇ、楽しいっすね。最近(アコースティックライヴが続き)こういうのはなかったから、でかい音が出せて楽しい。」と光村。そして、先日30歳の誕生日を迎えたばかりの古村へ、メンバー3人とオーディエンスで“Happy Birthday”の大合唱。古村は「この景色は最高!」と久しぶりにライブハウスのステージに立ちご満悦の表情だ。そして、このフェストについて光村がちょっと長めに話し始めた。今、気が付けば毎週末のように、日本中のどこかしらでフェスが開催される時代である。しかしこのフェストは、こういった世の中の流れは関係なく「僕らで世の中の流れを作るもの」であり、その同志として他のバンドに出演してもらっていることのこと。今回対バンした[Alexandros]に対しては、「[Alexandros]のようなバンドは他にはいないじゃないですか。心のどっかでひっくり返していきたいという熱意」を光村は感じている。また、“ノ フェスト”の“ノ”とは英語の“No”。つまり『決して~ではない』という意味合いであり、正しく言うと『祭りどころではない』。「盛り上がるとか、盛り上がらないとか関係なく、バンドとして音楽をもっとぶつけ合える夜にしよう」という主旨なのだ。そして、共演を果たした[Alexandros]は切磋琢磨し合える仲間であり、「みんなもそういう仲間がいたら大切にした方がいいね。[Alexandros]、一生よろしく!」とステージ上で敬意を表す。思えば昨年、両バンドともに日本武道館の舞台に立った。しかし、ストレートに武道館に辿り着いたわけではなくて、「改名発表」に「リベンジ」という危機を乗り越えた結果、大きな転機を迎えることができた仲だ。年齢も近く分かり合えることも多いのであろう。NICOにとって[Alexandros]の存在の大きさを改めて思い知る、胸が熱くなる場面だった。


「僕のためにではないんだけど…世界に一本しなかいギターを買いました。」。少し照れながら話す光村の表情は、29歳の光村ではなく10代のあどけなさが垣間見れた。そして、「新しいギターを買ったら弾きたくなった」と披露されたのが、“そのTAXI,160km/h”。4人が同時に音を出した瞬間に場内の空気は熱狂に満ち、所々でモッシュも起こり始める。その様子は、昨年2月に行われたキャパ約200人のライブハウス『カベニミミ』を思い起こさせた。しかしさらに遡って、インディーズ時代小さなライブハウスのステージを再現したかのような、ギリギリの臨場感があった。この日、歌も演奏もMCも全てに「成熟と逞しさ」が漲っており、いよいよ中堅バンドとして次のゾーンに確実に足を踏み入れた事を私は確信できた。しかし、この素晴らしい流れの中で、彼らは突如『原点』とも呼べる曲を投下してきた事は、光村の新しく手に入れたギターが、彼らの胸の奥で生き続けているピュアな想いを、引き出したからに違いない。「思い残す事のないくらい、騒いで帰ってくれ~!」いつの間にか光村は真っ赤な“とちおとめ”にギターを持ち換え、ラストナンバー“天地ガエシ”が始まった。私は2階席の最後尾で彼らのステージを座って観ていたが、“天地ガエシ”が始まった途端に思わず立ち上がってしまった。2番からのテンポアップがフロアに拍車をかけ熱気の渦に溺れさせていく様も、溜めて溜めてオーディエンスをじらしまくって終わらせるパフォーマンスもさすがだった。全てを出し切ると、ステージ前方に集まり、手をつないで深々と一礼をする。オーディエンスに手を振りながら、ステージを去って行った4人は、いつになく良い顔をしていた。


約一時間の名演だった。王道のセットリストでありながらも、アコースティックアルバムのリリースとビルボードでの経験がバンドの血となり肉となり、久しぶりに爆音を鳴らせる喜びも相まって、今のNICOの全てを爆発させたような夜だった。何より彼らをここまで熱く燃え上がらせたのが大きな理由は、言うまでもなく対バン相手が[Alexandros]だったからだろう。私は本編終了の時点でライブハウスを後にしたのだが、アンコールでは両バンドメンバー全員、8人によってThe Beatles “Helter Skelter”とLed Zeppelin“Whole Lotta Love”のカバーが披露されたと小耳に挟んだ。これまた熱い熱いステージだったんだろう。「またやろうね」と約束が交わされたようだし、再び共演が繰り広げられるその時を私は心待ちにしている。


set list
1 手をたたけ
2 THE BUNGY
3 Mr.ECHO
4 夢1号
5 Diver
6 ローハイド
7 ニワカ雨ニモ負ケズ
8 そのTAXI,160km/h
9 天地ガエシ

encore
1 Helter Skelter (The Beatles ) & Whole Lotta Love(Led Zeppelin)



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by musicorin-nirock | 2015-03-08 21:27 | LIVE

12/22 the HIATUS @日本武道館

Closing Night -Keeper Of The Flame Tour 2014-

2014年3月にリリースされたthe HIATUS 4thアルバム『Keeper Of The Flame』を引っさげ、同年5月から7月にかけて行われた「Keeper Of The Flame Tour 2014」の追加公演として行われたバンド史上初の日本武道館公演。これは、バンドの結成から今日までthe HIATUSが歩んできた道を、一歩一歩確かめ、そして辿り着いた日本武道館は、大切な「お前ら」と、この素晴らしい時間を共有する。その為だけのライヴだった。

彼らの初期の楽曲から始まったこのライヴのセットリストは、フロントマンである細美武士(Vo&G)が孤独から解放されていく姿であり、先日スペースシャワーTVで放送された今回のツアードキュメントのエンディングでナレーションを務めたTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)が語りかけた言葉そのものだ。

「the HIATUSは、バンドになったんだね」

そう。この一枚のアルバムがきっかけとなり、積み重ねてきた濃厚な時間の中で、the HIATUSは本当の“バンド”になった。そして、彼らを祝福するかのように、二階席の奥までみっしり「お前ら」で埋め尽くされた光景は、結成当初はメンバーの誰一人と、想像出来ないものだったはずだ。


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舞台を覆う紗幕越しに”Interlude”が始まると、オーディエンスから沸き起こる大歓声は既に最高潮に達している。上がり続ける熱気の中を“Roller Coaster Ride Memories”を歌う細美の声がフロアを這うように行き渡り、震動させる。プログラミングと生音を掛け合わせたバンドアンサンブルは、燃えたぎる炎のように熱い。そして、“The Ivy”“The Flare”“My Own Worst Enemy”と1stアルバム『Trash We'd Love』、2ndアルバム『ANOMALY』に収録されたアイテムが、勢い良く立て続けに投下されていく。ステージ背後に設置されたLEDに流れる映像をバックにダイナミックなプレイを魅せるmasasucks(G)、ウエノコウジ(B)、柏倉隆史(Dr)。そこにナイフのような鋭さを持つ伊澤一葉(Key)の鍵盤が切り込めば、the HIATUSの創り上げた音世界は、ロックという概念を飛び出し、芸術の領域にまで達してしまっていることがまんまと証明された。

「テンション上がっておかしくなっちゃう前に言っておくわ。俺たちを武道館に連れて来てくれてありがとう!」。始まって早々に細美がお礼を述べると、”Storm Racers”をぶつけてくる。熱狂の渦と化したアリーナゾーンは、迫り来る波のようにタイバーが続々と出現。そして、さらに彼らを煽り立てるように“Centipede”“Monkeys”とハードネスなナンバーを間髪入れずにぶち込み、武道館という巨大な空間を5人のモンスターはペロリと飲み込んでしまった。

「俺、お前らの楽しそうな顔を見るのが何よりも好きなんだけど、普段はここだけじゃん?(アリーナを指さす)今日はさ、横にも上にも見えるんだよ。武道館には、何っにも思い入れもなかったけど、俺この景色超~好きだわ。こんなに良い景色見れるとは、思っていなかったよ。」

細美はアコースティックギターに持ち替え、柔らかなイントロが鳴り響く。3rdアルバム『A World Of Pandemonium』からまずは“Deerhounds”。武道館一体を溢れんばかりの多幸感で包み込むと、人間の内面へとぐっと入り込んいく“Bittersweet / Hatching Mayflies”、そして柏倉の細やかなドラミングとウエノの重たいベースが絡み合い、心地よいグルーヴを生んだ“Superblock”へと続いた。

ここで細美はとある事を試みる。

「5年くらい前に矢野顕子さんからメールが来て。電子メールね。<あなたこれ観てみなさい。>って動画のURLが張ってあって。アメリカのフェスで、聴覚障害者ブロックに手話通訳の人がいて、音楽に合わせて歌詞を通訳してて。それが、本当に最高で。日本でもやんねぇかなって待っていたけど、やる気配もないし、ロッキンでもやらないし(笑)だから今日やってみようと思って。」

と、手話通訳士の女性を招いた。彼女がこのステージに立てた喜びを細美の言葉に合わせ手話で伝えると、細美と共に“Horse Riding”を歌い始める。彼女が音に合わせ、手話通訳をする姿は、まるで音が鳴るままに自由に振る舞うダンサーのようだ。耳が不自由な人でも楽しめるライヴをやることで、彼らは一つ、私達の日常に於ける隔たりを無くした。この配慮には誰もが胸が熱くなったのではないだろうか。そして、もう一人ゲストとして、ロサンジェルスよりやって来たジェイミー・ブレイク(The Rentals)が登場。ライヴ前日に訪れたというロボットレストランが「Crazy!」だったと驚いた様子を話し和やかな雰囲気のまま“Tales Of Sorrow Street”へ。細美の声にそっと寄り添い、続く“Souls”で聴かせた二人のハーモニーは、かつてアルバムを共に創り上げた仲間としての愛情が感じられるひとときだった。

この時点でライヴ開始から1時間ほど。ここからは『Keeper Of The Flame』の世界へ導かれていった。アルバムの1曲目を飾る”Thirst“のイントロが始まると、一気に緊迫した空気が漂う。ハンドマイク姿になった細美はステージ前方ギリギリに立ち、拳を掲げ、吠えるように歌い上げると、続くエレクトロポップなナンバー“Unhurt”でフロアがぐんぐんと開放され、再び熱気が上がり始めたオーディエンスの「Away now,Away now」というシンガロングがエモーショナルな空間を創り上げた“Lone Train Runnning”。私はここで、込み上げてくる感情が涙として溢れ出し、止まらなくなってしまった。そして、マイクを離れ、響き渡る声に聴き入る細美の姿もとても印象的だった。

「今41で、この歳になると先に逝ってしまう奴らがいて。俺らだって、明日あっちに行っているかもしれないし、お前らだってそう。誰がいつ逝くかはわからねぇ。・・・今日はそいつらも、ここに来て一緒に聴いててくれるといいな。いつか俺らもそっちへ行くからよ。そんな気持ちで作った曲です。」

曲紹介の後に始まったのは“Something Ever After”だった。背後のスクリーンに流れる映像は、高速道路を走る車窓から見える景色や、広がる緑の光景。優しさがいっぱいに溢れるサウンドに乗せて、言葉一つ噛み締めるように細美は歌う。年齢を重ねていく毎に向き合わねばならない死を受け入れた時、この一瞬一瞬を生かされていることは奇跡であり、儚いものであることを、彼らは温かく伝えてくれる。そして、武道館を大きく唸らせたのが“Insomnia”。全てを出し切る勢いで莫大なるサウンドをぶつけるメンバーと、天井が突き抜けるかの如く「Save me!,Save me!」というオーディエンスの巨大なシンガロングは、未だかつて体感したことのない凄まじさだった。その余韻を引きずったままのフロアに心地良く“紺碧の夜に”のギターのイントロが響くと、再び多幸感に包み込まれ、シンガロングの嵐が起こる。今日、ここに居る「お前ら」一人一人の記憶の中に、この時間が確実に切り刻まれていくように。彼らの願いが胸のど真ん中に、直球で伝わってくる。

そして。本編ラストに選ばれた曲は、なんと1stアルバムの1曲目を飾る“Ghost In The Rain”だった。予想もしていなかったこの展開に、私の目から大粒の涙が止まらなくなってしまったのだが、一つだけ、はっきりと確信したことがある。それは、彼らの物語がここで一旦終わりを告げてしまうが、また再びこの5人で新しい物語を描き続けていくという事だ。

ライヴ中盤のMCで細美は言った。

「武道館に来るまでの間、神様っているのかなって考えてた。おセンチな話だけど(笑)、困っている奴を助けてくれるわけでもないし、すっげぇ良い奴が一番幸せになれるわけでもないし。でも、一個だけ、一個だけ神様が叶えてくれることがあって。何かを頑張ればちょっとくらいは絶対に強くなる。だから、来年もthe HIATUS頑張ります。」

それは、この言葉に繋がっていく。

ーYou carry on / The world will find you after allー
(対訳:君はそのまま進むんだ やがて世界は君を見つけ出す)

苦悩の中で生み出されたこの曲が、希望という言葉で塗り替えられた瞬間だった。真実を胸にした5人の英雄達が鳴らす、強くて感動的な“Ghost In The Rain”だった。

アンコール。
ステージに登場したメンバーが、再びそれぞれの居場所に戻った。

「エルレ(ELLEGARDEN)が休止したおかげでここに居る仲間と出会えたし、震災があったおかげて、いっぱい仲間ができた。それって“~せい”なんだけど、“~おかげ”にしないとやってられない。俺たちみたいなバカ野郎は、お前らも、下を向いて落ち込んでいたってしょうがないんだよ。ピンチをチャンスに変えてやって行くしかない。これからも、バカみたいにゲラゲラ笑って、前を向いて生きていこうぜ!」

この言葉の後、細美のエレキギターによる弾き語りから始まった“Twisted Maple Trees”。思い出すのは2012年に開催された「The Afterglow Tour」、NHKホールで行われたツアーファイナルのステージに立つ細美だ。全力を出し切り、この曲を歌い終わった後、彼は叫びそして泣き崩れたのだ。しかし、ここ武道館のステージに立つ細美は、しっかりと前を見て、時折笑顔を覗かせながら、気持ちよさそうに歌い、クライマックスにかけての盛り上がりは、長編映画を見終えた後のような興奮と感動をオーディエンスにもたらした。

そして、荘厳な空気に染まったフロアに清らかな水が注がれるよう“Silver Birch”のイントロが鳴り響く!細美によって紡がれていく一言一言に合わせ、この日何度目なのかわからない盛大なシンガロングが沸き起こり、武道館一体が輝き出す。演奏を終えた5人はステージ前方へと集まり、堅く繋いだ手と手を掲げ、深々とお辞儀をして颯爽とその場を去った。ステージ袖に向かうとき、お互いの肩を叩き合っていた姿は今でも目に焼き付いたままだ。

これで最後・・・と思いきや再び止まないアンコール。そして、すぐに応えてくれたthe HIATUS。

「武道館のこの景色は気に入ったけど、やっぱ、俺たちには似合わねぇ。お前らも遠いし。次会うときは、どっかの街の小汚ぇ路地裏で会いましょう!」

マイクレスでオーディエンスに向かって叫んだ細美。“Waiting For The Sun”のラストに起こったコール&レスポンスでは、まるで宙にオーディエンスが伸ばした手とメンバーの手が、がっちりと繋がれたようだった。再びthe HIATUSと会えること。ここにいる全ての人が、期待を胸に帰路に就いた事だろう。


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ヒットチャートを賑わせるような音楽シーンとは一線を引き、頑なに自分達を貫いてきた、それが形となった夜だった。同じミュージシャンとは言え、畑違いの5人が集まり、既に手にしているものを差し出しながらthe HIATUSを通じ学び得たものの全てが熟成された音となり、喜びと共に鳴り響いていた。今回の日本武道館公演は、私が今まで観てきた数多くのアーティストのライヴの中でも、桁違いのレベルに達していると実感し、具体的に世界進出を考えても良いのではないかと思ったのだが、細美が肉声で伝えた最後の言葉の後に、笑顔で拍手をする柏倉の姿が見えたとき、彼らの意志は誰に何を言われようが固まっているように思えた。日本武道館の大きなステージに立つthe HIATUSも、とある街の小さな箱のステージに立つthe HIATUSも何一つ変わらない。「お前ら」の笑顔が見られるんだったら、彼らはいつでもどんな場所でも、私達の目の前にずっと立ち続けてくれるのだ。

私にとっても、一生忘れられない、とても大切なライヴとなった。
the HIATUSのメンバーに心の底から「ありがとう」とお礼を述べたい。



Set List
1 Roller Coaster Ride Memories
2 The Ivy
3 The Flare
4 My Own Worst Enemy
5 Storm Racers
6 Centipede
7 Monkeys
8 Deerhounds
9 Bittersweet / Hatching Mayflies
10 Superblock
11 Horse Riding
12 Tales Of Sorrow Street (with Jamie Blake)
13 Souls (with Jamie Blake)
14 Thirst
15 Unhurt
16 Lone Train Running
17 Something Ever After
18 Insomnia
19 紺碧の夜に
20 Ghost In The Rain

encore 1
1 Twisted Maple Trees
2 Silver Birch

encore 2
1 Waiting For The Sun


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by musicorin-nirock | 2014-12-25 18:37 | LIVE

9/29 NO NUKES 2014“the HIATUS”

2014年9月29日から10月1日の3日間、Zepp Diver City TOKYOで開催された『NO NUKES 2014』。その1日目に当たる9月29日に出演したthe HIATUSは、自然エネルギーを利用した音楽フェスティバルや脱原発を謳うイベントが数多く開催されている昨今、率先して参加しオーディエンスにメッセージを送り続けている。同月23日には『さようなら原発全国大集会』(細美のみ)、このライヴの2日前には『中津川THE SOLAR BUDOUKAN 2014』に出演し、その直後のステージであった。福島第一原発で起きた悲惨な事故から約3年半が経過し残念ながらそれがどこか風化しつつある中を、フロントマンの細美武士(Vo&G)は東北ライヴハウス大作戦の活動を始め、ことある毎に福島県へと足を運びメディアでは語られないリアルな現状を見続けている。そして、the HIATUSとして今年5月から7月にかけて行われた全国ツアーで東北にある小さなライヴハウスを回ったことと、常日頃、細美のアグレッシブに突き進む姿を間近で見ていること。この二点が確実に他の4人のメンバーに大きな影響を与えていると、ステージに立つ彼らから私は強く感じていた。政治的な発言せず、表現として関与させないミュージシャンもいる中で、その姿は端から見たらストイックに写るかもしれない。しかし、だからこそ緊張感と開放感が交互に漂う、天地がひっくり返るような壮絶なバンドサウンドをNO NUKESのステージで鳴らすことが出来たのだ。

現在、九州電力川内原発の再稼働の問題は一向に終息する様子が見えず、一人一人が本当に真剣に考えなければならない境地にいることを実感している。私は政治とロックフェスの繋がりについて正直戸惑っていたのだが、このイベントに参加したことが日々の生活に於いて政治をもっと身近なものとして捉える大きなきっかけとなった。時間は経ってしまったが、あの日の5人の戦う姿を精一杯レポートしたい。



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場内が暗転し“Interlude”が流れた途端に沸き起こる大歓声。真っ青なライトの中をメンバーそれぞれNO NUKESのロゴが付いたTシャツ姿で登場した。普段、ジャケット姿が定番のウエノコウジ(B)も、この日はそれを脱ぎ、細美は早々にガッツポーズを見せている。気合いの入った1発目は“Storm Racers”。先攻、斉藤和義が残していたシリアスな空気は、「One, Two, One two three!」とサビにかけてのカウントダウンが勢いづけ、一気に熱を帯びる。間髪を入れず始まった“Monkeys”では、モッシュが起こりダイバーも出現。柏倉隆史(Dr)とウエノコウジが絡み合うドスの効いたビートに乗せて、masasukes(G)が全身振り乱しながら歪んだエレキをかき鳴らし、伊澤一葉(Key)は激しく鍵盤を叩きつける。オーディエンスからのオイコールも収まらず、ライヴ開始10分足らずで凄まじい盛り上がりを見せた。

続く“Thirst”はmasasucksが後ろを振り返り、自在にリズムを操る柏倉のフィーリングを感じ取りながら一音一音丁寧に音を沿わせ充満させたイントロが印象的だった。彼の集中力に引き寄せされるようじっと見入ってしまうくらいに、ステージのどこか緊迫したムードは今までのライヴで感じてきたものとは違った。どくどくとした生々しいサウンドに合わせ、ハンドマイク姿となった細美は、鍛えに鍛え抜かれた精神力を見せ拳を揚げ、声を上げる。それは、このライヴが彼らにとってどういうものかを知らしめた瞬間だ。そして、この緊迫を和らげるように“Something Ever After”の分厚いオルガンが響き渡り、温かくライヴハウスを包み込む。細美は言葉一つに命を吹き込むよう大切に歌い、シンガロング続けるオーディエンスに向けて「ありがとう!」と気持ちよく感謝と笑顔を放った。

「NO NUKESに集まってくれてありがとうございました」細美のMCその第一声だ。そして「小泉さんと細川さんと4人の政治家の先生が来てくれて、お前らどう思った?」と問いかけてくる。NO NUKES 2014の初日であるこの日、ライヴが始まる前に今年出席できなかった坂本龍一の強い希望によって、細川護熙元首相と小泉純一郎元首相をはじめ政界から4名招き、両首相は挨拶を行ったのだ。私は政治家がこのようなロックイベントに参加することにどこか違和感を感じていたが、細美は政治性のあるイベントになると従来のロックファンは来てくれないと嘆く。しかし、両元首相が私達の目の前で話してくれたことで「気付いただろ?テレビの中のことはフィクションじゃないって。」この後始まったのが“Horse Riding”だった。

<Revolution needs a soundtrack>というフレースが今ここで鳴り響く意味をひたすら私は考えてしまう。様々な出来事に思いを巡らし、現実を見て見ぬふりして生きてきたわけではないが、恥ずかしいくらいに無知であることを私は自覚する。そして複雑な時代を生きている事に改めて気付かされ、悔しさと哀しみが湧いてきてしまった。しかし、真っ白なライトに包まれながら爪弾かれるアコースティックギターで始まった“Deerhounds”が、生まれ変わった美しい世界を描いているようで、音と共に放たれる細美の歌声にただただ胸が熱くなる。頭の中での混乱が静かに収まり、目から涙が溢れてきたのだ。

そこに切り込む“Unhurt”。天井に吊されたミラーボールが回り出しオーディエンスは音に身を委ね、生まれていく開放感。細美もとても楽しそうにステップを踏みながら歌う。そして、ライヴの序盤に少し疲れが見えた声は、いつの間にか強く太く変化していることに気付く。そんな姿に呆然としていたら“Lone Train Running”のピアノの音が鳴り響き、エモーショナルな風が吹いた。その瞬間込み上げてきた感情をグッと飲み込んだが<Away now>と繰り替えされる盛大なシンガロングに心が揺さぶられ、再び目の前が滲む。細美はマイクから一歩下がった場所で、たくさんの声に聴き入るように歌っている。そして掛け声と共にスピード感のあるサウンドに切り替われば、爽快感を携えながライヴ後半を駆け抜けるのだ。

すると、突然雷が落ちたかのような衝撃を柏倉が叩き出した。“The Flare”で怒りが顕わになり、5人の高揚しきった感情が天に目掛けて放出される。細美は<Both you and I>と歌う時、フロアと自分を指さし「繋がっている」と確かめていた。そして再び威圧的なドラムがドスンドスンと床を振るわせ、オーディエンスに感じさせる予感。「NO NUKES」で演奏された“Insomnia”が残していったもの。それは、怒りや哀しみをただ嘆き続けるのではなく<Save me!>と苦悩を吐き出すことで、今苦しみの最中にいる人々のその感情を代弁し、愛や夢で溢れる未来を想う切なる願いだった。

音が止み、静まり返ったライヴハウスに大きな余韻だけがある。そして、色鮮やかなギターのイントロが鳴らされ“紺碧の夜に”が始まった途端、盛大なハンドクラップが始まり多幸感に包まれていくが、闘争心は最後まで剥き出しのまま。気迫のこもった演奏だった。「川内原発再稼働、する、しない。未来が大きく二つに分かれるよ。原発のことしらない奴、すぐわかるから調べてみ?」。ラストソング“Silver Birch”が始まる前の細美の言葉がストレートに胸に響く。そして、目の前にいるオーディエンス一人一人に確実に届けるため、思い残すことがないように汗にまみれ、ひたすら演奏し続けていた。

歓声が静まることなく、割れんばかりのアンコールを浴びながらメンバーが再び現れ、一曲だけ演奏してくれたのは、“Waiting For The Sun”だった。ミドルテンポの心地よさと浮遊感あるエレクトロな音の中、細美とのコール&レスポンスによって生まれた一体感にただただ心が満たされる。一歩一歩着実に踏みしめるような安定感ある演奏は、the HIATUSの歩みのようであり、怒りも、苦しみも、憎しみも吐き出された時、全てがきらきらと輝き出す希望に繋がっていくのだと、ここの集まった全ての人達が実感したことだろう。

冷たく厳しい向かい風は相変わらず吹きっぱなしだが、いつかきっと天に上る太陽が私達を温かく照らしてくれる。願いが叶うその日まで、彼らは戦い続けるのだ。

最後に。アンコールの曲が始まる前、細美は楽屋裏での出来事を話してくれた。先にも述べたが、この日細川元首相と小泉元首相がステージに登壇し挨拶を行っている。それを受け彼は両首相の元へ出向きお礼を述べたそうなのだ。若い世代に政治の話をする事の難しさを身をもって経験しているため、今日は何を話せば良いのか前日の夜から悩んでいたらしい。だが「先生方が来てくれたおかげで、俺の話もちょっとだけ説得力が増します。今日はありがとうございました」と伝えた。主催者である渋谷陽一氏にはとても驚かれたそうだが、彼の起こした行動の理由は至ってシンプルだった。「元首相といったって同じ人」だ。そして「あの人達の持っている力も、お前らの持っている力も一緒だから」。私はその言葉に勇気をもらった。


set list
1 Storm Racers
2 Monkeys
3 Thirst
4 Something Ever After
5 Horse Riding
6 Deerhounds
7 Unhurt
8 Lone Train Running
9 The Flare
10 Insomnia
11 紺碧の夜に
12 Silver Birch

encore
1 Waiting For The Sun


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by musicorin-nirock | 2014-11-26 08:00 | LIVE

11/2 YNU SPECIAL LIVE 2014 “the HIATUS”

11月2日。
横浜国立大学大学祭 常盤祭『YNU SPECIAL LIVE 2014』へ、THE BACK HORNとthe HIATUSの対バンライヴに足を運んだ。

ステージである野外音楽堂のバックには『14TOKIWA』と手作りのロゴが並び、右サイドには落ち葉のモチーフが飾られた、簡素で小さなステージだった。それは、私自身が音楽サークルに所属していた学生生活を思い起こさせ、10数年前の記憶を辿りながらライヴ開始を待っていた。時折空が雲で陰り、風も強く、落ち葉が舞う中でライヴは始まったが、両バンドの演奏時、雨粒一つも降らなかった。「絶対に雨を降らせない、このイベント成功させてやる」。学園祭スタッフの熱い想いが天に届いたのだろう。

この対バンライヴの後攻をつとめたのがthe HIATUS。セットリストは最新アルバム『Keeper Of The Flame』と、夏フェス以降彼らのライヴでは定番となった楽曲から構成されていた。私は今年the HIATUSのライヴを数回観ているが、その時その時、感じることは常に違う。それは、ステージに立つthe HIATUSのメンバーも同じなのだろう。彼らも今この時しか鳴らすことの出来ない音で、ステージを創り上げている。そして大袈裟ではなく、私達がその時を共有できることは、実は奇跡のようなことなのだと個人的に強く感じるようになった。

the HIATUSはメンバー一人一人がそれぞれに積み重ねてきた過去があり、個としての存在感が際立ったバンドだ。彼らは「喪失」を背負いバンドをスタートさせたが、細美武士(Vo&G)がこの5年間で確実に自分を取り戻し、また伊澤一葉(Key)が正式加入後、初のアルバムをリリースし今年5月から7月まで続いた全国ツアーによって新たな結束力が生まれた。この二つの要素が今のthe HIATUSの強みとなり、豊潤かつ感度の高いサウンドを生み出している。

始まりは“Thirst”、続くアッパーな“Storm Racers” で勢い付ければ、エレキギターを下ろし、細美はハンドマイクに切り替え歌う“Something Ever After”で生まれたオーディエンスとの一体感。彼が手に入れた“Unhurt”な心によって、“Silver Birch”、“Lone Train Running”、”The Flare ”で見せた過去の苦悩は輝きに変わり果て、そして今、“Insomnia”で哀しみを分かち合い、希望に繋げようとする強さ。曲一曲が持つ感情が、ジャムセッションのような自由度の高い演奏と、繊細かつエネルギッシュな細美のヴォーカルによって伸びやかに解き放たれる。また、何よりこの日はオーディエンスの若いエネルギーが凄かった。“紺碧の空に”が始まると沸き起こるハンドクラップ、モッシュや続出し続けるダイバーに、嬉しさがこみ上げてきたのか笑顔の絶えないステージ上のメンバー。「あまり学園祭のステージには立ったことがない」と細美は話していたし、この光景がとても新鮮に映ったのだろう。どんどんこっちへこいよ!と細美の煽る姿から「楽しい」という素直な気持ちが伝わってきた。

しかし、MCになると細美は学生達を目の前に「伝えるべきことは伝える」という姿勢を貫いていた。時に下ネタを交え笑わせながらも細美が学生時代を過ごした時代と、「お前ら」が学生生活を送っている今の時代とは、日本の状況が明らかに違うとを示唆し、ミュージシャンは真実の愛や優しさを歌うことしかできず、それは弱いものだが、集まってくれた学生達には負けないような力を持って生きて欲しいという強いメッセージを残した。

アンコール。いつもならメンバーが再登場するまでハンドクラップが鳴らされるのだが、この日に限っては“Insomnia”のイントロ(♪オオオオ~オ~オ~という部分)をなぜか歌うという光景が!それにはメンバーも驚きと喜びを隠せない様子だった。そして、演奏されたのは“Waiting For The Sun”。心地良く刻まれるビートとエレクトロが混ざり合うサウンドによって、曲始まりに細美が話したエジプト旅行中に見た暗闇に広がる満面の星空が、オーディエンスの胸の中にゆったりと広がるよう開放感に包まれていく。そして、きっとここに集まった一人一人に希望の雨が降り注いだであろう。いつにも増して親しみと優しさが感じられるエンディングだった。


set list
1 Thirst
2 Storm Racers
3 Something Ever After
4 Unhurt
5 Silver Birch
6 Lone Train Runnning
7 The Flare
8 Insomnia
9 紺碧の空に

encore
1 Waiting For The Sun
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by musicorin-nirock | 2014-11-04 21:52 | LIVE

9/13NEW ACOUSTIC CAMP 2014"Mini-Atus"

Mini-Atus とはthe HIATUSから派生した、細美武士(Vo&G)、masasucks(G)とウエノコウジ(B)の三人によるユニットだ。結成の経緯は単純に柏倉隆史(Dr)と伊澤一葉(Key)のスケジュールが合わず、もともとはバンドで出演のオファーを頂いていたそうだ。しかし、この3人によるアコースティックセットのライヴは、NEW ACOUSTIC CAMP(以下NAC)のシチュエーションと最高のマッチングであり、ここでしか味わえない感動が沢山散りばめらており、特別な時間を私たちにプレゼントしてくれた。

山の一角をくり抜いたように広がる芝生の上にポツンと建てられたStage YONDER。脇にはペナントが、そして木で作られたアルファベットのオーナメントも飾られており、手作り感が溢れていた。それだけでも、ライヴハウスや大きな野外フェスティバルのステージとは違うのだが、このステージを盛り上げた一番の演出は、大自然そのものだった。水上高原の澄んだ空気、木々の深い緑と芝生の優しい緑、時間と共に変化していく頭上にひろがった一面の晴れた空。

今、この時しか感じられない風景の中を、アコースティックの優しいサウンドと細美の柔らかな歌声が、風と共に運ばれていく。

細美は自身の弾き語りステージでも良くアコーステックギター一本で、the HIATUSの曲を歌うこともあるが、ウエノの低音が加わることで厚みが増し、masasucksが花を添えるような繊細なメロディを奏でる。そしてコーラスも加わることでオーディエンスも一気に盛り上がり、温かな一体感が生まれていた。彼らのライヴといえば、攻撃的で戦闘態勢剥き出しの、観る者全員を圧巻させるパフォーマンスを常に繰り広げているが、この日に限っては、その重たい肩の荷を下ろせたのだろうか、とてもリラックスした空気がステージには流れている。

また、一曲演奏が終わるたびにMCが入り、普段ライヴで滅多に話さないウエノもそれに加わって、まるでリハーサルを見ているよう。しかも、このMCがとても面白かったのだ。3人の年齢の話や(ウエノ47歳、細美41歳、masasucks37歳。私は10歳も年齢差があるバンドだったことに驚愕)、ウエノが大河ドラマが好きで良く観ているのだが、竜馬伝で「竜馬を殺したのはあの中村達也(LOSALIOS)」という流れから、最近はKj(Dragon Aah)や金子ノブアキ(RIZE)も出演しているという話をすると、細美「ルパン三世の次元(大介)はウエノさんしかできなないでしょう!」、ウエノ「(手を横に振りながら)顔が違う!」オーディエンス「爆笑」。と、とにかく和やか。この調子で笑いがずっと絶えなかった。

9月13・14日の2日間にかけて行われた、NACは群馬県にある水上高原で開催されるようになり今年で3年目を迎えた。オーガナイザーである細美の盟友TOSHI-LOW(BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)がゲストで呼ばれると、ウエノの私物ジャケットを勝手に羽織り(しかもウエノ本人は途中まで私物であることに気が付かない)、細美がその夜使用するテント(投げると広がり、簡単に組み立てられる「ワンタッチテント」というもの)を投げながら豪快に登場し、引き続き爆笑トークは勢いを増す。そんな中、4人がTHE BLUE HEARTSのカバー「青空」を披露すれば、細美とTOSHI-LOWが出会い、今日まで歩んできた道のりを思わせるとても力強い2人の歌声に、胸が熱くなった。

このイベントは"FES"ではなくて、あくまでも"CAMP"。2日間山の中で、木登りしたり、アスレチックで遊んだり、各々テントを張りバーベキューをしたり、芝生でただ寝転んでのんびりしたり。ここに集まってきた人たち、それぞれが自由にこの場所と時間を楽しむことができ、ただそこに音楽が流れている空間だった。そう、主役はライヴに出演するアーティストではなくて参加した自分自身なのだ。…ということに気が付いたとき、今回のMini-Atusのセットリストを振り返ってみたら、みんなで手を叩き合い、歌って踊れる楽曲ばかりで、この時を楽しみ、最高の2日間にしようという想いがストレートに伝わってきて、彼らとの距離がまたぐっと縮まったような気がした。

夢のような2日間を過ごし、帰りの高速バスではほとんど眠ってしまっていた。イヤホンの向こうにはthe HIATUSが流れている。ラストソングだった「紺碧の夜に」をみんなで歌い、またここで再会しようと約束したことを、心の中に閉じ込めて。

そして、「東京に戻ったらまた頑張ろう。」と小さく誓った。


セットリスト
1 Horse Riding
2 Silver Birch
3 Somethig Ever After
4 Shimmer
5 青空(THE BLUE HEARTSカバー)with TOSHI-LOW
6 紺碧の夜に


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by musicorin-nirock | 2014-09-27 23:02 | LIVE

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