「ほっ」と。キャンペーン

カテゴリ:COLUMN( 14 )

2017 / NICO Touches the Walls

私がNICO Touches the Wallsを初めて観たのは、2006年4月。GRAPEVINE目当てで行ったJAPAN CIRCUITというイベントだった。

この時にオープニングアクトを務めていたのがニコ。オープニングアクトということは所謂20代前半の若手バンドだろうし、「NICO Touches the Walls」というバンド名からは、演奏も雰囲気もキャピキャピとしたうるさいだけのバンドだろうと想像していた。だけど、いざライヴが始まると、それをまんまと覆された。若者らしからぬ渋い曲ばかりを畳み掛ける姿に拍子抜け&好印象を持ったけれど、ライヴ後に物販でCDを買わなかったし、バンドについて調べて後日ライヴに行くわけでもなかった。ただ妙に長いバンド名だけは印象的で忘れられずにいた。

それから数年経ったある日、テレビで放映されていた有名音楽プロデューサーのドキュメンタリー番組を観ていたら、あるバンドのレコーディング風景が流れている。

「ああ!私このバンドを知っているわ」。

それがニコとの再会だ。その翌日だったか忘れてしまったけれどCD SHOPに行き、店内の目立つ場所に大々的に展開されていた彼らの一枚のアルバムを手に取る。「聴いてみよう」という好奇心と期待しかなかったから、試聴もしないで、何のためらい無くレジへと向かった。ジャケ買いや、思いつきで買ったCDが失敗だった経験は数知れず。でも、この時買った『オーロラ』は違った。”かけら~総ての想いたちへ~”は唯一知ってたが、それ以上に”ホログラム”のみずみずしさが気に入って、”芽”の歌詞には胸を打たれ、”トマト”はただただ切なくて泣けた。かつて、ライヴで聴いた楽曲とはまるで別世界だったけど、特に違和感も何も感じないくらい、とても好きなアルバムになった。

2012年11月25日。この日もGRAPEVINE目当てで行くことにした「1125の日ライブ」で、6年ぶりにニコのライヴを観た。すると終演後にはしっかりハマってしまい、翌日には早速直近のライヴ情報とディスコグラフィーを調べ始めた。

インディーズデビュー直後のライヴを観ていたことは覚えていたし、それ以降のニコの軌跡を後追いで知れば知るだけに「あの時ちゃんと追っかけていたら良かったのかな・・・」と思ったことも一度じゃない。でも、偶然にもニコが大きく変わろうとする直前のタイミング(2013年の「1125の日ライブ」で日本武道館公演へのリベンジ宣言をする前)で歩み寄り、バンドと共に駆け抜ける時間の中で、確実に私は生きる力を取り戻せた事を思うと、この巡り合わせに感謝しなければ…と常に思う。

ニコは決して器用なバンドではない。いつだって遠回りだし、なんだかベタで泥臭い。でも、だからこそ彼らの悔しさも喜びも共感できたのだと言い切れるのは、なぜなら、日々生き辛さを感じてしまいがちな私自身が、決して器用な人間ではないからだ。<わかってるんだろ?/どんな答えも/僕が出していくこと/気付いてるんだろ?/どんな弱音も/僕の声だ>。私がニコの楽曲の中で一番好きな曲、"Mr.Echo"の一節である。開き直りでも諦めでもない、弱音だって「僕の声」だと認められたとき、人は本当に強くなれるのだと思うし、何よりステージ上で彼らはそれを体現し続けていた。

昨年、アルバム『勇気も愛もないなんて』発表以降、明るい歌を歌うニコの変化には戸惑っていた。彼らを取り巻く諸々(ぶっちゃけ売り出し方とか)に対して小言をぼやいては、ライヴに行く理由も正直わからなくなり、「これを潮時と言うのか・・・」と苦虫を踏みつぶしたような気持ちになった。それでもライヴ会場に行けば、いつだって「良い音楽」に溢れていたから、どうしようもなく心揺さぶられてしまう私もいて、だから余計にニコのライヴについて言葉に残したくなった。

私が目で観て耳で聴いてきた全てから生まれた感動に比べたら、私の小さな反抗心は、なんだかとってもバカバカしい。けれど私はニコの真実を伝えていくことをしなければ、このもやもやした気持ちは消えない。それを内輪だけで共有するのではなくて、外野にいる人達も巻き込まなければ意味が無い。5月の大阪城ホールのライヴ、オーラスの”手をたたけ”で涙が止まらなかったのは、私が戦うべき場所や相手も間違えていたと気付いたからだ。微力でしかないけれど、それでも物書きの端くれとして生きているんだから、それが勝手に私に託された役目と思って、これからもニコ見届けていきたいと思った。

ニコの音楽性は、過去と今とで大きく違う。よって、様々な意見がリスナー間で引っ切り無しに飛び交うバンドであるが、インディースデビューから今日までの長い軌跡や、一曲一曲、楽曲の背景を読み解いていけば、今のモードに転換したことが本当に自然であったと納得ができる。

ここで最新シングル”マシ・マシ”を例として挙げてみる。

この”マシ・マシ”という曲のタイトルには「明日が今日より少しでもマシになりますように」という願いが込められ、その由来にはマーヴィン・ゲイの”Mercy Mercy Me”とローリング・ストーンズの”Mercy Mercy”の存在があり、”Mercy”を日本語に訳すると「慈悲」という仏語で、「人を憐み、楽を与え、苦しみを取り除くこと」を意味する。ゆったりとしたビートを刻むグルーヴ重視のバンドサウンドと(ライヴではさらに原型が崩される)ソウルフルな光村の歌声からも、洋楽へのリスペクトを感じる事ができる。そして、素っ裸な歌詞には親近感が湧き、<あとはきみしだい>というサビの言葉は「きみ=リスナー」と置き換えも可能で強いメッセージ力があるが、実は「きみ=光村自身」という自戒の意味も込められている。

一聴すれば誰もがポップミュージックという概念に当てはまると思うだろうし、私自身もそう感じたが、裏を探ればこの曲はニコ流カウンターミュージックであり、今の音楽シーンとそこに立つ自分達へ彼らは中指立てている。開けたとても明るい曲だが、BPMは遅めで今のトレンドとは真逆。しかし、自然とハンドクラップしたくなるノリの良さが強い分、フェスが中心に回っているシーンでどう受け入れられるか、大きな賭けに出たとも言える。しかも、テレビアニメのEDテーマとして起用されたわけで、自動的に大勢に人の耳に届くことにも狙いがあるに違いない。

そんな”マシ・マシ”が生まれたことは、バンドのソングライターである光村が長年抱えていた苦悩から解放された証であり、ようやく手に入れた自由の中で生まれる音が、今後私達の元へと届く約束のようなものである。そして、音楽人として生きる新たな覚悟が生まれたからこそ、これからニコは大きく変わっていくだろうし、本来、何かを表現する者は、どんどん変わるべきなのかもしれないと、彼を見ていて気付かされた。元々の不器用さであったり捻くれ者の素質は変わらずくっついて来てしまうだろうけど、ニコのめっきり明るさ満点に聞こえる歌の奥に潜む影にこそ人間らしさを感じるし、これこそニコの一番の魅力であり、かつ今のシーンに枯渇しているモノだと思う。

2017年、2月12日に開催されるのファンクラブイベント『my Funny valentine』がニコの今年初ライヴであり、そしてすぐに全国ツアーも始まる。今年がどんな1年になるのか、色々と期待しているけれど、そんなものいとも簡単に裏切るくらいの、大飛躍の年になることを願っている。

         

[PR]
by musicorin-nirock | 2017-02-11 12:17 | COLUMN | Comments(0)

2016年個人的ライヴ総括

今年2016年で一番多くライヴを観たバンドはGRAPEVINE(Vocal田中さんソロステージ含む)でした。その中でもアルバム『BABEL,BABEL』を引っさげての全国ツアーは「こういうライヴがずっと観たかった!」という個人的にドンピシャなライヴで、ここ数年観てきたツアーの中でも飛び抜けて良かったです。皮肉だけどポップだし、尖っているけど愛を歌う『BABEL,BABEL』の楽曲を中心にシリアスな側面を見せつつも、突如ゴン太くんが登場したりとくすっと笑えるネタも仕込まれつつ。そういった、弛緩と緊張が繰り返されるセットリストが、いかにもバインらしかった。また今回のツアーでは本編でMCをなくしたことで、より一層豊かな音世界を描けていたように感じます。逆にアンコールで田中さんはしゃべり倒すという(笑)あとは、初期楽曲を披露してくれたのも嬉しかった。バインは洋楽的なアプローチがほとんどで、ロックバンドとは言ってもロックミュージックをだけやっているわけでもなく、トレンドよりも自らの美学を磨き、独自のスタイル構築してきたバンド。今回のツアーでは、その姿勢を貫く姿がロックバンドとしての一つの在り方であることを、まじまじと見せつけられました。特にフェス等で色々なバンドのライヴを観ながらバインを観ると、彼らは本当に希有な存在だなと強く感じます。

次点はNICO Touches the Walls。2015年11月に古村のアクシデントが起こってしまってから、光村・坂倉・対馬の3人で1125の日ライヴを開催、初の大阪城ホールワンマンライヴは来年に延期となり年末のイベントは出演キャンセル・・・からの年明け三度目の日本武道館公演「東の渦」、2016年3月にアルバム『勇気も愛もないなんて』がリリースされ「孤独と夜」から「勇気と愛」を歌うバンドへのモードチェンジ、アルバムツアーにフェスト、そして5月6日に無事に迎えることが大阪城ホール公演「西の渦」・・・と文字打ってるだけでも息苦しくなるくらいに、昨年末から今年の上半期にかけて怒濤の日々をバンドもファンも過ごしていたと思う。私自身、上半期はニコに対してシリアスでしたね。「孤独と夜」から「勇気と愛」への変化は、今となっては自然なことと受け入れているけど、当時の私はニコがモードチェンジした理由を見つけようと、ライヴを観て確かめることに必死でした。でも、この約半年間で4人を良く知ることもできた。また4人のニコであることへのプライドだったり、メンバー間の信頼を今年は強く感じました。なので、今年のベストライヴを選ぶのであればやっぱり「西の渦」。あの日の古くんが見せた笑顔も目に涙をにじませていた顔も忘れられないです。

青春時代の懐古も多かった。UA 、THE YELLOW MONKEY、IN A LIFETIME(トライセラトップスとGRAPEVINEの対バンツアー)にThe Birthday。高校から大学時代にかけての青く甘く苦い思い出を懐かしむ時間でしたね・・・でも、当時からの憧れの人達が素敵に歳を重ねられていて、変わらずライヴのステージに立っていてくれることって、今を生きるエネルギーになりました。特に8月にTHEE MICHELLE GUN ELEFANTの解散ライヴを映画化した『THEE MOVIE-LAST HEAVEN 031011-』観たことでようやく観に行く決心がついたThe Birthdayは本当に感慨深かった。

そしてフェス。まずは、ARABAKI ROCK FEST。今年は最高に楽しかった。私が好きなバンド全て網羅できる面子が出揃ってしまってて結果的に観ることが出来なかったバンドもあったくらい。そこで観たGLIM SPANKEYがめちゃめちゃ渋いロックンロールを鳴らしてて!来年ワンマン行きたいですね。久しぶりに観たASIAN KUNG-FU GENERETIONも流石の貫禄があって凄く良かった。雨に打たれ寒さに震えながら観た奥田民生だったり、椿屋四重奏ぶりに観た中田裕二の色気に動揺したり、BRAHMANは先輩方目の前にしたTOSHI-LOWの素顔を見た気持ちになったり。今のところ一番好きだなARABAKI。今年始めて行った中津川 THE SOLAR BUDOKANは、もうね景色が本当に美しくて(夕焼けが)!!心身共々、かなり癒やされたフェスだった。ただ交通の便がちょっと不便なのが難点だけど、それさえクリアできたら行く価値はあります。音も良いし!

で、今年観てきた40本の中で一生忘れることはないであろうライヴは、9/13 the HIATUSの「Hands of Gravity Tour 2016」STUDIO COAST公演。私の中では、あの伝説の日本武道館公演を越えてしまいましたね。彼らについては、別途書こうと思っています。

最後に毎年思うことだけれど、私は好きなバンドがはっきりしている分足を運ぶライヴはどうしても偏りがちだだし、あと体調不良で飛ばしてしまったライヴがあったことをかなり反省。でも振り返ってみたら、Suchmosや夜の本気ダンスといった若手から、リップスライムという大御所かつ観たことのなかったジャンルまで足を伸ばせたし、念願のTweedyとマニック・ストリート・プリーチャーズも聴けたし少しは冒険できたかな。来年以降は誰のどのライヴに行くかは、しっかり吟味した上でを決めようと思います。そして、来年も素晴らしい音楽と共に駆け抜けます!(その前にCOUNTDOWN JAPANがあるけど!笑)

[PR]
by musicorin-nirock | 2016-12-27 22:45 | COLUMN | Comments(0)

NICO Touches the Walls 3度目の日本武道館公演に寄せて

2015年がNICO Touches the Wallsにとって大飛躍の一年になることに、間違いはなかったのだ。

2月。彼らにとって大きなターニングポイントとなったアコースティックアルバムが発売され、憧れのビルボードライヴのステージに初めて立つことができた。そして5月からは2年ぶりの全国ツアーをスタートさせ、6月には『まっすぐなうた』9月には『渦と渦』というバンドの新境地を切り開く2枚のシングルを発売した。12月23日には初の大阪城ホールでのワンマンライヴが開催され、年末のロックイベント「COUNT DOWN JAPAN 15/16」では、最終日である12月31日、EARTH STAGEで新年一発目のオオトリを飾り、いよいよ迎える2016年1月8日、三度目の日本武道館公演へと襷を渡す…。

そんな夢のようなバンドストーリーを彼らは描こうとしていたのだから。

11月。古村大介(G)が右手を負傷するという想定外の出来事が起こった。12月23日の大阪城ホール公演は年明け5月6日に延期となり、「COUNT DOWN JAPAN 15/16」については出演をキャンセル。そして、11月25日の『1125の日ライブ』は光村龍哉(G)、坂倉心悟(B)、対馬祥太郎(Dr)の3人で行うという。しかし、この『1125の日ライブ』の開催日寸前まで、私達リスナーには、実際のバンドの状況の多くを知らされることはなかった。たくさんの人が不安や不満を抱えていたと思うが、今改めて考えてみると、それだけ多くの時間がこのバンドには必要であったと納得する。年内から年明けにかけてのスケジュールを大幅に変えざるを得なかっただろうし、メンバー全員と彼らを取り巻くスタッフ全員が、気持ちを持ち直すためにもやはり時間は必要だ。

そして、11月25日に無事開催された『1125の日ライブ』については、光村龍哉(Vo&G)が自身のブログに、ライヴ当日の様子や、ライヴ前の混沌とした空気まで、事細かに書いている。バンドメンバーの一人欠けるということは、当然ながらその穴埋めが必要となる。音作りも一からやり直す必要も出てくるだろうし、残されたメンバー一人一人に負荷が発生する。また、今回は一日で2公演(東京と大阪)行うというハードスケジュールである。このような状況下に立たされた時、「メンバーの一人が怪我をしたので、今回は残念ながら中止にします」「代わりにサポートメンバーを入れます」という決断を下すバンドも少なくはない。

12月に入ると、バンドの公式Twitterの中で古村による日本武道館公演までのカウントダウンが始まった。時には古村以外のメンバーからの呟きも入り、毎日発信されるようになっている。ライヴのキャンセルが続いてしまったことで、バンドとリスナーを繋ぐ唯一のツールに、私は始め戸惑いを感じてはいたが、1月8日が近づいてくるたびに、Twitterから届く彼らの本音に胸を打たれっぱなしである。

12月31日、この日からやっとギターを弾き始めたという古村のツイートには、誰よりもたくさんの涙を呑んだであろう彼の苦悩を感じざるを得なかった。そして、年が明けた1月1日。「COUNT DOWN JAPAN 15/16」で彼らの代打を務めたBLUE ENCOUNTのステージを、居ても立っても居られず観に行っていたという光村のツイートからは、先輩としての優しさとプライドを強く感じた。

もう、決して若手とは言えないNICO Touches the Wallsの長いキャリアを辿れば、良くも悪くも多くの「壁」にぶつかってきたが、それを常に4人で乗り越えている彼らの「意地」と「根性」を、私は一人のリスナーとして誇りに思っている。しかし、チャレンジでもない、リベンジでもない、三度目の日本武道館公演は、彼らがプロのバンドマンとして、今回の出来事をどのように乗り越えて来たのか、そして新しく生まれ変わった姿を、どうオーディエンスに見せてくるのかが問われる、今後の彼らを占うような責任重大なライヴである。リラックスした気持ちでライヴに臨もうと思っていたが、やはり、私は緊張をしている。しかし、その緊張が解けたときには、涙も笑顔もごちゃ混ぜで、会場中が喜びに満ち溢れる、そんな夜になるのだろう。私は、そう信じている。


[PR]
by musicorin-nirock | 2016-01-04 10:57 | COLUMN | Comments(0)

『NO NUKES 2015』MONOEYESのライヴを観て

昨日、久しぶりにMONOEYESのライヴを観た。NO NUKES 2015という特別な意味合いの大きなイベントではあったのだけど、それはまた別の特別な場所に置いておいて、あの時間は、ただただ、自分の古い記憶が蘇る貴重な時間だった。

Vo&G細美さん曰く「クラスには一人いる、みんなと一緒に笑えない奴に向けて歌う」MONOEYESのライヴ。クラスで一人周りになじめず学生らしくいられなかったのは、何を隠そうこの私だった。私は10代後半から大学卒業にかけて、実は相当イタイ娘だった。周りいたクラスメイトのように、自由奔放に恋をしたり、バイトしたり、勉強したりできなかった。それがずっとコンプレックスだった。社会に出てからは、だいぶ人なりの人生を歩めるようになったと思っているけれど、時々今でもあの頃の私が顔を出してくる。基本的に不器用だし、素直なんだが捻じ曲がっているんだかわからない性格なのだけど、本当に自分が嫌になってくると、学生時代の自分をののしりたくなる。そんな時がこれまでに何度があった。

しかし、細美さんの作る音楽を30歳を過ぎた頃に知り、数年前に突然起こった大ピンチの時代を、なんとか乗り越えることが出来た。そう実感しながら過ごしていたある時、私は気が付いた。「コンプレックスだらけの学生時代、自分を理解してくれるものを得るために数多くのロックバンドを聴き始めた自分がいたから、彼の音楽を知ることができたんじゃないか?」と。当時、一番身近にあったものがロックバンドなだけと言えば、それでおしまいなのだけど、通学中に音楽雑誌で目にしたり、日々ラジオから流れてくるものがカッコいいロックバンドの鳴らす、カッコいいロックンロールだったから、それがきっかけであの頃から15年以上経った時、the HIATUSと、ELLEGARDENと、目の前に立つMONOEYESを知ることが出来た。そして、確実に私の人生はより豊かなものに変わっていったのだ。

MONOEYESのライヴはに難しい事なんて何一つない。ネガティヴをポジティヴにひっくり返すバカでかいパワーで溢れている。NO NUKES 2015という場所であれ「楽しむことで、このイベントに沢山の人が集まることが大切」なのだと話す細美さん。それが、本当に彼らしいアプローチで素晴らしかった。と、同時に昨日のライヴを学生時代の私に見せてやりたかった。そして、こう声を掛けてあげたかった。「あんたがあの時ロックを聴き始めたから、私は今、こんなに感動的な音楽を鳴らせる人に出会えて、大ピンチを乗り越えたんだ。あんたは当時とても辛くて、不安で仕方ない日々を過ごしていたけれど、それは何一つ無駄な事ではなかったんだ。大丈夫」と。

“明日公園で”が始まってから、ラストにかけて、私はずっと泣いていた。周りで泣いている人はほどんどいなかったけど、こみ上げてくるものを抑えることが出来なかったし、我慢する必要なんてないと思った。そして今、昨日私が流した涙は、学生時代の自分の声のような気がしていて、この感じをこれからも大切にしたいと思っている。




[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-29 11:27 | COLUMN | Comments(0)

2015年の『1125(イイニコ)の日ライブ』について思ったこと。

今年はもうNICO Touches the Wallsについての記事は書かないだろうと思っていましたが、やっぱり書いてしまいました。

11月25日、『1125の日ライヴ(通称イイニコ)』が無事終わりました。今年は東京・下北沢CLUB251と大阪・梅田Shangri-Laの同日二ヶ所でライヴを行うという、またまた前代未聞の挑戦に挑んだわけですが、ご存じの方もたくさんいらっしゃるように、ギターの古村くんが怪我の為に今回イイニコには参加していません。なので光村くん・坂倉くん・対馬くんの3人体制でやるとのアナウンスがありました。

私は最初アコースティック編成でやるのかな~とか色々と想像してみたのだけど、やっぱり場所が場所だし、2006年1月8日に開催された『成人前夜』の再現ライヴをやるんじゃないかとうっすら思っていました。

残念ながら私は今回行けなかったので、当日のセットリストはライヴ後Twitterで知りました。内容は初期のナンバー中心に、コンパクトにまとめられていたもので、下北沢のセットリストも梅田のセットリストも見て「ああ、やっぱり」と納得。同時に私のタイムラインは下北沢のステージも、梅田のステージも大絶賛する言葉で溢れ返っていました(そのタイムラインをじっくりと読みながら、泣いてしまったのはここだけの話)。う~ん、やっぱり行きたかったなぁ。ただ、セットリストを見れば見るほど「4人でこのニ箇所のステージに立ちたかったよね」という悔しさ残ってしまったのが本音でした。

今年のイイニコはメンバー全員が30歳になって初のワンマンライヴであり、今年12月23日に開催予定であった初の大阪城ホール公演と、年明け1月8日に控えている3度目の日本武道館公演を行う前の最後のワンマンライヴでした。また、9年前の自分たちを、30歳になった今の自分たちで演じることで、大ステージを目の前にした自らに発破を掛けるライヴであったように感じます。『初心忘れるからず』と言うし。レアな曲を披露している点では、今まで通りのファン感謝祭でもあるけど、それ以上に、バンドの節目ともなるようなとても大きな意味があったと思います。

あと、私自身がこうしてライヴレポート等書いてると、とにかくこの4人でいることの必然性をとても強く感じるようになったんですね。だから、なおさら「4人でこのニ箇所のステージに立ちたかったよね」と、悔しく思ってしまったのです。

私は先日、BRAHMANの結成20周年イベントに行って、バンドが長く続いていくこととは一体どういうことなのかを、BRAHMANと共演したバンドのライヴから教えてもらいました。そして、「バンドが長く続いていくこと」を改めて考えてみたけれど、どのバンドも山あり谷ありあって当然で、続くことを願っていても続けられなくなってしまうバンドある。しかも、そういう事態がおこる可能性がないバンドは、存在しない。だから、好きなバンドがこうして続いてくれることって、前に他のバンドの記事でも書いたけど、本当にそれだけで「奇跡」。

古村君の怪我のことを私はかなりシリアスにとらえてしまって「イイニコやるっていったてどうなっちゃうの?」という苛立ちに近い不安も少ながらずありました。しかし、イイニコを「3人でやる」と決めた決断、大阪城ホールの延期、年末カウントダウンイベントのキャンセルも、結果的にはNICO Touches the Wallsをより肉体的・精神的に強くしたと思っています。また、今回ステージに立てなかった古村君が手を怪我しているにも関わらず新聞を作り、来場されたお客さんには、それが配られたとか。きっと彼が一番悔しい気持ちでいっぱいなのに「何かしたい」という彼の気持ちには、ただただ感動してしまいました。そういうところが、このバンドの誠実さで、どんな形でも4人でいることを感じさせる、これがNICO Touches the Wallsなんです。

“渦と渦”の歌詞にもあるけれど<険しい道のり/裏切られっぱなし>だし、バンド名に壁が入っているから「壁を乗り越える使命を担っちゃってるじゃん!」と突っ込みたくもなるけれど、<まだまだまだ/くたばれない>って叫ぶ4人を、まだまだ私は見ていきたい。2016年1月8日、ちょうど『成人前夜』から10年目の、3度目の日本武道館が、今、心の底から楽しみです。


[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-26 21:06 | COLUMN | Comments(0)

2015年参戦ライヴ総括① 『A Mirage In The Sun Tour 2015』 / MONOEYES

2015年はまだ続きますが、現時点での私的年間ベスト1ライヴを考てみました。

でも、ベスト1って選べなくないですか?

特に今年はライヴ遠征したことが大きいと思うのですが、何度も同じ曲を聴いているのに、その時その時で得る感動が違いました。アーティストのコンディション、集まったお客さん達のエネルギー、そして私自身のその時の心境等が作用して、私の頭のスケッチブックにはたくさんの落書きがいっぱい書き込んである。それをブログに残したり、Twitterでつぶやく訳ですが、後から振り返ってみると、こんなこと思っていたのか・・・と気付かされることばかり。ベタな事を言うようですが、ライヴってオンリー1ですよね。本当にお世辞抜きで、どのアーティストの、どのステージも(ワンマン、フェス全て含めて)素晴らしかったです。

でも、手元にあるライヴチケットを眺めていて「これこそプラチナチケットだ~!」と叫べるライヴが一本ありました。それが、8月4日渋谷CLUB QUATTROで開催されたMONOEYES「A Mirage In The Sun Tour 2015」です。


f0342667_10421723.jpg
どん!

ライヴ終わりに頬の筋肉が痛かった…そのれくらい笑いっぱなしのライヴは生まれて初めてでした。QUATTROってキャパ800人ほどなんだけど、それ以上集まっていたようにも見えて。当日はもう人でパンパン。私はフロントエリアに居なかったのに、汗が止まらぬ、もんの凄い熱気でした。

まず、スターウォーズのテーマソングに合わせてメンバーが登場してきた時点で大笑い(the HIATUSではあり得ないですよ、これ)すると1曲目から早々にフロアでは、モッシュとダイヴが始まったんですね。私は、ダイヴとか恐ろしくてしたことないのだけど「ここでダイヴしたら気持ちよさそう~」とライヴ中ずっと思っていましたね。そのくらい雰囲気が抜群に良くかったし、何より改めて細美武士(Vo&G)さんとリスナーとの熱い信頼関係を私は強く感じました。

***

私は今から3年前、the HIATUSと出合ったことで人生が大きく変わっていきました。今年は目立つ活動はなかったけれど、とても重要なバンドであることは今でも変わりないです。だから、今年の頭にMONOEYES始動の発表があって、メロディックパンクを全く通ってこなかった(ELLEGARDENもリアルタイムでは聴いていない)私が、彼らの曲をどう受け止めるのかは、曲を聴いて、実際にライヴに行くまでは自分でもわかりませんでした。

しかし、the HIATUSとはまた違った喜びがMONOEYESの世界にはありました。

とにかく、忘れかけていた「感覚」を思い出すんですね、MONOEYESを聴いていると。例えば、人の意見などによって心に掛けられてしまったフィルターが、彼らの音楽を聴いていると自然と消えて、目の前にある美しいのもに、心の底から感動できる感覚。とうの昔にも失ってしまったであろう「子供のような無垢な自分」が、MONOEYESを聴く度に、実はまだ心の中にいることに気付かされました。

なので、ライヴ中は笑っているんだけど、涙も止まらなくなるんですよね。ああもう、ずっと泣き笑い。

社会に出ると、だんだん色んなことを上手くやりこなせるようになってしまって。でもそれが、もう当然のことで、大人になるとは、そういうことなのかもしれないのですが・・・ただ、私はその方が生きやすいと感じていて、良い部分でもあると思うんです。と、同時にとても淋しい事実であるようにも感じます。

f0342667_10444021.jpg

最近ふと思ったことがあって。私がMONOEYESを聴いて気付いた「子供のような無垢な自分」が心の中に実はいることって、細美さん自身がずっと大切に守り続けているものなんじゃないのかなと。

だから、彼の作る音楽や行動に心動かされる人達がたくさんいるんじゃないでしょうか。




”Run Run”



”My Instant Song”



[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-10 21:42 | COLUMN | Comments(0)

2015年に良く聴いたアルバム②『MAZE』 / Nothing's Carved In Stone

(前回に引き続き、2015年に良く聴いたアルバムについて)

そしてもう一枚が、Nothing's Carved IN Stone(以下NICS)の『MAZE』。9月16日リリースなので、まだ手にしてから日が浅いですが、かなりの割合で聴いています。今回が彼らにとって7枚目のオリジナルアルバムです。今年はもう一枚ライヴ盤『円環ーENCOREー』もリリースしていますが、私はこの『MAZE』を押します。

今年の4月、彼らはメジャーレーベルから、かつて所属していたインディースレーベルへと移籍しました。『MAZE』はこの時期に制作されていた作品です。結成から7年という決して短くないキャリアで迎えたこの大きな転機は、正直複雑だったと思います。でも、だからこそ、「自分達が出来ることはなにか?大切にしたいことは何か?」ということをとことん考え作られたアルバムなのではないかと感じています。

NCISの性能の高いアンサンブルには、どこか人を寄せ付けない只ならぬオーラがあります。そして、ロックキッズ達は彼らのそういう部分に憧れ、ライヴ会場でモッシュやダイヴを起こすのだと思います。でも『MAZE』の場合、性能の高いアンサンブルはそのままだけど、リスナーに寄り添う逞しい言葉達と、今までの彼らにしたらタブーであった、ジャンルを超えた自由なアレンジが生んだ解放感が存在しています。この変化は、バンド結成当初には考えられなかったことなんじゃないかと思うのです。

10月8日、MAZE✕MAZE Tour 初日のZepp Tokyoのステージでひなっちさん(B)と拓さん(Vo&G)の会話で忘れられないのが「バンド結成7年目なのに高校生の部活みたいにナッシングスが楽しい」。これはバンドにとって本当に幸せなことだと思うし、その楽しさが私達リスナーにもガンガン伝わるライヴでした。

…でも、彼らが伝えたいことはそれだけではなかった。

アルバムタイトルの『MAZE』とは直訳すると「迷路」という意味です。私はこの『MAZE』とは「人生」のことを意図するのだと思いました。それが一番よくわかったのが拓さんの歌です。

音楽雑誌に掲載された彼のインタビューを読んでいて思ったけれど、拓さんはとても正直者で人情深い。今、彼の歌声にはそのキャラクターが活きているし、自分の言葉で伝えたいという想いがステージからダダ漏れでした。その想いとは、彼らは長い迷路の第一段階を突破することが出来たから、このアルバムを完成させることができた。そして付いてきてくれた大切なリスナーへの感謝とともに、リスナー1人1人の『MAZE』の伴走役には「俺たちがいる」ということ約束をしてくれたのだと思っています。


”YOUTH City”



”Milestone”
(この曲のイントロはいつ聴いてもやばい)

今年はワンマン・フェスを含めて定期的にNCISのライヴを観てきたのですが、8月8日に開催されたロッキンジャパンフェス2015のステージはえらい感動的でした。今思うと、あの時間は『MAZE』の序章だったのかもしれません。

MAZE

Nothing’s Carved In Stone/Dynamord Label

undefined



[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-08 10:18 | COLUMN | Comments(0)

2015年に良く聴いたアルバム①『Burning tree』 / GRAPEVINE

2015年も残すところあと二ヶ月を切りました。

私は今年、例年に比べてみると数多くのアーティストのCDを聴き、また近年気になっていたアーティストの過去のアルバムを徹底的に聴き倒す、そんな一年でありました。そこで、年間通して一番良く聴いていたアルバムを振り返ってみたのですが、これはもう間違いなくGRAPEVINEの『Burning tree』です。6月のツアーファイナルの後は他のバンドのリリースとライヴラッシュに伴いまして(笑)聴いてない期間もあったのですが、先日の日比谷野音後に『Burning tree』熱が再び上がってしまい、以来一日一回は聴いてます。

過去にリリースしてきたアルバムに青さを感じてしまうほど『Burning tree』の世界は異様に深く、大人でした。なので、初めて聴いた時の印象はまるで映画のように壮大なアルバムというものだったのですが、正直に話すと戸惑っていました。

オープニングの”Big tree song”のように、あたたかさと優しさが混ざり合う音の手触りは、彼らをあまり聴いたことがない人達もあれ?と興味が惹かれるような、今までのGRAPEVINEにはないカラフルな世界観です。でも、このアルバムは例えばフェスでウケるような外向きな曲と、じっくり聴かせる内向きな曲がはっきりしています。

その中でも、内向きな曲のリアルさに私はかなりショックを受けました。これは誰もが避けられない現実である「死」と「老いる」ことと真摯に向き合われた作品で「私の今の年齢でこのアルバムを理解することは難しいのかな」とか「どう受け止めたらいいのだろう?」と悩みながら聴いていました。そして、アルバムの本質をつかめないことがだんだん悔しくなってきて(笑)そこで改めて1stアルバムの『退屈の花』から最新の『Burning tree』まで、彼らの作品を遡って聴いてみることにしたんです。これが、なかなかの労力を必要とする作業…しかし「彼らが積み重ねてきた美学の最骨頂がこのアルバムなのだなあ」と全てを聴き終えようやく納得することができたし、発売からもう10ヶ月近く経っても、まだまだ新たな気づきがある…そんなアルバムです。

6月に行われたツアーファイナルを今振り返ってみても、MCもなく、アルバムとアルバムの世界観に通ずる曲で構成されたセットリストは本当に素晴らしかった。また、“IPA“や“サクリファイス“のように、音楽の中に救いを求めていく様はとても美しく、第一印象で受けた通りの、まるで映画を観ているようでした。何より、音楽への深い愛情と、自分達の作った音楽へのプライドを感じる時間でもありました。

また、ロックバンドが作ったアルバムではあるけれど、この領域はもう一つのアート作品と言える。こういうアルバムこそ「傑作」と呼ぶに相応しいのではないのかとも思います。

そうそう。アルバム1曲目の”Big tree song”は、ファッションブランドFRAPBOISの2015/16秋冬コレクションのイメージムービーに使われました。リミックスを担当されたのは高野寛さん(高野さんは、12月2日にリリースの新曲"EAST OF THE SUN / UNOMI"のプロデューサーを務められています)。



原曲よりもファンタスティックな世界が広がります。ライヴでは皆で♪どやさ~と歌ったり、まさかのハンドクラップが沸き起こったりとた、名場面もありましたね。


[PR]
by musicorin-nirock | 2015-11-07 10:25 | COLUMN | Comments(4)

GRAPEVINE TOUR 2015 ファイナルを迎える前に

 5月6日の横浜Bay Hallで私が観たものは、GRAPEVINEの円熟が大胆に放たれた、物凄い説得力のあるライヴだった。一人一人の心に情景を描くというよりも、GRAPEVINEの現在地をまんまと確かめさせられてしまった。まるで彼らが演奏した曲の全てが、最新アルバム『Burning tree』の世界に封じ込まれたようだった。「これが今年のGRAPEVINEです」。田中和将(Vo&G)はライヴ序盤のMCでこう述べたが、本当に彼の言葉通りだった。

 4月3日のツアー初日。赤坂BLITZのステージでは、バンドとオーディエンスの両者に緊迫感が漂い、演奏には若干硬さが感じられた。個人的にはセットリストもイマイチ腑に落ちず、歯痒さが残ったまま会場を後にした。しかし、4月末に開催されたARABAKI ROCK FEST.15でアルバム収録曲である“IPA”をラストに聴いた時、その手応えは、想像を超えるものだった。ワンマンライヴに比べたらかなり短い演奏時間であったし、『Burning tree』からはたった3曲しか披露されかった。でも、最後の最後で、今、大きな変化がGRAPEVINEに訪れていると、私は確信したのだ。

 そして迎えた横浜Bay Hallのステージで、彼らにガツンと魅せつけられてしまったのだ。勿論『Burning tree』収録曲以外の曲も演奏され、最初期のナンバー始まるとフロアから上がる歓声からは、例え時が流れても、彼らの音楽は色褪せることなく愛され続けていることを、改めて実感させられた。しかし、私はノスタルジーに浸る余裕などなかった。彼らがこれまでに産み出してきた楽曲の延長線にあるのが『Burning tree』であると気付くと同時に、この時点でツアーの集大成を、既に観たような気がしてならなかった。

 私は赤坂BLITZのライヴ後に、GRAPEVINEの全13枚のオリジナルアルバムを、発売された年代順に聴いてみることを試みた。軽い思いつきでもあったが、『Burning tree』を理解する為にはやはり必要な作業だと思ったからだ。デビュー当時の楽曲は、ルーツロックや黒人音楽の匂いが強い。そして昨年再現ライヴも行われた『Lifetime』ではUKロック調のギターサウンドを強く打ち出し、バンドは急成長を遂げる。リーダー西原誠(B)の不在/脱退がもたらした混沌と淋しさを抜け出し、サポートメンバーが加わった5人体制で、試行錯誤を繰り返しながらも、着実に一段ずつ階段を上り続け、現在のGRAPEVINEを確立させて行く。また、作詞の面では、田中が自らの過去と対峙したことで、1人の人間としての成長劇と、そこからのヴォーカリストとしての覚醒が、ダイナミックなサウンドと共に描かれている。そして最後に『Burning tree』を聴き終えた時、彼らがこの作品に辿り着いた理由が、私はようやく理解出来た気がしたのだ。

 GRAPEVINEのロックに「わかりやすさ」は存在しない。GRAPEVINEのロックは「わかりづらさ」が美学であり、近年は聴き手を困惑させることすら、彼らは楽しんでいるようにも感じられる。つまり、受け止め方はリスナーの自由で、委ねられているわけだ。ならば、私は今彼らが一体何を見せ、聴かせ、伝えようとしているのかを、5月6日の横浜Bay Hallから一ヶ月経った6月6日の豊洲PITで、改めて考えてみたい。GRAPEVINE、13枚目のオリジナルアルバム『Burning tree』と纏めてしまえばそれだけだ。しかし、人間の深い部分にまで届くこのサウンドは、デビューから18年間、常に音楽の本質を鳴らし続けてきた彼らだからこそ産み出すことができた。そして、このアルバムがリスナーにもたらすものは、かけがえのないメッセージとして生き続けると思うのだ。


[PR]
by musicorin-nirock | 2015-06-02 12:04 | COLUMN

NICO Touches the Walls TOUR 2015“まっすぐなツアー”開催によせて

今年の3月5日、新木場STUDIO COASTで久しぶり観たNICO Touches the Walls のライヴで、想像以上に感動してしまった事を今でも鮮明に覚えている。この日は対バン形式で、1時間足らずの短い演奏時間だった。しかも、これまたバンドの“王道ヒットパレード”とも呼べるセットリストで挑んできた。この1年、彼らのライヴで何度も何度も耳にしてきた曲ばかり。それなのに。全ての曲が新鮮で、音と共に見える景色が全く違うものだった。メンバー一人一人の佇まいも何時に無く堂々として、背負っていた様々なものから、やっと解放された、とても良い表情をしていた。

帰りの電車で「バンドって、いいな。バンドってこんなにも変わることができるんだな」と、心の底から思ったのだ。

私が彼らと真正面から向き合い始めたのは、2012年の「1125(イイニコ)の日ライブ」だった。当時の彼らはまだ、自分達が抱え続けていた「葛藤」を表に出すことはしていない。いや、出すこと自体が格好悪い、ダサい…と思っていたのではないかと思う。とにかく「心地良い青年達が鳴らす、色鮮やかなギターロックバンド」というイメージが私にはずっとあった。

ところが、翌年リリースされた“Mr.ECHO”で光村龍哉(Vo&G)が抱える孤独なその胸の内を吐き出した。そしてそれが、結果的にバンドのターニングポイントになる(と思っている)。この“Mr.ECHO”が収録されているアルバム『Shout to the Walls!』は、全身全霊かけて壁にぶつかって行くが如く、ロックが全面的に強調された楽曲で勝負し、また、メンバー全員がソングライティングにも関わっており、過去4枚のアルバムよりも突出してバンド感が強く感じられる1枚となった。そして「灼熱のロックンロールナイト」と称され、忘れもしない、武道館のリベンジ宣言をした2013年の「1125(イイニコ)の日ライブ」に繋がった。

描いていた理想と現実の狭間で揺れに揺れ、でも、ようやく自らの足で立ち、前に進めるようになった。だからこそ、さらに自ら拍車を掛けるように2014年の年明け早々、一か月間ぶっ通しでライヴして(篭城型ライヴハウス「カベニミミ」)、その拡大バージョンのZepp ツアーまでも開催して、迎えた8月19日。二度目の日本武道館を終えたメンバーが見せたものは、笑顔。歓喜と共に彼らから漲る自信は、ロックバンドとしての神髄を手に入れた証だった。

2015年に入り、彼らにはご褒美が与えられる。それは、憧れのビルボードのステージに立てること。アコースティックにアレンジされた楽曲を携え、迎えた晴れの舞台を、今、思い返してみると、彼らが生み出した作品への愛情が、盛大に感じられる時間だった。本当に、全てを受け入れることができたのだろう。彼らが理想としていたことが、現実になったんだ。

こうして歩みを辿っていくと、一本の長い道が見えてくる。途中、上り坂も下り坂もあって当然だろうし、赤信号が灯りかけた時もあっただろう。それでも足を止めなかったことは、本当に素晴らしい。彼らが長年深めてきたことが、全てバンドサウンドとして放たれたから、私は3月5日のステージを観て思わず涙を流してしまったのだ。

明日から始まるツアーの前に、どうしても書き残しておきたかった。あまりにべたなツアータイトルだけど、笑っちゃうくらい似合っているよ。




[PR]
by musicorin-nirock | 2015-05-20 22:15 | COLUMN

記事の無断転載、引用はご遠慮ください。


by yu_tanai_coco
プロフィールを見る