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9/13NEW ACOUSTIC CAMP 2014"Mini-Atus"

Mini-Atus とはthe HIATUSから派生した、細美武士(Vo&G)、masasucks(G)とウエノコウジ(B)の三人によるユニットだ。結成の経緯は単純に柏倉隆史(Dr)と伊澤一葉(Key)のスケジュールが合わず、もともとはバンドで出演のオファーを頂いていたそうだ。しかし、この3人によるアコースティックセットのライヴは、NEW ACOUSTIC CAMP(以下NAC)のシチュエーションと最高のマッチングであり、ここでしか味わえない感動が沢山散りばめらており、特別な時間を私たちにプレゼントしてくれた。

山の一角をくり抜いたように広がる芝生の上にポツンと建てられたStage YONDER。脇にはペナントが、そして木で作られたアルファベットのオーナメントも飾られており、手作り感が溢れていた。それだけでも、ライヴハウスや大きな野外フェスティバルのステージとは違うのだが、このステージを盛り上げた一番の演出は、大自然そのものだった。水上高原の澄んだ空気、木々の深い緑と芝生の優しい緑、時間と共に変化していく頭上にひろがった一面の晴れた空。

今、この時しか感じられない風景の中を、アコースティックの優しいサウンドと細美の柔らかな歌声が、風と共に運ばれていく。

細美は自身の弾き語りステージでも良くアコーステックギター一本で、the HIATUSの曲を歌うこともあるが、ウエノの低音が加わることで厚みが増し、masasucksが花を添えるような繊細なメロディを奏でる。そしてコーラスも加わることでオーディエンスも一気に盛り上がり、温かな一体感が生まれていた。彼らのライヴといえば、攻撃的で戦闘態勢剥き出しの、観る者全員を圧巻させるパフォーマンスを常に繰り広げているが、この日に限っては、その重たい肩の荷を下ろせたのだろうか、とてもリラックスした空気がステージには流れている。

また、一曲演奏が終わるたびにMCが入り、普段ライヴで滅多に話さないウエノもそれに加わって、まるでリハーサルを見ているよう。しかも、このMCがとても面白かったのだ。3人の年齢の話や(ウエノ47歳、細美41歳、masasucks37歳。私は10歳も年齢差があるバンドだったことに驚愕)、ウエノが大河ドラマが好きで良く観ているのだが、竜馬伝で「竜馬を殺したのはあの中村達也(LOSALIOS)」という流れから、最近はKj(Dragon Aah)や金子ノブアキ(RIZE)も出演しているという話をすると、細美「ルパン三世の次元(大介)はウエノさんしかできなないでしょう!」、ウエノ「(手を横に振りながら)顔が違う!」オーディエンス「爆笑」。と、とにかく和やか。この調子で笑いがずっと絶えなかった。

9月13・14日の2日間にかけて行われた、NACは群馬県にある水上高原で開催されるようになり今年で3年目を迎えた。オーガナイザーである細美の盟友TOSHI-LOW(BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)がゲストで呼ばれると、ウエノの私物ジャケットを勝手に羽織り(しかもウエノ本人は途中まで私物であることに気が付かない)、細美がその夜使用するテント(投げると広がり、簡単に組み立てられる「ワンタッチテント」というもの)を投げながら豪快に登場し、引き続き爆笑トークは勢いを増す。そんな中、4人がTHE BLUE HEARTSのカバー「青空」を披露すれば、細美とTOSHI-LOWが出会い、今日まで歩んできた道のりを思わせるとても力強い2人の歌声に、胸が熱くなった。

このイベントは"FES"ではなくて、あくまでも"CAMP"。2日間山の中で、木登りしたり、アスレチックで遊んだり、各々テントを張りバーベキューをしたり、芝生でただ寝転んでのんびりしたり。ここに集まってきた人たち、それぞれが自由にこの場所と時間を楽しむことができ、ただそこに音楽が流れている空間だった。そう、主役はライヴに出演するアーティストではなくて参加した自分自身なのだ。…ということに気が付いたとき、今回のMini-Atusのセットリストを振り返ってみたら、みんなで手を叩き合い、歌って踊れる楽曲ばかりで、この時を楽しみ、最高の2日間にしようという想いがストレートに伝わってきて、彼らとの距離がまたぐっと縮まったような気がした。

夢のような2日間を過ごし、帰りの高速バスではほとんど眠ってしまっていた。イヤホンの向こうにはthe HIATUSが流れている。ラストソングだった「紺碧の夜に」をみんなで歌い、またここで再会しようと約束したことを、心の中に閉じ込めて。

そして、「東京に戻ったらまた頑張ろう。」と小さく誓った。


セットリスト
1 Horse Riding
2 Silver Birch
3 Somethig Ever After
4 Shimmer
5 青空(THE BLUE HEARTSカバー)with TOSHI-LOW
6 紺碧の夜に


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by musicorin-nirock | 2014-09-27 23:02 | LIVE

syrup16gの活動再開に寄せて

その日は朝から雨だった。

案の定、通勤に使っているバスは遅れ、最寄り駅に着くと確実に会社に遅刻する時間だった。まあ、取り敢えずいつものように満員電車に乗り込み、都内へと向かう。通勤時間は片道1時間半近くかかるが、転職をして6年が経ち、すっかり慣れてしまった。私は毎日この長い通勤時間中に、丸ごと一枚アルバムを聴き倒している。基本的にぎゅうぎゅう詰めの車内では、読書は不可能で、スマートフォンを見ることも厳しい。身動きが出来ない分、自動的に耳に付けているイヤフォンに意識が行く。よって、往復三時間に及ぶ通勤時間は、一日の生活の中で唯一音楽に集中できる、大切な時間なのだ。

毎朝、MP3から選ぶアルバムはその時の気分次第なのだが、その日電源を入れると勝手に流れてきたのが、この夏6年ぶりに活動を再開したsyrup16gがリリースしたばかりのアルバム、『Hurt』の1曲目「Share the light」だった。雨の日に聴くsyrup16g。五十嵐隆(Vo&G)のすり切れそうな歌声と、古びたエレキギターの音色は、重なり合う乗客の隙間から覗く、薄暗い空と同じ色をしていた。しかし、このアルバムには、かつて五十嵐が見失ってしまったが、勇気を出し再び掴み取った「強さ」がある。この「強さ」は、灰色の雨雲から差し込む、一筋の陽の光のようで、確かなものだった。



syrup16gが活動再開をするニュースが耳に入った週末。私のTwitterのタイムラインは一日中、どよめきと喜びで埋め尽くされていた。そして、週が明けると渋谷駅の地下コンコースの壁にはでかでかと『syrup16g 再始動』という文字と、メンバー3人の写るポスターが貼られていた。偶然にも、私は毎日通勤でこのポスターの前を通る。そのたびに、五十嵐隆の寡黙な視線に引き込まれていった。同時に、一向に静まらないTwitterの賑わいから、これはただ事ではないのかもしれないと思い始め、アルバム発売日の前日、8月26日のCD店着日にCDショップへ足を運んだのだ。

私がsyrup16gと聞いてすぐに思い出したのは、2001年に彼らがメジャーデビューする前に発表されたアルバム『COPY』に収録されている「生活」だ。10年以上も前のことだが、この曲を初めてラジオで耳にしてからずっと<I want to hear me / 生活はできそう?/ それはまだ>という、サビのキャッチーなメロディに心を奪われている。彼らを観た最初で最後のライヴは、2004年のロッキン・オン・ジャパン・フェス。記憶は薄れているが、当時好きだった「クロール」を確か演奏してくれた。しかし、私は特別な理由もなくsyrup16gを聴かなくなり、思い出した時には既にバンドは解散していた。

その後、キタダマキ(B)と中畑大樹(Dr)は、多くのミュージシャンのサポートメンバーとして活躍している。二人のTwitterアカウントもあるため、解散してもそれぞれの活動状況がわかることは、ファンにとっては救いであっただろう。ただ、五十嵐隆に関しては、解散した翌年の2009年『犬が吠える』というソロプロジェクトをスタートさせるが、こちらも半年ほどで解散を発表。何処で何をしているのか見当もつかず、ようやくその沈黙を破ったのが昨年5月。五十嵐隆ソロ名義で『生還』というライヴを行う。驚いたことに、このステージのサポートメンバーを務めたのは、彼と共にsyrup16gのメンバーとして活動していた、キタダと中畑だったのだ。


五十嵐は解散後の生活と当時の心の内を、活動再開の発表後に発売された数冊の雑誌インタビューで答えている。私も一通り目を通したが、途中で表紙を閉じてしまいたくなるほどシビアなものだった。音楽から離れた生活を送り、もう辞めようとしていた40歳をとうに過ぎた男の歌は、プライドを殴り捨て、生きて行く為にはこれしかないという気迫が感じられ、ただただ、生々しく胸に響いた。しかし、絶望の中にいた五十嵐の生み出したメロディには、厳しさの中にも優しさがある。美しさがある。懐かしさもある。それは、一曲一曲に強い力を注ぎ込むことで過去の自分を認めようとする姿であり、そこに希望を感じたのだ。また、五十嵐をどっしりと支えているキタダの低音と、中畑のリズムから成る安定したビートは、バンドが停止していたことを決して感じさせない抜群のコンビネーションを見せている。それぞれに抱えていた葛藤を拭い去るような勢いがあり、再びsyrup16gとして突き進む事への決意をも、刻み込んでいくようだ。そして、その全ては、五十嵐隆ソロ名義ではなく、syrup16gとして音を鳴らせる喜びに繋がっていることを『Hurt』というアルバムは証明している。

アルバムのラストを飾る「旅立ちの歌」は、爽快感のあるアコースティックギターの音色が深い闇から抜け出すことのできた五十嵐自身のようであり、包容力と温かさが残るサウンドだ。それに合わせ、メッセージ性の強い言葉が綴られている。<最低の中で / 最高は輝く>。これは、五十嵐が再び自分と向き合ったことで歌うことができた、現在の集大成だろう。<もうあり得ないほど / 嫌になったら / 投げ出してしまえばいい>と諦めた表情を見せてはいるが、彼がsyrup16gを再始動させた勇気は、今、彼らの音と出合えた全ての人の心を大きく動かしていくはずだ。

しかし、私は今のsyrup16gを聴いて、テンションを上げるとか、癒やしを求めようとは思わない。安直に扱うのではなくて、そっと寄り添い続けながら、私自身の<最低の中の / 最高は輝く>事を確かめながら前へ進んで行きたい。メンバーと共にsyrup16gのこれからを信じていきたいのだ。



だから、あの雨の日syrup16gを聴いていた事は、必然だったのかもしれない。

以来、聴けば聴くほど体中にじわじわと浸透され続け、特に意識していなくも突然ふっと降り注ぐように頭の中で『Hurt』の楽曲達が鳴り出してしまう。きっと、私の中でこのアルバムが身近なものへと変化し、確実に消化されている証なのだろう。

日々生活している中で、そんな瞬間が訪れるたび、このアルバムと出合えて良かったと実感している。






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by musicorin-nirock | 2014-09-18 21:57 | MUSIC

8/19 NICO Touches the Walls "ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ブドウカン"


『最後は 笑ってやろうって あの日泣いたこと 絶対 ムダにはできないだろ 響け 僕らのリベンジ』                                      ―天地ガエシー

 2010年3月12日、NICO Touches the Wallsは初めて日本武道館の舞台に立った。しかし、彼らの記憶に刻まれたものは、歓喜ではなく悔しさ。チケットをソールドアウトにできなかったこと。それは「武道館」に打ち勝つ力量が自分達には備わっていなかったという、余りにも大きな屈辱だった。今回の武道館ライヴは、その「リベンジ」であると、昨年の11月25日に行われた『1125(イイニコ)の日ライヴ』で堂々と宣言され、年が明けると武道館へのリベンジを果たす、それだけの為に彼らは猪突猛進に走り続けた。
 


 ――そして、遂に迎えた2014年8月19日。


 対馬祥太郎(Dr)のドラムセットの前に、光村龍哉(Vo&G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)が集まり、円陣を組む。掛け声と共に観客に見せた「気合い」。今日という日は一日しかない。一騎打ちの勝負のステージに立ったNICO Touches the Wallsが放つ一曲目は「Broken Youth」。この特別なステージへの高揚感そのものを対馬がエネルギッシュに叩き出す。
 次なる切り札は「THE BUNGY」。カントリーテイスト満載のギターのイントロが終ると同時にバン!と上がった爆発音。客席をグイグイ煽り続ける、いつにも増して饒舌な光村のヴォーカルを筆頭に、メンバー全員じゃじゃ馬の様な暴れっぷりだ。それに負けじと、凄まじいハンドクラップを鳴らすオーディエンス。今日に賭けている気持ちは、この日を待ち望んでいたオーディエンスだって同じなのだ。立て続けに披露されたアッパーチューンに、開演まで漂っていた緊張感は解きほぐされ、ヴォルテージは急上昇。あっという間に武道館を飲み込んでしまう。

 颯爽とした光村の弾き語りで始まったのが「ホログラム」。曲に存在するみずみずしさは、色褪せることなく顕在で、ノスタルジーを感じられたが、4人の背後に設置された巨大なスクリーンには、あの日から4年経った、今のNICO Touches the Wallsが映し出される。笑顔で叩き続ける対馬。客席を愛おしそうに眺める坂倉。真剣なまなざしでギターと向き合う古村。そして、再び武道館のステージに立った感動を噛み締め、今にも溢れだしそうな喜びを必死に堪えながら力強く歌う光村。4人のリアルな感情が交じり合う「夏の大三角形」は、最上級に研ぎ澄まされた美しい音を奏で、エモーショナルな空間へと仕立て上げていった。

 「満を持してこの武道館に帰ってきました!」と威勢の良い光村のMC。この日を最高のものにしてやるぜ!という意気込みは、「妄想隊員A」とシングル曲が続く中、突如、変化球として投げつけてきた。それが、1stアルバム『Who are you?』収録の「B.C.G」。燃えたぎる炎のようにダイナミックなサウンドは、スマートな4人からは考えもつかない肉体感を感じさせ、さらに追い打ちをかけるかのように、光村は『デカイ音で騒ぐだけ』と武道館に喧嘩を売る。その勢いは衰えぬまま「バニーガールとダニーボーイ」へ。アメリカンなロックンロールでフロアを沸かせると、坂倉の厳ついゴッツゴツのベースが唸る「アビダルマ」。この怒濤の流れに、度肝を抜かされ「参りました!」と思わず口から出そうになった。メンバー全員、いつにも増してアグレッシブだったが、何よりも色気も男気を醸し出し、ラップまでこなしてしまう光村の「歌に対する強欲さ」には、呆気に取られてモノも言えない。

 熱気にまみれ、興奮冷めやらぬ場内。そこに水を指すよう静寂を与えたのが「バケモノ」だった。全身に重たくのし掛かるベース音と、ファルセットを聴かせた歌声が狂気的な匂いを漂わせる中、一番のハイライトは古村の血の滲むようなギターソロ。それは、胸がはち切れそうなほど痛々しい音色で、古村は無我夢中にかき鳴らす。鋭さを帯びたギターサウンドは、いつになく生々しい。そして、更に核心に迫るよう、続く「Diver」で、自分達の内面を深く掘り下げ、剥き出しの姿をここ武道館のステージで暴いていく。
 

 光村と古村はそれぞれアコースティックギターに、対馬はドラムスティックをブラシに持ち替え、2月に行われた『カベニミミ』でも披露した、アコースティックセットへ切り替えた。

 始まりは「Heim」。ゆったりとしたワルツのリズムに、アコースティックギターのアンサンブルと柔らかな光村の声が乗る。体の奥の方にある、目には見えないくらい小さな細胞までに行き届かせるよう、じっくりとオーディエンスに聴かせると、光村一人、ギターを爪弾き始めた。「バイシクル」だ。再び訪れた静寂の中、原曲よりもテンポを落とし、全身全霊賭けて熱唱する。
 『寄り道だらけの旅でも My Bicycle 悪くはないさ』
 それは、グッと拳を握り、耐え抜いてきた孤独な戦いそのものだろう。その姿がステージ上で顕わになったとき、青さ残るギターロックは、彼の歩んだ人生と共に「ブルース」へと姿を変えた。

 再びバンドセットに戻し、聴こえてきのは「Mr.ECHO」。快活なビートと美しいメロディが、武道館いっぱいに広がり始め、まるで、光村の抱えた闇が開放されていくようだった。そしてここで、とても印象深い場面に遭遇する。エンディングにかけてのコーラスを、古村、坂倉、対馬が、それぞれに抱えていた孤独・葛藤の全てを吐き出すように、力強く歌い続けたのだ。「Mr.ECHO」は、自問自答を続ける歌詞と光村しか出演していないプロモーションビデオから、彼個人の内省を強く打ち出している作品だ。しかし、戦い続けてきたのは彼だけではない。一人一人が自分と向き合い、立ち現れた壁を打ち砕き続けなければ、自分もバンドも進化しない。キャリアを重ねていく中で、また、今回のリベンジを果たすためには、全てを剥き出しにした姿で戦わなければならないという責任と危機感があったのだろう。それは、本気の勝負に出た象徴であり、真のロックバンドとしての立派な姿だった。

  
 そして、4人が出した次なる決断。光村はその孤独な旅を『駆け抜けろ』と歌い上げる。力強く、真っ直ぐにずんずん進むビートを対馬と坂倉が刻み、煌びやかに鳴り響く古村のギター。無駄なものが全て削ぎ落とされ、引き締まったバンドアンサンブル「ローハイド」は、疾走感と共に武道館を駆け巡る。目指し続けたこの場所には、溢れんばかりの拍手喝采と、多幸感広がっている。それでも4人は留まることなく、ラストに向けて走り続けるのだった。

 メンバー全員、全身振り乱しながら演奏し、曲中のブレイクで光村が客席の隅々まで笑顔を確かめると、感極まる気持ちを抑えながら「こんなんじゃ、明日は土砂降りでございますよ!」と大満足な笑みをみせた「ニワカ雨ニモ負ケズ」。割れんばかりのハンドクラップを武道館中に響かせ、メンバー4人と9,000人近くのオーディエンスによる盛大なシンガロングで締めた「手をたたけ」。
 そして、本編ラスト。「リベンジソング」の名の下にワンマンライヴやフェスで演奏し続け、ようやく武道館で披露できた「天地ガエシ」。逞しく、伸びやかに広がり続ける光村のヴォーカルと自由度を増したサウンド。ステージ上の4人は、バンドを組んだばかりの少年のような無邪気さと、自信に満ち溢れている。そこに、オーディエンスの歓喜と、彼らを祝福するように、紙吹雪が華やかに舞う。歌い終えた光村は、片手でギターを高々と掲げガッツポーズを見せつける。無事リベンジを果たした勇ましい4人の姿は、眩しいほどに美しく輝いていた。


 鳴り止まないアンコールに4人揃ってステージに登場し、1曲目に披露したのは「image training」。インディーズ時代に発表され、長年彼らを追い続けてきたオーディエンスにとっても、親しみ深いこの曲は、キリッとした都会的なサウンドに成長し、NICO Touches the Wallsの「今」の姿が見えた。それを「未来」へ繋げたのが、光村が10代の頃に作った「TOKYO Dreamer」だ。安定感のある8ビートと所々に加わるコーラスが、浮遊感ある幻想的な世界を描くが、しっかりと地に足の着いた演奏だった。

 この曲が生まれてから10年以上の歳月が経ち、夢が現実となり、4人はたくさんのものを手に入れてきた。しかし、この歴史的なステージとなりうる武道館のライヴで自らが用意した舞台には、それぞれの楽器とアンプがぽつん置かれた、至ってシンプルなステージ。そこに、全員モノトーンを基調としたTシャツとパンツスタイルで現れ、ベスト盤『ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト』に収録されてい楽曲中心の、スタンダードなセットリストでライヴを行った。
 なぜなのか?と聞かれたら「バンドとしての足跡を確実に残す為」と答える。アンコールに入る前に、光村は溢れんばかりの拍手喝采を、何度も何度も浴びてきたにもかかわらず、「一つ課題がクリアされると、次が出てくる。一生リベンジなんです。」と、その胸の内を明かした。私は、彼の真摯な姿勢に胸を打たれ、これまで不器用ながらも着実に前進してきた自分達を、丸ごと認めることができたのだろうと感じたのだ。
 そんな彼らの、自分達に必要な最小限のもので勝負に出た「覚悟」は、『必ずこの夢を叶えるんだ』という強い決意だけが存在している「TOKYO Dreamer」の数少ない言葉達とシンクロする。NICO Touches the Wallsが、どのバンドにも決して負けない、バンドマンとしての強い使命感を持ち、彼らが音楽と共にある運命にあることを物語っているのだ。


 この日、一度だけ光村がとても悔しそうな顔をした。それはアンコールに呼ばれてすぐのMCで、「正直やりたかったけど、やれなかった曲があと5倍くらいある。」と本音を漏らした時。

 しかし、その悔しさを打ち消すように、再び強く宣言する。NICO Touches the Wallsは、来年の冬、東京と大阪の2カ所で新たなリベンジを果たす。4人は、武道館に集まったオーディエンス、一人一人の手を強く握り締めていくように、アンコールラストの「N曲とN曲」で、再会の約束を、熱く交わしていった。
 全ての演奏が終わると、楽器を置き4人全員ステージ前方に並んで立つ。互いを確かめ合う様に、ぎゅっと繋いだその手を掲げ、深々とオーディエンスにお辞儀をした。4人のその表情は、ステージから少し離れた1階スタンド席にいた私でさえも、やりきった!という表情であることがわかるくらい、満面の笑みだった。そして、ステージを離れることを惜しみつつ、「引き続き僕らのリベンジに付き合って下さい。ありがとうございました!」と光村はラストメッセージを残し、4人は会場の隅々までに手を振りながら、期待いっぱいの武道館を後にした。


********************************************


 2014年8月19日。
 
 この日、彼らの記憶に刻まれた悔しさは、NICO Touches the Wallsの『最大の武器』となるだろう。昨年のリベンジ宣言以降、めざましい勢いで進化を遂げてきたのだ。もう、何一つ不安に思う必要などない。

 「一生リベンジ」。その言葉を胸に、信じる道を突き進め。


セットリスト
1 Broken Youth
2 THE BUNGY
3 ホログラム
4 夏の大三角形
5 妄想隊員A
6 B.C.G
7 バニーガールとダニーボーイ
8 アビダルマ
9 バケモノ
10 Diver
11 Heim
12 バイシクル
13 Mr.ECHO
14 ローハイド
15 ニワカ雨ニモ負ケズ
16 手をたたけ
17 天地ガエシ

encore
1 image training
2 TOKYO Dreamer
3 N極とN極




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by musicorin-nirock | 2014-09-10 16:32 | LIVE

ELLEGARDEN

8月に初めて細美さんの弾き語りライヴに行ったとき、
私はここで初めてELLEGARDENをちゃんと聴いた。

正しくは、ヴォーカルギターの人が、一人で歌うエルレだけど。
でも。私にとってそれが、CD、DVDやYouTubeじゃない、「本物」だった。

エルレの人気ぶりってのは、当時、音楽からちょっと離れた場所にいた私でも知っていた。
いつも雑誌の表紙を飾っていたし、フェスで入場制限がでた話も聞いていた。
"Space Sonic"のPVも、メンバー皆かつら被って、ランジェリー姿で笑ったよな。
ただ、私にとっては、何かと「話題のバンド」というイメージでしかなくて、
楽曲そのものについては、the HIATUSを聴くようになってからエルレも聴くようになり、
とても後悔した。
なんで、リアルタイムで聴かなかったのだろうって。
エルレの音楽は、不器用な自分、うまくできない自分、
といった誰もが持っている「弱さ」を、受け入れてくれる。
「いいんだよ、それで。」って。
それは、当時、私に必要な場所でもあったから。


弾き語りライヴの時、
「酒が入ると積極臭くなるから」と苦笑いしつつも、
個人的に一番胸に焼き付いたMCがあった。
今日集まってくれたお客さん一人一人、それぞれ、住んでいるところも違って、
いろんな仕事をしていて、それなりに苦労があることを、
彼はわかっている。
でも、「それは俺らだって同じなんだ。」と。
その後、

 『こんな顔見せるのは 本当は好きじゃないけど
  僕だっていつもピエロみたいに 笑えるわけじゃないから』

と"風の日"が始まった時、私は、涙が止まらなくなってしまった。
ミュジーシャンだからって特別扱いされることを拒み、
常にD.I.Y精神を貫き活動しているその姿には、何も感じない人はいないと思う。
Keeper Of The FlameツアーのMCでは「楽勝だ!」って言っていたけど、
その背景にはとんでもないストーリーがあった。
じゃあ、なんでこんなことまでしてライヴをやってくれるのか?というのは、
これは、よく、雑誌等でも書かれているけど、
細美さんは弱者の気持ちが、本当に良くわかる人なんだと思う。
そして、自分にも弱い部分があることをわかっているから、
それを包み隠さず声に出し、歌う。
自分のために、歌を求めるリスナーのために。
だから、聴いた人は、自分の中になる感情の蓋が開いて、
ドバっと涙として溢れてきてしまうんじゃないかな。

エルレ4人のステージを、観たことがないから、
この文に説得力があるかどうかは、ちょっと心配なところもあるけれど、
今の細美さんが歌うとエルレには、
弱さを受け入れてくれる場所だけじゃなくて、
「自分の足でしっかり立て。そして、しっかり歩け。」
といったエールも強く感じる。

それは、絶望の中でthe HIATUSをスタートさせ、
今日までの過程で、たくさんの出会いがあって、
支えられて、乗り越えて来たから、
聴く人たちの心が震えるくらい、力強く歌えるようになったのだと思う。

また、それは生形さん、高田さん、高橋さんだって同じ。
大切なものを喪失した。でも、今、がむしゃらに音楽を続けている。

そういう姿って、やっぱり、かっこいい。

私は、そういう音楽をずっと聴き続けていきたいんだと思う。


もし、いつかまた活動を再開してくれるのなら、
必ずライヴに行く。
Supernovaを、一緒に歌うんだ。





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by musicorin-nirock | 2014-09-07 14:46 | COLUMN | Comments(2)

Permanentsのライヴで思ったこと。

9月2日。
渋谷WWW。二ヶ月ぶりにPermanentsを観に行った。
『裸の王様 wear.3 』というVINTAGE ROCKと渋谷WWWが主催の対バンイベントだ。
この日の対バンアーティストは
「田中さんとは、歳が一回り違います。小学生か中学生の頃、まだ西原さん(西原誠/ex.GRAPEVINEベース)がいたときに、テレビで観ていました。」と嬉しそうに話していた、a flood of Circle の佐々木亮介(Vo&G)。
オープニングアクトは6月にメジャーデビューしたばかりだという、男女ユニットGLIM SPANKYが務めた。
「この3組のアーティストに共通しているものがブルース」と佐々木が話していたとおり、
かなり、ロックとブルース色の強い、約3時間に渡る長いライヴだった。


若い世代のアーティストに囲まれつつも、Permanentsの二人は相変わらず。
飲みながら、緩いMCを交えながらのステージで、途中、高野から「サクサクやったほうがいいよ」と田中への突っ込みも入りつつもマイペースに進んでいく。
ギターと鍵盤、そこにヴォーカルが乗るという、とてもシンプルな編成ではあるが、二人にしか生み出せない心地よいグルーヴがライヴハウスを温めていく。
そして、キャリアを感じさせる「渋さ」も、少年のような「瑞々しさ」も、自由自在に表現していく、田中のヴォーカリストとしての力量には、圧巻という言葉しか出てこない。

個人的に印象に残った曲について、書いていく。
自身の息子が誕生したときに歌詞を書いた。という「スイマー」。
少ない音数の中で、淡々と歌い上げていく。

綴られる言葉には、
新しい命が誕生する愛おしさと、
「頑張って生まれてこい。」という力強いエール。
そして、それは<僕らは一層泳げ>という、
自分に対する言葉へと変わり、
父親としての「覚悟」を感じさせられる。

その後、カバーを1曲挟み「少年」へと続く。
私は驚いてしまった。
意図的にそうしたか、偶然なのかはわからないが、
言うならば、この2曲は正反対の位置にある楽曲だ。
 

『交わした温もりなんて思い出せないだろう/歩いた道程なんて振り返らないだろう』

田中自身の生い立ちについては、かつて4thアルバム『Here』が発売された時、
ロッキン・オン・ジャパンのインタビューで語られていたが、
田中は、かなり苦労を強いられた幼少期を過ごしてきている。
その表題曲「Here」は、深い孤独が赤裸々に綴られた歌詞が並んでいる。
また、当時を思い起こさせる楽曲が、
その後もポツリポツリとリリースされて行く中でも、
この曲が田中にとって深い意味のある楽曲であることを思い知らされたのが、
「少年」が収録された彼らの7thアルバム『dēracinē』を
引っ提げたツアー『sweet home adabana 2005』ファイナルでの出来事。
田中は、オーディエンスの前で、ボロボロと涙を零しながら「少年」を歌っていたのだ。

そして、GRAPEVINEのライヴでは、この曲をほとんど聴かなくなった。
過去を振り返ることよりも、今目の前の幸せを歌い、
我が子へのメッセージのような楽曲が増えていく。
父親となった事を自分自身に言い聞かせるような、
この愛おしい時間を慈しむような、優しい曲が増えていった。

だから、この日はひどく衝撃を受けた。

缶ビールを飲みながらくだらないMCを連発し、オーディエンスに突っ込まれ、
真面目なことをうっかり話せば、そんな自分にまでも突っ込んでいる・・・

そういえば、かつては、自ら笑いを取るようなMCなんて殆どなかった。

年齢と共に人は丸くなっていくものだ。
しかし、この人は、孤独を抱え、今でも戦っていることを、改めて実感してしまった。
そして、この拭いきれない少年時代を歌うことは、
音楽家として生きる田中の使命であり、
答えはでなくとも、歌い続けいていくことに、
強い意味があるのだろう。

GRAPEVINEのヴォーカリストではなくて、田中和将としてのステージ。
彼の生きてきた時が歌に刻まれた、人間味のあるブルースを聴かせてくれた。

最後にこれは私のわがままだけど、
田中には、一人抱えてきた寂しさや憎しみを、
優しさに変えて、
やっぱり「ラヴソング」を歌っていて欲しい。


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by musicorin-nirock | 2014-09-04 23:14 | COLUMN | Comments(0)

Hurt / syrup16g

轟音のようなドラムを聴いた時、わっと目が覚めた。
ドクドク脈打つベースからは、強い生命力を感じさせ、
ギリギリの精神状態を突きつけていくような、
ヴィンテージ感漂うギターの音色。

1曲目「Share the light」を聴いた時、
syrup16gの「復活」ではなく、
「反撃が始まった」という言葉のほうが表現として相応しいと思った。
では、誰に対する反撃なのかというと、無論自分達である。
それぞれが抱えてきた葛藤を吐き出し、全てを打ちのめしていくような、
威圧感が充満している。

生々しい胸の内を、
五十嵐は蹴散らすように歌い上げる。

彼の綴る言葉に反応してしまうのは、
誰しもが不安や迷いを抱えているからであって、
生きることは容易くないと、歳を重ねて知れば知るほど、
実感しているからだろう。

しかし、そんな五十嵐の言葉達が
どこか色鮮やかに見える瞬間が、
このアルバムにはたくさん詰まっている。

マイナーコードが続く中、突如現れるメジャーコードがふわっと心を包み、
あちらこちらに「希望」、「勇気」といった、
未来を感じさせる言葉が散らばっている。
アレンジには、ダンスミュージックを始めとした、
ポップな要素も組み込まれ、
耳障りがとてもよく、リピートしても全く苦にならない。
人間の脆さや、そこから生まれる刹那は、
美しいメロディに生まれ変わり、じわりと全身に浸透する。

ラストの「旅立ちの歌」を聴き終えた後、私の心には爽快感が残った。
それは、こうして、メンバー誰一人変わることなく、
かつての仲間と集まり、
制作活動が出来たことの喜びそのものが、
音となっているからだろう。

音楽を辞めようとしていた男が、
がむしゃらに、ひたすらに、ギターをかき鳴らす。
そんな姿が目に浮かび、胸を打たれるものがあった。

そして、これは「序章」なのだと、
次なるステージを予感させる、強いエネルギーを持っている。
本当の「再始動」は、これからだ。


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by musicorin-nirock | 2014-09-04 14:50 | MUSIC | Comments(0)

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