1/8 NICO Touches the Walls LIVE SPECIAL 2016 ”渦と渦~東の渦“@ 日本武道館

     
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2006年1月8日、NICO Touches the Wallsは東京・下北沢にあるライブハウス「下北沢club 251」にて初めてのワンマンライヴ『成人前夜』を開催した。その日、集まったお客さんは264人。それから10年後の2016年1月8日、彼らが立つステージは3度目の日本武道館だ。過去2回の武道館公演『チャレンジ』と『リベンジ』を経て、集まった約8,000人のオーディエンスを目の前に掲げたテーマは『アレンジ』。「武道館を俺達色にアレンジしてやります!」と冒頭のMCで意気込む光村龍哉(Vo&G)の言葉のとおり、鳴らされるバンドサウンドと共にこだわり抜かれた映像や照明を駆使しながら、一曲一曲の背景を描く。結果的に、武道館は彼ら一色に染め上げられてしまい、まるで『NICO Touches the Walls』という一本の映画を観ているような、とても丁寧なライヴだった。何よりこの『アレンジ』こそ今ではNICOの個性でもあるが、ほぼ原曲に近いままで披露された曲も一層の輝きを放っていたのは、ここ数年間の活動による精神的な成長が大きく関わっているからだろう。

また、11月に右手を負傷した古村大介(G)の復活ライヴでもあった今回の武道館。ステージの上は無事4人で立てたことへの安堵に溢れ、メンバー間で目配せし合う場面も通常より気持ち多かったように思う。逆に、どことなく伝わる緊張感も、NICOがこの4人でなくてはならない理由の一つなのだと実感した。MCで『成人前夜』から10年経ち、今武道館に立てていることを振り返りながら笑顔で「続けてきて良かった!」とこぼした光村からは、これまでのバンドの軌跡が肯定され、ずっと夢に描いていたようなライヴができることへの喜びが感じられた。そして、全体的にどっしりとした安定感ある演奏だったことも印象強く、本格的にNICOが30代に突入したことを気づかされたライヴでもあった。

***

場内が暗転すると、ステージ中央に設置された白い筒状の幕に、アニメーション作家・加藤隆氏によるアニメーションが流れ始めた。ハットを被った青年(光村に似ている彼)が“口笛吹いて、こんにちは”のメロディを口笛で吹きつつ街を闊歩していると、突然、渦に吸い込まれ降り立ったのは「渦の街」。そして、先にスタンバイしていたメンバーによって“渦と渦”のインストVer.が披露される中ゆっくりと幕は上がった。堂々の開幕宣言は『リベンジ』を果たせたからこそできる“天地ガエシ”。ところが“Broken Youth”で始まった前回の武道館のように、のっけから客席に噛みつくような勢いがなく、ステージに立つメンバーの様子はどこか物腰が柔らかい。それは続く“まっすぐなうた”も同じだった。先陣切ってバンドを引っ張る対馬祥太郎(Dr)がパワフルなドラミングを響かせるが、アッパーなビートのままに駆け抜けるのではなくて、メンバー全員、一音一音を確実に聴かせることを強く意識しているように見えた。そして、骨太なバンドサウンドに乗る健気な言葉がひたすら胸に迫ってきた“ランナー”は、音楽で食べていくことを夢見ていた10代の自分達に捧げられているような気がして、一皮むけたNICOの姿に少し感動してしまった。すると、聴きなじみのあるキラキラとしたエレキのイントロが…そう、“ローハイド”のイントロが会場いっぱいに広がり、古村と坂倉心悟(B)がステージ前方まで歩み寄ってきた。この日、私の座席はアリーナ指定席の前から2列目。ちょうど目の前が古村の立ち位置にあたる場所だった。軽やかなステップを踏みつつ笑顔で歌詞を口ずさみ、ギターを弾きまくる姿からは、バンドやギターが大好きであることがわかる。そして、感極まる寸前の表情すら隠そうとはしていない。そんな古村が鳴らすフレーズには、様々な想いが込められているようで、私は涙を堪えることができなかった。

ここでいったんMCが入り、怒涛のメガミックスがスタート。“バニーガールとダニーボーイ”を皮切りに、インディーズ時代の名曲“泥んこドビー”、ライヴの必須アイテム“N極とN極“が投下され、フロアの熱気がぐんと上がる。また過去2回の武道館でも歌われてきた“Broken Youth”もここにて登場。自らの歴史を刻んだ証も忍ばせるところが、このバンドの憎めない性格でもある。変拍子の原曲とはガラリと雰囲気を変え、落ち着いたディスコビートに合わせ光村が妖艶な歌声を放った“ストロベリーガール”、古村のロカビリータッチなエレキを合図に躍動感極まる豪快なアンサンブルをきめた“THE BUNGY”ときて、個人的にメガミックスで一番感銘を受けたのが“夜の果て”だ。ひっそりとした静寂を感じさせる前半から、疾走感溢れるビートに切り替わり、バンドさらに加速する。ミラーボールが回り始め、会場一帯に光の粒が広がる中迎えたクライマックスは<無情な夜空の星に吸い込まれて揺れてる>主人公が闇から解放される心情を客席に体感させていくようで、非常にドラマチックな時間だった。ラストはジャジーなギターが色気で魅せる“行方”で大人っぽい締めくくり。活動初期の曲中心で構成され、今やNICOのライヴでは滅多に聴けない曲の登場が続き、想像以上の聴きごたえがあった今回のメガミックス。他サイトのライヴレポートによると約40分にわたっていたらしく、ノンストップで歌いこなした光村の怪物っぷりにも驚嘆した。

再び入ったMCでニューアルバム『勇気も愛もないなんて』のリリースが発表され、鶏の映るアルバムジャケットも公開。撮影現場でのエピソードなど和やかに話しつつも、なぜ「勇気と愛」を伝えたいのか?という経緯を話し始め、そして、集まったオーディエンスへのお年玉としてアルバム収録曲を2曲披露。1曲目は突き抜けるような爽快感を携えた、ポップで軽快なナンバーで、2曲目はアコギが哀愁漂わせる、しっとりとした大人っぽい曲だった。

ステージの背後には巨大なスクリーンが設置してあり、そこに再び加藤隆氏のアニメーションが流れ始めたのは“TOKYO Dreamer”の時だ。オープニングで登場した青年が街を歩いていると<32連のジオラマ>や、ダンスする少女と出会う。前回の『リベンジ』では、NICOは新たな決意表明としてこの曲をアンコールで演奏している。しかし『アレンジ』で聴かせたものは、このファンタスティックな世界を包み込むような、温かみのあるサウンドだ。そして、スクリーンに今宵一番熱い名シーンが映し出されたのが“ニワカ雨ニモ負ケズ”の時だ。炸裂する光村のスキャット。光村から一切視線を逸らさずエレキを弾き続けた古村の集中力。互いに火花を散らし合い、売られたケンカには果敢に挑み合う壮絶な間奏シーンに、私は思わず息を呑んだ。そして、捻くれ者のロックンロール“バイシクル”と、色褪せることないフレッシュさで放たれた“ホログラム”という彼らの王道を畳み掛け、いよいよ本編ラストの“渦と渦”が登場した。この曲に潜む「人を巻き込ませる威力」は今回の『東の渦』と、5月6日大阪城ホールで開催される『西の渦』で発揮される。その第一弾として渾身のパフォーマンスを見せた4人は、武道館を大いに唸らせた。思い残すことなくすべてを出し切ることができたのだろう。光村のギターの弦は、ここで切れた。

鳴りやまない拍手と歓声に迎えられステージに現れたメンバーは、生まれ年の「1985」がプリントされたスウェットを揃って着用。もちろん、アンコールの1曲目は“僕は30になるけれど”。威勢の良いアコギに合わせオーディエンスのハンドクラップが盛大に響き渡る。2曲目の“手をたたけ”は久しぶりのバンドVer.。ハンドクラップに加わるオーディエンスのシンガロングと共に、今この瞬間を鳴らしていく。そしてアンコールラストは、アルバムに収録予定の、まだアレンジも決まっていないという新曲を光村の弾き語りで披露された。爪弾かれるアコギの優しいメロディの上に乗るのは、初見でも脳裏にその情景が思い浮かび上がるほどの恋する切なさが胸に迫る、どストレートなラブソングだった。

「孤独と夜」を歌い続けてきたNICOが「勇気と愛」を伝える選択。これは音楽家として生きる彼らの、とても大きな成長だろう。歌い始める前、自分の「捻くれた部分も(曲に)出していきたい」とすら正直に話した光村は、どこかほっとしている表情にも見えたが、産まれて間もないラブソングを一人武道館のステージで堂々と弾き語ること自体、ミュージシャン人生を全うするために何か大きな決断を下した、その証に見えた。個人的な事を言えば、孤独と向き合い、はち切れそうな胸の内を吐き出すNICOの青きブルースが好きであり、アンコールラストのラブソングには正直、動揺した部分もある。しかし、私にとって初めて観たNICOのワンマンライヴであった、2012年開催の『1125(イイニコ)の日ライブ』から約3年間、変わり続けるNICOの姿を見届けてきた中でも、今回の日本武道館公演が一番泣けて、私は心の底から感動したのである。

私の思う今のNICOの魅力とは、得たもの全てを音で表現できるポテンシャルの高さと、泥臭い部分まで隠さず見せてくれるようになった素直さだ。そして、そんな彼らから多くのものを私が受け取ってきた事実が、今「信頼」として蓄積されていることを今回の日本武道館公演後に実感し、だから、「勇気を愛」を歌う彼らが見たいと切実に思ってしまうのだ。ニューアルバム『勇気も愛もないなんて』の発売日は3月16日。それに先駆け同月4日からは全国ツアーもスタートする。勇気と愛を伝える使命を掲げたNICOの2016年は、明るくて楽しいものになるだろう。流行り廃りも関係ない、聴き手の心に永遠に寄り添い続けてくれる「本物の音楽」を彼らは届けてくれるはずだ。

SET LIST
1 天地ガエシ
2 まっすぐなうた
3 ランナー
4 ローハイド
5 バニーガールとダニーボーイ
6 泥んこドビー
7 N極とN極
8 Broken Youth
9 ストロベリーガール
10 THE BUNGY
11 夜の果て
12 行方
13 新曲
14 新曲
15 TOKYO Dreamer
16 ニワカ雨ニモ負ケズ
17 バイシクル
18 ホログラム
19 渦と渦

ENCORE
1 僕は30になるけれど
2 手をたたけ
3 新曲


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# by musicorin-nirock | 2016-01-24 10:44 | LIVE | Comments(0)

NICO Touches the Walls 3度目の日本武道館公演に寄せて

2015年がNICO Touches the Wallsにとって大飛躍の一年になることに、間違いはなかったのだ。

2月。彼らにとって大きなターニングポイントとなったアコースティックアルバムが発売され、憧れのビルボードライヴのステージに初めて立つことができた。そして5月からは2年ぶりの全国ツアーをスタートさせ、6月には『まっすぐなうた』9月には『渦と渦』というバンドの新境地を切り開く2枚のシングルを発売した。12月23日には初の大阪城ホールでのワンマンライヴが開催され、年末のロックイベント「COUNT DOWN JAPAN 15/16」では、最終日である12月31日、EARTH STAGEで新年一発目のオオトリを飾り、いよいよ迎える2016年1月8日、三度目の日本武道館公演へと襷を渡す…。

そんな夢のようなバンドストーリーを彼らは描こうとしていたのだから。

11月。古村大介(G)が右手を負傷するという想定外の出来事が起こった。12月23日の大阪城ホール公演は年明け5月6日に延期となり、「COUNT DOWN JAPAN 15/16」については出演をキャンセル。そして、11月25日の『1125の日ライブ』は光村龍哉(G)、坂倉心悟(B)、対馬祥太郎(Dr)の3人で行うという。しかし、この『1125の日ライブ』の開催日寸前まで、私達リスナーには、実際のバンドの状況の多くを知らされることはなかった。たくさんの人が不安や不満を抱えていたと思うが、今改めて考えてみると、それだけ多くの時間がこのバンドには必要であったと納得する。年内から年明けにかけてのスケジュールを大幅に変えざるを得なかっただろうし、メンバー全員と彼らを取り巻くスタッフ全員が、気持ちを持ち直すためにもやはり時間は必要だ。

そして、11月25日に無事開催された『1125の日ライブ』については、光村龍哉(Vo&G)が自身のブログに、ライヴ当日の様子や、ライヴ前の混沌とした空気まで、事細かに書いている。バンドメンバーの一人欠けるということは、当然ながらその穴埋めが必要となる。音作りも一からやり直す必要も出てくるだろうし、残されたメンバー一人一人に負荷が発生する。また、今回は一日で2公演(東京と大阪)行うというハードスケジュールである。このような状況下に立たされた時、「メンバーの一人が怪我をしたので、今回は残念ながら中止にします」「代わりにサポートメンバーを入れます」という決断を下すバンドも少なくはない。

12月に入ると、バンドの公式Twitterの中で古村による日本武道館公演までのカウントダウンが始まった。時には古村以外のメンバーからの呟きも入り、毎日発信されるようになっている。ライヴのキャンセルが続いてしまったことで、バンドとリスナーを繋ぐ唯一のツールに、私は始め戸惑いを感じてはいたが、1月8日が近づいてくるたびに、Twitterから届く彼らの本音に胸を打たれっぱなしである。

12月31日、この日からやっとギターを弾き始めたという古村のツイートには、誰よりもたくさんの涙を呑んだであろう彼の苦悩を感じざるを得なかった。そして、年が明けた1月1日。「COUNT DOWN JAPAN 15/16」で彼らの代打を務めたBLUE ENCOUNTのステージを、居ても立っても居られず観に行っていたという光村のツイートからは、先輩としての優しさとプライドを強く感じた。

もう、決して若手とは言えないNICO Touches the Wallsの長いキャリアを辿れば、良くも悪くも多くの「壁」にぶつかってきたが、それを常に4人で乗り越えている彼らの「意地」と「根性」を、私は一人のリスナーとして誇りに思っている。しかし、チャレンジでもない、リベンジでもない、三度目の日本武道館公演は、彼らがプロのバンドマンとして、今回の出来事をどのように乗り越えて来たのか、そして新しく生まれ変わった姿を、どうオーディエンスに見せてくるのかが問われる、今後の彼らを占うような責任重大なライヴである。リラックスした気持ちでライヴに臨もうと思っていたが、やはり、私は緊張をしている。しかし、その緊張が解けたときには、涙も笑顔もごちゃ混ぜで、会場中が喜びに満ち溢れる、そんな夜になるのだろう。私は、そう信じている。


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# by musicorin-nirock | 2016-01-04 10:57 | COLUMN | Comments(0)

12/29 GRAPEVINE @ COUNT DOWN JAPAN 15/16

相変わらず飄々と彼らはステージに現れた。

来年2月3日発売される「節分アルバム」『BABEL,BABEL』と4月から始まる全国ツアーの告知ぐらいの言葉数少ないMCは、いつもより、ちょっぴり素っ気なかった。

しかし、淡々と、黙々と、演奏される一曲一曲が放つ存在感は、物応じできない程に聴き手を圧倒させてゆく。

「GRAPEVINEのかっこよさは、これなんだ」

***

ライヴは挨拶代わりの“光について”から始まり、田中和将(Vo&G)と女王様の絡みPVで話題騒然となった”EVIL EYE”のキワどいロックンロールで早々にフロアを揺らした。そして、今回ライヴで初お披露目となった新曲”EAST OF THE SUN”は、田中がつま弾くアコースティックギターに、西川弘剛(G)が鳴らすエレキギターと高野勲(Key)のトリッキーなシンセが重なるイントロから、鮮やかに、繊細に、一音一音紡がれてゆき、メロディメーカー亀井亨(Dr)の腕が光るメロディの美しい名曲だった。冬のソングとしてお馴染みの”Our Song”で、<ぼくらは/ねえ/何が見たくて/全てを欲しがって/きたんだっけ>と、ドラマティックに歌い上げた田中の声は胸に迫るものがあり、”スロウ“の厚みあるギターサウンドからは、ひしと貫録を感じさせられた。

人の心に必ず何かを描き続けるGRAPEVINEのライヴは、ゆったりとした流れの中で、MOON STAGEに集まったオーディエンスを、完全に異空間へと引き込ませてしまう。

だから、COUNT DOWN JAPAN 15/16 (以下CDJ)の多くのステージで見られるような一体感を味わう光景は、当然一度も訪れなかった。シンガロングにハンドウェイブ、かつては彼らのライヴでもよく発生していたモッシュですら、今はもう、ほとんど起こらない。もちろん、曲に合わせ歌詞を口ずさんている人もいたし、拳を上げている人もいた。しかし、曲が終わるごとに盛大な拍手が響き渡り、バンドとオーディエンスに通ずる何かが確実にあった事が証明される。そんなライヴだった。

ただ、CDJのような今の音楽シーンのど真ん中に位置するロックフェスに、GRAPEVINEのようなバンドが出演することは、今やもう稀に映る時代なのかもしれないと思った。CDJの各ステージの盛り上がる様子を覗いてみると、そう思わざるを得ない場面に私は何度も遭遇した。実際、GRAPEVINEの裏ではMAN WITH A MISSION、KEY TALK、DJ やついいちろうのステージが繰り広げられており、集客状況に関して厳しいものがあったことは事実だ。そしてそれは、彼らと共に青春を過ごしてきた私にしてみると、寂しさを感じる現実だった。

それでも、ラストソングの”Silverado“が、フロア一帯をあたたかく包み込めば、まるで、新しい年へと続く彼らの旅路を、しかと照らし出すようで、年々研ぎ澄まされていくバンドサウンドと共に過ごした約30分間は、その場を離れるのが惜しい程の感動と余韻を残していった。

変化の激しい世界の中にいても、ぶれることなく自らのスタイルを貫き続けるGRAPEVINEは、私にとって、いくつになってもロックヒーローのなのだ。2016年、2月にはアルバムリリースに付け加え対バンイベントが、4月からは全国ツアーが決定している。今年もこうして、彼らの新しい音楽と出合える喜びを糧に、私は日々、過ごしていきたいと思う。





SET LIST
1 光について
2 EVIL EYE
3 EAST OF THE SUN
4 Our Song
5 スロウ
6 Silverado


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# by musicorin-nirock | 2016-01-03 11:10 | LIVE | Comments(2)

12/19 BONNIE PINK @ Zepp Tokyo

9月21日、場所は渋谷公会堂。シンガーソングライターBONNIE PINK(以下ボニー)のメジャーデビュー20周年記念日に開催された一夜限りのスペシャルライヴ『BONNIE PINK 20th Anniversary Live "Glorious Kitchen"』。このライヴは、彼女の赤毛時代(活動初期の頃)の楽曲を軸に構成されたセットリストで、会場に集まったファンと共に20年を振り返り、その一つ一つを噛み締めるような感慨深い内容だった。

ライヴ後半のMCで、長年「ファンと一緒の時を歩んできたことに歌いながら気づいた」という彼女の言葉がとても印象的であったことと、彼女を産み育ててくれたご両親への感謝の言葉の後に、最初期のシングル"Surprise!"を本編ラストに披露した姿を観て、10年前、20年前の自分よりも年齢を重ね、当時のようにいかなくなることもあるけれど、だからこそ、20年という大きな区切りが、初心を取り戻させてくれる、本当の新しいスタートなのだと教えられた。

そして、彼女のデビュー20周年を記念し開催された全国ツアー『BONNIE PINK 20th Anniversary TOUR 2015』、そのファイナルに当たる12月19日、Zepp Tokyoのステージは、まるで彼女のが主催するパーティーに招かれたような弾けた楽しさに溢れ、今のボニーの魅力が存分に味わえるステージだった。

長年、彼女のバックバンドとして活躍する八橋義幸(G)、鈴木正人(B)、白根賢一(Dr)、奥野真哉(Key)(バンド名はBAD BAD BOYS)という名プレイヤーによる貫録の演奏と、ボニーが艶やかな歌声を放つと、一曲一曲がキラキラと輝く宝石のような完成度で、一曲一曲聴き終えるたびに私はいちいち感極まってしまう。

彼女はファンに苦労を見せるタイプではない。関西出身の明るいキャラクターで鋭い突っ込みをバンドメンバーにふっかけながら、和やかにステージを進めていく。けれど、20年間、常に丁寧に曲を作り続け、絶えず愛を注ぎながら、一曲一曲を大切に歌い続けてきたのだろう。ステージ上から終始溢れる多幸感が、逆に彼女の音楽に対する真摯な姿勢を私には見せてくれた。

大ヒットしたシングル曲も、久しぶりに耳にしたアルバムの中の一曲も、どれもこれも名曲揃い。ロックにソウル、ファンクにジャズ。そしてR&Bという、ジャンルレスなボニーの楽曲。その中で主人公たちは、恋に落ちたり、失恋したり、立ち上がったり、へこんだりと忙しい。正しくそれは現代を生きていく人々の生々しい姿である。10年以上ボニーの曲を聴いてきた私にとって彼女の曲は人生の写し鏡であり、ライヴ中に、とあるキツイ失恋の記憶が蘇ってきてしまい、思わず涙をこぼしてしまったけれど、彼女の楽曲から湧き出す親近感には、随分と救われてきたのだなと改めて思った。

しかし、最近の彼女からは、ポジティヴなエネルギーが強く感じられる曲が多く、先日配信された"Spin Big"は、女性らしさの中にも、どこか野性を感じさせるアコースティックサウンドで、一歩外に踏み出す勇気を聴き手には与えてくれる。そんなボニーの楽曲の進化からは、年齢を重ねた分だけ女性は強くなることができ、どんどん余計なものがそぎ落とされ、本当に大切にしたいもの、表現したいものが見えてくるのだと気づかされる。

「来年はアルバムをリリースしたい!」と意気込んでいたボニー。21年目の彼女への期待は高まるばかりだし、またライヴ会場で会えることを私も願っている。



"Spin Big"

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# by musicorin-nirock | 2015-12-20 12:16 | LIVE | Comments(0)

『NO NUKES 2015』MONOEYESのライヴを観て

昨日、久しぶりにMONOEYESのライヴを観た。NO NUKES 2015という特別な意味合いの大きなイベントではあったのだけど、それはまた別の特別な場所に置いておいて、あの時間は、ただただ、自分の古い記憶が蘇る貴重な時間だった。

Vo&G細美さん曰く「クラスには一人いる、みんなと一緒に笑えない奴に向けて歌う」MONOEYESのライヴ。クラスで一人周りになじめず学生らしくいられなかったのは、何を隠そうこの私だった。私は10代後半から大学卒業にかけて、実は相当イタイ娘だった。周りいたクラスメイトのように、自由奔放に恋をしたり、バイトしたり、勉強したりできなかった。それがずっとコンプレックスだった。社会に出てからは、だいぶ人なりの人生を歩めるようになったと思っているけれど、時々今でもあの頃の私が顔を出してくる。基本的に不器用だし、素直なんだが捻じ曲がっているんだかわからない性格なのだけど、本当に自分が嫌になってくると、学生時代の自分をののしりたくなる。そんな時がこれまでに何度があった。

しかし、細美さんの作る音楽を30歳を過ぎた頃に知り、数年前に突然起こった大ピンチの時代を、なんとか乗り越えることが出来た。そう実感しながら過ごしていたある時、私は気が付いた。「コンプレックスだらけの学生時代、自分を理解してくれるものを得るために数多くのロックバンドを聴き始めた自分がいたから、彼の音楽を知ることができたんじゃないか?」と。当時、一番身近にあったものがロックバンドなだけと言えば、それでおしまいなのだけど、通学中に音楽雑誌で目にしたり、日々ラジオから流れてくるものがカッコいいロックバンドの鳴らす、カッコいいロックンロールだったから、それがきっかけであの頃から15年以上経った時、the HIATUSと、ELLEGARDENと、目の前に立つMONOEYESを知ることが出来た。そして、確実に私の人生はより豊かなものに変わっていったのだ。

MONOEYESのライヴはに難しい事なんて何一つない。ネガティヴをポジティヴにひっくり返すバカでかいパワーで溢れている。NO NUKES 2015という場所であれ「楽しむことで、このイベントに沢山の人が集まることが大切」なのだと話す細美さん。それが、本当に彼らしいアプローチで素晴らしかった。と、同時に昨日のライヴを学生時代の私に見せてやりたかった。そして、こう声を掛けてあげたかった。「あんたがあの時ロックを聴き始めたから、私は今、こんなに感動的な音楽を鳴らせる人に出会えて、大ピンチを乗り越えたんだ。あんたは当時とても辛くて、不安で仕方ない日々を過ごしていたけれど、それは何一つ無駄な事ではなかったんだ。大丈夫」と。

“明日公園で”が始まってから、ラストにかけて、私はずっと泣いていた。周りで泣いている人はほどんどいなかったけど、こみ上げてくるものを抑えることが出来なかったし、我慢する必要なんてないと思った。そして今、昨日私が流した涙は、学生時代の自分の声のような気がしていて、この感じをこれからも大切にしたいと思っている。




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# by musicorin-nirock | 2015-11-29 11:27 | COLUMN | Comments(0)

2015年の『1125(イイニコ)の日ライブ』について思ったこと。

今年はもうNICO Touches the Wallsについての記事は書かないだろうと思っていましたが、やっぱり書いてしまいました。

11月25日、『1125の日ライヴ(通称イイニコ)』が無事終わりました。今年は東京・下北沢CLUB251と大阪・梅田Shangri-Laの同日二ヶ所でライヴを行うという、またまた前代未聞の挑戦に挑んだわけですが、ご存じの方もたくさんいらっしゃるように、ギターの古村くんが怪我の為に今回イイニコには参加していません。なので光村くん・坂倉くん・対馬くんの3人体制でやるとのアナウンスがありました。

私は最初アコースティック編成でやるのかな~とか色々と想像してみたのだけど、やっぱり場所が場所だし、2006年1月8日に開催された『成人前夜』の再現ライヴをやるんじゃないかとうっすら思っていました。

残念ながら私は今回行けなかったので、当日のセットリストはライヴ後Twitterで知りました。内容は初期のナンバー中心に、コンパクトにまとめられていたもので、下北沢のセットリストも梅田のセットリストも見て「ああ、やっぱり」と納得。同時に私のタイムラインは下北沢のステージも、梅田のステージも大絶賛する言葉で溢れ返っていました(そのタイムラインをじっくりと読みながら、泣いてしまったのはここだけの話)。う~ん、やっぱり行きたかったなぁ。ただ、セットリストを見れば見るほど「4人でこのニ箇所のステージに立ちたかったよね」という悔しさ残ってしまったのが本音でした。

今年のイイニコはメンバー全員が30歳になって初のワンマンライヴであり、今年12月23日に開催予定であった初の大阪城ホール公演と、年明け1月8日に控えている3度目の日本武道館公演を行う前の最後のワンマンライヴでした。また、9年前の自分たちを、30歳になった今の自分たちで演じることで、大ステージを目の前にした自らに発破を掛けるライヴであったように感じます。『初心忘れるからず』と言うし。レアな曲を披露している点では、今まで通りのファン感謝祭でもあるけど、それ以上に、バンドの節目ともなるようなとても大きな意味があったと思います。

あと、私自身がこうしてライヴレポート等書いてると、とにかくこの4人でいることの必然性をとても強く感じるようになったんですね。だから、なおさら「4人でこのニ箇所のステージに立ちたかったよね」と、悔しく思ってしまったのです。

私は先日、BRAHMANの結成20周年イベントに行って、バンドが長く続いていくこととは一体どういうことなのかを、BRAHMANと共演したバンドのライヴから教えてもらいました。そして、「バンドが長く続いていくこと」を改めて考えてみたけれど、どのバンドも山あり谷ありあって当然で、続くことを願っていても続けられなくなってしまうバンドある。しかも、そういう事態がおこる可能性がないバンドは、存在しない。だから、好きなバンドがこうして続いてくれることって、前に他のバンドの記事でも書いたけど、本当にそれだけで「奇跡」。

古村君の怪我のことを私はかなりシリアスにとらえてしまって「イイニコやるっていったてどうなっちゃうの?」という苛立ちに近い不安も少ながらずありました。しかし、イイニコを「3人でやる」と決めた決断、大阪城ホールの延期、年末カウントダウンイベントのキャンセルも、結果的にはNICO Touches the Wallsをより肉体的・精神的に強くしたと思っています。また、今回ステージに立てなかった古村君が手を怪我しているにも関わらず新聞を作り、来場されたお客さんには、それが配られたとか。きっと彼が一番悔しい気持ちでいっぱいなのに「何かしたい」という彼の気持ちには、ただただ感動してしまいました。そういうところが、このバンドの誠実さで、どんな形でも4人でいることを感じさせる、これがNICO Touches the Wallsなんです。

“渦と渦”の歌詞にもあるけれど<険しい道のり/裏切られっぱなし>だし、バンド名に壁が入っているから「壁を乗り越える使命を担っちゃってるじゃん!」と突っ込みたくもなるけれど、<まだまだまだ/くたばれない>って叫ぶ4人を、まだまだ私は見ていきたい。2016年1月8日、ちょうど『成人前夜』から10年目の、3度目の日本武道館が、今、心の底から楽しみです。


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# by musicorin-nirock | 2015-11-26 21:06 | COLUMN | Comments(0)

主にNICO Touches the Walls について書いておりますが、他にはGRAPEVINE と the HIATUS が好きです。記事の無断転載、引用はご遠慮ください。


by タナイユウ
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