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2017 / NICO Touches the Walls

私がNICO Touches the Wallsを初めて観たのは、2006年4月。GRAPEVINE目当てで行ったJAPAN CIRCUITというイベントだった。

この時にオープニングアクトを務めていたのがニコ。オープニングアクトということは所謂20代前半の若手バンドだろうし、「NICO Touches the Walls」というバンド名からは、演奏も雰囲気もキャピキャピとしたうるさいだけのバンドだろうと想像していた。だけど、いざライヴが始まると、それをまんまと覆された。若者らしからぬ渋い曲ばかりを畳み掛ける姿に拍子抜け&好印象を持ったけれど、ライヴ後に物販でCDを買わなかったし、バンドについて調べて後日ライヴに行くわけでもなかった。ただ妙に長いバンド名だけは印象的で忘れられずにいた。

それから数年経ったある日、テレビで放映されていた有名音楽プロデューサーのドキュメンタリー番組を観ていたら、あるバンドのレコーディング風景が流れている。

「ああ!私このバンドを知っているわ」。

それがニコとの再会だ。その翌日だったか忘れてしまったけれどCD SHOPに行き、店内の目立つ場所に大々的に展開されていた彼らの一枚のアルバムを手に取る。「聴いてみよう」という好奇心と期待しかなかったから、試聴もしないで、何のためらい無くレジへと向かった。ジャケ買いや、思いつきで買ったCDが失敗だった経験は数知れず。でも、この時買った『オーロラ』は違った。”かけら~総ての想いたちへ~”は唯一知ってたが、それ以上に”ホログラム”のみずみずしさが気に入って、”芽”の歌詞には胸を打たれ、”トマト”はただただ切なくて泣けた。かつて、ライヴで聴いた楽曲とはまるで別世界だったけど、特に違和感も何も感じないくらい、とても好きなアルバムになった。

2012年11月25日。この日もGRAPEVINE目当てで行くことにした「1125の日ライブ」で、6年ぶりにニコのライヴを観た。すると終演後にはしっかりハマってしまい、翌日には早速直近のライヴ情報とディスコグラフィーを調べ始めた。

インディーズデビュー直後のライヴを観ていたことは覚えていたし、それ以降のニコの軌跡を後追いで知れば知るだけに「あの時ちゃんと追っかけていたら良かったのかな・・・」と思ったことも一度じゃない。でも、偶然にもニコが大きく変わろうとする直前のタイミング(2013年の「1125の日ライブ」で日本武道館公演へのリベンジ宣言をする前)で歩み寄り、バンドと共に駆け抜ける時間の中で、確実に私は生きる力を取り戻せた事を思うと、この巡り合わせに感謝しなければ…と常に思う。

ニコは決して器用なバンドではない。いつだって遠回りだし、なんだかベタで泥臭い。でも、だからこそ彼らの悔しさも喜びも共感できたのだと言い切れるのは、なぜなら、日々生き辛さを感じてしまいがちな私自身が、決して器用な人間ではないからだ。<わかってるんだろ?/どんな答えも/僕が出していくこと/気付いてるんだろ?/どんな弱音も/僕の声だ>。私がニコの楽曲の中で一番好きな曲、"Mr.Echo"の一節である。開き直りでも諦めでもない、弱音だって「僕の声」だと認められたとき、人は本当に強くなれるのだと思うし、何よりステージ上で彼らはそれを体現し続けていた。

昨年、アルバム『勇気も愛もないなんて』発表以降、明るい歌を歌うニコの変化には戸惑っていた。彼らを取り巻く諸々(ぶっちゃけ売り出し方とか)に対して小言をぼやいては、ライヴに行く理由も正直わからなくなり、「これを潮時と言うのか・・・」と苦虫を踏みつぶしたような気持ちになった。それでもライヴ会場に行けば、いつだって「良い音楽」に溢れていたから、どうしようもなく心揺さぶられてしまう私もいて、だから余計にニコのライヴについて言葉に残したくなった。

私が目で観て耳で聴いてきた全てから生まれた感動に比べたら、私の小さな反抗心は、なんだかとってもバカバカしい。けれど私はニコの真実を伝えていくことをしなければ、このもやもやした気持ちは消えない。それを内輪だけで共有するのではなくて、外野にいる人達も巻き込まなければ意味が無い。5月の大阪城ホールのライヴ、オーラスの”手をたたけ”で涙が止まらなかったのは、私が戦うべき場所や相手も間違えていたと気付いたからだ。微力でしかないけれど、それでも物書きの端くれとして生きているんだから、それが勝手に私に託された役目と思って、これからもニコ見届けていきたいと思った。

ニコの音楽性は、過去と今とで大きく違う。よって、様々な意見がリスナー間で引っ切り無しに飛び交うバンドであるが、インディースデビューから今日までの長い軌跡や、一曲一曲、楽曲の背景を読み解いていけば、今のモードに転換したことが本当に自然であったと納得ができる。

ここで最新シングル”マシ・マシ”を例として挙げてみる。

この”マシ・マシ”という曲のタイトルには「明日が今日より少しでもマシになりますように」という願いが込められ、その由来にはマーヴィン・ゲイの”Mercy Mercy Me”とローリング・ストーンズの”Mercy Mercy”の存在があり、”Mercy”を日本語に訳すると「慈悲」という仏語で、「人を憐み、楽を与え、苦しみを取り除くこと」を意味する。ゆったりとしたビートを刻むグルーヴ重視のバンドサウンドと(ライヴではさらに原型が崩される)ソウルフルな光村の歌声からも、洋楽へのリスペクトを感じる事ができる。そして、素っ裸な歌詞には親近感が湧き、<あとはきみしだい>というサビの言葉は「きみ=リスナー」と置き換えも可能で強いメッセージ力があるが、実は「きみ=光村自身」という自戒の意味も込められている。

一聴すれば誰もがポップミュージックという概念に当てはまると思うだろうし、私自身もそう感じたが、裏を探ればこの曲はニコ流カウンターミュージックであり、今の音楽シーンとそこに立つ自分達へ彼らは中指立てている。開けたとても明るい曲だが、BPMは遅めで今のトレンドとは真逆。しかし、自然とハンドクラップしたくなるノリの良さが強い分、フェスが中心に回っているシーンでどう受け入れられるか、大きな賭けに出たとも言える。しかも、テレビアニメのEDテーマとして起用されたわけで、自動的に大勢に人の耳に届くことにも狙いがあるに違いない。

そんな”マシ・マシ”が生まれたことは、バンドのソングライターである光村が長年抱えていた苦悩から解放された証であり、ようやく手に入れた自由の中で生まれる音が、今後私達の元へと届く約束のようなものである。そして、音楽人として生きる新たな覚悟が生まれたからこそ、これからニコは大きく変わっていくだろうし、本来、何かを表現する者は、どんどん変わるべきなのかもしれないと、彼を見ていて気付かされた。元々の不器用さであったり捻くれ者の素質は変わらずくっついて来てしまうだろうけど、ニコのめっきり明るさ満点に聞こえる歌の奥に潜む影にこそ人間らしさを感じるし、これこそニコの一番の魅力であり、かつ今のシーンに枯渇しているモノだと思う。

2017年、2月12日に開催されるのファンクラブイベント『my Funny valentine』がニコの今年初ライヴであり、そしてすぐに全国ツアーも始まる。今年がどんな1年になるのか、色々と期待しているけれど、そんなものいとも簡単に裏切るくらいの、大飛躍の年になることを願っている。

         

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by musicorin-nirock | 2017-02-11 12:17 | COLUMN | Comments(0)

11/25 NICO Touches the Walls @東京・赤坂BLITZ「1125/2016」





2006年、当時インディーズで活動していたNICO Touches the Wallsは2枚のミニアルバムを発売した。どちらも未だファンの間では人気の高いアルバムであり『Walls Is Beginning』は通称青盤、『runova✕handover』は赤盤と呼ばれ、鋭いジャックナイフを世間の汚さに向けているが、自堕落な自身を嘲笑う狂気性も存在する。そして、その根本にあるものが若者らしい焦燥や、彼らに付きまとう孤独感。しかし、ここで赤盤に収録されている”壁”の歌詞を一部取り上げてみる。
ー理想を追い 現実を憂い その間に揺れながら
 わずかなその光を信じてみたいのさ
ー今日も明日も睨み合いで生きる
 そんな未来を僕ら背負え
ーいくら遮ってもまだ見ぬ光を きっと手に入れる
 遮っても 遮っても... 遮ってるもの
 だから遮ってるもの 全部越えていく

私がこの曲から感じたものが、目の前を壁に遮られたとしても、再び光を求めようとする貪欲さだ。当時の楽曲からは殆ど表面化させていない気概に満ちた姿が、言葉の裏から見えてくる。ならば、別の場所から光を当てて、若者らしいフレッシュさで歌うことだってできるだろう。けれど、内向的な捻くれ者は孤独に生きる道を選んだ。それがニコの始まりだった。




***
それから10年という月日が流れた。

毎年11月25日に開催している1125(イイニコ)の日ライブ「1125/2016」のテーマが「青盤と赤盤の再解釈」、つまり2枚のミニアルバムの再現ライヴだとわかった時、私は正直戸惑った。バンドのバックグラウンドを知ることは、バンドを長く聴き続けていく上で重要なことはわかっている。けれど、近年バンドのモードはめっきり明るいものとなり、ステージから伝わる充実感や風通しの良さからは、もう過去を掘り起こす必要性は皆無だと思っていた。・・・それだけではない。彼らは、2013年11月25日、そう3年前の1125の日ライヴで宣言した2度目の日本武道館へのリベンジ以降、散々原点を見つめ直す作業を繰り返してきたのである。だからこそ辿り着いた現在地では、インディーズの回顧は似合わない。歌うべき歌はもっと他にあるだろう。なのにどうして?と不穏が気持ちに取り憑かれていた。


どうしてニコは「青盤と赤盤の再解釈」をテーマにしたのだろうか?

先に理由を明かてしまうと、2枚のミニアルバムが世に放たれてからちょうど10年。当時とは全くモードの違う音楽をやっている今の自分達が、インディーズ時代の曲を演奏したらどんな感じになるのか?それを確かめる如く、楽曲が誕生したスタジオのある街、東京・赤坂で再び鳴らそうという試みだ。

ステージの上でそう説明する光村龍哉(Vo&G)は、今回のテーマに特に深い意味合いを持たせているような素振りを見せなかった。



***
2016年11月25日。

光村が「ようこそ」とフロアに声を掛けると、古村大介(G)が奏でる流麗なギターが鳴り響き、光村が歌い出したのは”行方”。ジャジーなギターと坂倉心悟が爪弾く低音がグルーヴを作り、一瞬にしてオーディエンスを魅了させ、その直後に登場した”壁”のドラマチックな情景に私は言葉を見失う。自らの宿命を受け入れ、バンドと共に歳を重ねてきただけの力強さが、この曲には宿っていた。木漏れ日のように温かく会場を包み込んだミドルバラード”梨の花”の慕情感や、若き吉田拓郎を思わせるフォーキーな”僕がいなくても地球はまわっている”の郷愁からは、10年前のニコの姿を見ているよう。ライヴは始まったばかりというのに、過去と現在が入り交じるステージを前にしたら、脳内が混乱し始める。

淡々と綴られる行き場のない喪失感を、無数の砂に例えた”幾那由多の砂に成る”は、最小限の音数で描かれた。ステージから漂うひんやりとした緊張感をフロアの隅々までに行き渡らせると、更にオーディエンスを静寂の地に潜り込ませたのが”プレイヤ”である。対馬祥太郎(Dr)が刻むエキゾチックなビートの上では優美なベースラインが舞い、曲のクライマックスにかけて波打つギターアンサンブル。その上に重なる光村のロングトーンは「闇から抜け出したい」という救済の声にも聞こえた―――それにしても、聴いてて呆然としてしまうほどの、若者らしからぬ音楽嗜好なのである。直後のMCでは光村曰く、当時は渋いバンドばかりから対バンを申し込まれていたとか。すると、対馬「ハタチだよ」古村「怖いよね」坂倉「怖いモノ知らずだったよね」と皆が本音を零していく。

20歳(ハタチ)になれば誰もが「大人」と認められ、世間からの視線も変わる。しかし(私自身もそうであったが)実際は、まだ未熟さ残る年代だ。だからこそ、彼らは脆い自分を隠すために、敢えて暗くて渋いサウンドに身を投影していったのではないだろうか?そんな当時のニコの象徴と言うべき曲が”病気”である。全身に伸し掛かるブルージーなバンドサウンドからは昭和歌謡の匂いが漂い、聴けば瞬時にドキッとさせられる<父ちゃんは病気だから>と光村は吐き捨てるように歌う。ただ曲の途中で、歌・演奏ともにアップデートさせている今のニコに対し、少し居心地の悪さを感じてしまったが、更に身を痛めつけるよう”3年目の頭痛薬”を畳み掛けると、ここから怒濤の展開が始まった。”アボガド”で勢い良くフロアに噛み付けば、集中力の塊と化していたオーディエンスのリミッターが完全に破壊され、”そのTAXI,160km/h”の登場と共に突き上がる拳と、沸き起こるシンガロング。極めつけは”泥んこドビー”だ。♪ドドパッパーとイントロのリズムに合わせたハンドクラップも響く中で光村が<転がせろ/俺を転がせろ>と歌いながらフロアにダイブ!衝動的で捻くれていて、どこか危険な空気を曝す。それがインディース時代のニコであると、当時を回想させたのだ。

ところが、今宵、赤坂の地に捧げられた”image training”が、ひときわ輝きを放っていた。ライブも後半に突入し、ようやく登場した唯一のポップナンバーが、逆に、明るさを拒む当時のニコを映し出す。しかし今では、スタジオからの練習帰りの光景を歌う、曲本来のみずみずしさも素直さも、何一つためらうことなく鳴らしていた。ラストの”雨のブルース”は、まるで光村の独白にも聞こえる<幸せになろう/誰より幸せに>という言葉が、オーディエンス1人1人に届けられたことで、過去と現在、その先にある未来を繋ぎ止める。そんな瞬間が訪れる、幸福なエンディングだった。

若干20,21歳で早熟な2枚のミニアルバムを完成させたニコが、当時から非常の潜在能力の高いバンドであったことを私は断言できる。けれど、本来ニコは並々ならぬ努力をしながら経験を積み力を付けてきたバンドであり、その全てを物語っていたのがアンコールの”マシ・マシ”。これが本当に素晴らしかった。シンプルな歌詞から沸き立つポジティヴなエネルギーに、説得力という言葉以上の絶対的な力が感じられ、自力で切り開いた現在地は「ここだ」とニコは指し示したのである。そして、年に一度しか聴けない”1125のテーマ”が始まると、誰もがこの瞬間を待ち侘びていたかのような盛大な祝福感が溢れ出した。その時、今回のライブはメンバーはもちろんだが、会場に集まった全ての人にとって、かなり特殊なライヴであったことに改めて気付かされたのだ。



***

私にとって「1125/2016」は通常のニコのライブよりも、かなり労力を強いられた時間だった。ノスタルジーを味わうシーンもあったが、圧倒的に2016年度版の青盤と赤盤を堪能したという気持ちが強く、特に”image training”と”雨のブルース”はかなり胸に迫るものがあった。曲の本質部分が放されたことで、明るさや幸せを歌う自分自身を肯定出来たのではないかと思う。また、重ねた年齢やキャリアに比例し、歌や演奏が強靭になったからこそ、今のニコと内面的脆さが魅力の曲との間に多少違和感を感じたが、それすら自然なことであると納得できるくらい、10年という時の流れを大いに体感できた。

「やってみたい」という好奇心から始まったライブとは言え、蘇る記憶の中で得られた全てが糧になる。

青盤と赤盤を発売した翌年(2007年)、ニコはミニアルバム『How are you?』でメジャーデビューを果たし、今年で10周年を迎える。そして、彼らは一つのその時代をオーディエンスと共に確かめた後で、始まろうとしているアニバーサリーイヤーを迎えたかったのだろう。真っ暗闇の夜空の下で、孤独を歌い続けてきた時代が永遠にニコの始まりであり、過去は姿かたちを変えることなく残っていくものである。だからもう、その全てを受け入れた上で、今の自分達に一番似合う音楽を鳴らしていけばいい。そして、真っ新な気持ちで私も彼らと向き合っていきたい。




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by musicorin-nirock | 2017-02-01 22:12 | LIVE | Comments(0)

2016年個人的ライヴ総括

今年2016年で一番多くライヴを観たバンドはGRAPEVINE(Vocal田中さんソロステージ含む)でした。その中でもアルバム『BABEL,BABEL』を引っさげての全国ツアーは「こういうライヴがずっと観たかった!」という個人的にドンピシャなライヴで、ここ数年観てきたツアーの中でも飛び抜けて良かったです。皮肉だけどポップだし、尖っているけど愛を歌う『BABEL,BABEL』の楽曲を中心にシリアスな側面を見せつつも、突如ゴン太くんが登場したりとくすっと笑えるネタも仕込まれつつ。そういった、弛緩と緊張が繰り返されるセットリストが、いかにもバインらしかった。また今回のツアーでは本編でMCをなくしたことで、より一層豊かな音世界を描けていたように感じます。逆にアンコールで田中さんはしゃべり倒すという(笑)あとは、初期楽曲を披露してくれたのも嬉しかった。バインは洋楽的なアプローチがほとんどで、ロックバンドとは言ってもロックミュージックをだけやっているわけでもなく、トレンドよりも自らの美学を磨き、独自のスタイル構築してきたバンド。今回のツアーでは、その姿勢を貫く姿がロックバンドとしての一つの在り方であることを、まじまじと見せつけられました。特にフェス等で色々なバンドのライヴを観ながらバインを観ると、彼らは本当に希有な存在だなと強く感じます。

次点はNICO Touches the Walls。2015年11月に古村のアクシデントが起こってしまってから、光村・坂倉・対馬の3人で1125の日ライヴを開催、初の大阪城ホールワンマンライヴは来年に延期となり年末のイベントは出演キャンセル・・・からの年明け三度目の日本武道館公演「東の渦」、2016年3月にアルバム『勇気も愛もないなんて』がリリースされ「孤独と夜」から「勇気と愛」を歌うバンドへのモードチェンジ、アルバムツアーにフェスト、そして5月6日に無事に迎えることが大阪城ホール公演「西の渦」・・・と文字打ってるだけでも息苦しくなるくらいに、昨年末から今年の上半期にかけて怒濤の日々をバンドもファンも過ごしていたと思う。私自身、上半期はニコに対してシリアスでしたね。「孤独と夜」から「勇気と愛」への変化は、今となっては自然なことと受け入れているけど、当時の私はニコがモードチェンジした理由を見つけようと、ライヴを観て確かめることに必死でした。でも、この約半年間で4人を良く知ることもできた。また4人のニコであることへのプライドだったり、メンバー間の信頼を今年は強く感じました。なので、今年のベストライヴを選ぶのであればやっぱり「西の渦」。あの日の古くんが見せた笑顔も目に涙をにじませていた顔も忘れられないです。

青春時代の懐古も多かった。UA 、THE YELLOW MONKEY、IN A LIFETIME(トライセラトップスとGRAPEVINEの対バンツアー)にThe Birthday。高校から大学時代にかけての青く甘く苦い思い出を懐かしむ時間でしたね・・・でも、当時からの憧れの人達が素敵に歳を重ねられていて、変わらずライヴのステージに立っていてくれることって、今を生きるエネルギーになりました。特に8月にTHEE MICHELLE GUN ELEFANTの解散ライヴを映画化した『THEE MOVIE-LAST HEAVEN 031011-』観たことでようやく観に行く決心がついたThe Birthdayは本当に感慨深かった。

そしてフェス。まずは、ARABAKI ROCK FEST。今年は最高に楽しかった。私が好きなバンド全て網羅できる面子が出揃ってしまってて結果的に観ることが出来なかったバンドもあったくらい。そこで観たGLIM SPANKEYがめちゃめちゃ渋いロックンロールを鳴らしてて!来年ワンマン行きたいですね。久しぶりに観たASIAN KUNG-FU GENERETIONも流石の貫禄があって凄く良かった。雨に打たれ寒さに震えながら観た奥田民生だったり、椿屋四重奏ぶりに観た中田裕二の色気に動揺したり、BRAHMANは先輩方目の前にしたTOSHI-LOWの素顔を見た気持ちになったり。今のところ一番好きだなARABAKI。今年始めて行った中津川 THE SOLAR BUDOKANは、もうね景色が本当に美しくて(夕焼けが)!!心身共々、かなり癒やされたフェスだった。ただ交通の便がちょっと不便なのが難点だけど、それさえクリアできたら行く価値はあります。音も良いし!

で、今年観てきた40本の中で一生忘れることはないであろうライヴは、9/13 the HIATUSの「Hands of Gravity Tour 2016」STUDIO COAST公演。私の中では、あの伝説の日本武道館公演を越えてしまいましたね。彼らについては、別途書こうと思っています。

最後に毎年思うことだけれど、私は好きなバンドがはっきりしている分足を運ぶライヴはどうしても偏りがちだだし、あと体調不良で飛ばしてしまったライヴがあったことをかなり反省。でも振り返ってみたら、Suchmosや夜の本気ダンスといった若手から、リップスライムという大御所かつ観たことのなかったジャンルまで足を伸ばせたし、念願のTweedyとマニック・ストリート・プリーチャーズも聴けたし少しは冒険できたかな。来年以降は誰のどのライヴに行くかは、しっかり吟味した上でを決めようと思います。そして、来年も素晴らしい音楽と共に駆け抜けます!(その前にCOUNTDOWN JAPANがあるけど!笑)

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by musicorin-nirock | 2016-12-27 22:45 | COLUMN | Comments(0)

1125/2016

NICO Touches the Wallsが毎年11月25日に開催している「1125(イイニコ)の日ライヴ」(以下1125)。その去年の1125について書いたブログが未だに読まれているようで「ライヴレポか?」と期待して訪れて頂いた方、去年私はチケット取れない組でした。今更ながらすいません。

さて今年の1125のテーマは、インディーズ時代にリリースされた2枚のミニアルバム『Walls Is Beginning』通称青盤と『runova×handover』通称赤盤を再解釈。青盤に収録された曲は近年のライヴでも披露されることは割とあったけれど、赤盤に関してはライヴで聴いたことない曲が後追いリスナーの私にとっては半分以上。それでも、この2枚、特に赤盤はNICOのアルバムの中で一番好きです。良いんですよ、ロックンロールにメッセージなんて無くて。とにかくヒリヒリしていて、自墜落で排他的なNICO。最高じゃないですか。ただ、当時のライヴ映像を観ていると、メンバー皆、なんだがとっても背伸びしてるように見える。

MUSICA最新号に掲載されているVo&G光村龍哉による単独インタビューで、彼は今、自分ベースで音楽を続ける重要性を感じ、その意志を力強く述べています。『今の俺は、自分が作った曲を自分で聴いて楽しくなりたいんですよね』と。しかも昔の曲を演奏すると疲れてしまうという本音まで。なのに、今回の1125は青盤と赤盤の再現。1125はファン感謝祭でもあるので、今もなお人気のある2枚のアルバムを演奏してくれる、その気持ちに応えてくれた想いはありがたく受け取りたい。でも、本当にそれで良いの?

NICOほど原点と向き合い続けてきたバンドを私は知りません。ロックバンドがロマンを描けるのは、様々な過去を乗り越えていくために、後ろを振り返らず、突き進んで行くから。だけどNICOはちょっと特異で。彼らは原点、つまり過去を見つめ直さないと、前に進むことは出来なかった。なぜなら、若くして飛び出してしまった大舞台以降、茨の道を歩むことになってしまったから。そんな自分達の過去を、なかなか受け入れる事ができなかったから。彼らは後ろを見つめながらがむしゃらに進むしかなかった。そして今、そこからやっと解放されたのだから、もっと自由に、バンドの現在地を大いに鳴らしていくべきなのでは?

…という気持ち悪い想いを抱えたままで25日迎えても仕方ないから、2枚のアルバムを冷静に聴いてみたり、光村のブログを遡って読んでみたり。そして見えてきたことがあります。

今年2016年は、青盤と赤盤のリリースから10年目。そんな記念すべき年に開催される1125は、その節目を持って「バンドの原点を見つめ直す」という意味合いだけでは無いんじゃないかと。私が今回のライヴで一番重要だと思うのは「2枚のアルバムの融合から成る世界を完成させる」こと。さらに突っ込んで考えていくと、年始に光村がTwitterで「いつかやりたい!」と呟いていたロックオペラの存在が、ほんやりと浮かび上がる。

時間があったら2004年~2006年あたりの光村のブログを、1125に行かれるまでに読んでみたら、今回のライヴかなり楽しめると思います。アルバムの歌詞が当時の彼の頭の中、そのままです。だけどされど10年。演奏技術、歌唱力、表現力、ミュージシャンとしての自我の芽生え、そして20代から30代を迎えたことからの精神的な成長などが確実に+αされ、しかも楽曲の傾向からして実にアーティスティックな時間に、今年の1125、なると思います。

これはあくまでも私個人の推測です。聴く人によっては思い出深い曲が始まれば懐かしい気持ちが生まれるだろうし、きっと今回のテーマ決定の意図もMCで話してくれるだろう。何よりライヴが真実なので、あまり強気に発言はできないけれど…。

NICOには本当に振り回されているなと思うし、それがこのバンドの面白さなのかな。ただもう最近は、昔のNICOが良いとか今のNICOが良いとか天秤に掛けていること自体がナンセンスだと感じていて。どちらにせよ、既存曲のライヴとは言え、新たな出会いになるかもしれない。

当日、遅刻だけはしないようにします。と言うことで、1125まであと3日。


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by musicorin-nirock | 2016-11-22 21:34 | MUSIC | Comments(0)

10/4 NICO Touches the Walls @豊洲PIT「『弱虫のロック論2(仮)』リリースパーティ」





今から2年前、2014年の2月。NICO Touches the Wallsは東京・原宿にあるギャラリーを貸し切り、篭城型ライヴ『カベニミミ』を敢行した。1ヶ月間週5でステージに立つという前代未聞の挑戦。そして、同時期にリリースされたベストアルバムに収録され、翌月シングルとしてもリリースされたのが「ローハイド」という曲である。

この曲の主人公はNICO Touches the Walls自身だ。

自ら嵐に打たれに出掛けていったような日々を<駆け抜けろ>と歌い、後に二度目となる日本武道館公演のリベンジを果たし、大きな飛躍を遂げることになるニコの濃厚な物語のはじまりの歌でもある。

10月4日、音楽評論家・平山雄一氏が自身の著書の発売を記念し東京・豊洲PITで開催された『「弱虫のロック論2(仮)」リリースパーティ』で1曲目にニコが演奏した曲は「ローハイド」。それは原曲とは一味も二味も違う、素晴らしいアレンジが施されていた。

荒野に吹く風らしき音を流しながら、荒いアコースティックギターを掻き鳴らし、光村龍哉(Vo&G)は歌い始めた。抱える不安や孤独感を、ただ吐き出すように歌うのではなくて、真摯に向き合い受け止めていくような逞しい歌声だ。サビに近づくとダンダンダンダンと力強くバスドラが響き渡り、その歌声は勢いを加速させた。

  駆け抜けろ この荒野 
  独裁者 俺を解き放てばいいさ
  準備オーライ? 準備オーライ?
  ろくでもない やんちゃな夢 追いかけたい

  準備オーライ 準備オーライ
  いざローハイド

1番が終わるタイミングで、耳なじみのある煌びやかなギターのイントロが始まる。瞬く間にフロアに広がる多幸感。音の光の中へと吸い込まれて行くオーディエンス。私の目の前には、とても美しい景色が広がっていた。

曲を明暗に分けた今回のアレンジには、強い訴求力があった。
何より、バンドの軌跡の裏側にあるものを隠そうとはしないニコの姿勢から、彼らの本質を見た気がした。

***

振り返ってみれば、「ローハイド」をリリースしたばかりのニコはただの弱虫だった。

先に述べた『カベニミミ』も、若さと勢いがあったからこそやり通せたもので、精神的・肉体的な疲労やストレスを考えれば、誰もが無謀だと言う挑戦だ。しかし、なんとしても当時の現状からニコは脱却したかったのだろう。『カベニミミ』が、バンドをさらにタフにしたことは事実であるが、敢行する決断の裏側には、大きな危機感もあったのではないかと思う。その後も相変わらず遠回りを繰り返していたが、その分何度も脱皮できたからこそ、楽しさと、ロックバンドとしての説得力を感じさせるライヴができるようになった。そして、ニコの音楽が確実にリスナーの心を掴み、生きる希望や勇気を与える存在へと成長していることは、最新アルバム『勇気も愛もないなんて』や、シングル「ストラト」を聴けば、一目瞭然である。

私は『「弱虫のロック論2(仮)」リリースパーティ』というイベントタイトルを見た時に、ニコがこのイベントに呼ばれたことと(大袈裟ではあるが)良い意味で運命的なものを感じた。その時はただ、決定的なものを掴んだわけではなくて、ぼんやりとそう感じていただけなのだが、この「ローハイド」を聴いた時に確かな理由が見えてきた。弱虫の決断は、バンドの運命を変えた。そして彼らの音楽は、リスナーの日常に光を照らし続けている。これは、弱虫が手に入れた最大の強みであり、ロックバンドとしての然るべき姿だ。

また、この日は暫くライヴで披露されていない、活動初期の楽曲も披露された。スタイリッシュなギターのカッティングをフックとなり、ゴリっとしたの低音が絡む都会的なグルーヴで沸かせた「anytime,anywhere」や、素朴な言葉を光村が色っぽく歌い上げた「梨の花」など。聴いていると、メンバーの20代前半だった頃の姿と重なり合う瞬間もあったが、ステージに立っていたのは音楽とフラットに向き合う姿が自然体なグルーヴを生む30代のニコだった。

残念ながらイベントの途中で私は離脱せざるを得なかったのだが、また来月、年に一度のあのお祭りでニコと再会したい。そして、新たな季節が訪れているニコを、これからも見届けていきたいと思う。


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by musicorin-nirock | 2016-10-06 21:48 | LIVE | Comments(0)

1/8 NICO Touches the Walls LIVE SPECIAL 2016 ”渦と渦~東の渦“@ 日本武道館

     
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2006年1月8日、NICO Touches the Wallsは東京・下北沢にあるライブハウス「下北沢club 251」にて初めてのワンマンライヴ『成人前夜』を開催した。その日、集まったお客さんは264人。それから10年後の2016年1月8日、彼らが立つステージは3度目の日本武道館だ。過去2回の武道館公演『チャレンジ』と『リベンジ』を経て、集まった約8,000人のオーディエンスを目の前に掲げたテーマは『アレンジ』。「武道館を俺達色にアレンジしてやります!」と冒頭のMCで意気込む光村龍哉(Vo&G)の言葉のとおり、鳴らされるバンドサウンドと共にこだわり抜かれた映像や照明を駆使しながら、一曲一曲の背景を描く。結果的に、武道館は彼ら一色に染め上げられてしまい、まるで『NICO Touches the Walls』という一本の映画を観ているような、とても丁寧なライヴだった。何よりこの『アレンジ』こそ今ではNICOの個性でもあるが、ほぼ原曲に近いままで披露された曲も一層の輝きを放っていたのは、ここ数年間の活動による精神的な成長が大きく関わっているからだろう。

また、11月に右手を負傷した古村大介(G)の復活ライヴでもあった今回の武道館。ステージの上は無事4人で立てたことへの安堵に溢れ、メンバー間で目配せし合う場面も通常より気持ち多かったように思う。逆に、どことなく伝わる緊張感も、NICOがこの4人でなくてはならない理由の一つなのだと実感した。MCで『成人前夜』から10年経ち、今武道館に立てていることを振り返りながら笑顔で「続けてきて良かった!」とこぼした光村からは、これまでのバンドの軌跡が肯定され、ずっと夢に描いていたようなライヴができることへの喜びが感じられた。そして、全体的にどっしりとした安定感ある演奏だったことも印象強く、本格的にNICOが30代に突入したことを気づかされたライヴでもあった。

***

場内が暗転すると、ステージ中央に設置された白い筒状の幕に、アニメーション作家・加藤隆氏によるアニメーションが流れ始めた。ハットを被った青年(光村に似ている彼)が“口笛吹いて、こんにちは”のメロディを口笛で吹きつつ街を闊歩していると、突然、渦に吸い込まれ降り立ったのは「渦の街」。そして、先にスタンバイしていたメンバーによって“渦と渦”のインストVer.が披露される中ゆっくりと幕は上がった。堂々の開幕宣言は『リベンジ』を果たせたからこそできる“天地ガエシ”。ところが“Broken Youth”で始まった前回の武道館のように、のっけから客席に噛みつくような勢いがなく、ステージに立つメンバーの様子はどこか物腰が柔らかい。それは続く“まっすぐなうた”も同じだった。先陣切ってバンドを引っ張る対馬祥太郎(Dr)がパワフルなドラミングを響かせるが、アッパーなビートのままに駆け抜けるのではなくて、メンバー全員、一音一音を確実に聴かせることを強く意識しているように見えた。そして、骨太なバンドサウンドに乗る健気な言葉がひたすら胸に迫ってきた“ランナー”は、音楽で食べていくことを夢見ていた10代の自分達に捧げられているような気がして、一皮むけたNICOの姿に少し感動してしまった。すると、聴きなじみのあるキラキラとしたエレキのイントロが…そう、“ローハイド”のイントロが会場いっぱいに広がり、古村と坂倉心悟(B)がステージ前方まで歩み寄ってきた。この日、私の座席はアリーナ指定席の前から2列目。ちょうど目の前が古村の立ち位置にあたる場所だった。軽やかなステップを踏みつつ笑顔で歌詞を口ずさみ、ギターを弾きまくる姿からは、バンドやギターが大好きであることがわかる。そして、感極まる寸前の表情すら隠そうとはしていない。そんな古村が鳴らすフレーズには、様々な想いが込められているようで、私は涙を堪えることができなかった。

ここでいったんMCが入り、怒涛のメガミックスがスタート。“バニーガールとダニーボーイ”を皮切りに、インディーズ時代の名曲“泥んこドビー”、ライヴの必須アイテム“N極とN極“が投下され、フロアの熱気がぐんと上がる。また過去2回の武道館でも歌われてきた“Broken Youth”もここにて登場。自らの歴史を刻んだ証も忍ばせるところが、このバンドの憎めない性格でもある。変拍子の原曲とはガラリと雰囲気を変え、落ち着いたディスコビートに合わせ光村が妖艶な歌声を放った“ストロベリーガール”、古村のロカビリータッチなエレキを合図に躍動感極まる豪快なアンサンブルをきめた“THE BUNGY”ときて、個人的にメガミックスで一番感銘を受けたのが“夜の果て”だ。ひっそりとした静寂を感じさせる前半から、疾走感溢れるビートに切り替わり、バンドさらに加速する。ミラーボールが回り始め、会場一帯に光の粒が広がる中迎えたクライマックスは<無情な夜空の星に吸い込まれて揺れてる>主人公が闇から解放される心情を客席に体感させていくようで、非常にドラマチックな時間だった。ラストはジャジーなギターが色気で魅せる“行方”で大人っぽい締めくくり。活動初期の曲中心で構成され、今やNICOのライヴでは滅多に聴けない曲の登場が続き、想像以上の聴きごたえがあった今回のメガミックス。他サイトのライヴレポートによると約40分にわたっていたらしく、ノンストップで歌いこなした光村の怪物っぷりにも驚嘆した。

再び入ったMCでニューアルバム『勇気も愛もないなんて』のリリースが発表され、鶏の映るアルバムジャケットも公開。撮影現場でのエピソードなど和やかに話しつつも、なぜ「勇気と愛」を伝えたいのか?という経緯を話し始め、そして、集まったオーディエンスへのお年玉としてアルバム収録曲を2曲披露。1曲目は突き抜けるような爽快感を携えた、ポップで軽快なナンバーで、2曲目はアコギが哀愁漂わせる、しっとりとした大人っぽい曲だった。

ステージの背後には巨大なスクリーンが設置してあり、そこに再び加藤隆氏のアニメーションが流れ始めたのは“TOKYO Dreamer”の時だ。オープニングで登場した青年が街を歩いていると<32連のジオラマ>や、ダンスする少女と出会う。前回の『リベンジ』では、NICOは新たな決意表明としてこの曲をアンコールで演奏している。しかし『アレンジ』で聴かせたものは、このファンタスティックな世界を包み込むような、温かみのあるサウンドだ。そして、スクリーンに今宵一番熱い名シーンが映し出されたのが“ニワカ雨ニモ負ケズ”の時だ。炸裂する光村のスキャット。光村から一切視線を逸らさずエレキを弾き続けた古村の集中力。互いに火花を散らし合い、売られたケンカには果敢に挑み合う壮絶な間奏シーンに、私は思わず息を呑んだ。そして、捻くれ者のロックンロール“バイシクル”と、色褪せることないフレッシュさで放たれた“ホログラム”という彼らの王道を畳み掛け、いよいよ本編ラストの“渦と渦”が登場した。この曲に潜む「人を巻き込ませる威力」は今回の『東の渦』と、5月6日大阪城ホールで開催される『西の渦』で発揮される。その第一弾として渾身のパフォーマンスを見せた4人は、武道館を大いに唸らせた。思い残すことなくすべてを出し切ることができたのだろう。光村のギターの弦は、ここで切れた。

鳴りやまない拍手と歓声に迎えられステージに現れたメンバーは、生まれ年の「1985」がプリントされたスウェットを揃って着用。もちろん、アンコールの1曲目は“僕は30になるけれど”。威勢の良いアコギに合わせオーディエンスのハンドクラップが盛大に響き渡る。2曲目の“手をたたけ”は久しぶりのバンドVer.。ハンドクラップに加わるオーディエンスのシンガロングと共に、今この瞬間を鳴らしていく。そしてアンコールラストは、アルバムに収録予定の、まだアレンジも決まっていないという新曲を光村の弾き語りで披露された。爪弾かれるアコギの優しいメロディの上に乗るのは、初見でも脳裏にその情景が思い浮かび上がるほどの恋する切なさが胸に迫る、どストレートなラブソングだった。

「孤独と夜」を歌い続けてきたNICOが「勇気と愛」を伝える選択。これは音楽家として生きる彼らの、とても大きな成長だろう。歌い始める前、自分の「捻くれた部分も(曲に)出していきたい」とすら正直に話した光村は、どこかほっとしている表情にも見えたが、産まれて間もないラブソングを一人武道館のステージで堂々と弾き語ること自体、ミュージシャン人生を全うするために何か大きな決断を下した、その証に見えた。個人的な事を言えば、孤独と向き合い、はち切れそうな胸の内を吐き出すNICOの青きブルースが好きであり、アンコールラストのラブソングには正直、動揺した部分もある。しかし、私にとって初めて観たNICOのワンマンライヴであった、2012年開催の『1125(イイニコ)の日ライブ』から約3年間、変わり続けるNICOの姿を見届けてきた中でも、今回の日本武道館公演が一番泣けて、私は心の底から感動したのである。

私の思う今のNICOの魅力とは、得たもの全てを音で表現できるポテンシャルの高さと、泥臭い部分まで隠さず見せてくれるようになった素直さだ。そして、そんな彼らから多くのものを私が受け取ってきた事実が、今「信頼」として蓄積されていることを今回の日本武道館公演後に実感し、だから、「勇気を愛」を歌う彼らが見たいと切実に思ってしまうのだ。ニューアルバム『勇気も愛もないなんて』の発売日は3月16日。それに先駆け同月4日からは全国ツアーもスタートする。勇気と愛を伝える使命を掲げたNICOの2016年は、明るくて楽しいものになるだろう。流行り廃りも関係ない、聴き手の心に永遠に寄り添い続けてくれる「本物の音楽」を彼らは届けてくれるはずだ。

SET LIST
1 天地ガエシ
2 まっすぐなうた
3 ランナー
4 ローハイド
5 バニーガールとダニーボーイ
6 泥んこドビー
7 N極とN極
8 Broken Youth
9 ストロベリーガール
10 THE BUNGY
11 夜の果て
12 行方
13 新曲
14 新曲
15 TOKYO Dreamer
16 ニワカ雨ニモ負ケズ
17 バイシクル
18 ホログラム
19 渦と渦

ENCORE
1 僕は30になるけれど
2 手をたたけ
3 新曲


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by musicorin-nirock | 2016-01-24 10:44 | LIVE | Comments(0)

NICO Touches the Walls 3度目の日本武道館公演に寄せて

2015年がNICO Touches the Wallsにとって大飛躍の一年になることに、間違いはなかったのだ。

2月。彼らにとって大きなターニングポイントとなったアコースティックアルバムが発売され、憧れのビルボードライヴのステージに初めて立つことができた。そして5月からは2年ぶりの全国ツアーをスタートさせ、6月には『まっすぐなうた』9月には『渦と渦』というバンドの新境地を切り開く2枚のシングルを発売した。12月23日には初の大阪城ホールでのワンマンライヴが開催され、年末のロックイベント「COUNT DOWN JAPAN 15/16」では、最終日である12月31日、EARTH STAGEで新年一発目のオオトリを飾り、いよいよ迎える2016年1月8日、三度目の日本武道館公演へと襷を渡す…。

そんな夢のようなバンドストーリーを彼らは描こうとしていたのだから。

11月。古村大介(G)が右手を負傷するという想定外の出来事が起こった。12月23日の大阪城ホール公演は年明け5月6日に延期となり、「COUNT DOWN JAPAN 15/16」については出演をキャンセル。そして、11月25日の『1125の日ライブ』は光村龍哉(G)、坂倉心悟(B)、対馬祥太郎(Dr)の3人で行うという。しかし、この『1125の日ライブ』の開催日寸前まで、私達リスナーには、実際のバンドの状況の多くを知らされることはなかった。たくさんの人が不安や不満を抱えていたと思うが、今改めて考えてみると、それだけ多くの時間がこのバンドには必要であったと納得する。年内から年明けにかけてのスケジュールを大幅に変えざるを得なかっただろうし、メンバー全員と彼らを取り巻くスタッフ全員が、気持ちを持ち直すためにもやはり時間は必要だ。

そして、11月25日に無事開催された『1125の日ライブ』については、光村龍哉(Vo&G)が自身のブログに、ライヴ当日の様子や、ライヴ前の混沌とした空気まで、事細かに書いている。バンドメンバーの一人欠けるということは、当然ながらその穴埋めが必要となる。音作りも一からやり直す必要も出てくるだろうし、残されたメンバー一人一人に負荷が発生する。また、今回は一日で2公演(東京と大阪)行うというハードスケジュールである。このような状況下に立たされた時、「メンバーの一人が怪我をしたので、今回は残念ながら中止にします」「代わりにサポートメンバーを入れます」という決断を下すバンドも少なくはない。

12月に入ると、バンドの公式Twitterの中で古村による日本武道館公演までのカウントダウンが始まった。時には古村以外のメンバーからの呟きも入り、毎日発信されるようになっている。ライヴのキャンセルが続いてしまったことで、バンドとリスナーを繋ぐ唯一のツールに、私は始め戸惑いを感じてはいたが、1月8日が近づいてくるたびに、Twitterから届く彼らの本音に胸を打たれっぱなしである。

12月31日、この日からやっとギターを弾き始めたという古村のツイートには、誰よりもたくさんの涙を呑んだであろう彼の苦悩を感じざるを得なかった。そして、年が明けた1月1日。「COUNT DOWN JAPAN 15/16」で彼らの代打を務めたBLUE ENCOUNTのステージを、居ても立っても居られず観に行っていたという光村のツイートからは、先輩としての優しさとプライドを強く感じた。

もう、決して若手とは言えないNICO Touches the Wallsの長いキャリアを辿れば、良くも悪くも多くの「壁」にぶつかってきたが、それを常に4人で乗り越えている彼らの「意地」と「根性」を、私は一人のリスナーとして誇りに思っている。しかし、チャレンジでもない、リベンジでもない、三度目の日本武道館公演は、彼らがプロのバンドマンとして、今回の出来事をどのように乗り越えて来たのか、そして新しく生まれ変わった姿を、どうオーディエンスに見せてくるのかが問われる、今後の彼らを占うような責任重大なライヴである。リラックスした気持ちでライヴに臨もうと思っていたが、やはり、私は緊張をしている。しかし、その緊張が解けたときには、涙も笑顔もごちゃ混ぜで、会場中が喜びに満ち溢れる、そんな夜になるのだろう。私は、そう信じている。


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by musicorin-nirock | 2016-01-04 10:57 | COLUMN | Comments(0)

2015年の『1125(イイニコ)の日ライブ』について思ったこと。

今年はもうNICO Touches the Wallsについての記事は書かないだろうと思っていましたが、やっぱり書いてしまいました。

11月25日、『1125の日ライヴ(通称イイニコ)』が無事終わりました。今年は東京・下北沢CLUB251と大阪・梅田Shangri-Laの同日二ヶ所でライヴを行うという、またまた前代未聞の挑戦に挑んだわけですが、ご存じの方もたくさんいらっしゃるように、ギターの古村くんが怪我の為に今回イイニコには参加していません。なので光村くん・坂倉くん・対馬くんの3人体制でやるとのアナウンスがありました。

私は最初アコースティック編成でやるのかな~とか色々と想像してみたのだけど、やっぱり場所が場所だし、2006年1月8日に開催された『成人前夜』の再現ライヴをやるんじゃないかとうっすら思っていました。

残念ながら私は今回行けなかったので、当日のセットリストはライヴ後Twitterで知りました。内容は初期のナンバー中心に、コンパクトにまとめられていたもので、下北沢のセットリストも梅田のセットリストも見て「ああ、やっぱり」と納得。同時に私のタイムラインは下北沢のステージも、梅田のステージも大絶賛する言葉で溢れ返っていました(そのタイムラインをじっくりと読みながら、泣いてしまったのはここだけの話)。う~ん、やっぱり行きたかったなぁ。ただ、セットリストを見れば見るほど「4人でこのニ箇所のステージに立ちたかったよね」という悔しさ残ってしまったのが本音でした。

今年のイイニコはメンバー全員が30歳になって初のワンマンライヴであり、今年12月23日に開催予定であった初の大阪城ホール公演と、年明け1月8日に控えている3度目の日本武道館公演を行う前の最後のワンマンライヴでした。また、9年前の自分たちを、30歳になった今の自分たちで演じることで、大ステージを目の前にした自らに発破を掛けるライヴであったように感じます。『初心忘れるからず』と言うし。レアな曲を披露している点では、今まで通りのファン感謝祭でもあるけど、それ以上に、バンドの節目ともなるようなとても大きな意味があったと思います。

あと、私自身がこうしてライヴレポート等書いてると、とにかくこの4人でいることの必然性をとても強く感じるようになったんですね。だから、なおさら「4人でこのニ箇所のステージに立ちたかったよね」と、悔しく思ってしまったのです。

私は先日、BRAHMANの結成20周年イベントに行って、バンドが長く続いていくこととは一体どういうことなのかを、BRAHMANと共演したバンドのライヴから教えてもらいました。そして、「バンドが長く続いていくこと」を改めて考えてみたけれど、どのバンドも山あり谷ありあって当然で、続くことを願っていても続けられなくなってしまうバンドある。しかも、そういう事態がおこる可能性がないバンドは、存在しない。だから、好きなバンドがこうして続いてくれることって、前に他のバンドの記事でも書いたけど、本当にそれだけで「奇跡」。

古村君の怪我のことを私はかなりシリアスにとらえてしまって「イイニコやるっていったてどうなっちゃうの?」という苛立ちに近い不安も少ながらずありました。しかし、イイニコを「3人でやる」と決めた決断、大阪城ホールの延期、年末カウントダウンイベントのキャンセルも、結果的にはNICO Touches the Wallsをより肉体的・精神的に強くしたと思っています。また、今回ステージに立てなかった古村君が手を怪我しているにも関わらず新聞を作り、来場されたお客さんには、それが配られたとか。きっと彼が一番悔しい気持ちでいっぱいなのに「何かしたい」という彼の気持ちには、ただただ感動してしまいました。そういうところが、このバンドの誠実さで、どんな形でも4人でいることを感じさせる、これがNICO Touches the Wallsなんです。

“渦と渦”の歌詞にもあるけれど<険しい道のり/裏切られっぱなし>だし、バンド名に壁が入っているから「壁を乗り越える使命を担っちゃってるじゃん!」と突っ込みたくもなるけれど、<まだまだまだ/くたばれない>って叫ぶ4人を、まだまだ私は見ていきたい。2016年1月8日、ちょうど『成人前夜』から10年目の、3度目の日本武道館が、今、心の底から楽しみです。


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by musicorin-nirock | 2015-11-26 21:06 | COLUMN | Comments(0)

9/22 NICO Touches the Walls@スペースシャワー列伝15周年記念公演“大大大宴会”~東の宴~

9月22日、新木場STUDIO COASTで開催されたスペースシャワーTV主催『スペースシャワー列伝15周年記念公演“大大大宴会”~東の宴~。出演アーティストにはメインアクトをTHE ORAL CIGARETS、グッドモーニングアメリカ、NICO Touches the Walls、the telephonesの4組が務め、ニューカマーアクトとしてHalo at 四畳半、Bentham、PELICAN FANCLUB、LILI LIMITが選ばれた。

NICO Touches the Walls(以下NICO)のライヴが始まる前、メインアクト4組のバンドが過去に回った『列伝TOURダイジェスト映像』が流れた。そのトップは『スペースシャワー列伝JAPAN TOUR 2007』に出演したNICO。当時メンバー皆22歳で、ライヴ中に当時を振り返る光村龍哉(Vo&G)曰く「毎晩飲んで喉をガラガラ」にしながらツアーを回っていたそうだ。“泥んこドビー”と“そのTAXI,160Km/h”を演奏する様子は、目の前にいるオーディエンス相手に斜め目線で突っ掛かり、20代前半ならではの青さを吐き散らす。ただ、若干22歳の青年達が組んだロックバンドにしてはどこか古風な印象も受けたのだが、ポップでメジャーなものではない表現で、音楽の世界に飛び込んできた彼らの姿勢は、当時から本物だったと私は感心してしまう。そして、この2007年のライヴ映像を観た直後に始まったのが、平均年齢30歳のNICOのライヴ。演奏時間も短く、今年の夏フェスで披露されているお馴染みのセットリストではあったが、ダイジェスト映像を目の当たりにしたことで、強烈なインパクトを私に与えたのである。

真っ白なシャツとデニムパンツに身を包みステージに現れた4人。1曲目に披露されたのは“まっすぐなうた”だった。<間違ってた/なんか全部間違ってた>。2007年のスペシャ列伝後にメジャーデビューを果たし、今日まで走り続けてきた長い長い時間のことを歌っているのかと思うと、なんてドラマチックな始まりなのだろうと感極まりかけたのだが、そんな私の気持ちをよそに「今のNICOは最強」「誰にも負ける気がしないぜ」と強気なMCで光村は客を煽る。古村大介(G)はステージ上を動き回り、奔放にエレキギターを掻き鳴らし続け、坂倉心悟(B)と対馬祥太郎(Dr)の強力なリズム隊がフロアをグラグラと揺らし、光村はギラギラとした視線を投げつけながら歌う。4人の情熱がビシバシ伝わるサウンドを全身で浴びていると、歌が上手いだの、演奏が上手いだの、そういったことは一切無視して、『自分達はロックバンドとしてどうありたいのか?』という、バンドマンとしての根本的な部分で勝負に出ているように観え、ライヴ後半に披露された“渦と渦”がえらい感動的だったのだ。

NICOには、あれもこれも自分たちのものにしようと蓄えてきた過去がある。そして、メンバー全員30代を迎える前に一度全て削ぎ落とせたことで、「あなたに歌を届けたい」という、バンドの使命を担うこの曲が、結成11年目にしてようやく誕生した。決して器用とは言えないバンドであり苦労も多かったと思うが、諦めずに走り続けてきたからこそ「今のNICOは最強」「誰にも負ける気がしないぜ」と他のバンドを目の前に堂々と宣言でき、言葉通りのステージが私の目の前で繰り広げられていた。その姿は、今回共演したバンドにも、大きな勇気を与えたはずだ。この勢いを止められる曲者は、どこにもいないのではないかと思わざるを得ない程、野心剥き出しの4人。2007年のスペシャ列伝ツアーを回る彼らよりもどこか若々しく感じ、始まったばかりの30代を期待させるものがあった。年末には初の大阪城ホール公演、年明けは三度目の日本武道館公演を控えている。新たな壁に4人がどう立ち向かい、どんなフィナーレを見せてくれるのか。今からとても楽しみにさせてくれる、素晴らしいアクトだった。

SET LIST
1 まっすぐなうた
2 手をたたけ
3 THE BUNGY
4 ニワカ雨ニモ負ケズ
5 渦と渦
6 天地ガエシ


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by musicorin-nirock | 2015-10-11 09:42 | LIVE | Comments(0)

“Howdy!! We are ACO Touches the Walls”LIVE at Billboard Live TOKYO / NICO Touches the Walls



NICO Touches the Walls 初のビルボードライブのLIVE DVD『“Howdy!! We are ACO Touches the Walls”LIVE at Billboard Live TOKYO』が遂に発売された。今年の2月、バンド初のアコースティックアルバム『Howdy!! ACO Touches the Walls』をリリースし、アルバムの再現ライヴでもあったステージの第2部の本編とアンコール、そして第1部のアンコールの模様が収録されている。

先日終了したばかりの『まっすぐなツアー』でも、光村龍哉(Vo&G)がアコースティックアルバムが彼らにとって、いかに大きな存在であったか、MCで力説していたことは印象深い。実際、このビルボードライヴ後に通常のバンドセットでの演奏を久しぶりに観た時(3/5新木場COASTで開催されたNICOフェスト) 、ステージに立ったメンバーの佇まいが見違えるほどに変わり、バンドサウンドも歌声も、よりリスナーに近い場所で鳴らされていたことに驚いた。

ひたすらバンドの過去と対峙してきた2014年。中でも、アコースティックアルバムの制作の過程で、自分達が産みだしてきた楽曲の素晴らしさに気付けた事が、とても大きな収穫だったのだろう。また、同年二度目の日本武道館にも立ち、バンドの節目をいくつか迎えることにもなった。その一連の流れの締め括りが、ビルボードライブになるのだろうと、DVDを観ながら私は思った。

アコースティックアレンジになると、曲本来の姿が顔を出す。そして、私達リスナーは、それまで見えなかった部分を知ることになる。今回のLIVE DVDの中で、光村が1人アコギを抱え弾き語った“バイシクル”は、個人的にアコースティックVer.を聴いた前と後で一番印象が変わった曲である。「圧巻」の一言に尽きる歌唱力。歌が上手い・歌が下手という枠組みを飛び出し、ただ、彼の中で燃え続けている熱い魂に触れたような、生々しい歌声。勢い良く坂道を駆け下りていくような爽快感あるギターロックの裏側には、歯を食い縛り、悔しさを飲み込み続けていた等身大のブルースが存在する。それを恥ずかしげもなく見せたことで曲に説得力が付き、リスナーとの距離感も更に近づいたのではないだろうか。

しかし、このバンドの面白さは、原曲とは一味違った世界を創造してしまうことだ。よって、アコースティックアレンジとはいえ、原曲よりも大幅に雰囲気が変わった曲ばかりである。また、メンバー4人で行うドラムセッションや美しいコーラスワークなど、メインパート以外にも力を入れており、一人一人のアーティストとしての成長もよくわかる。キャリアを重ね、進化を遂げている証ではあるが、観ていて嫌らしく映らないのは、彼らの根本にあるものが「音楽が好き」という純粋な想いだからだろう。憧れたビルボードライヴのステージに立つ4人を観ていると、会場に集まったお客さんよりも、まずはメンバー自身が誰よりも楽しそうなのだ。その空気感が、思いっきりわかるLIVE DVDになっている。

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by musicorin-nirock | 2015-08-01 10:47 | LIVE DVD

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