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2016年個人的ライヴ総括「 9/13 the HIATUS @東京・新木場STUDIO COAST」

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"the HIATUS 「Hands Of Gravity Tour 2016」 STUDIO COAST公演を観て"


音の鬩ぎ合いのような激しいアンサンブルも、ただ心に寄り添い続ける極上のバラードも存在するthe HIATUS5thアルバム『Hands Of Gravity』。

前作『Keeper Of The Flame』からは、約24ケ月ぶりのアルバムリリースとなった。その間the HIATUSは最初で最後の日本武道館公演を終え、細美武士(Vo&G)はもう一つのバンドMONOEYESを始動させた。MONOEYESが始まったことで細美は自分の二面性を表現できるようになり、バランスが取れた状態で新譜づくりに挑めたことが今作の鍵であることは、人情味溢れる豊かな彼の歌声を聴けば否応なしに納得できる。しかし、細美以外のメンバーであるmasasacksG)、ウエノコウジ(B)、柏倉隆史(Dr)、伊澤一葉(Key)にとっても、彼の充実を感じる傍らで、the HIATUSとの向き合い方が大きく変化する転機になったのだろう。彼らから生まれた新しいアルバム『Hands Of Gravity』では、一つのジャンルに囚われずオルタナティヴに突き進む潔さの中で、聴く者の胸を打つ珠玉のメロディが鳴っていた。しかし、スケール感のある楽曲が並ぶ今作を聴き続けていると、これが彼らの到達点とは言い切れないような、the HIATUSとは挑戦の場であり、1人のプレイヤーとして、また音楽そのものの可能性を拡大していく場所であることを証明しているように思う。

アルバムを引っさげ開催された全国ツアー「Hands Of Gravity Tour 2016」も後半戦に入った913日。東京・新木場にあるSTUDIOCOASTに私は向かった。715日、Zepp DiverCityで行われた初日のステージを観たときは、新たな旅の始まりを迎えた幸福感を放ちながら、完成度の非常に高いステージにかなりの衝撃を受けた。ところが、約3か月に渡る旅路で一度完成させたステージを自ら壊しに掛かり、再び創造していくプロセスを彼らは繰り返してきたのだろう。バンドサウンドも、歌も、精神性も、尋常ではないほど進化を遂げていた。オープニングからエンディングまで凄まじい熱気に溢れ、現時点での集大成のような開放感と愛情があった。

この日も細美は、「今日の俺、すげぇ面倒くせぇんだけど・・・」と苦笑いしつつも、真摯にオーディエンスと向き合い続けていた。「子供の頃から嫌われ者だった」と話した細美にとって、「ライヴハウスが大切なことを全部教えてくれた」場所であり、また、唯一自分が孤独ではないことを実感できた場所。だから、自分のステージを観にライヴハウスに来てくれたオーディエンスが何よりも大切で、フロアに向けて力強い言葉を紡ぎ続けていた。その姿には、今度は自分がここ(ライヴハウス)で大切なことを教えていくのだと、その役割を担っているかのような責任感すら感じられた。

しかしそれは、今始まったことではなかった。これまでに何度も細美の立つライブハウスに居合わせてきた私は、彼の言葉に救われてきた。ただ、この日だけは、彼の想いが不思議なくらい自然と自分の中に浸透する瞬間があったのだ。

そして、きっと私だけではなくて、STUDIO COASTに集まったオーディエンスの誰もが、この日のライヴに来た理由やthe HIATUSが好きな理由と、細美の想いと通じ合えたかのような特別な瞬間を、体感したのではないかと思う。ダブルアンコールが終わったにもかかわらず、鳴りやまない拍手に引き寄せられるようメンバーがステージに登場し、トリプルアンコールが始まったことが目に見えた大きな証であるが、つまり、『Hands of Gravity』のアルバムツアーという枠組を飛び越え、theHIATUSというバンドの本質にある深い部分と繋がり合えたということだ。細美を支え、理解し続ける4人のメンバーと共に創造する、the HIATUSの革新的で独自性の強い音楽性と、彼個人の生きる信念が共鳴したことで、覚醒を呼び起こし、観る者によっては人生観が変わってしまうような音響空間を創り上げることができたのである。そんな彼らの音楽性であれば、アリーナクラスの大会場ですら簡単に呑み込むことができるはず。だが、頑なに彼らがライヴハウスに拘り続ける理由は、実はこのステージの上にあったことを、私はこの時身をもって知った。


***


私には、目の前の現実から逃げるようthe HIATUSのライヴに通い続けていた時期がある。

失恋と仕事のストレスから体調を崩し、心のバランスまで取れなくなってしまったことを、とうとう認めざるを得なかった頃、偶然LIVE DVDTHE AFTERGLOW TOUR 2012』を手に取った。彼ら以外にも好きなバンドやシンガーはいたのだが、そこで聴いた細美の歌声には、音楽を聴き始めて20年以上感じたことのないとても不思議な力があった。「どうしてこの人の歌はこんなにも胸に響くのだろう?聴いているだけで、涙が止まらなくなるのだろう?」。彼の歌声は包容力があり、誰にも知られたくない、触られたくない心の細部にまで優しく届いたのだ。

以来、私は彼らを追いかけることに必死だった。2014年に発売された『Keeper Of The Flame』は、その年の一番回数多く聴いたアルバムであり、人生のベストディスクに確実に選ぶアルバムだ。アルバムツアーは勿論、彼らが出演するフェスにも足繁く通い、生命力溢れる彼らのステージを観ては癒しを得た。そして、孤独から解放され、失いかけていた生きる喜びを私は再び感じるようになった。彼らのステージの上には笑いだけじゃなくて、時に厳しさも存在することも知った。でも、だからこそ本物の優しさと、あたたかさが存在していた。

アーティストとオーディエンスの信頼関係というものを、私はあまり信じていなかった。特にMCに関しては、ライヴを盛り上げるために必要な道具でしかないと捉え、ステージ上でのアーティストの発言なんて、たいして気にも留めていなかった。なぜなら、アーティストからしたら私なんて、オーディエンスという大勢の人間の括りでまとめられた一人である。しかし、どこまでも本気で向き合ってくれる、the HIATUSと細美に出会えたことで、私のこの考えは一変したのだ。

ところが、このSTUDIO COASTでのライヴを観終えてしばらく経つと、私は落ち込んでいた。それは、薄々気が付いていたことなのだが、私の心の奥にある問題が何も解決されていないと、遂に現実に表れてしまったからだ。ライヴはとても楽しいし、居心地の良い場所である。でも当たり前だが、彼らが私の人生を直接変えてくれるわけではない。the HIATUSと出会ってからの自分の生き方は間違っていないと思いたいが、どこか甘い考えで生きていたことは確かで、私はそれを思いっきり悔やんでしまった。

それでも、自分が次の段階へ進みたかったら、この場所から一歩踏み出さなければならない。私達はずっと同じではいられない。それは、ミュージシャンが年齢やキャリアを重ね音楽表現が変化していくように、誰にでもその瞬間は訪れるのである。

STUDIO COASTのステージの上で、細美はライヴをDVDにすることは好きではなく、「今日は会場にカメラは入れてない」と言っていた。勿論ライヴ映像をYou TubeSNSに上げることだってしない。端から見るとただの頑固者に過ぎないが、今、私はその気持ちが理解できる。この日のライヴの全てを自分の中にずっと留め、一生忘れないでいようと誓った。そして、ピンと背筋を伸ばして、生きていこうと思った。年齢とか立場とか考えだしたら、正直きりがないけれど、それでも前を向いて自分自身を生きていくことに、恥ずかしさなんて必要ないのだから。







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by musicorin-nirock | 2017-01-07 15:45 | LIVE | Comments(0)

2016年個人的ライヴ総括

今年2016年で一番多くライヴを観たバンドはGRAPEVINE(Vocal田中さんソロステージ含む)でした。その中でもアルバム『BABEL,BABEL』を引っさげての全国ツアーは「こういうライヴがずっと観たかった!」という個人的にドンピシャなライヴで、ここ数年観てきたツアーの中でも飛び抜けて良かったです。皮肉だけどポップだし、尖っているけど愛を歌う『BABEL,BABEL』の楽曲を中心にシリアスな側面を見せつつも、突如ゴン太くんが登場したりとくすっと笑えるネタも仕込まれつつ。そういった、弛緩と緊張が繰り返されるセットリストが、いかにもバインらしかった。また今回のツアーでは本編でMCをなくしたことで、より一層豊かな音世界を描けていたように感じます。逆にアンコールで田中さんはしゃべり倒すという(笑)あとは、初期楽曲を披露してくれたのも嬉しかった。バインは洋楽的なアプローチがほとんどで、ロックバンドとは言ってもロックミュージックをだけやっているわけでもなく、トレンドよりも自らの美学を磨き、独自のスタイル構築してきたバンド。今回のツアーでは、その姿勢を貫く姿がロックバンドとしての一つの在り方であることを、まじまじと見せつけられました。特にフェス等で色々なバンドのライヴを観ながらバインを観ると、彼らは本当に希有な存在だなと強く感じます。

次点はNICO Touches the Walls。2015年11月に古村のアクシデントが起こってしまってから、光村・坂倉・対馬の3人で1125の日ライヴを開催、初の大阪城ホールワンマンライヴは来年に延期となり年末のイベントは出演キャンセル・・・からの年明け三度目の日本武道館公演「東の渦」、2016年3月にアルバム『勇気も愛もないなんて』がリリースされ「孤独と夜」から「勇気と愛」を歌うバンドへのモードチェンジ、アルバムツアーにフェスト、そして5月6日に無事に迎えることが大阪城ホール公演「西の渦」・・・と文字打ってるだけでも息苦しくなるくらいに、昨年末から今年の上半期にかけて怒濤の日々をバンドもファンも過ごしていたと思う。私自身、上半期はニコに対してシリアスでしたね。「孤独と夜」から「勇気と愛」への変化は、今となっては自然なことと受け入れているけど、当時の私はニコがモードチェンジした理由を見つけようと、ライヴを観て確かめることに必死でした。でも、この約半年間で4人を良く知ることもできた。また4人のニコであることへのプライドだったり、メンバー間の信頼を今年は強く感じました。なので、今年のベストライヴを選ぶのであればやっぱり「西の渦」。あの日の古くんが見せた笑顔も目に涙をにじませていた顔も忘れられないです。

青春時代の懐古も多かった。UA 、THE YELLOW MONKEY、IN A LIFETIME(トライセラトップスとGRAPEVINEの対バンツアー)にThe Birthday。高校から大学時代にかけての青く甘く苦い思い出を懐かしむ時間でしたね・・・でも、当時からの憧れの人達が素敵に歳を重ねられていて、変わらずライヴのステージに立っていてくれることって、今を生きるエネルギーになりました。特に8月にTHEE MICHELLE GUN ELEFANTの解散ライヴを映画化した『THEE MOVIE-LAST HEAVEN 031011-』観たことでようやく観に行く決心がついたThe Birthdayは本当に感慨深かった。

そしてフェス。まずは、ARABAKI ROCK FEST。今年は最高に楽しかった。私が好きなバンド全て網羅できる面子が出揃ってしまってて結果的に観ることが出来なかったバンドもあったくらい。そこで観たGLIM SPANKEYがめちゃめちゃ渋いロックンロールを鳴らしてて!来年ワンマン行きたいですね。久しぶりに観たASIAN KUNG-FU GENERETIONも流石の貫禄があって凄く良かった。雨に打たれ寒さに震えながら観た奥田民生だったり、椿屋四重奏ぶりに観た中田裕二の色気に動揺したり、BRAHMANは先輩方目の前にしたTOSHI-LOWの素顔を見た気持ちになったり。今のところ一番好きだなARABAKI。今年始めて行った中津川 THE SOLAR BUDOKANは、もうね景色が本当に美しくて(夕焼けが)!!心身共々、かなり癒やされたフェスだった。ただ交通の便がちょっと不便なのが難点だけど、それさえクリアできたら行く価値はあります。音も良いし!

で、今年観てきた40本の中で一生忘れることはないであろうライヴは、9/13 the HIATUSの「Hands of Gravity Tour 2016」STUDIO COAST公演。私の中では、あの伝説の日本武道館公演を越えてしまいましたね。彼らについては、別途書こうと思っています。

最後に毎年思うことだけれど、私は好きなバンドがはっきりしている分足を運ぶライヴはどうしても偏りがちだだし、あと体調不良で飛ばしてしまったライヴがあったことをかなり反省。でも振り返ってみたら、Suchmosや夜の本気ダンスといった若手から、リップスライムという大御所かつ観たことのなかったジャンルまで足を伸ばせたし、念願のTweedyとマニック・ストリート・プリーチャーズも聴けたし少しは冒険できたかな。来年以降は誰のどのライヴに行くかは、しっかり吟味した上でを決めようと思います。そして、来年も素晴らしい音楽と共に駆け抜けます!(その前にCOUNTDOWN JAPANがあるけど!笑)

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by musicorin-nirock | 2016-12-27 22:45 | COLUMN | Comments(0)

10/14 the HIATUS @ Blue Note TOKYO ~ 1st Stage ~

普段the HIATUSのライヴに行くと、感情という感情が全て放出されてしまうくらい、私はめちゃくちゃ興奮させられる。彼らは楽曲のスケールのデカさも相まって、観る側も覚醒してしまうくらいもの凄いライヴをする、稀ないロックバンドだ。しかし、伊澤一葉(Key)の奏でるグランドピアノの演奏をSEに、黒いスーツ姿に身を包んだメンバーが登壇すると、ジャズクラブの名門・Blue Note TOKYOならではの格別な音楽空間が広がった。

最新アルバム『Hands Of Gravity』の楽曲を中心に、新旧織り交ぜたセットリストで繰り広げられた約70分間の短いステージは、楽曲の壮絶さやスケール感ではなくて、メロディの美しさにスポットを当て続ける臨場感あるアンサンブルが、しっとりとオーディエンスを魅了させる。

聞き応えのある伊澤の生ピアノがジャジーでアダルトな雰囲気を演出し、1人革のジャケットを羽織りパンクスのプライドを胸に掲げるmasasukes(G)が1音1音繊細にギターを鳴らした。最新アルバムでは作曲も手がける柏倉隆史(Dr)が、そのメロディを歌うよう滑らかにリズムを刻むと、MCの助け船としても登場したバンドの最年長・ウエノコウジ(B)が渋いグルーヴを放つ。「ギターを弾かずに歌う」という意志を持ってライヴに挑んだ細美武士(Vo&G)は、メンバーに演奏を委ね、歌に全神経を注ぐ。その歌声はとても自由で、豊潤な表現力で大きな花を咲かせていた。


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9月13日、STUDIO COASTで観た『Hands Of Gravity TOUR』のMCで細美は「酒を呑んでも呑んでも声が出る」などとオーディエンスを沸かせ、言葉通りの凄まじい歌唱を披露した。コンディションを整える為の見えない努力もあるに違いないが、それだけ歌に対する意識がここ数年で変わったように感じる。その大きな理由が、昨年より始動させたやんちゃなロックバンド、MONOEYESの存在だ。全くモードの違う2バンドのフロントマンとして生きる細美は、今日本で一番忙しいミュージシャンと言ってもおかしくない。しかし、今の彼の歌声を聴いていれば、音楽人生の充実であることがはっきりとわかるのだ。

そして彼の充実がメンバーにも伝染し、今公演にて5人が起こした最大のハイライトが、喪失感と孤独の最中で生まれた初期楽曲を見事に生まれ変わらせたことだ。ライヴのオープニングを飾ったのは、<I'm trapped inside infinity / And have lost sight of a trinity(対訳:僕は無限の中に捕らえられて/3人組を見失ってしまった)>と当時の細美の心情を痛感させられる”Centipede”。彼らの1stアルバム『Trash We'd Love』に収録され、近年ライヴで披露されることは滅多にない。しかも、今回はイントロを聴いただけでは何の曲か全くわからず、細美が歌い出してやっと気づかされる始末。その変貌振りに思わず感嘆の声を漏らしそうになれば、何故この曲が1曲目に選ばれたのか戸惑った。それでも、威嚇のようなエレキギターは聴こえず、夜空に浮かぶ星屑のような輝きを放ち、色気と哀しみが混同する濃紺のブルースに、心が大きく揺さぶられた。

その後も、次から次へと曲が始まるごとにを強烈に実感させられたのは、5人の途絶えることのない音楽への情熱だった。the HIATUSは結成して7年が経ち、同時にメンバーも同じ年数歳を重ねている。当然、若さは失われ、懐古的な気分に陥る時もきっとある。しかし、このバンドの音楽への好奇心やチャレンジスピリットは衰えることを知らない。音楽を生業にしている身であるし「当然だ」という面持ちで5人はステージに立っていたが、その姿が全く傲慢にも嫌みにも感じなかったのは、一貫してチケット代2600円を守り、キャパの小さいライヴハウスのステージに立ち続けてきたからだ。

Blue Note TOKYOという高貴な場所であれ、泥臭い己の精神を彼らが曲げることはない。細美は高いチケット代を払い、今日のステージを観に来てくれた事に心からの感謝を述べていた。また、次の回に来るオーディエンスの楽しみを奪わないためにも「セットリストをライヴが終わるまでは、ネットに上げないで欲しい」と訴えかけ、実際に10月22日のMotion Blue YOKOHAMA公演終了まで、セットリストがネット上に出回ることはなかった。これはSNS時代と呼ばれる今のご時世、本当にあり得ないことである。それを可能に出来たのは、今まで培ってきたオーディエンスとの強い信頼関係が彼らにはあるからだ。

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アンコールの”Insomnia”は、聴き手の心に明かりを灯すような優しさが生まれていた。

本来この曲は、<僕は無限の中に捕らえられて/3人組を見失ってしまった>と嘆く1人の男が<Save me!>と、どん底から声を上げる歌だ。しかし、男は音楽を信じ、信頼できる仲間と共に音を鳴らせる喜びを知り、精神的なタフネスを手に入れた。

細美の抱える喪失感が、消えたとは思わない。しかし今は、彼を音楽に向かわせる「一部」になっているのではないだろうか。だから、最大の武器である歌声を自由に羽ばたかせ、今は希望の歌として<Save me!>とオーディエンスと共にシンガロングができるのだろう。この光景を目の前に、満たされたもの感じた。私に生まれた感情を言葉にするのなら、幸福と呼ぶのだと思った。きっとメンバーも会場に集まっている誰もが、そう感じていたはずだ。


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the HIATUS。このバンドの精神性に救われ続けている私は、彼らの音に頼ったり、時に敢えて突き放したりしながら、バランスを取って生きている。そんな中でも、心に余裕が無くなってしまい、どんなに好きな彼らの音でさえも耳に入って来ない時期があった。私は音楽の力が全てだと信じていたが、やはりそれは全てではなくて、人が立ち上がるための一つ手段でしかないと身をもって知ったのだ。正直、これまでにも「そういうものなのかもしれない」と腑に落ちる瞬間が訪れたこともある。それでも、音楽は決して無力ではなかったから、私はライヴへ通う。そして、音楽に無限の力があるんだと強く体感したのが、最新アルバム『Hands Of Gravity』であり、先述したSTUDIO COASTでのライヴだった。

今回のBlue Note TOKYO公演では、the HIATUSが生み出してきた楽曲の素晴らしさに心を打たれ、目の当たりにしたプレイヤーとしての技術力に感嘆し、何より純粋にthe HIATUSが好きだという気持ちを、初めて彼らの音を聴いたかのような興奮と共に味わうことができた。それが一番の喜びだった。ライヴハウスの爆音よりも、少し小さな音を鳴らす5人。だからこそ、彼らを至近距離で感じられるこの空間の温かさに私は泣いた。特別、辛いことや悲しいことがあったわけではない。ただ「いつだって、またここに来れば良いじゃないか」と優しく肩を叩いてもらったようで、それだけの理由で涙が出た。

演奏を終え、オーディエンスとハイタッチしながら満足げに会場を去って行く背中から、終わりなき挑戦者達の旅が、また再び始まる予感を私はしかと感じ取る。

会場を出て表参道駅へと向かい、知人と別れ地下鉄に乗った。「さあ。顔を上げて行かなくちゃ」。私の心にも新しい追い風が、すでに吹き始めていた。


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by musicorin-nirock | 2016-10-29 21:02 | LIVE | Comments(0)

“Keeper Of The Flame Tour 2014 Closing Night NIPPON BUDOKAN 2014.12.22” / the HIATUS



2014年12月22日、その翌日の23日、私は丸々一日かけてこのライヴレポートを作成した。ステージに立つthe HIATUSのメンバー、会場を埋め尽くす約1万人のオーディエンスと、ライヴに関わる全てのスタッフ、そして、残念ながらライヴに足を運ぶことが出来なかった彼らを愛してやまないリスナー。この全員のthe HIATUSへの想いが、日本武道館に集結したこの夜の事を、絶対に忘れてはならないと思った。

彼らの音を耳すると、抵抗する暇もなく、感情は揺さぶられる。そして、全身に響き渡るグルーヴは人肌のように温かく気が付くと涙が溢れて止まらなくなり、同時に心は解放されていく。「音楽に救われる。音楽に生かされる。音楽で人生が変わる。」。彼らを知る前も、知った後も、様々なバンドを聴き続けてきたが、自分の人生に於いて莫大な影響力を与え続けてくれたのは、the HIATUSでしかないと、12月22日私の中で証明された。だから、逆にこのライヴ映像を見ることを、私は少し躊躇した。ライヴレポートには書き記せなかった、個人的な感情が、映像と同時にダダ漏れになってしまう事が怖かった。私が過ごした2014年とthe HIATUSの音楽との関係とは、彼らの音がもう自分の一部分であるような、あまりに近すぎるのものだ。生きる事の厳しさも、優しさも、美しさも教えてくれた彼らの音楽に、心身共にくたびれ果てた私がどれだけ救われてきたのか、正直、計り知れない。しかし、武道館から半年近く経った今は、彼らの存在の大きさに左右されず、しっかり自分の足でしっかり立ち、歩き、人生を全うしたいと思い始めた自分がいる。ライヴDVDの全てを観終えて、改めて客観的な視点であの夜のことを見届けることができ、そう気付かせてくれたのは誰でもない、the HIATUSであることを、改めて痛感しているところである。

ライヴは“Roller Coaster Ride Memories”から始まり、紗幕が落ちると5人のロックモンスターは姿を現す。そして、“The Ivy”“The Flare”と続き、彼らのオルタナティヴな姿勢そのものがロックと化し武道館という大会場をペロリと飲み込んだ。ライヴ中盤には細美武士の抱えるエレキギターがアコースティックギターへと変わり、手話通訳士ペン子の美しい手話と、彼らの大切な友人Jamie Blakeをゲストに迎え、優しく温かな空気に包まれた。そして、ようやくアルバム『Keeper Of The Flame』へ。打ち込みを起用させたことで、彼らのサウンドは更に進化し、何物にも値しない「the HIATUSの音」と呼ぶべき世界が武道館いっぱいに広がった。本編最後は最初期の曲“Ghost In The Rain”で締め括り、長い旅路の終わる寂しさではなくて、旅の「はじまり」を予感させた、素晴らしいものだった。

2009年にバンドを結成し、これまでの道程を目の前にいるオーディエンスと辿り、今、武道館にいる喜びを共に分かち合う。ライヴの始まりから終わりまで、溢れんばかりの祝福感に満ちた時間は、冒頭でも述べたが、the HIATUSのメンバー、会場を埋め尽くすオーディエンス、ライヴスタッフ、そして、全国、いや世界中にいるであろう彼らを愛するリスナー、この全員の想いがサウンドと融合し、創りだされたものだ。きっとこれは、この中の誰か一人でも欠けていたら、創り出すことはできなかったであろう。

また、今回のライヴDVDは2枚組であり、その内の1枚はライヴドキュメンタリーとなっている。これは日本武道館公演前にスペースシャワーTVで放映されたものに、武道館までのドキュメントをプラスされた作品だ。2014年3月に発売されたthe HIATUSの4th Album『Keeper Of The Flame』を掲げ、同年5月から始まった全41本という長旅。「チケット代を上げないと、スタッフに給料が払えない。だからチケット代を上げる…いや、そういうことじゃないだろう」という細美武士に浮かび上がった疑問。その答えは、スタッフを一人減らして、細美自身がスタッフ業をこなすことだった。自らハンドルを握り、機材車を走らせ全国を駆け巡る。ステージのセッティングも後片付けも自分行い、空き時間があればトレーニングに打ち込む。観ている側からすると、それは余りに過酷である。しかし、細美がストイックに自分の体力と精神を鍛え上げたことが、後に大きな自信となる。ツアーファイナル、新木場COASTの楽屋では「楽勝だ」と、笑顔すら零している。

そして、細美以外のメンバー4人にも、それぞれ心境に変化が訪れ、行動に移していく。それは、メンバー一人一人にとって、バンドマンとしての「原点」に戻る時間だったのではないかと思う。その全てを物語っていたのが、日本武道館のステージに立った5人の表情だ。勇ましい目つきでエレキギターを掻き鳴らすmasasucks、ステージ全体を温かく見守るような、柔らかな笑顔を見せるウエノコウジ、込み上げる感情そのものを叩き出す柏倉隆史の顔からは、今ここにいる喜びが溢れだし、今回のツアーで一番苦労したであろう伊澤一葉が、全てを弾き終えた後に見せたのは、安堵の笑顔。そして、自分自身に打ち勝った細美の勝利の笑み。年齢を重ね、キャリアを重ねていけばいくほど、忘れてしまう事がある。それを忘れまいとし、細美が起こした行動が、バンドの大きなエネルギーとなり、「最初で最後の武道館」には、5人全員、the HIATUSであることの誇りが溢れている。

最後に。このライヴDVDは、観た人の心にどう映るのかで、ライヴが本当に完結する。ここには、音楽の素晴らしさ以上に、たくさんの生きるメッセージが詰まっている、そんなライヴDVDだと思う。どちらも、心して観て欲しい。







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by musicorin-nirock | 2015-07-04 22:17 | LIVE DVD

ARABAKI ROCK FEST.15 / the HIATUS

ARABAKI ROCK FEST.15(以下ARABAKI)、その1日目にあたる4月25日。磐越のステージに現れたthe HIATUSのメンバーをオーディエンスは温かく迎え入れていた。その理由を、私は彼らの活動を追い続けていく中で、十二分に理解していたつもりだった。しかし、広大なみちのくの大地を目の前に<Revolution needs a soundtrack(和訳:革命にはサウンドトラックが必要だろ“Horse Riding”>と威勢良く細美武士(Vo&G)が投げ掛けた時、改めて東北の人々にとって、the HIATUSの存在の大きさを、目の当りにすることになる。

ライヴは“The Ivy”から衝撃的に幕を開け、伊澤一葉(Key)の鳴らす繊細なピアノの音が大空に響き渡る“The Flare”へと続く。そして、絶え間ないダイバーとモッシュの嵐で、スモークのように砂埃が舞い上がった“Storm Racers”で畳み掛け、細美はハンドマイク姿になった。最新アルバム『Keeper Of The Flame』の1曲目を飾る“Thirst”では、細美と共にオーディエンスのたくさんの拳が上がり、熱気まみれのまま次曲“Unhurt”へ。柏倉隆史(Dr)とウエノコウジ(B)が産む生々しいグルーヴにエレクトロな打込みが交じり合い、その上に、masasucks(G)の風を切るようなエレキギターが重なるバンドアンサンブルは、この上なく最高だった。

昨年のARABAKIでは、ステージに立てた喜びからか、思わず涙ぐんでしまう細美がいた。私自身にも何度も感極まる瞬間が訪れたのだが、会場中にエモーショナルな空気が漂い続けていた。しかし、2015年のARABAKIでは、MCの最中、時折言葉に詰まりながらも終始笑顔を見せ、力強く歌い上げる細美がいる。サウンドも進化の歩みが止まることなく、更に肉体感を増しており、まるで“Unhurt”の歌詞そのものように、ステージに立つ5人はタフだった。

“Lone Train Running”の<Away now>と繰り返される盛大なシンガロングは、この日、一段と美しかった。また、私もオーディエンスの一人として<Save me>と歌いながら、様々な想いが込められているであろう“Insomnia”が、ここARABAKIで披露される深い意味を考えた。日も暮れ始め、肌寒さを感じる頃には“紺碧の夜に”が投下され、再びモッシュとダイブも始まり、熱気に拍車が掛かっていく。そしてラストソング。アコースティックギターを抱えた細美は“Horse Riding”を歌い始めた。柏倉の刻む躍動的なビートに乗せて、強く優しく歌い上げる中で、<Revolution needs a soundtrack>というフレーズに、思わず身震いしてしまう。それは、2014年のARABAKIから今日を迎えるまでの1年間、the HIATUSが培ってきた全てを、物語っていたからだ。

the HIATUSにとっての2014年は、メンバー全員で初めて東北のライヴハウスも回った全国ツアーや、弾き語りライヴや支援活動といった個人の活動を通して、地元の人々やオーディエンスとの絆をより深めてきた一年だった。その過程で5人全員が同じ方向を向き、the HIATUSが本物のバンドになった事を証明したのが、昨年末の日本武道館公演だ。しかし、もっと至近距離で昨年の集大成を味わえたのが、今年のARABAKIだったと思う。ライヴ中「おかえりなさい」という言葉を、オーディエンスはメンバーに向けて、ずっと投げ掛けているようだった。変わりゆく東北の地で彼らと共に過ごした時間が、人々の生きる希望となり、彼らが鳴らす音楽は、一人一人の記憶の中で、いつまでも輝き続けているのだろう。ステージからメンバーが去った後も、温かく、祝福感に満ちていた。それは、the HIATUSがオーディエンス一人一人の人生のサウンドトラックであることを、確実に証明していた。



set list
1 The Ivy
2 The Flare
3 Storm Racers
4 Thirst
5 Unhurt
6 Lone Train Running
7 Insomnia
8 紺碧の夜に
9 Horse Riding



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by musicorin-nirock | 2015-04-29 12:20 | LIVE

12/22 the HIATUS @日本武道館

Closing Night -Keeper Of The Flame Tour 2014-

2014年3月にリリースされたthe HIATUS 4thアルバム『Keeper Of The Flame』を引っさげ、同年5月から7月にかけて行われた「Keeper Of The Flame Tour 2014」の追加公演として行われたバンド史上初の日本武道館公演。これは、バンドの結成から今日までthe HIATUSが歩んできた道を、一歩一歩確かめ、そして辿り着いた日本武道館は、大切な「お前ら」と、この素晴らしい時間を共有する。その為だけのライヴだった。

彼らの初期の楽曲から始まったこのライヴのセットリストは、フロントマンである細美武士(Vo&G)が孤独から解放されていく姿であり、先日スペースシャワーTVで放送された今回のツアードキュメントのエンディングでナレーションを務めたTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)が語りかけた言葉そのものだ。

「the HIATUSは、バンドになったんだね」

そう。この一枚のアルバムがきっかけとなり、積み重ねてきた濃厚な時間の中で、the HIATUSは本当の“バンド”になった。そして、彼らを祝福するかのように、二階席の奥までみっしり「お前ら」で埋め尽くされた光景は、結成当初はメンバーの誰一人と、想像出来ないものだったはずだ。


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舞台を覆う紗幕越しに”Interlude”が始まると、オーディエンスから沸き起こる大歓声は既に最高潮に達している。上がり続ける熱気の中を“Roller Coaster Ride Memories”を歌う細美の声がフロアを這うように行き渡り、震動させる。プログラミングと生音を掛け合わせたバンドアンサンブルは、燃えたぎる炎のように熱い。そして、“The Ivy”“The Flare”“My Own Worst Enemy”と1stアルバム『Trash We'd Love』、2ndアルバム『ANOMALY』に収録されたアイテムが、勢い良く立て続けに投下されていく。ステージ背後に設置されたLEDに流れる映像をバックにダイナミックなプレイを魅せるmasasucks(G)、ウエノコウジ(B)、柏倉隆史(Dr)。そこにナイフのような鋭さを持つ伊澤一葉(Key)の鍵盤が切り込めば、the HIATUSの創り上げた音世界は、ロックという概念を飛び出し、芸術の領域にまで達してしまっていることがまんまと証明された。

「テンション上がっておかしくなっちゃう前に言っておくわ。俺たちを武道館に連れて来てくれてありがとう!」。始まって早々に細美がお礼を述べると、”Storm Racers”をぶつけてくる。熱狂の渦と化したアリーナゾーンは、迫り来る波のようにタイバーが続々と出現。そして、さらに彼らを煽り立てるように“Centipede”“Monkeys”とハードネスなナンバーを間髪入れずにぶち込み、武道館という巨大な空間を5人のモンスターはペロリと飲み込んでしまった。

「俺、お前らの楽しそうな顔を見るのが何よりも好きなんだけど、普段はここだけじゃん?(アリーナを指さす)今日はさ、横にも上にも見えるんだよ。武道館には、何っにも思い入れもなかったけど、俺この景色超~好きだわ。こんなに良い景色見れるとは、思っていなかったよ。」

細美はアコースティックギターに持ち替え、柔らかなイントロが鳴り響く。3rdアルバム『A World Of Pandemonium』からまずは“Deerhounds”。武道館一体を溢れんばかりの多幸感で包み込むと、人間の内面へとぐっと入り込んいく“Bittersweet / Hatching Mayflies”、そして柏倉の細やかなドラミングとウエノの重たいベースが絡み合い、心地よいグルーヴを生んだ“Superblock”へと続いた。

ここで細美はとある事を試みる。

「5年くらい前に矢野顕子さんからメールが来て。電子メールね。<あなたこれ観てみなさい。>って動画のURLが張ってあって。アメリカのフェスで、聴覚障害者ブロックに手話通訳の人がいて、音楽に合わせて歌詞を通訳してて。それが、本当に最高で。日本でもやんねぇかなって待っていたけど、やる気配もないし、ロッキンでもやらないし(笑)だから今日やってみようと思って。」

と、手話通訳士の女性を招いた。彼女がこのステージに立てた喜びを細美の言葉に合わせ手話で伝えると、細美と共に“Horse Riding”を歌い始める。彼女が音に合わせ、手話通訳をする姿は、まるで音が鳴るままに自由に振る舞うダンサーのようだ。耳が不自由な人でも楽しめるライヴをやることで、彼らは一つ、私達の日常に於ける隔たりを無くした。この配慮には誰もが胸が熱くなったのではないだろうか。そして、もう一人ゲストとして、ロサンジェルスよりやって来たジェイミー・ブレイク(The Rentals)が登場。ライヴ前日に訪れたというロボットレストランが「Crazy!」だったと驚いた様子を話し和やかな雰囲気のまま“Tales Of Sorrow Street”へ。細美の声にそっと寄り添い、続く“Souls”で聴かせた二人のハーモニーは、かつてアルバムを共に創り上げた仲間としての愛情が感じられるひとときだった。

この時点でライヴ開始から1時間ほど。ここからは『Keeper Of The Flame』の世界へ導かれていった。アルバムの1曲目を飾る”Thirst“のイントロが始まると、一気に緊迫した空気が漂う。ハンドマイク姿になった細美はステージ前方ギリギリに立ち、拳を掲げ、吠えるように歌い上げると、続くエレクトロポップなナンバー“Unhurt”でフロアがぐんぐんと開放され、再び熱気が上がり始めたオーディエンスの「Away now,Away now」というシンガロングがエモーショナルな空間を創り上げた“Lone Train Runnning”。私はここで、込み上げてくる感情が涙として溢れ出し、止まらなくなってしまった。そして、マイクを離れ、響き渡る声に聴き入る細美の姿もとても印象的だった。

「今41で、この歳になると先に逝ってしまう奴らがいて。俺らだって、明日あっちに行っているかもしれないし、お前らだってそう。誰がいつ逝くかはわからねぇ。・・・今日はそいつらも、ここに来て一緒に聴いててくれるといいな。いつか俺らもそっちへ行くからよ。そんな気持ちで作った曲です。」

曲紹介の後に始まったのは“Something Ever After”だった。背後のスクリーンに流れる映像は、高速道路を走る車窓から見える景色や、広がる緑の光景。優しさがいっぱいに溢れるサウンドに乗せて、言葉一つ噛み締めるように細美は歌う。年齢を重ねていく毎に向き合わねばならない死を受け入れた時、この一瞬一瞬を生かされていることは奇跡であり、儚いものであることを、彼らは温かく伝えてくれる。そして、武道館を大きく唸らせたのが“Insomnia”。全てを出し切る勢いで莫大なるサウンドをぶつけるメンバーと、天井が突き抜けるかの如く「Save me!,Save me!」というオーディエンスの巨大なシンガロングは、未だかつて体感したことのない凄まじさだった。その余韻を引きずったままのフロアに心地良く“紺碧の夜に”のギターのイントロが響くと、再び多幸感に包み込まれ、シンガロングの嵐が起こる。今日、ここに居る「お前ら」一人一人の記憶の中に、この時間が確実に切り刻まれていくように。彼らの願いが胸のど真ん中に、直球で伝わってくる。

そして。本編ラストに選ばれた曲は、なんと1stアルバムの1曲目を飾る“Ghost In The Rain”だった。予想もしていなかったこの展開に、私の目から大粒の涙が止まらなくなってしまったのだが、一つだけ、はっきりと確信したことがある。それは、彼らの物語がここで一旦終わりを告げてしまうが、また再びこの5人で新しい物語を描き続けていくという事だ。

ライヴ中盤のMCで細美は言った。

「武道館に来るまでの間、神様っているのかなって考えてた。おセンチな話だけど(笑)、困っている奴を助けてくれるわけでもないし、すっげぇ良い奴が一番幸せになれるわけでもないし。でも、一個だけ、一個だけ神様が叶えてくれることがあって。何かを頑張ればちょっとくらいは絶対に強くなる。だから、来年もthe HIATUS頑張ります。」

それは、この言葉に繋がっていく。

ーYou carry on / The world will find you after allー
(対訳:君はそのまま進むんだ やがて世界は君を見つけ出す)

苦悩の中で生み出されたこの曲が、希望という言葉で塗り替えられた瞬間だった。真実を胸にした5人の英雄達が鳴らす、強くて感動的な“Ghost In The Rain”だった。

アンコール。
ステージに登場したメンバーが、再びそれぞれの居場所に戻った。

「エルレ(ELLEGARDEN)が休止したおかげでここに居る仲間と出会えたし、震災があったおかげて、いっぱい仲間ができた。それって“~せい”なんだけど、“~おかげ”にしないとやってられない。俺たちみたいなバカ野郎は、お前らも、下を向いて落ち込んでいたってしょうがないんだよ。ピンチをチャンスに変えてやって行くしかない。これからも、バカみたいにゲラゲラ笑って、前を向いて生きていこうぜ!」

この言葉の後、細美のエレキギターによる弾き語りから始まった“Twisted Maple Trees”。思い出すのは2012年に開催された「The Afterglow Tour」、NHKホールで行われたツアーファイナルのステージに立つ細美だ。全力を出し切り、この曲を歌い終わった後、彼は叫びそして泣き崩れたのだ。しかし、ここ武道館のステージに立つ細美は、しっかりと前を見て、時折笑顔を覗かせながら、気持ちよさそうに歌い、クライマックスにかけての盛り上がりは、長編映画を見終えた後のような興奮と感動をオーディエンスにもたらした。

そして、荘厳な空気に染まったフロアに清らかな水が注がれるよう“Silver Birch”のイントロが鳴り響く!細美によって紡がれていく一言一言に合わせ、この日何度目なのかわからない盛大なシンガロングが沸き起こり、武道館一体が輝き出す。演奏を終えた5人はステージ前方へと集まり、堅く繋いだ手と手を掲げ、深々とお辞儀をして颯爽とその場を去った。ステージ袖に向かうとき、お互いの肩を叩き合っていた姿は今でも目に焼き付いたままだ。

これで最後・・・と思いきや再び止まないアンコール。そして、すぐに応えてくれたthe HIATUS。

「武道館のこの景色は気に入ったけど、やっぱ、俺たちには似合わねぇ。お前らも遠いし。次会うときは、どっかの街の小汚ぇ路地裏で会いましょう!」

マイクレスでオーディエンスに向かって叫んだ細美。“Waiting For The Sun”のラストに起こったコール&レスポンスでは、まるで宙にオーディエンスが伸ばした手とメンバーの手が、がっちりと繋がれたようだった。再びthe HIATUSと会えること。ここにいる全ての人が、期待を胸に帰路に就いた事だろう。


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ヒットチャートを賑わせるような音楽シーンとは一線を引き、頑なに自分達を貫いてきた、それが形となった夜だった。同じミュージシャンとは言え、畑違いの5人が集まり、既に手にしているものを差し出しながらthe HIATUSを通じ学び得たものの全てが熟成された音となり、喜びと共に鳴り響いていた。今回の日本武道館公演は、私が今まで観てきた数多くのアーティストのライヴの中でも、桁違いのレベルに達していると実感し、具体的に世界進出を考えても良いのではないかと思ったのだが、細美が肉声で伝えた最後の言葉の後に、笑顔で拍手をする柏倉の姿が見えたとき、彼らの意志は誰に何を言われようが固まっているように思えた。日本武道館の大きなステージに立つthe HIATUSも、とある街の小さな箱のステージに立つthe HIATUSも何一つ変わらない。「お前ら」の笑顔が見られるんだったら、彼らはいつでもどんな場所でも、私達の目の前にずっと立ち続けてくれるのだ。

私にとっても、一生忘れられない、とても大切なライヴとなった。
the HIATUSのメンバーに心の底から「ありがとう」とお礼を述べたい。



Set List
1 Roller Coaster Ride Memories
2 The Ivy
3 The Flare
4 My Own Worst Enemy
5 Storm Racers
6 Centipede
7 Monkeys
8 Deerhounds
9 Bittersweet / Hatching Mayflies
10 Superblock
11 Horse Riding
12 Tales Of Sorrow Street (with Jamie Blake)
13 Souls (with Jamie Blake)
14 Thirst
15 Unhurt
16 Lone Train Running
17 Something Ever After
18 Insomnia
19 紺碧の夜に
20 Ghost In The Rain

encore 1
1 Twisted Maple Trees
2 Silver Birch

encore 2
1 Waiting For The Sun


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by musicorin-nirock | 2014-12-25 18:37 | LIVE

9/29 NO NUKES 2014“the HIATUS”

2014年9月29日から10月1日の3日間、Zepp Diver City TOKYOで開催された『NO NUKES 2014』。その1日目に当たる9月29日に出演したthe HIATUSは、自然エネルギーを利用した音楽フェスティバルや脱原発を謳うイベントが数多く開催されている昨今、率先して参加しオーディエンスにメッセージを送り続けている。同月23日には『さようなら原発全国大集会』(細美のみ)、このライヴの2日前には『中津川THE SOLAR BUDOUKAN 2014』に出演し、その直後のステージであった。福島第一原発で起きた悲惨な事故から約3年半が経過し残念ながらそれがどこか風化しつつある中を、フロントマンの細美武士(Vo&G)は東北ライヴハウス大作戦の活動を始め、ことある毎に福島県へと足を運びメディアでは語られないリアルな現状を見続けている。そして、the HIATUSとして今年5月から7月にかけて行われた全国ツアーで東北にある小さなライヴハウスを回ったことと、常日頃、細美のアグレッシブに突き進む姿を間近で見ていること。この二点が確実に他の4人のメンバーに大きな影響を与えていると、ステージに立つ彼らから私は強く感じていた。政治的な発言せず、表現として関与させないミュージシャンもいる中で、その姿は端から見たらストイックに写るかもしれない。しかし、だからこそ緊張感と開放感が交互に漂う、天地がひっくり返るような壮絶なバンドサウンドをNO NUKESのステージで鳴らすことが出来たのだ。

現在、九州電力川内原発の再稼働の問題は一向に終息する様子が見えず、一人一人が本当に真剣に考えなければならない境地にいることを実感している。私は政治とロックフェスの繋がりについて正直戸惑っていたのだが、このイベントに参加したことが日々の生活に於いて政治をもっと身近なものとして捉える大きなきっかけとなった。時間は経ってしまったが、あの日の5人の戦う姿を精一杯レポートしたい。



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場内が暗転し“Interlude”が流れた途端に沸き起こる大歓声。真っ青なライトの中をメンバーそれぞれNO NUKESのロゴが付いたTシャツ姿で登場した。普段、ジャケット姿が定番のウエノコウジ(B)も、この日はそれを脱ぎ、細美は早々にガッツポーズを見せている。気合いの入った1発目は“Storm Racers”。先攻、斉藤和義が残していたシリアスな空気は、「One, Two, One two three!」とサビにかけてのカウントダウンが勢いづけ、一気に熱を帯びる。間髪を入れず始まった“Monkeys”では、モッシュが起こりダイバーも出現。柏倉隆史(Dr)とウエノコウジが絡み合うドスの効いたビートに乗せて、masasukes(G)が全身振り乱しながら歪んだエレキをかき鳴らし、伊澤一葉(Key)は激しく鍵盤を叩きつける。オーディエンスからのオイコールも収まらず、ライヴ開始10分足らずで凄まじい盛り上がりを見せた。

続く“Thirst”はmasasucksが後ろを振り返り、自在にリズムを操る柏倉のフィーリングを感じ取りながら一音一音丁寧に音を沿わせ充満させたイントロが印象的だった。彼の集中力に引き寄せされるようじっと見入ってしまうくらいに、ステージのどこか緊迫したムードは今までのライヴで感じてきたものとは違った。どくどくとした生々しいサウンドに合わせ、ハンドマイク姿となった細美は、鍛えに鍛え抜かれた精神力を見せ拳を揚げ、声を上げる。それは、このライヴが彼らにとってどういうものかを知らしめた瞬間だ。そして、この緊迫を和らげるように“Something Ever After”の分厚いオルガンが響き渡り、温かくライヴハウスを包み込む。細美は言葉一つに命を吹き込むよう大切に歌い、シンガロング続けるオーディエンスに向けて「ありがとう!」と気持ちよく感謝と笑顔を放った。

「NO NUKESに集まってくれてありがとうございました」細美のMCその第一声だ。そして「小泉さんと細川さんと4人の政治家の先生が来てくれて、お前らどう思った?」と問いかけてくる。NO NUKES 2014の初日であるこの日、ライヴが始まる前に今年出席できなかった坂本龍一の強い希望によって、細川護熙元首相と小泉純一郎元首相をはじめ政界から4名招き、両首相は挨拶を行ったのだ。私は政治家がこのようなロックイベントに参加することにどこか違和感を感じていたが、細美は政治性のあるイベントになると従来のロックファンは来てくれないと嘆く。しかし、両元首相が私達の目の前で話してくれたことで「気付いただろ?テレビの中のことはフィクションじゃないって。」この後始まったのが“Horse Riding”だった。

<Revolution needs a soundtrack>というフレースが今ここで鳴り響く意味をひたすら私は考えてしまう。様々な出来事に思いを巡らし、現実を見て見ぬふりして生きてきたわけではないが、恥ずかしいくらいに無知であることを私は自覚する。そして複雑な時代を生きている事に改めて気付かされ、悔しさと哀しみが湧いてきてしまった。しかし、真っ白なライトに包まれながら爪弾かれるアコースティックギターで始まった“Deerhounds”が、生まれ変わった美しい世界を描いているようで、音と共に放たれる細美の歌声にただただ胸が熱くなる。頭の中での混乱が静かに収まり、目から涙が溢れてきたのだ。

そこに切り込む“Unhurt”。天井に吊されたミラーボールが回り出しオーディエンスは音に身を委ね、生まれていく開放感。細美もとても楽しそうにステップを踏みながら歌う。そして、ライヴの序盤に少し疲れが見えた声は、いつの間にか強く太く変化していることに気付く。そんな姿に呆然としていたら“Lone Train Running”のピアノの音が鳴り響き、エモーショナルな風が吹いた。その瞬間込み上げてきた感情をグッと飲み込んだが<Away now>と繰り替えされる盛大なシンガロングに心が揺さぶられ、再び目の前が滲む。細美はマイクから一歩下がった場所で、たくさんの声に聴き入るように歌っている。そして掛け声と共にスピード感のあるサウンドに切り替われば、爽快感を携えながライヴ後半を駆け抜けるのだ。

すると、突然雷が落ちたかのような衝撃を柏倉が叩き出した。“The Flare”で怒りが顕わになり、5人の高揚しきった感情が天に目掛けて放出される。細美は<Both you and I>と歌う時、フロアと自分を指さし「繋がっている」と確かめていた。そして再び威圧的なドラムがドスンドスンと床を振るわせ、オーディエンスに感じさせる予感。「NO NUKES」で演奏された“Insomnia”が残していったもの。それは、怒りや哀しみをただ嘆き続けるのではなく<Save me!>と苦悩を吐き出すことで、今苦しみの最中にいる人々のその感情を代弁し、愛や夢で溢れる未来を想う切なる願いだった。

音が止み、静まり返ったライヴハウスに大きな余韻だけがある。そして、色鮮やかなギターのイントロが鳴らされ“紺碧の夜に”が始まった途端、盛大なハンドクラップが始まり多幸感に包まれていくが、闘争心は最後まで剥き出しのまま。気迫のこもった演奏だった。「川内原発再稼働、する、しない。未来が大きく二つに分かれるよ。原発のことしらない奴、すぐわかるから調べてみ?」。ラストソング“Silver Birch”が始まる前の細美の言葉がストレートに胸に響く。そして、目の前にいるオーディエンス一人一人に確実に届けるため、思い残すことがないように汗にまみれ、ひたすら演奏し続けていた。

歓声が静まることなく、割れんばかりのアンコールを浴びながらメンバーが再び現れ、一曲だけ演奏してくれたのは、“Waiting For The Sun”だった。ミドルテンポの心地よさと浮遊感あるエレクトロな音の中、細美とのコール&レスポンスによって生まれた一体感にただただ心が満たされる。一歩一歩着実に踏みしめるような安定感ある演奏は、the HIATUSの歩みのようであり、怒りも、苦しみも、憎しみも吐き出された時、全てがきらきらと輝き出す希望に繋がっていくのだと、ここの集まった全ての人達が実感したことだろう。

冷たく厳しい向かい風は相変わらず吹きっぱなしだが、いつかきっと天に上る太陽が私達を温かく照らしてくれる。願いが叶うその日まで、彼らは戦い続けるのだ。

最後に。アンコールの曲が始まる前、細美は楽屋裏での出来事を話してくれた。先にも述べたが、この日細川元首相と小泉元首相がステージに登壇し挨拶を行っている。それを受け彼は両首相の元へ出向きお礼を述べたそうなのだ。若い世代に政治の話をする事の難しさを身をもって経験しているため、今日は何を話せば良いのか前日の夜から悩んでいたらしい。だが「先生方が来てくれたおかげで、俺の話もちょっとだけ説得力が増します。今日はありがとうございました」と伝えた。主催者である渋谷陽一氏にはとても驚かれたそうだが、彼の起こした行動の理由は至ってシンプルだった。「元首相といったって同じ人」だ。そして「あの人達の持っている力も、お前らの持っている力も一緒だから」。私はその言葉に勇気をもらった。


set list
1 Storm Racers
2 Monkeys
3 Thirst
4 Something Ever After
5 Horse Riding
6 Deerhounds
7 Unhurt
8 Lone Train Running
9 The Flare
10 Insomnia
11 紺碧の夜に
12 Silver Birch

encore
1 Waiting For The Sun


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by musicorin-nirock | 2014-11-26 08:00 | LIVE

Keeper Of The Flame / the HIATUS




アコースティックの響きを生かした前作『A World Of Pandemonium』とは一変!
孤高なギターイントロから始まる「Thirst」の威圧感。美しいメロディが胸を熱くさせる「Something Ever After」。肌馴染みの良いエレクトロポップ「Unhurt」。
序盤から立て続けに披露するダイナミックなバンドアンサンブルには打ち込みが導入され、ジャンルの壁を超え、革新的な音世界をthe HIATUSは構築させた。
ロック色の強い1st、2ndで細美は孤独を叫び自身の存在意義を探し求め、音に救われ鳴らす喜びが閉じ込められた3rdを経て、そして生まれた今作は「音楽の楽しさをリスナーと共有したい」強い想いに溢れた表情豊かなヴォーカルも印象的。
東北への想いを込め書き下ろされた「Tales Of Sorrow Street」は、優しい風をあなたの心に届けてくれる。

Keeper Of The Flame

the HIATUS/ユニバーサルミュージック




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by musicorin-nirock | 2014-11-18 17:44 | MUSIC

11/2 YNU SPECIAL LIVE 2014 “the HIATUS”

11月2日。
横浜国立大学大学祭 常盤祭『YNU SPECIAL LIVE 2014』へ、THE BACK HORNとthe HIATUSの対バンライヴに足を運んだ。

ステージである野外音楽堂のバックには『14TOKIWA』と手作りのロゴが並び、右サイドには落ち葉のモチーフが飾られた、簡素で小さなステージだった。それは、私自身が音楽サークルに所属していた学生生活を思い起こさせ、10数年前の記憶を辿りながらライヴ開始を待っていた。時折空が雲で陰り、風も強く、落ち葉が舞う中でライヴは始まったが、両バンドの演奏時、雨粒一つも降らなかった。「絶対に雨を降らせない、このイベント成功させてやる」。学園祭スタッフの熱い想いが天に届いたのだろう。

この対バンライヴの後攻をつとめたのがthe HIATUS。セットリストは最新アルバム『Keeper Of The Flame』と、夏フェス以降彼らのライヴでは定番となった楽曲から構成されていた。私は今年the HIATUSのライヴを数回観ているが、その時その時、感じることは常に違う。それは、ステージに立つthe HIATUSのメンバーも同じなのだろう。彼らも今この時しか鳴らすことの出来ない音で、ステージを創り上げている。そして大袈裟ではなく、私達がその時を共有できることは、実は奇跡のようなことなのだと個人的に強く感じるようになった。

the HIATUSはメンバー一人一人がそれぞれに積み重ねてきた過去があり、個としての存在感が際立ったバンドだ。彼らは「喪失」を背負いバンドをスタートさせたが、細美武士(Vo&G)がこの5年間で確実に自分を取り戻し、また伊澤一葉(Key)が正式加入後、初のアルバムをリリースし今年5月から7月まで続いた全国ツアーによって新たな結束力が生まれた。この二つの要素が今のthe HIATUSの強みとなり、豊潤かつ感度の高いサウンドを生み出している。

始まりは“Thirst”、続くアッパーな“Storm Racers” で勢い付ければ、エレキギターを下ろし、細美はハンドマイクに切り替え歌う“Something Ever After”で生まれたオーディエンスとの一体感。彼が手に入れた“Unhurt”な心によって、“Silver Birch”、“Lone Train Running”、”The Flare ”で見せた過去の苦悩は輝きに変わり果て、そして今、“Insomnia”で哀しみを分かち合い、希望に繋げようとする強さ。曲一曲が持つ感情が、ジャムセッションのような自由度の高い演奏と、繊細かつエネルギッシュな細美のヴォーカルによって伸びやかに解き放たれる。また、何よりこの日はオーディエンスの若いエネルギーが凄かった。“紺碧の空に”が始まると沸き起こるハンドクラップ、モッシュや続出し続けるダイバーに、嬉しさがこみ上げてきたのか笑顔の絶えないステージ上のメンバー。「あまり学園祭のステージには立ったことがない」と細美は話していたし、この光景がとても新鮮に映ったのだろう。どんどんこっちへこいよ!と細美の煽る姿から「楽しい」という素直な気持ちが伝わってきた。

しかし、MCになると細美は学生達を目の前に「伝えるべきことは伝える」という姿勢を貫いていた。時に下ネタを交え笑わせながらも細美が学生時代を過ごした時代と、「お前ら」が学生生活を送っている今の時代とは、日本の状況が明らかに違うとを示唆し、ミュージシャンは真実の愛や優しさを歌うことしかできず、それは弱いものだが、集まってくれた学生達には負けないような力を持って生きて欲しいという強いメッセージを残した。

アンコール。いつもならメンバーが再登場するまでハンドクラップが鳴らされるのだが、この日に限っては“Insomnia”のイントロ(♪オオオオ~オ~オ~という部分)をなぜか歌うという光景が!それにはメンバーも驚きと喜びを隠せない様子だった。そして、演奏されたのは“Waiting For The Sun”。心地良く刻まれるビートとエレクトロが混ざり合うサウンドによって、曲始まりに細美が話したエジプト旅行中に見た暗闇に広がる満面の星空が、オーディエンスの胸の中にゆったりと広がるよう開放感に包まれていく。そして、きっとここに集まった一人一人に希望の雨が降り注いだであろう。いつにも増して親しみと優しさが感じられるエンディングだった。


set list
1 Thirst
2 Storm Racers
3 Something Ever After
4 Unhurt
5 Silver Birch
6 Lone Train Runnning
7 The Flare
8 Insomnia
9 紺碧の空に

encore
1 Waiting For The Sun
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by musicorin-nirock | 2014-11-04 21:52 | LIVE

9/13NEW ACOUSTIC CAMP 2014"Mini-Atus"

Mini-Atus とはthe HIATUSから派生した、細美武士(Vo&G)、masasucks(G)とウエノコウジ(B)の三人によるユニットだ。結成の経緯は単純に柏倉隆史(Dr)と伊澤一葉(Key)のスケジュールが合わず、もともとはバンドで出演のオファーを頂いていたそうだ。しかし、この3人によるアコースティックセットのライヴは、NEW ACOUSTIC CAMP(以下NAC)のシチュエーションと最高のマッチングであり、ここでしか味わえない感動が沢山散りばめらており、特別な時間を私たちにプレゼントしてくれた。

山の一角をくり抜いたように広がる芝生の上にポツンと建てられたStage YONDER。脇にはペナントが、そして木で作られたアルファベットのオーナメントも飾られており、手作り感が溢れていた。それだけでも、ライヴハウスや大きな野外フェスティバルのステージとは違うのだが、このステージを盛り上げた一番の演出は、大自然そのものだった。水上高原の澄んだ空気、木々の深い緑と芝生の優しい緑、時間と共に変化していく頭上にひろがった一面の晴れた空。

今、この時しか感じられない風景の中を、アコースティックの優しいサウンドと細美の柔らかな歌声が、風と共に運ばれていく。

細美は自身の弾き語りステージでも良くアコーステックギター一本で、the HIATUSの曲を歌うこともあるが、ウエノの低音が加わることで厚みが増し、masasucksが花を添えるような繊細なメロディを奏でる。そしてコーラスも加わることでオーディエンスも一気に盛り上がり、温かな一体感が生まれていた。彼らのライヴといえば、攻撃的で戦闘態勢剥き出しの、観る者全員を圧巻させるパフォーマンスを常に繰り広げているが、この日に限っては、その重たい肩の荷を下ろせたのだろうか、とてもリラックスした空気がステージには流れている。

また、一曲演奏が終わるたびにMCが入り、普段ライヴで滅多に話さないウエノもそれに加わって、まるでリハーサルを見ているよう。しかも、このMCがとても面白かったのだ。3人の年齢の話や(ウエノ47歳、細美41歳、masasucks37歳。私は10歳も年齢差があるバンドだったことに驚愕)、ウエノが大河ドラマが好きで良く観ているのだが、竜馬伝で「竜馬を殺したのはあの中村達也(LOSALIOS)」という流れから、最近はKj(Dragon Aah)や金子ノブアキ(RIZE)も出演しているという話をすると、細美「ルパン三世の次元(大介)はウエノさんしかできなないでしょう!」、ウエノ「(手を横に振りながら)顔が違う!」オーディエンス「爆笑」。と、とにかく和やか。この調子で笑いがずっと絶えなかった。

9月13・14日の2日間にかけて行われた、NACは群馬県にある水上高原で開催されるようになり今年で3年目を迎えた。オーガナイザーである細美の盟友TOSHI-LOW(BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)がゲストで呼ばれると、ウエノの私物ジャケットを勝手に羽織り(しかもウエノ本人は途中まで私物であることに気が付かない)、細美がその夜使用するテント(投げると広がり、簡単に組み立てられる「ワンタッチテント」というもの)を投げながら豪快に登場し、引き続き爆笑トークは勢いを増す。そんな中、4人がTHE BLUE HEARTSのカバー「青空」を披露すれば、細美とTOSHI-LOWが出会い、今日まで歩んできた道のりを思わせるとても力強い2人の歌声に、胸が熱くなった。

このイベントは"FES"ではなくて、あくまでも"CAMP"。2日間山の中で、木登りしたり、アスレチックで遊んだり、各々テントを張りバーベキューをしたり、芝生でただ寝転んでのんびりしたり。ここに集まってきた人たち、それぞれが自由にこの場所と時間を楽しむことができ、ただそこに音楽が流れている空間だった。そう、主役はライヴに出演するアーティストではなくて参加した自分自身なのだ。…ということに気が付いたとき、今回のMini-Atusのセットリストを振り返ってみたら、みんなで手を叩き合い、歌って踊れる楽曲ばかりで、この時を楽しみ、最高の2日間にしようという想いがストレートに伝わってきて、彼らとの距離がまたぐっと縮まったような気がした。

夢のような2日間を過ごし、帰りの高速バスではほとんど眠ってしまっていた。イヤホンの向こうにはthe HIATUSが流れている。ラストソングだった「紺碧の夜に」をみんなで歌い、またここで再会しようと約束したことを、心の中に閉じ込めて。

そして、「東京に戻ったらまた頑張ろう。」と小さく誓った。


セットリスト
1 Horse Riding
2 Silver Birch
3 Somethig Ever After
4 Shimmer
5 青空(THE BLUE HEARTSカバー)with TOSHI-LOW
6 紺碧の夜に


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by musicorin-nirock | 2014-09-27 23:02 | LIVE

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by yu_tanai_coco
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