2015年 02月 15日 ( 1 )

2/12 NICO Touches the Walls @billboard LIVE TOKYO 1st Stage

席に着くと、早くも手元にあるドリンクを半分近く飲み干してしまった。足繁く通う都内のライヴハウスとは違う空気感に、やはり緊張してしまう。私にとって人生2度目のビルボードライヴは、NICO Touches the Walls(以下NICO)念願の初ビルボードライブ公演、初日東京1stステージ。周りを見渡せば、もちろんTシャツにマフラータオルをぐるっと巻いた姿はなく、よそいきの格好でテーブルに着き、料理とお酒を目の前に、談笑しながら、皆その時を待っている。ライヴの当日午前4時5分に更新された光村龍哉(Vo&G)のブログによれば、今夜、NICOはどうやら『初めての挑戦』をするらしい。開演時間の19時が近づくにつれ、そわそわとした気持ちがさらに高まっていった。

場内が暗転されるとステージ上には飄々と光村、古村大介(G)、坂倉心悟(B)、対馬祥太郎(Dr)が現れた。「いつもと何ら変わりがない」といった様子でそれぞれ定位置に着き「Howdy!!」の掛け声と共に、まずは挨拶代りの“口笛吹いて、こんにちは”。するとドラムの振動が床を伝い椅子とテーブルに響いてきたが、それがとても心地良く、自然と体が動き出す。光村が<淋しがりな君がいる/もう大丈夫>と唄えば、対馬と古村によるコーラスワークも相まって、緊張がどんどん解れ徐々に会場は温まり始める。今夜の4人の出で立ちは、赤いバンダナを首に巻きダンガリーシャツを合わせた、まるでカウボーイのようなルックスだ。もちろん、馬に跨り牛を追いに行くのではなく、奥行きの狭いステージには彼らの相棒たちがズラリ。アコースティクギターが古村は3本、光村は2本。坂倉はベースが2本と背後にはウインドチャイムとタンバリンも。対馬のドラムセットの傍には赤くて小さな木琴が見え、それはまるでギャラリーのような光景。

そして、古村と坂倉のポジションにはスネアとタムがセットしてある。続く“手をたたけ”は二人は楽器を置き、ドラムスティックを手に力強く叩き出した。迫力ある3人のリズムに後押しされ、光村は活き活きと伸びやかな声でアコギを鳴らし歌う。間奏になると、肩に掛けたアコギをひょいっと背中に回し、対馬のドラムセット横にセットされていた光村用のスネアとタムの前に移動。4人のドラム・セッションが始まった。途中で古村、対馬、光村、坂倉の順番でソロ回しもあり、楽しむ4人の姿が、楽器を始めたばかりの少年達のようにだった。そこからメドレー形式で“THE BUNGY”へ。イントロから古村の速弾きが早々に炸裂し、光村のヴォーカルもかなりアグレッシヴ。アコースティックの原始的な音で演奏されることで、カントリー・ロックンロールの本性を暴きだす。4人のじゃじゃ馬は大暴れしたと思いきや、テンポを落とし光村がブルージーなハープを披露。息を飲むような展開の速さに早くも圧倒されてしまった。

「こんばんは!ACO Touches the Walls です!」と光村。月曜日にメンバー四人で会場の下見をし、「ちょうど、あの辺りで観ていた!」と3階を指差し、オーディエンスを沸かせる。今回の初のビルボード公演は、アルバム『Howdy!! We are ACO Touches the Walls』のリリース記念ライヴ。また、光村のブログには、ビルボードへの想いが熱く綴られていた。「夢が叶いまして嬉しい!ライヴハウスでは見れない事が、観れるんじゃないかなと思います。最後まで楽しんで行って下さい。よろしく!」

そして、ここからはメンバーも着席スタイルで。ステージの床にセットされたライトが彼らを下から照らす中、始まったのがスローテンポの“天地ガエシ”。オーディエンスに語りかけるよう光村は歌い始め、彼の声にしっかり寄り添う対馬のコーラスと、古村のブルースハープの素朴な音を聴きていたら、この曲が生まれた武道館リベンジまでのストーリーは「NICOの青春だったんだな」と、グッとくるものがあった。静まり返る会場に、囁きのような光村の歌声だけが響き、次第に対馬、古村が加わった3層の美しいコーラスワークによって、一気にムーディな夜の世界に引き連れていってくれた“夢1号”。動きのあるベースラインと腰に響くドラムの上をクルクルっと転がり続けるヴォーカル。ジャジーなアレンジがビルボードのラグジュアリ―な空間はぴったりだった。<真っ白な>ピンスポットがステージを照らし始まった“ホログラム”。2本のアコースティックギターとドラム、坂倉はベースをお休みさせてタンバリンとシャランと鳴らす。少ない音数だからこそ体感できるのが声の力。優しく、柔らかな声で歌う光村の佇まいは、どこか過去を懐かしむ雰囲気をまとう。また、古村のギターがフレーズも繊細でとても美しかった。

「良い曲だよな」。過去に何度も思ってきたことを、私は改めて思っていた。4人の演奏する姿に見とれ、音に聴き惚れ、時間が経つのも忘れて行く。続く“芽”では、対馬と坂倉による重みのあるビートが、大地を踏みしめているように逞しく、メッセージ性の強い歌詞に、心がぐらぐらと揺さぶられ、そして、次曲“Diver”で、対馬の躍動感あるドラムがガラリ空気を変えた。坂倉と共に生んだ熱いグルーヴが会場中を埋め尽くし、そこに光村のサビの高音が潔く放たれていった。

「楽しんでいますか?気持ちいいですね、非常に」。光村はここで思い出深いエピソードを話す。小学校6年生の春休みに、初めてアコギを買ってもらった光村少年。小学校の卒業祝いに、父親に御茶ノ水に連れて行って貰ったそうだ。彼が、初めて出来るようになった楽器が、アコースティック・ギターだった。しかし。楽器の扱いが雑で、バンドを始める前にヘッドの部分を落として壊してしまい、そのギターは自宅のベランダに放置され、数年前粗大ごみに出したという。ちなみに光村がどのくらい雑に扱っているかと言うと、高校生の頃自宅に遊びに来た坂倉が、うっかりそのギターを倒し謝られても、ちっとも気にしていなかった…。微笑ましくも、しっかりとオチのあるMCにオーディエンスは大爆笑。そして、この日のためには彼の“大先輩”である1965年製のアコギを購入。そして「かわいい音がする」大先輩を「ここからバキバキ弾き倒していきます!」と宣言。

再びスタンディングスタイルに戻り、対馬の掛け声にで始まった“Broken Youth”。ゆったりとしたカントリー調がとても心地良く、安心して聴き入っていられる…と思ったら、光村のアコギの弦が切れてしまうというハプニング!先のMCの件もあって光村本人も吹き出してしまうし、もちろんオーディエンスも笑ってしまう。チューニングがずれたまま演奏され「アコギの神様に怒られたみたいです」との苦笑いの光村。しかし、気持ちを持ち直し、再び4人のセッションから始まった“ニワカ雨ニモ負ケズ”で再び観客を圧倒。背後のカーテンが開かれると六本木の夜景が広がり、大きな歓声が上がった。披露された楽曲で一番セッション感が強かった。グルーヴの良さとシャープなギターが聴く側の気持ちを沸き立て、また、いつになく力強い歌声も印象的だった。

古村、坂倉、対馬が、盛大な拍手の中、先に舞台から降り、本編ラストは、光村の弾き語りによる“バイシクル”。これが衝撃的だった。光村がここまで自分自身を曝け出した姿を、私はいまだかつて見たことがなかった。体が空っぽになってしまうのではと言うほどの、凄まじい声量で歌い上げたのだ。この曲は元々ブルース色がとても強い。しかし、そこから生まれた新たな「決意表明」と言わんとばかりの強さがあった。それが光村の声と化したのだろう。ラストのサビでは、マイクを口から遠ざけ、生身の声だけを放つ姿は圧巻だった。歌い終えた光村は、彼のブログで予告した通りしっかり『爪痕』を残し、ビルボートのステージを後にした。

アンコールで再び4人が登場すると、彼らの『初めての挑戦』の種明かしが。「お気づきの方もいるとは思いますが…」と前置きをしつつ、今回彼らはアルバムの曲順通りにライヴをする、という再現ライヴに挑戦をした。「このアルバム1枚でライヴ、みたいな設定のCDだったので」と光村。これは正解だったと思う。アルバムの持つ臨場感がしっかりと堪能できたからだ。「最後にACO Touches the Walls 、新作やります」と妖艶なギターを光村が鳴らす。重たいディスコビートを効かせた、アダルティな“ストロベリーガール”。これは、かの有名なドナ・サマーの“Hot Stuff”を思い起こさせる絶妙なアレンジだった。六本木の夜の始まり告げるかの如く、光村は色艶あるヴォーカルを披露。このアレンジは彼らのお得意系でもあるが、この見事な演出っぷりにはお手上げであった。

ここビルボードライブは、日本国内だけではなく海外の名だたる有名ミュージシャンも立つ。よって、この日のライヴは彼らが手に入れた勲章でもあり、一つの試練…だと思っていたが、とにかく楽しそうな姿がだけが、今は胸に焼き付いている。初日の1stステージであり、続く2ndと翌々日に行われたビルボードライヴ大阪公演に比べると、若干硬さが観られたのかもしれない。しかし、4人の姿は楽器を始めたばかりの少年達のようで、今のNICOはバンドとして最高にグッドコンディションなのだろうとわかる。そのくらい堂々とした、威勢のいいライヴだった。メンバー退場時にはお馴染みのSE、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンの“Thank You For Your Love”が流れている。この曲も何度も聴いてきたはずなのだが、この夜、なんだか妙に胸に熱く響いてしまったのは、きっと私だけじゃなかったはずだ。



set list
1 口笛ふいて、こんにちは
2 手をたたけ
3 THE BUNGY
4 天地ガエシ
5 夢1号
6 ホログラム
7 芽
8 Diver
9 Broken Youth
10 ニワカ雨ニモ負ケズ
11 バイシクル

encore
1 ストロベリーガール

[PR]
by musicorin-nirock | 2015-02-15 11:53 | LIVE | Comments(0)

主にNICO Touches the Walls について書いておりますが、他にはGRAPEVINE と the HIATUS が好きです。記事の無断転載、引用はご遠慮ください。


by タナイユウ
プロフィールを見る